映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

*過去に取り上げた作品についてはページ左下の一覧表を参照

メールは

こちら

はてなアンテナに追加→

2006-02-08 ブサイクは武器なり

gakus2006-02-08

 韓国映画「風のファイター」(4月公開)とアメリカ映画「GET RICH OR DIE TRYIN' 」(夏公開予定)には共通点がある。お国の人気ラッパーが主演していること。そして実話をベースにしていること。前者の主演ヤン・ドングンは『空手バカ一代』でおなじみの大山倍達を演じており、後者の50 CENTは自身の半生を物語に投影している。

 始めに断っておきますが、これから書くことはこの人たちの音楽のことではありません。あくまでスクリーンに映し出された彼らに対する実感です。

 何が言いたいかというと、彼らが映画に登場した途端、自分のことはとりあえず放って、こう思ってしまたのである。“なんでこんなブサイクな人が主演に…?”

 ブサイクというと言い過ぎだか、正確には華がない。主演クラスのスターともなると、オーラを発しているのがフツーだが、ゴミを出しに外に出て近所でバッタリ出くわしても違和感なく“どうも"と挨拶ができそうな気がする。共演者と並ぶと脇役の俳優の方がイイ男だったりして、気の毒になる。ラブシーンともなると、ヒロインがキレイ過ぎて釣り合いの悪さは一目瞭然。

 ヒップホップ・アーティストが主演した映画という流れで比べれば、「8 Mile」のエミネムには確かに華があったと思う。あの眼力には圧倒された。「GET RICH〜」はおそらくこれと比較されて語られると思うが、スクリーン映えという点では50 CENTは分が悪い。

 しかし映画が進行するうちに、それが気にならなくなるどころか、だんだん“この人が主演じゃなきゃダメだわ…”という気がしてくる。「風のファイター」の主人公は『空手バカ一代』に触れた事のある人ならご存知のとおり、戦中・戦後を恥辱にまみれて過ごした大山倍達が山にこもり、孤独で厳しい試練をみずからにあたえ、極真空手の創始者となる話。“小便漏らし"よばわりされ地べたをはいずる底辺生活、髪の毛は伸び放題、胴着はボロボロの乞食同然の姿となる修行時代、そこに並々ならぬ意志力を加えられたのは、ヤン・ドンクンの熱演のおかげ。色男がやったら絶対嘘っぱちだ。

 「GET RICH OR DIE TRYIN' 」も同様で、母親を殺されてから幼くして自立を強いられ、ドラッグの売人となって、周囲を決して信じていけないことを恐ろしく早い段階で学ばざるをえなくなる。そりゃ目つきも悪くなる。50CENT伝説のひとつとして有名な狙撃事件も描かれるが、スラムには命の危険もゴロゴロ転がってるから笑ってばかりはいられない。感情を隠し、スキも見せず、かといって目に見えてワルでない、そんなキャラの説得力は、本人が“自分"を演じている点を差し引いても、リアリティのある好演の賜物といえるだろう。

 “ストリートで鍛えられたことから醸し出される独特の個性”と結論づけるのは安易過ぎるののでやめておきますが、こういう個性が伸びてくるのは映画の幅を広げることでもあり、一映画ファンとしては喜ばしい。あのアイス・キューブだって「ボーイズ’ン・ザ・フッド」で見たときは“悪ぃ顔してるなー”と思ったが、着実にキャリアを積み重ねて今や主役を張れるスター。「friday」も「ゴースト・オブ・マーズ」もアイス・キューブなしではあんなに面白く、熱くならなかったに違いない。そんなワケで、唯一無二の凄みを持ったお二人には期待しております。

 ジャケは「GET RICH OR DIE TRYIN' 」の主人公がずっと部屋に貼っているポスターでもあるリック・ジェームス『GLOW』のシングル盤。貼っている理由は、母を殺した犯人がリック・ジェイームスに似ており、いつか復讐を遂げるため…という凄まじさ。あと、ヤン・ドングンの出演作では「ワイルド・カード」という刑事ドラマが日本でDVDリリースされていますが、これも面白い!

風のファイター 完全版 [DVD]

風のファイター 完全版 [DVD]