どっとこうMOTTO

電子書籍『After』(全2巻),BookLive!(http://booklive.jp/product/index/title_id/116980/vol_no/001),紀伊國屋書店(https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0012917)などで好評発売中。

幻想水滸伝3

舞台裏公開ではりぼての裏側まで公開してしまった.
でも,ちょっとピントがずれているような気も…


幻想水滸伝
(2002年07月発売・KCET・PS2
評価:★★★★☆☆(B:ゲーム好きならおすすめ)


去年の七月に出たソフトで,本来ならとうにクリアしているはずではあるが,卒論などの関係で二月に入ってからプレイを始めた.ちなみに,1を六月に,2を七月に,外伝1を八月に,外伝2を九月にクリアしている(すべて2002年).全ての物語自体が有機的に貫通している,大変なゲームである.


トリニシティの必然性

このゲームの最大の特徴は,なんといっても登場人物の多さである.毎回百八人(実質的にはそれ以上)も出てくるのである.同じ主人公(主役ではなく,操作可能な人物)が出てくる事を割り引いても,凶器の沙汰としか思えない.それでもこのゲームが機能しているのはゲームだからであり,他のメディアでは堪能できにくい形式であるという点においては,評価すべきところである.ゲームは主人公を動かす.動かせば,永遠の記憶とは行かなくても,名前や特徴を覚えるというものだ.


私がほめたたえたいのは,ただ百八人います,というだけではなく,敵味方が入り乱れるところにある.味方は敵になり,敵は味方になる.一面的なお説教くささがないのがとてもいい.それぞれ主人公の結論に至る過程が垣間見えるのが百八人を越えたこのゲームの魅力であると私は思う.


主人公達が何を考えているのかを強制的に見てまわるのが3の目玉トリニシティであろう.何人かの主人公を中心にして動かすタイプのものはあるが,途中で無理やりに変わるというのが幻水らしい.実はこのこと自体目新しくもない.ロールプレイの技法である役割交換そのものであり,主人公になりきれないかもしれないが,実にロールプレイング的である.


また,ゲーム的な人間表現の方法も手が込んでいる.演劇はよく考えられている.役者としての軸と役柄と照らし合わせての軸とあるのが表現を豊かにしている.スキルも遅く育つキャラがいるなど,一面的な評価になりにくいのもよい.投書箱もそう.投書しないという選択肢もあるのがよい.だが,この表現に乗らない対立キャラについてもぜひ描いてほしい.さらに,1・2・3の宿星対照表をつくってみるのもおもしろい.


360度は見えない

とはいえ,3Dにし全貌を表現し,トリニシティにしたその意欲は買うとしても,実際描かれているかというと非常に疑わしいものがある.1の頃からの悪い癖だと私は考えているが,主人公達はよく描かれているが,主人公ではないものはとても単純なのである.具体的には評議会が単なる悪人である.どうしてそうしようか,ということは推測できなくはないが,薄すぎる.主人公がよく描けているから余計に目立つ.二項対立ぽくないのがいいといっているのに,人々が何を考えているのかがわかるのがいいといっているのにこれでは長所が台無しだ.


エンディングクリア後のルック編についても同様.1や2を知っているだけに余計に理解しがたい.1や2のルックと3のルックが違いすぎるのだ.分断されているように見えてならない.どうしてルックが希望を託せなくなったのか,そこが鍵のような気がする.レックナートとの絡みはおそらく次回作以降に期待というところだろうか.


総評

2でとりあえず区切りがついたと見え,新たに歩みだした感じがする.らしさも保っている.次回はどのような世界をかもし出してくれるのか楽しみである.百八人が出てくる時点で他のゲームとは一線を画している(最近のゲームはスーファミ時代に比べて人数が減っていると思うのだが,気のせいだろうか?).大切にしていただきたい.(そして典型的な「主人公」型ゲームのように見えることが多いのではないだろうか.このあたりはおいおい説明していくので,本文を読んでいただきたい.)


今まで触れていなかった戦闘について簡単に触れておこう.戦闘はそんなに変わった形のものではない.変に難易度も高くなく(おそらく一番辛いのはヒューゴ編第1章後半だと思う),戦闘がためのゲームではない.ストーリー重視でありキャラクター重視であることが伺える.ただ,パディの概念は理解に苦しい.

2以前をしなくても3からプレイしてもよいが,できれば1・2もやっておきたい.1・2も3同様に基本的にお勧めだ.



<評価詳細>
ストーリー:★★★☆☆☆ (C:暇ならおすすめ)
 システム:★★★★☆☆ (B:ゲーム好きならおすすめ)
   音楽:★★★★☆☆ (B:ゲーム好きならおすすめ)
   私見:★★★★★☆ (A:ゲーム初心者でもおすすめ)
※私見とは私の好き嫌い,あるいは特別評価するところ,の評価.


※星一覧表
☆☆☆☆☆☆ F:廃盤ものでしょう
★☆☆☆☆☆ E:やるのが理解できない
★★☆☆☆☆ D:やるなら止めはしない
★★★☆☆☆ C:暇ならおすすめ
★★★★☆☆ B:ゲーム好きならおすすめ
★★★★★☆ A:ゲーム初心者でもおすすめ
★★★★★★ S:国民の第四の義務


結局なんだかんだ言ってもBクラスに落ち着くことが多いです.Aクラス以上なら,絶対おすすめです.逆にCクラス以下はおすすめしないということになるかと思います.

ドラゴンクォーター

よくできたゲーム.
でも,これを「RPG」と,「ブレス」と呼べるか?


ブレス オブ ファイア5 ドラゴンクォーター
(2002年12月発売・CAPCOMPS2
評価:★★★★☆☆(B:ゲーム好きならおすすめ)


前作までドラクエの形式(主人公がなるべくしゃべらないようにする)を踏襲してきたシリーズに,前回取り上げた『幻想水滸伝』と,もうひとつ『ブレスオブファイア』がドラクエ以外では挙げられるのではないだろうか.『幻想水滸伝3』が同じストーリーを別の視点から眺めるという物語的な側面を強めたのに対し,対照的に『ブレスオブファイア5(以下,ドラクォ)』はゲーム的な側面を強めたといえる.


SOL(シナリオオーバーレイ)がもたらすゲームデザイン

SOLの思想はゲーム全体の思想であり,SOLなしには『ドラクォ』は語れない.これがPETSと違うのは,PETSがあくまでゲーム内の思想である(ただし,正直なところ,私はPETSのことはよくわかっていない)のに対して,SOLはゲームのプレイの形態を決めている.SOLが発動するのは,ゲームをやり直したときである.つまり,SOLはゲーム世界外にまで影響を及ぼしている.


リュウたちの人生が1回限りであるのに対して,プレイヤーは複数回同じリュウの人生を歩むことになる.他のゲームでも複数回やれば複数回歩むが,前回の経験を引きずっているのだ.スキルや金,特に共同体は顕著だろう.さらにSOLイベントである.ゲームデザインとして複数回こなす事を要求していると言える.リュウの人生そのものがやり直せない以上(リュウは何度やり直しても同じ行動をしている.リュウの人生は一つしかないのだ)SOLが発生する自然的な理由は全くない.


新しい事実に気づいたり,前の能力を引き継ぐのは,誰でもない,プレイヤーだ.ゲーム世界が軸になっているわけではない.プレイをするプレイヤーの事が考慮されている.イベントスキップもそのためにある.『幻想水滸伝3』も同じシーンを何度か見ることになるが,こちらにイベントスキップ機能がつくことはあってはならないことだと思う.つく理由がないのだ.


このゲームをしていると巷のリセットボタン論(※リセットボタンを押せば全てが許されるだろうと思って変な行動をするのではないかという考え方)が間違っている事を示している.このゲームでリセットボタンを押すことができないわけではないが,それはあまりしない.セーブをする機会がほとんどない.リセットボタンを押せば,現状復帰には相当時間がかかることが多い.SOLによって,魔法や技,パーティー経験値などが引き継がれる.そこで負けたことはゼロにはならないのだ.次やるときには理解しているものなのだ.


さて,『ブレス』とは何か?

本来なら,星の数をひとつ増やしてもいいのかもしれない.でも,それは何かが許せない.それは『ブレスオブファイア』とは何か?ということに他ならない.これを『ブレスオブファイア』としていいのだろうか,という問いである.3や4のような話はそうそう続かない,限界が来ると思っていただけに,やはり難しいところだったのだろう.


もちろん,リュウとニーナ(及び声優)が登場したり,魔法や通貨単位,そういう種のものは同じだ.もっと言えば,話の枠組みも(特に3と)同じであるように見える.私はボッシュをティーポ以外には見えなかった.ドラゴンをテーマにしているという点でも同じだ.


それでも,言いたい.これを『ブレスオブファイア』と呼んでよかったのかどうか.お気楽さというか,毒されていないとでも言うべきか,カプコンらしくないと言うべきか(と言ったら怒られそうですが)ファンタジックな明るい世界観であったことには間違いない.あと,「釣り」.どこへ行ってしまったのだろう.やったことはないが,同じカプコンの『バイオハザード』が浮かんでしまう.あの暗さや緊張の続く戦闘ばかりの展開がそうさせるのだろう.あと,スタッフで4作っている人がどれだけ5に残っているかというのも疑問だ.


次回作がどう出るか.それによっておそらく『ブレスオブファイア』のアイデンティティが決まるのだろう.どう出るにせよ,世界観をころころ変えられてしまった日には作品別ファンはつくが固定ファンがつきにくいように思えてならない.いっそのことこの路線でいくのなら,シリーズ名を『ドラゴンクォーター』にしてみてはいかがでしょうか.蛇足でした.


RPGと言えるのか?

これはRPGと大きくうたってはいるが,RPGとは何か,開発チームの人に答えてほしい.少なくともリュウにロールプレイするのは無理だ.彼が何を考えているのか想像しながら進めていくのは至難の技だ.たとえば,どうしてリュウはニーナを空に連れて行こうとしたのかという問いにはっきりとした答を見出すことはできない.恋愛感情だとしても,どうしてニーナのことが好きになったのか,が重要なポイントであり,そしてその答は描かれない.アジーンとの関係やニーナへの想いなんていうのは彼の「内省的な」性格でさっぱり見えない.他のキャラクターのようなSOLもない.

「アクションではない戦闘形式を持っている」ゲームというのが開発チームの定義の推測ではないだろうか.回数を重ねる(繰り返す)ということはロールプレイの特徴でもある.しかし,先のリュウが描かれていない事やイベントがスキップできるという事を考えると,ストーリー面ではなく,システム面の強化に他ならない.

システム的な強化はプレイヤーの自由が強くなる.イベントスキップはその極地だ.プレイヤーの判断だけが問われる.私のゲームの分類だと,「主人公道具型」に近いのではないだろうか.


総評

システムの概念的な話ばかりだったので,実際どうだったかといえば,おもしろかった.1回で止めるつもりだったが,思わす2周してしまった.1周目は辛い.難易度が高いゲームだと思った.攻略本を見ても攻略方法がわからない.とくにアブソリュートディフェンスは初心者いじめだと思った.100%でゲームオーバーになってしまうのもきわどい.使い方によってはラスボスに近いボスでも1ターンで倒せるので強いのだが,システム的な戦いが楽しいのにそれはそれでどうかと思う.また,回復方法が乏し
いのも辛い.セーブもほとんどできない.だけど,1度クリアした後のやり直し以降は,SOLがあるのでかなり楽といえる.

世界観は抽象的.リアリティは全くないと言ってよい.オリジナリティがあるかといわれても,そうでもない.荒廃しきった世界なのだ.それだけならリアリティを見出すことも不可能ではないが,『ドラクォ』はいかんせん人が少ない.暮らしが見えない.対話があまりないのだ.ただ,このあたりもシステム重視だからと割り切れれば,都合のよい考え方であることは付け加えておく.音楽も悪くはない.システムやストーリーによくなじんでいる.

単品としてのゲームとしてはよくできている.シリーズものをやっていない人でも何も困ることはない.慣れるまでが大変だが,慣れれば意外に単純に感じるはずだ.「主人公型」ゲームとは言えない確率が高いが,ゲームらしいゲームであることには間違いない.


<評価詳細>
ストーリー:★★☆☆☆☆ (D:やるなら止めはしない)
 システム:★★★★★☆ (A:ゲーム初心者でもおすすめ)
   音楽:★★★★☆☆ (B:ゲーム好きならおすすめ)
   私見:★★★★☆☆ (B:ゲーム好きならおすすめ)
(著者注・お詫び)
システム的にはよくできていますが,初心者に進められるかどうかは…です.