情報の海の漂流者

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外国人への生活保護支給について

最近、外国人への生活保護支給は違法であるという意見をよく見かけるのですが、これについて根拠を問うと2010年10月18日大分地裁の判決を持ってくる、というパターンが増えています。
何故判を押したようにみんな同じ事を言うのか気になっていたのですが、これ、wikipedia-生活保護のページに記載されていたんですね。


外国籍者への保護支給裁判

2008年12月に永住権を持つ大分市内の中国籍の女性が市に生活保護を申請したが却下され、女性は不服として訴訟を起した。


2010年10月18日大分地方裁判所(一志泰滋裁判長)は「外国人には生活保護法の適用はない。永住外国人も同様」「外国人の生存権保障の責任は第1次的にはその者の属する国家が負うべきだ。永住外国人でも、本国に資産があるかどうかなどの調査が難しく無条件に保護を認めることになる」とし、生活保護法の適用は日本国籍を持つ者に限られるとして請求を棄却した[13]。弁護団によると、永住外国人に対して生活保護の受給権を認めないと明示した判決は初であるという。


また同裁判において請求の根拠とされた1954年の厚生省社会局長通知については「通知に基づく保護の性質は(行政側から外国人への)贈与。(今回、大分市は)贈与を拒絶しており、女性に生活保護の受給権はない」として却下した[14]。なお、同女性は別の裁判で、外国籍の者は生活保護法上の行政処分に対する行政不服審査法に基づく不服申立てができるとの判決が確定している。


生活保護 - Wikipedia

ソースとなっているのは大分合同新聞の記事。

永住権を持つ大分市内の中国籍の女性(78)が、外国人に対して生活保護の受給権を認め、保護を開始するよう同市に求めた訴訟の判決言い渡しが18日、大分地裁であり、一志泰滋裁判長は「外国人には生活保護法の適用はない。永住外国人も同様」として、女性側の訴えをすべて退けた。
(後略)


生活保護申請 「永住外国人も適用外」【大分のニュース】- 大分合同新聞
で、ちゃちゃっとwikipediaで調べた人がこれを論拠としている状況です。
でも実はこの判決、高裁でひっくり返っているんです。

永住外国人「生活保護の対象」=大分市の却下取り消し−福岡高裁

 大分市に生活保護申請を却下された永住資格を持つ中国籍の女性(79)が、「外国人にも受給権があり、保護が必要な状態だった」として、市を相手に却下の取り消しなどを求めた訴訟の控訴審判決が15日、福岡高裁であった。古賀寛裁判長は訴えを退けた一審判決を見直し、大分市の却下処分を取り消した。
 原告弁護団によると、行政措置として行われてきた外国人への生活保護について、法的保護の対象と認めた判決は初めてという。
 一審大分地裁は昨年10月、「外国人には生活保護法の適用はなく、永住資格があっても同じだ」などとして請求を退けていた。
 これに対し、古賀裁判長は「難民条約の批准や外国人に対する生活保護の準用を永住外国人に限定した指示(1990年)により、国は一定範囲の外国人も法的保護の対象とした」と判断。その上で、女性は生活保護が必要な状態だったと認めた。(2011/11/15-21:20)


時事ドットコム:永住外国人「生活保護の対象」=大分市の却下取り消し−福岡高裁
しかし、wikipedia-生活保護-外国籍者への保護支給裁判 の項目にはこの判決が掲載されておらず、最新情報が反映されていない状況です。
そのため、wikipediaを読んだ人の一部が地裁の判決を確定事項であるかのように思い込んでいるんです。
そして、「外国人への生活保護支給は違法である。根拠は2010年10月18日大分地裁の判決だ」と主張しているわけです。
しかし現時点では地裁の判決を根拠にする言説は正しくないわけです。
将来的に高裁の判決が最高裁でひっくり返った場合には話が変わってきますが。