映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

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2005-06-24 昨日より若く

gakus2005-06-24

 ボブ・ディラン主演のユニークな一編「ボブ・ディランの頭のなか」(原題MASKED AND ANONYMOUS・7月公開)を観る。

 舞台は架空の独裁軍事国家。ディランふんする往年のカリスマ的ロックスターが、チャリティ・コンサートに出演するために釈放される。で、ジャーナリストの禅問答的な質問をかわし、父親らしき独裁者とのかっとうに悩みつつ、プロモーターやバックバンドと準備を進め、やがてステージは幕を開けるが、同時に政変が起こり…というストーリー。

 ぶっちゃけた話、物語はどうでもよく、面白いのは劇中のキャラ間のやりとり。教訓めいたものもあれば、議論もある。“悲劇的な時代なんてない。時代はいつも悲劇だから"“動物はあるがのままだから美しい。人間はすぐに何かに変わりたがる"等々、名言の宝庫というべきか。それらを積み重ねて明確なメッセージを伝えるのではなく、観る人ひとりひとりが咀嚼し、考えるべき作品。60歳を過ぎて、こういう実験的なドラマに意欲的に取り組めるディランの若々しい発想に驚かされる。

 大泉洸のようなヒゲを生やしてトボケた味を出しているディランの他、ジェフ・ブリッジスジョン・グッドマンジェシカ・ラングペネロペ・クルス、ジョバンニ・リビジ、クリス・ペンルーク・ウィルソン、フレッド・ウォード、バル・キルマーなどなど豪華キャストが結集。各シーンに必ず知ってる顔がいる状態なので、映画ファンにも楽しめると思う。

 音楽はもちろんディランの曲がズラリ。ディランとバンドの演奏はタイトでかっこいい。とりわけ印象に残ったのは、ギターのリフがシャープな『DOWN IN THE FLOOD』。劇中の人物による歌や、カバーもすべてディランのナンバーで、黒人の女の子がアカペラで歌う『時代は変わる』は、オフビートのユーモアに満ちた映画の空気を一瞬凍りつかせるほど研ぎ澄まされていて、これまた印象深い。

 映画の冒頭で『MY BACK PAGES』の真心ブラサース、ラモーンズによるカバーが立て続けに流れるので、ジャケはオリジナル収録の『THE OTHER SIDE OF BOB DYLAN』にしようと思ったが見当たらず、代わりにBYRDSの名盤『YOUNGER THAN YESTERDAY』を。正直にカミングアウトするとフォーク時代のディランは苦手で、それほど熱心に聴いてるわけではない。バーズによるカバーでディランの曲を知った…というパターンが、恥ずかしながら多い。