●「日経サイエンス」11月号に、この「三次元の宇宙」は、四次元宇宙に出来たブラックホールの「事象の地平面」なのかもしれないという説が載っていた。メモしておく。
《すべての空間と時間、そして物質はビッグバンによって特異点と呼ばれる密度無限大の点から突如出現したと考えられている。特異点は想像を絶するほど奇妙なもので、そこでは時間と空間の曲率が大きすぎて、未来と過去の区別さえできない。特異点ではすべての物理法則が適用できない。特異点は秩序や規則のない世界であり、そこから論理的に存在しうるあらゆるものが出現する可能性がある。そうした特異点から、観測されているような秩序だった宇宙が出現することを期待する理由はない。》
特異点は奇妙なものだが、まったくなじみのないものではない。巨大な星が崩壊してできるブラックホールの中心にも生じる。》
《ビッグバンの場合と同じく、ブラックホール特異点では物理法則は使えない。しかし、ビッグバンの場合と違って、ブラックホール特異点は事象の地平面に囲まれている。》
特異点の影響は事象の地平面の外には及ばないので、私たちは観測される事柄すべてを安心して物理法則によって説明し、予測できる。》
《一方、(一般的な理解では)ビッグバンの特異点は覆い隠されていない。事象の地平面をもたない「裸の特異点」だ。しかし、事象の地平面のようなもので、ビッグバン特異点の破壊的で予測不可能な影響から、私たちを守ることはできないだろうか。》
《私たちが提案する覆いは、通常の事象の地平面と重要な違いが一つある。私たちの提案では、私たちの3次元宇宙自体がビッグバンの特異点を取り囲んでいると考える。そのためには、特異点を覆う事象の地平面も2次元面ではなく、3次元面でなければならない。この3次元的な事象の地平面も星の崩壊によって形成されたと仮定すると、その崩壊は4次元宇宙で起こっただろう》。
ホログラフィー理論によると、ブラックホール内部に落ち込んだ情報はすべて、その表面である事象の地平面にコピーされるということだから、そうすると、この3次元宇宙は、4次元ブラックホールの内部状態が投影(表現)される「平面(スクリーン)」であり「映像」だ、ということになるのだろうか。
《過去20年間、物理学者は優れた「ホログラフィー理論」を発展させてきた。(…)これは、ある次元の物理現象の記述を別の次元の物理に翻訳するための数学的ツールだ。例えば、2次元空間における流体力学の方程式という比較的単純な問題を解くことで、はるかに複雑な系、例えば3次元ブラックホールで何が起きるかを調べることができる。数学的にはどちらを考えても同じことであり、2次元流体は3次元ブラックホールという謎に満ちた物体に対する完璧な類似物なのだ。》