suck in the 80’sその3

gakus2005-10-05

 ロンドンで初上演され、ブロードウェイ進出を果たすほどの人気を博したミュージカル『TABOO』。この舞台劇の模様を収めた同名映画「TABOO」が、この冬、日本で劇場公開される。

 『TABOO』は元カルチャー・クラブボーイ・ジョージがプロデュースを務め、自身の半生を物語の中に投影してみせる。物語は、ゲイのコミュニティに飛び込んだ写真家志望の青年の視点をもとに展開。その中心的人物であるボーイ・ジョージカルチャー・クラブの一員として成功を収めるが、それによって周囲の人間関係がきしみ、彼がドラッグにおぼれたことで、さらに亀裂は深まる。友人の裏切り、愛や友情の破綻、そしてエイズによる仲間の死。悲劇的なエピソードは多いが、ユーモアと陽気な音楽に彩られ、物語はキッチュな輝きを放つ。カメラは要所要所で役者たちの表情をきっちりととらえているので、舞台そのものを観るよりも、感情表現という点で伝わるものは大きい。

 スティーブ・ストレンジやマリリンといったボーイ・ジョージ周辺の人間関係が描かれているのは、ニュー・ロマンティック全盛期を知る者には興味深いところ。ジョージ役になかなかの美青年を起用しているのは、本人のこだわりか。ちなみにジョージ自身も、デザイナーの役で、凄まじいメイクと奇抜な装いで出演している。

カルチャー・クラブボーイ・ジョージ以外のメンバーは、この舞台劇には登場しない。語られるセリフによれば、ボーイ・ジョージは後からフロントマンとして参加を要請されたらしく、他のメンバーははみ出し者たちが集うこのコミュニティの住人ではなかったようだ。冒頭の方で歌われる歌に“目立つことこそ何より大事”という歌詞があったが、誤解を恐れずにいえばジョージにとってバンドへの参加は目立つための手段であったともとれる。

動機が不純ととる向きもあろうが、ポップ・ミュージックの歴史は実際、そういう野心で築かれているようなものだ。そこから聴衆を魅了する音楽が生まれたのはまぎれもない事実。動機がどうであれ、ボーイ・ジョージのボーカルにはソウルに近いものがあり、それがモータウンを消化したバンドの音にピタリとはまった。これぞ幸運な出会い。『CHURCH OF THE POISON MIND』を聴くと、80年代のモータウン・ミュージックだよなあと思わずにいられない。スターになるためなら何だってやったスプリームス時代のダイアナ・ロスが、H=D=Hと出会ったことで奇跡的な化学反応を起こしたことを思い出させる。

ジャケは、その『CHURCH OF THE POSON MIND』、1983年リリースのシングル盤。この曲や『DO YOU REALLY WANT TO HURT ME』『KARMA CHAMELEON』などのカルチャー・クラブのヒット曲を、ミュージカル・ナンバーとして劇中でフィーチャー。他に、VISAGE『FADE TO GREY』やHUMAN LEAGUEの『DON’T YOU WANT ME』が替え歌として歌われていたりする。

TABOO<ボーイ・ジョージ・ミュージカル> デラックス・エディション [DVD]

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