パオロ・マッツァリーノ『反社会学講座』

ミックさんのブックレビュー

昨日ミックさんのはなしをしたけど、ミックさんがすごいなと思うひとつには、
取り上げている本がことごとくおもしろいということだ。


ミックさんのブックレビューを読んで何冊かゲットしたうちの一冊がこれ。


反社会学講座 (ちくま文庫)

反社会学講座 (ちくま文庫)


本屋でみかけたことはあったけど、中は見たことが無かった。
どうせふざけた内容なんだろ、と思っていた。

で、読んでみると

おもしろい。一気読みした。
正直、今もう内容はあんまり覚えていない。*1
けど、著者のおもしろさへのこだわりはすごいと思った。


そもそも文章を書く人というのは、自分を賢く見せたい欲と無縁ではない。*2
それをさりげなくやるか、露骨にやるか、無意識にやるか、という差はあるにしても。
んで、知識をひけらかしたり、人をこきおろしたりすることもある。


あるいは、突っ込まれない為に、手堅い生硬な文章を書いたり、
やたら人の引用で構成されてたり。
渡邊二郎なんか、文章の半分は引用じゃないだろうか*3

脱線小話

ちなみに、ぼくが大学時代にお世話になった教官は、学生の頃、
渡邊のゼミに在籍していたらしい。
その教官から聞いた話だと、学生が「フッサールはこう言いました」とか適当な発表すると、
渡邊は、次の週のゼミまでに著作全部調べて、
「どこにそんなことが書いているんだ!」と言って本を投げつけて怒るんだとか。
極めて渡邊らしいエピソードだと思った。

閑話休題

マッツァリーノに話を戻すと、
ぼくが、おもしろいなーと思う文章を書く人は何人もいるが、
ここまで、こういった顕示欲を抑制して、おもしろさに振った人は珍しいと思う。
ほんと、見習いたい。


主張そのものより、主張の組み立てというか話のもってきかたのほうが
勉強になるという、ちょっと変わった本でした。

ちなみに

表紙のイラストは吉田戦車だ。
言われてみれば、吉田戦車こけしが机にのっている。

*1:なので、ミックさんのレビューを参照のこと

*2:いわゆる人文科学は特に顕著だと思う

*3:渡邊は精確な記述をしているんだろうけど