コラムトエ

兵庫県西宮市にある久我美術研究所から発信する美術に関する「コラムと絵」を載せていきます。

ゴッホの手紙、5


ゴッホは、1888年2月21日から南フランスのアルルで暮し始める。それから間のない頃のテオへの手紙に、ゴーギャンのことに触れた箇所があり、

「ここにゴーガンからの便りがある、15日間も病気で床についていたそうだ。借金がしつっこく付き纏って一文無しだそうだ。君の店でどの絵かが売れたかどうか聞きたいのだが、君に迷惑をかけたくないので直接便りをしなかったらしい。少しでもいいから至急金が欲しいので、自分の作品の値をもっと下げる腹でいる。
この件では、僕としてはラッセルに便りする以外のことはなんにもできない。それを今日果たそうと思っている。
それで仕方がないからテルステークに1点買わせたいんだが、でも、どうしたらいいだろう。彼もとても困っているらしい。彼宛にひとこと書いてみたから君が連絡する時に同封してくれ。もし僕宛の手紙が来たら開封してくれ給え。そうすれば君に内容が早くわかるし説明する手間が省ける、いつでも。
ゴーガンの海の景色を店で引取ってくれないか。もしそれができたら彼も当分助かるだろう。」

という内容だ。
ゴッホは自分の絵がまったく売れないため、弟からの仕送りで生活しているのにもかかわらず、ゴーギャンの絵を売るために何か出来ないだろうかと気をもんでいる。テオは画廊に勤めているので、店がゴーギャンの絵を引取ってくれるように頼んでいる。
ゴッホは、人のために役に立ちたいという気持ちの非常に強い人間だったということが、彼の手紙を読み進めていくにつれ少しずつ伝わってきて、ちょっと息苦しい気分になってくる。

掲載したのは、ゴッホの1888年のデッサン。