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2008-07-01

g862008-07-01

[]vol.11 建築家 mi-ri meter

今回は二人組の建築家 mi-ri meterのインタビューです。

メンバーの宮口明子氏、笠置秀紀氏に“触れる都市計画”等、興味深いキーワードから新しい都市と建築の関係についてお話をお伺いしました。

miri-meter profile

宮口明子氏、笠置秀紀氏によって活動開始。

ともに1998年、日本大学芸術学部修了。

アーバンピクニックシリーズなど都市と関わるプロジェクトを多数発表。

ミクロな視点と横断的な戦術で都市を内側からデザインするプロジェクトを実践している。

interview内容

「学生の頃」

笠置氏—僕らはg86と同い歳の頃、トーキョーセンタクキという展覧会をやりました。校舎が練馬江古田にあって、沿線に南長崎という駅があるんだけど、その駅には美術予備校があって、周辺にぼろいアパートがたくさんあるんだよね。そこのアパートに住んでいた同級生がいて、そこが取り壊されるという話があって、空き家がどんどん増えてきたから、グループ展をやろうという話になって、1アーティスト1部屋使って、ひっちゃかめっちゃかやりました。人がまだ住んでたんだよね笑。

そういう展示をやったりしてました。

鎌谷—笑。人が住んでいるところは、いじらずに?

笠置氏—そうそう。やるという時に、事前に大家さんから許可を得てはいたんだけど、各部屋に行って、こういう企画をやるんです。というと、パチンコ屋で働いているおっさんが、「俺はやりたくないな。」と。

一同—爆笑

宮口氏—その人は、みんなそれぞれやって下さいという話だと思ったらしくて笑。

笠置氏—それをやってた仲間と、この前やった、取手のアートプロジェクトで、再会しました。笑

小林—お二人が活動を始めたきっかけはどういうところにあるんですか?

宮口氏ーコンペとかを一緒にやっていて、なんとなく活動が始まっていたという感じです。卒業してすぐの活動というのは、セントラル硝子のコンペで、「都市の立体公園」というやつですね。

鎌谷—日大を卒業されて、その後のことを聞かせてください。

笠置氏ー結構色々な設計事務所でバイトしていましたね。僕らは失われた十年という年代だから、みんな就職するというよりは、自由になんかやっていこうという感じだったかも知れませんね。うちとかは当時、建築への就職率があまり高くない大学だったので建築をやめるか、そういう風に、どこかにアトリエに運良く入れたらいいなと言うノリだった。オープンデスクや設計事務所のバイトで株式会社goodsの中村さんとあったりして、あと、a+uにいた柴田さんとか、結構その時代から未だにつきあいある人がいるね。


「触れる都市計画

山道—建築家の藤村龍至さんや長谷川豪さんが塚本研究室修士だったころの東工大のイベント、カジュアルアーキテクチャー大作戦に出られた時は、もうミリメーターになっていましたか。

笠置氏ーそうですね。あれは2000年ですね。

笠置氏ーそのイベントで中山さんがうまいことをいっていて、「カジュアルフライデー」というのがあって、要するに、金曜日に普段着を着て出勤するというのが始まった頃で、建築家もマジメに着ていたのを、カジュアルに着てこいって言われて、とまどってしまっているという状況じゃないかと。それが結構言い当てられていて、笑

鎌谷—建築家というのを取られると痛い。みたいな。

笠置氏ーそれからすると、だいぶカジュアルになったと思うけどね。一般誌が建築をとりあげるようになって。それがいいのかわるいのか。カジュアルと言いつつ、建築家の職能がだんだん分かれているような気がしていて、そういうモード的なと言うか、スタイリングするような建築家の大半がそっちに行っている感じがしている印象がある。ディベロッパーの言いなりに、きれいな家だけをつくるとか、というだけだと、建築家の役割って単なる調整役になってしまうのは、ちょっと心配だと思います。

山道—ミリメーターの作品は都市に直結していて、そういう作品のスタイルが、発掘されてきたのはどういうきっかけですか?カジュアルでありながら、都市に接続しているというのは、はじめからスタンスとしてあったのですか?

笠置氏ーたぶん、宮口がはじめ考えていたね。

宮口氏ーどちらかというと、プロダクトを作ろうと考えていたのではなくて、都市計画のつもりで、アウトプットをプロダクトにしたという感じです。使えたり、身近なもので、都市計画ができないかというのがスタートですね。

笠置氏ー「触れる都市計画」というところです。

宮口氏ーあと、学生の時に携帯電話が普及し始めたのが一番大きいかなと思う。電車の中での携帯電話やメイク、地面に座る若者とかが問題になったりして。でもそこに空間の新しい可能性を感じた。

鎌谷—場が作る空間、記号で作る空間という文章を読んだことがあって、それがすごく面白いと思いました。サラリーマンのネクタイとかを記号としてとらえていて。

笠置氏—東京というのが何で出来ているかと言うと、現代ではほとんど建築で出来ていないなと。都市というのが、建築で出来ているのではなくて、人の服装とか、看板とかで出来ている。それ以外は本当に特徴付けるのは何もないなと。人がいなくなり、看板がなくなったら、どこの街かわからない、ということがあるんじゃないかと。だから、前の世代は、建築と都市というのをすごく考えて、建築が都市をつくっているとか、建築家建築を通して都市プロジェクトをするとかいうのをやっていたけど、プロダクトとか、携帯電話みたいなものが都市を作っていくんじゃないかと思っています。

宮口氏—人が使ってはじめて意味があると言うか、結局、ものと建築だけあっても、そこに人がいなければ、何も生まれないし、何も変わらないし、何も出来ない。

山道—「触れる都市計画」というコンセプトは興味深いですね。確かに、建築よりもプロダクトの方が実は都市と接続するのではという見方も存在しますよね。

笠置氏ーそうすると、建築家は何をするのかと。さっきスタイリングするという話をしたけど、例えば、株式会社goodsの中村さんみたいにシステムをつくったりとか、ブランディングをする人とか色々出始めてるのは面白いなと思います。



「新しいビルディングタイプ」

山道—ミリメーターのお二人はアイデアを出したときどういうふうに作品化していくんですか?

笠置氏—僕らは本当にテレビを見ながら話をしているとか街を歩きながら観察するとか。

宮口氏—なんかこう、かけあいじゃないけど・・・セッションの中でうまれていくみたいな。

山道—ひたすらアイデアを出す感じですか?

宮口氏—がちっとよし考えるぞというふうではなく普通に街を歩いていてなんかこういうのいいとか、それぞれの蓄積があるじゃない。それで何かつくるときにそういうのを引っ張りだしてきてそこからスタディしていく。最初のとっかかりは普段の中にあって、それを引っ張りだしてきてつめていくという感じですね。

鎌谷—僕らもギャグを言い合って、おもろいなあと思ったら、あ、それworksでいいね、ということもあります。笑

宮口氏—結構その面白いってみんなが共感することってただのギャグで終わらせたらもったいないものってあると思う。もちろんそれをもっと突き詰めて深く落とし込まなきゃいけないけど。結構私たちの作品も名前をギャグっぽくしているのがあるから、なんだただのギャグじゃんとか思われてしまうことも結構あるんですよね。かといってあまり深くは語りたくないんだけど、感じればいいだけだと思うから。だからそのバランスは難しいと思うんだけどね。

笠置氏—多分今までの七年間くらいっていうのは速度をつけるための、ああいうみえやすさわかりやすさでやってきたから、多分ここからはもう少し論考的なこととか、複雑なことをやっていくんじゃないかなとは思います。やっぱり僕らは無名の、建築学科なんてあるのかっていうようなところを出たから、人に伝える速度とか、それを意識してやっていたところはあるかも。多くの人の目につくような、分かりやすいようなアイデアでやってきたような気がします。

鎌谷—これから考えられていることっていうのはどういうことがありますか?

宮口氏—プロダクトに落とし込んでいたけれど、もうちょっと違う方向で、フィールドワーク的なこともしながら、本かもしれないし、もうちょっと空間的な方向になるかもしれないですね。

笠置氏—新しいビルディングタイプをつくりたいというのはありますね。

g86—なるほど。

笠置氏—たぶん僕らが建築史を編むとしたら、コルビジェとかじゃなくてコンビニとかファミレスとかマンガ喫茶みたいなものを編むだろうと思うんだよね。たとえばファッション史編むのも同じでコムデギャルソンの服を編むんじゃなくて、ナイキとかそういうものが歴史としてあと100年200年経ったときに意味をもつんじゃないかなと思うんですよね。本当はコンビニみたいなシステムのものをつくっていきたいと思っていてそれが建築でいうとビルディングタイプみたいなものかなという予感はありますね。あと今までは渋谷とか都心を中心に考えていたけれど少し郊外も考えていこうかなという気はしています。

ただちょっと最近思ったのが、ああいうコンビニ的なものと地域とか村みたいなものが相反するものと考えられていたけれど、実際イオン的なアイコンみたいなものを使っていけば、その商店街とかがもう少し力をもつんじゃないかと思っていて、毛嫌いして商店街は商店街で盛り上げようみたいなことをやっているけれど、実際それじゃあ速度みたいなものが足りないんですよね。だからほんとはそういうものをもっとつなげていったら・・

宮口氏—アスクルとか・・・

笠置氏—たしかにアスクルそうだよね、配送システムの一部は文房具問屋みたいなのがやっていたりするからね。あとカーコンビニ倶楽部も、あれは本当はフランチャイズで昔からの板金屋さんがそういう看板を掲げているだけですから。

そういう仕組みが出来たら・・。

鎌谷—それは面白いですね。

山道—そのシステム自体を提案していきたいという感じですか?

笠置氏—そうですね。出来るか分からないけれどね。笑

鎌谷—それをこう論考としてまとめる・・

笠置氏—また勝手にプロジェクトをやっていくしかないと思うんですけどね。いままでプロダクトとして落とし込んできたものが、実際、たとえばリスボントリエンナーレのカブトみたいに、たのまれた仕事として実現できるようになってきているので、分散したもので空間をつくるということが実現したとは言えるかな。まあそれも勝手にやることで10年後に実現したりするかなとは思っていますけど。だからうちらは結構先行投資で勝手にやるっていう笑。何をしたいかによるけど、選択肢をつくるのが僕らの役目であって、建築を建てて建築家としてなにかの空間を提案するんじゃなくて、もっと人間て自由だよねっていう、他にもたぶん選択肢があるっていうのをつくりあげようとしているっていうのはありますよね。だから建築専門誌の受け皿しかないと、そういう空間しか出来ていかないし、そうじゃない空間をつくろうじゃないかっていう。だから僕たちは結構抵抗しているんですよ。建築界かなにかわからないけど。だからほんとうは反社会的なことをやっていたり、路上でマドリックスを展示したり、そういうこともやっていたりして。僕は結構そういう抵抗はしようとしている。

宮口氏—例えば最初のマドリックスをつくったきっかけは、渋谷センター街女子高生がレジャーシートを広げているのを見たこと。そのころって若者が地べたにすわることをバッシングされていて、まあ悪いことかもしれないけど、それが面白いというか、公共空間の使い方として実は理想なんじゃないかと思った。それがなぜ良いかというのを、”例えば”ということでプロダクト化していった。イスカレーターとかも。考え方を少し変えると世界が違って見えるし、それが本当に駄目なだけなのか考えるきっかけになればいいなとか。

山道|建築家じゃない、たとえば女子高生とか、都市に普通にいる人々によって発掘された使い方とかを作品に昇華しているという感じですかね。

宮口氏—使い方にヒントを得ているというところはあるかもしれない。

彼女たちは自然にやっていることだけれどそれってそういう場が必要なんだって思う。ないからそうなっているというか。

山道|そこを抽出してフィードバックさせることによって、「触れる都市計画」みたいなのが表現されていくという感じですね。

笠置氏—なんか上手くそれがリアリティに対してフィードバック回路になっているべきだなあと思いますよね。だから建築学科出ちゃうとそれが単純に言えば壁を建てて空間、とかそういう方法しかなくなってしまうのは嫌だなっていう。



「ネットと次世代」

鎌谷—そういうののアウトプットの仕方は展覧会が多いですか?

笠置氏—そうですね、展覧会が主ですかね。

鎌谷—なんか、ネットとかで色々やるとかは・・

笠置氏—そこがたぶん僕らの、ネットにいききらないところというか、僕らの作品て全部モノで出来ているから、電子的なメディアを使っていないというか。そこがたぶん建築に足が片一方はいっている部分で。あくまで物質の強さを示しているというか。たしかにそういう電子的なもの、インターネットとかケータイで世界は変わったんだけれども、そこでなにが出来るかといったときに、モノとか感覚みたいなところで何か作品をつくりたいというところがあるんですよね。だからあまりネットとかにはいかないかもね。

宮口氏—うん。でも使い方だよね。

笠置氏—そうですね。グラフィティを集めたサイトとかは作ってますが。。。

鎌谷—マドリックスとかは、物質的な場所に記号的というかかなり情報というかそういうものをやっている作品もあったりするので、そういうのがあるとネットとかそういうのができそうな気が・・

笠置氏—たぶんそこも世代の差があると思うんだよね。

山道—印象で言うと、今の女子高生とかは、非物質的なところにもかなり依存していると思うんですよね。 

鎌谷—僕らにとってはPCが一番のネットの道具ですけど、僕ら以降の世代はケータイからネットをしている。

山道—パソコン使えないけどケータイばりばり使えるみたいな次世代。学校のレポートもケイタイで書いて出すという生徒も増えてます。

鎌谷—僕らにも次世代とのギャップは感じてます笑。

山道—女子高生以降はケイタイで小説も読んでいますよね。書き手もケータイで書き、読み手もケータイで読む。

鎌谷—誤字脱字も多いのにミリオンみたいな笑。クオリティよりもクオンティティみたいな状況があります。そこにも新しい都市はあるんじゃないかと笑。

笠置氏—なるほど、考えてみます笑。



「最後に」

山道—作品が都市と接続していることもあって、初めて作品を見させて頂いたときにすごく共感できました。カジュアルキテクチャーで呼ばれたのも自然に理解できました。

鎌谷—軽く流して見てもおもしろいし、読み込んでもおもしろい作品だなと思いました。そこはメイドイントーキョーにも通じると思います。

笠置氏—そういう意味ではアトリエワンから結構影響受けているのかもしれない。

鎌谷—都市というものにコミットしていくプロダクトとして作って行く以外に別の観点から考えたりすることはありますか?

笠置氏—あとはうちらも売れるプロダクトを作ろうという話があって、ベタなデザインを商品化したら面白いんじゃないかなと笑。

宮口氏—売れ線みたいな。ベターデザインとか笑

一同爆笑

笠置氏—でもやっぱりねIKEAとかfrancfrancをみると普通のデザインしても対抗できないというのがありますよね。流通のシステムから違う。だから一作家として資本に対抗できないというか。安くてある程度のクオリティーがあるイケアの方がほとんどのデザイナーより上だよね。

鎌谷—やっぱりIKEAとかfrancfrancのプロダクトってかなり影響がありますよね。都市的なレベルで見たとしても。それを逆に皮肉ってやっていくっていう。笑

笠置氏—そういうのをやっていきたいですよね。でもやっぱり建築家も警戒しないといけないのは住宅メーカーもかなり最近ある程度いいデザインのものが出来てきちゃっているっていうのが、恐いなというか。性能が良ければ買っちゃうだろうなというものを作り始めているので。

宮口氏—インテリアデザインだと普通にそこのお店の人がデザインしちゃった場合でもかっこよかったりするでしょう。

笠置氏—だからこの先どこまで建築家って職業が、保てるのかっていうのはちょっと分からないと思っています。

鎌谷—以前ゼネコン設計部の方にお話を聴かせて頂く機会があったんですけど、そこでのお話でクリティカルだったのが、集合住宅の設計だとゼネコンはほんの少しの部分しかデザインする余地が無くて、後はディベロッパーがかなりのアンケートを住人からとっていて、そこではじき出されたみんなが住み心地の良い空間などのノウハウが徹底的に確立されているから、そこには介入することが出来ないというお話だったんです。イオンとかもそうでプランニングはほとんど完成されていて、ファサードのデザイン等ワンポイントだけをするそうです。そうやって自動的に最適化されて決まってくる部分が相当多くて建築家が入る隙がますます無くなってきているんですよね。

笠置氏—昔設計事務所でアルバイトをしている時にデベロッパーとやっていて、ある設計で容積率を98%まで上げられたんだけど、後1%上げられるよねとなじられて笑

g86—爆笑

笠置氏—だからそういう1%を調整する人たちっていうことになってしまうんですよね。そうすると建築家というかなんというか。

山道—そうですよね。では、ミリメーターはどこを狙って行きますか?

宮口氏—日常の中で、建築家じゃなくても、誰でも思うであろう、誰でもわかることがすごく重要だと思います。

笠置氏—氾濫しているものってすごく強いと思うんですよね。ピロティとかガルバリウムというものよりも全然メジャーというか。だけどそれに対して、メジャーなものに溺れるんじゃなくて、それをすこしズラしてやって批評的に表現できないかと思っています。ピロティで社会を批評できない笑。当時も出来たのかと疑問に思う笑。それよりも消費的な記号に訴えかけて行きたいと思います。

g86—なるほど。今日はありがとうございました。

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