プチ錯乱
アンデス山中から奇跡の生還を果たした登山家コンビの実話を、再現ドラマとともに映像化したドキュメント「運命を分けたザイル」(2005年1月公開予定)を観る。
1985年、若き登山家ジョー・シンプソンとサイモン・イエーツは、前人未到のシウラ・グラランデ峰(標高6600メートル)への登頂に挑み成功するが、下山時にシンプソンが右脚を骨折。絶望的な状況下で、イエーツはギリギリまで彼を救おうとする。だが、このままでは2人とも死んでしまうと判断し、シンプソンの体に巻かれていたザイルを切断。ボロボロになりながら、ひとりベースキャンプにたどり着いたイエーツは、登山家のタブーに及んだことで、良心の呵責に苛まれる。
で、映画はクレバスに落下したものの、奇跡的に命をとりとめたシンプソンのサバイバルに話が移る。空腹、渇き、凍傷、脚の激痛、そしてそれらが引き起こす錯乱状態。まさに極限下と呼べる状況で、経験しないに越したことはないような厳しさ。ただ、一箇所、これは経験したことがあるかも…と思ったのは、シンプソンの脳裏でボニー・Mの『BROWN GIRL IN THE RING』が延々鳴り響いていた、というところ。カリプソ風のディスコナンバーで、シンプソンは好きでも何でもない、この曲が頭を駆け巡るのはなぜなんだろうと考えたという。
昔、早起きしなくちゃいけない日の前夜、なかなか寝つけず、何度もウトウトしては目が覚め…を繰り返していたときに、ジョー・ジャクソンの『CHINATOWN』のリフが延々頭のなかで鳴っていたことがある。好きというほどの曲でもないのに、なぜこれが…と思ったが、リフが繰り返される度にイライラしてまた眠れなくなる。この映画を観て“こういうのを錯乱というのか…"と妙に納得。単なる神経の高ぶりを、命の瀬戸際に追い込まれていたシンプソンと比べるのも失礼な話だけど…。
ディスコ・ブームを代表するグループのひとつ、ボニー・Mのレコードは残念ながら持っていないので、代わりに数年前に私が悩まされたジョー・ジャクソンの曲『CHINATOWN』を収録した1982年のアルバム『NIGHT AND DAY』。
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