Alterac Valley

あるたらっく・ばれー。WoW最初の大規模BGにして、たぶん古今最大のBG。Alterac Mountain山中にある、Frostwolf Clanの隠れ里。Frostwolf ClanはThrallの父Durotanの出身Clanであり、したがってThrallもFrostwolf出身である。現在はWC3でちょろっと登場したFar Seer、Drek'Tharが族長を務める。Ally側のFaction・Stormpike GuardもAlterac山中に暮らすDwarfで、まあいろいろあってここAVを巡って争う。
AVには実に様々な要素があり、結構複雑なBGである。とはいうものの、拡張の進行に伴いそれらのうち多くの要素は廃止、あるいは形骸化してしまった。最近ではいくつかの戦略パターンはあれど、比較的単純な原則に従えば取り残されることなく勝利に貢献できるようになっている。筆者自身も、昔のAVの話は聞いたことこそあれ実際に触れたことのない世界なので、ここでは基本その最近の事情を元に書き、昔の話は最後で紹介する。
大原則として、AVでは両チームに当初600Reinforcementが与えられている。勝利条件は先に敵のReinforcementを0にすること。そのための様々なアプローチが用意されているが、最も直接的には敵チームのNPCボスを殺すことで即座に達成される。

Alterac現代戦


Reinforcementは、タワー/バンカー破壊、キャプテンKill、プレイヤーKillによって減少し、Mine(鉱山)のCapによってわずかずつ回復する。が、これらの手段によるReinforcement変動はたいていの場合決定的な手段にはならず、結局のところボスKillが最終手段としては必要になってくる(ボスを残して勝とうとすると今でも結構時間がかかってしまう)。
HordeのボスはDrek'thar(Drek)、AllyのボスはVanndar Stormpike(Van)。ボス自体の難しさはそれほど問題にはならない。Tankと、十分なDPSと死人を出しすぎない程度のヒールがあれば容易に殺せる。問題はボスを取り巻いているWarmaster(H)/Marshal(A)で、こいつらは最初4人おり、全員が周囲にいるボスとWarmasterのHP/Damageを25%上昇させるオーラを持っている。そしてこのオーラはスタックするので、ボスには最初144%のHP/DamgeBuffがついている。この状態でボスをPullするのはたいてい死亡フラグ。従って取り巻きを始末してからボスに取り掛からなければならないが、今は取り巻きを個別Pullすることはできなくなっている。
取り巻きにご退場いただくには、敵軍のタワー/バンカーを破壊する必要がある。タワー1つにつき取り巻き1人が対応しており、1つ破壊に成功すると取り巻きが1人減る。タワーは両軍4つずつあるので、タワーを順調に破壊していけば、1人になったボスと戦うことができるというわけだ。ということで敵陣地までの道中にあるタワーを破壊していくことになる。
タワーにはNPCガードがいるが、弱いので適当に蹴散らせばよい。Capはおなじみのフラグ操作方式で、Capしてから4分間維持することで破壊することができる。一度破壊されたタワーはその後何の役にも立たない。絵的にも炎上していてすぐにわかるので、破壊されてしまったら以降完全に無視する。逆に自軍タワーがCapされた時は、4分以内にRecapすればABと同じく防衛扱いとなり、時間が立てばNPCも戻ってくる。Hordeのタワーは旗のある最上階が小部屋になっており籠城しやすく、ノックバックがあれば突き落すこともでき、登るのも若干面倒、と「取りづらく守りやすい」といわれる。一方Allyのバンカーはうまく位置調整すればNPCガードを無視してCapできたり、それをせずとも数人倒せば容易にCapできるので取りやすい。その分守りにくければバランスがよかったのだが、バンカー外壁を柱に見立ててLoSするなどの小技が結構利き、意外にも守りにくいというほどではない。タワーに関してはそんなわけで若干Horde有利のようにも見えるが、結局のところBGの常で拠点攻防は人数がモノを言うため、多いほうが勝つ原則はたいてい変わらない。しかも、一度Capされて攻守が逆転したら、建物の構造差による有利不利もそのまま逆転することになる。そしてどちらもきちんと人数を配しているなら、建物の構造差云々というより、高所を取れる以上守備側がたいてい有利である。Cap後、十分な人数で守っていたのにタワーを奪い返された、などというのは少々恥ずかしい話だ。
ここAVではタワーとGYは別個の拠点扱いとなっており、GYのほうも独自にCapすることができる。そのため最寄りGYをCapしておけばタワー攻撃を有利に進めることができるだろう。とはいうもののGYはそのCap状況が直接戦況を左右しないため優先度が低く(Reinforce変動がなく、後述するHonor収入もない)、CapできるときはあっさりCapできるし、逆にRecapされるときもあっさりだったりする(敵陣最奥のGYは例外)。NPCガードがほぼ無意味になっている現状、GYは単なる復活地点以上の意味を持たないので、HordeならSP/AS、AllyならFW/RHを既に取っているなら、中盤のSH/SF/IBは無視してもあまり影響はない。
上で書いたようにAVでは、ボスKill以外のReinforce変動は決定打にならないことが多い。従って勝敗そのものはいかにボスを殺せる状況を早く作るかにかかっており、突き詰めれば「敵軍タワーを早く破壊する」「タワーを割ったら人を集め、ボスを殺す」ことが基本的な行動指針になる。一方で、自軍タワーやGYをRecap/Defするのは、敵の攻撃を遅らせて自軍の攻撃時間を稼ぐという意味を持つ。もちろん良いことなのだが、守備に人数を割かれて攻撃の手が弱まったりすると長期戦化を招く。
敵タワー破壊・ボスKillをとにかく早く目指し、守備には人数をほとんど割かないのがいわゆるRush/Zerg/Raceと呼ばれるタイプの戦略*1、攻撃を主力としつつRecapにもある程度まとまった人数をあてるのがOffensiveな戦略、自軍のチョークポイント*2を固めて敵オフェンスを迎え撃つのがDefensive/Turtling(籠城戦)という戦略になる。
Pugでは気を利かせてRecapしようとするプレイヤーが少なかったり返り討ちにされたりして、結果的に攻め偏重のZerg模様になってしまうパターンが多い。籠城戦は長期戦必須の上どちらかというと消極策なのでPugで意図して実行されるケースは少ない。単独行動しようとしたり、コミュニケーション不足でディフェンスが人数不足だったりした場合に、まっすぐキャプテンを狙ってきた敵オフェンスに轢き殺されてベース寄りGYに戻され、その後なし崩し的に籠城させられるということはありうる。だがこうなると守備の人数が足りていないのはもちろん、攻撃も手薄になっていてタワー制圧もだらだら時間がかかり、負け試合濃厚。ということで、基本的にはオフェンスチームに加わって攻撃の人数を確保し、適宜タワーをCap&Defしつつ敵本陣を目指すのが(Pugに参加してプレイする場合は)最も外れの少ない方針といえる。ところが、ここで問題になるのがHonor効率である。

Alterac Honor Farm

WotLKでWG、Cataでもその後継TBが導入された。これらのWorldPvPは勝利時のボーナスHonorが大きく、時間もほどほどに短く、大人数であるためにHKによるHonorも馬鹿にならない量になり、結果時間当たりのHonor収入がかなり大きい(特にTBオフェンス)。が、WorldPvPのほうは2時間半に1回なので、連続で何回もやるということができない(BGもQue待ちを考えたら連続とは言い難いが……)。そしてバニラの昔からHonor FarmといえばAVというのもまた変わらぬ事実であり、今でもきちんとボーナスHonorルールを把握してプレイし、かつ勝利すればそこそこ高い効率でHonorを稼げる。
結論から言うと、上で書いた3種の戦略のうち、Offensive戦略が勝利時のボーナスHonorが一番大きくなる。つまり自軍タワーおよび自軍キャプテンを守ることで、より高いHonorがもらえるようになっているのだ。
ここで今まで触れてこなかったキャプテンがようやく話に出てくる。HordeはGalvangar(Galv)、AllyはBalinda Stonehearth(Bal)。このキャプテン、たいていの場合しょっぱなに轢き殺されて早々にご退場なさるわけだが、実は生き長らえていると味方にHP20%UPというなかなか強力なBuffを定期的にかけてくれるらしい。しかも、このBuffの初回は敵キャプテンKillに成功したときかかるらしく、従って先にキャプテンを殺されたチームはこのBuffを受けられないということになる。ただ、Buff自体は各回2分しか持続しない。お互いにキャプテンを殺し合ってしまうと、先にKill成功してBuffをもらえた方もすぐ効果時間切れになって追加もない。そんなわけなのでキャプテンというのが現在は非常に存在意義の薄い人たちになっており、今では単なるボーナスHonor生成装置なのである。戦闘終了時、味方キャプテンの生存と敵キャプテンKillに対しそれぞれボーナスHonorが発生する。
タワーの(Re)Cap&Defも戦闘終了時のボーナスHonor計算に利用される。敵のタワーを破壊した数、および味方のタワーを守った数*3に応じてボーナスが得られる。よって4つ壊して4つ守るのが最大になる。
また、今ではめったに利用されなくなった空軍の指揮官(Wing Commander)救出も実はボーナスHonor源となっている。全部で3人いるWing Commanderを救出すれば、救出した人数に応じてボーナス。Wing Commanderにかかずらう人は今ではほとんどいないので*4、勝ち試合にしろ負け試合にしろ一進一退にしろ、戦闘終了までにまだ時間があると踏んだらこっそりエスコートしてみるのも悪くない。逆に敵Wing Commanderが走っているのを見たらとりあえず殺しておけば敵のHonor収入を減らせるのでいやがらせにはなる。が、時間がもったいないと思うなら無視で構わない。敵Wing CommanderのKillはHonor計算に利用されず、またこのあと紹介する空軍召集までこぎつけられるパターンも今時めったにないからだ。
以上の要素に加え、勝利報酬とCtA週の報酬がボーナスHonorの内訳となる。単に勝つためであればRushも上等なのだが、Honor収入を考えるとそれだけでは若干芸がない。最後のボスは40人全員でなくても倒せること、タワー破壊までの4分の待ち時間に少し戻ってRecapに行く等が可能であること、おまけ程度ではあるがHPBuffもあること。これらを考えると、キャプテンをまず守り、そこからオフェンスとRecapに分かれて行動するのが、Rushとそれほど大きくは変わらない試合時間でより多くのHonorが得られ、「おいしい」AVの攻略法といえる。立ち回りに慣れてきたと感じたら、HonorのためにぜひRecap&Def寄りの行動をとってみるといいだろう。

Alteracむかしばなし

聞いた話・調べた話ばかりになってしまい恐縮だが、AVについて書く以上避けては通れないのが昔話。WoWをやっていれば「24時間AV」などの単語を耳にすることもあるだろう。それが現実だった時代の話、およびその時代には利用されていたが、今となってはほこりをかぶっているAVの諸要素の話だ。
そもそも実装当時、AVにはReinforcementなんて制度はなかった。つまりボスKillだけが勝利条件であり、そのためにひたすら押し合いへし合いだったようだ。上で書いたようにほとんどReinforcementも形骸化してしまっている現状を基準にすると、「別に今と変わらなくね?」と感じてしまうが、どっこい、今と昔のAVではボスに辿り着くまでの事情が違った。とにかくNPCが強く、かつ数が今よりはるかに多かった。今ではノーマルになっているNPCのうち多くはエリートで、しかも要所要所にCommander/Lieutenantという中ボスNPCも混じっていた*5。そういったRaidTrash並みのNPCの大軍をかいくぐって敵陣に迫るのは並大抵のことではなく、素のプレイヤーだけでは太刀打ちできない。
そこで利用されていたのが、いわゆるBattle Questsである。AVの自軍本陣で提出できるこれらのクエスト、たいていはAV内の様々なところから得られるトークンを集めるものだが、これをこなすことでBuffを得たり、またチーム全体で一定量トークンを蓄積することにより、自軍NPCをアップグレードしたり、一緒に敵軍と戦ってくれるNPC部隊(歩兵/騎兵)を召集したりすることができた。上で少し触れたWing Commanderは、救出成功後に空軍召集のためのクエストを受けさせてくれる。こちらもチーム全体で一定の進捗に達すると、救出したWing Commanderの担当地区に対し、飛行マウントに乗ったNPC空軍部隊を派遣するよう要請できる。また、各陣営それぞれにShaman(H)/Druid(A)の代表NPCがいて、その人のクエストでこれまた一定進捗に達すると、HordeならLokholar the Ice Lord、AllyならIvus the Forest LordというRaidボスレベルの究極ユニットを召喚することができる。この召喚には10人のプレイヤーが必要で、LockやMageのものと同じようなRitualPortalをクリックする必要があり、召喚に成功するとマップ中央のField of Strifeでしばらく戦ったのち、敵陣に向かって進軍する。
こういったクエストは実は今も変わらず利用可能であり、ごくごくたまにだが長期戦化した場合、物好きなプレイヤーがコツコツ進めていることもある。私もIceLordの召喚と空軍の召集はそれぞれ一度だけ遭遇したことがある。マップの片端でいつの間にか取られたり終始無視されたりしているMineや、道中をうろうろしているRamやWolfなども立派なクエストオブジェクトであり、戦略資源だったのだ。Mine内には少しずつだがクリックでLootできるSupplyオブジェクトが出現し、これを拾って集めることで歩兵部隊召集クエストのトークンになる。動物は、Stable Masterのクエストで借りられるアイテムを使ってTameしたり、あるいは殺して皮を集めることで騎兵部隊召集クエストのトークンになる。そして、敵軍プレイヤー・NPCを殺したあとLootできる謎のアイテムの数々、血やら肉やら、メダルやらスクラップやら、これらもすべてトークンで、究極ユニット召喚や空軍召集、NPCアップグレードのクエストに必要だ。WoWの世界というのはよくできていて、一見ただの背景に見える事物にも、たいてい何がしかのクエストやストーリーとの関連・対応がある。AVはその設計思想を変わらず貫いたBGであり、実に隙なく作られているのだ。
また、ほかにも戦闘にかかわる現在との大きな違いとして、Hordeのスタート地点の変更がある。もともとHordeのスタート地点は今よりずっと北、TPの南東あたりに位置していたのだ。今のAVに慣れた者からするとひどい設定だと感じずにはいられない。実際変更前はHordeのプレイヤーがGalv/IBを固めるのが明らかに早かったらしく、タワー/バンカーの構造差や、もともと非対称な地形も相まって、AVバランス議論は実装当初からずっと存在している話題だった。もう一つ、自軍タワーが破壊されるとWarmaster/Marshalが減るのは昔からだが、それに加え敵軍タワーを破壊すると追加のWarmasterが出現するという仕様だったらしい。従ってボスKillのためには自軍タワーを守ることが今以上に重要だったと思われる。
中立GYであるSFには、昔はWinteraxというTrollの部族が居座っており、CapするためにはそこのリーダーであるKorrak the Bloodragerという中立NPCも倒さねばならなかった。パッチで何度か変更されたが、結果として退場させられたときのバージョンではこのKorrakは普通に強く、相手をするのに人数を割かれるのがもったいないということでSFGYは無視するという風潮が生まれたらしい*6。またさらにさかのぼると、Winterax TrollはField of Strifeに居座っており、かつほかにもSyndicateの人間やGnollなどの中立NPCグループがAV内各地に陣取っていたようだ。
最後に、これも現在ではあまり使われなくなってしまったが一応有用である要素として、テレポートTrinketがある。これはAV内のどこからでも自軍Keepにテレポートできるというもので、Battle Questsではなく普通の個人クエストをAVの入り口で受けて、自陣近くの洞窟から旗を取り返してくるともらえる。自陣営のRepに応じてアップグレードすることができ、最終的にはRank6のEpicとなる。このTrinketのUse効果には装備時の30秒制限がかかるため、AV内にいる限り装備していてよかったバニラ時代と違い、使用したい時に装備することになるであろう現在では、実質Cast時間40秒でCD2minと、大変微妙な使い勝手。一応、Exalted999/1000になればCDなしにはなるが、今となってはこれをちゃんと持ってAVに来ているプレイヤーのほうが少ないと思われるので、きちんと使ったところで戦況を左右できるかといえば疑問である。ただ、Battle Questsをやってみようというときには持っておくと便利なので、とりあえず最初のクエストだけでもやっておいて損はないだろう。

*1:6分で勝利すると電撃戦アチーブAlterac Blitz。

*2:狭くなっている場所。HordeならKeep/Village手前の柵やGalv/IB周り、Allyなら橋やSPGY脇の谷間、IW脇。

*3:Defend状態が必要。破壊されていなくてもCapされているとカウントされない。

*4:たまによくわからずに話しかけてエスコートを開始してしまったプレイヤーにその後放置され、1人で自陣までマラソンしている姿が見られる。レアMobかと勘違いしてしまうシュールさがある。

*5:一部のCommanderはクエストをくれたほか、周辺のNPCガードを指揮しており、倒されるとその区域にはNPCガードがRespawnしなくなったので、タワー制圧のために倒さねばならなかった。

*6:ちなみにこのKorrakというTroll、パッチでAVから追いやられてどこへ行ったのかと思えば、なんとZul'Drakの闘技場クエストでボスとして再登場している。