伏 鉄砲娘の捕物帳(2012)/★★★★☆

大島ミチル節が炸裂!
伏 鉄砲娘の捕物帳 DVD通常版
人と犬から生まれた「伏」。8人の伏が江戸に現れて人の生魂を食らい始めた。
高額な懸賞金目当てに伏退治に名乗りを上げる浪人たち。
兄に呼ばれ山を降りた鉄砲漁師の「浜路」。やがて兄と妹の伏退治が始まる。

こう聞けば思い出すのが「ブレードランナー」。実際、踊り子を追い詰める場面によく似たシーンもあってかなり意識している様子で、時代劇版ブレードランナーと言ったところか。


時代劇かと思いきや、浜路はへそ出しシャツに短パン。銃は連発のガトリングタイプでしゃべりは現代風そのもの。と、かなり架空の時代に近く、何でもアリではあるが、時代劇の雰囲気は十分感じられる。
その理由は、江戸の風俗を表す美術であったり、カラフルな色であったり。人の姿であったりと浮世絵で見たあの雰囲気がそのまま動いている"さま"に感動。
吉原での場面が長いのだが、本物の吉原もかくやと思わせられてとても感心した。


主人公は鉄砲娘"浜路"と最後の伏"信乃"なのだが、それ以外にも登場人物が多く、魅力的なキャラクタがたくさん出てくるのもいいところ。私は花魁の"凍鶴"に泣けた。
ただ、残念ながら物語が広がりすぎて、まとまっていない感じがするのが問題で、いっそのこと里見八犬伝の下りはばっさり切り捨てて、この時代には「伏」がいた程度の説明でも十分楽しめたと思う。それでは原作からかけ離れ過ぎてしまうのかもしれないが。
"浜路"と"信乃"の2ショットももっと見たいし、クライマックスで全く絡まないのが残念を通り越して不満ですらある。伏もすでに6人殺されている段階から始まるので、2クールぐらいあったアニメのダイジェストを見せられている気分になる。
「捕物帳」と言うからにはもっと捕物をして欲しい。
さらに、序盤でいきなり伏と仲良くなっているので、"浜路"が"信乃"を狩る話ではなく、"浜路"と"信乃"が協力して別の妖怪を狩るのだとばかり思っていた。(その分別のキャラクタのエピソードが入ってくるのだが)


もう1つ特徴的なのが「大島ミチル」の音楽。
劇伴というにはかなり前に出ている印象で、終盤はずっと鳴りっぱなしで耳障りと感じも人もいるのではないか?
オープニングのオルガンを使ったパリ風の曲からクライマックスの骨太の音楽。大島ミチル節がたっぷり聴けるのがうれしい。