救い難い
カート・コバーンの死の直前の数日に発想を得て、「エレファント」のガス・ヴァン・サント監督が生み出した架空の物語「ラスト・デイズ」を観る。
架空の物語とはいえ、ボーダーのセーターやサングラス、髪型など、主人公のロック・ミュージシャンはカートそのまんま。ブツブツと独り言を言いながら歩き回り、うつろな目をしてしゃがみこみ、スリップをまとってうなだれる。その姿は、もう別世界に往っちゃってるような雰囲気で、生ける屍と言っても過言ではない。
彼の家には取り巻きにも似た仲間が何人か住んでいるが、この連中でさえ、もはやそっとしてあげることしかできない。観客がこの映画で唯一理解できるのは“誰も彼を救えなかった”ということだ。
ニルヴァーナのファンであれば、カートの姿が自然と重なるだろうから、痛々しさを感じながら観ることができると思う。しかし、この映画では主人公は先述したとおり、登場した瞬間から“死んでいる”人だから感情移入などできるはずもない。そういう点ではイチゲンさんには厳しい映画かもしれない。
主人公の仲間がレコード・プレイヤーでヴェルヴェット・アンダーグランドの『VENUS IN FURS』を聴くシーンがあり、劇中ではそれが大音量で響くが、ここで聴くとさすがに重い。葬送曲のようだ。
ヴェルヴェッツのバナナは一度乗っけたので、今日のジャケは最近出た『SLIVER: THE BEST OF NIRVANA +3』。“ベスト"と名打っている割には去年出たレア曲BOXからの抜粋であるうえに、+3曲がクセモノで、いずれも未発表バージョン。こういう墓荒らし商売は、いいかげん止めてほしい。カートがどう思うかねえ…。
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