映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

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2007-07-27 人生を楽しめない国

gakus2007-07-27

 『華氏911』以来となるマイケル・ムーアの新作『シッコ』(8月公開)はアメリカの保険制度に切り込んだドキュメンタリー。日本にいても、健康保険料や医療費って高いなあと思っていたが、これを見ると“アメリカよりマシ”と思えてくる。

 米国では国民健康保険制度がなくて、すべて民間の保険会社が医療費を負担することになっているのだが、これがなかなかクセモノで、簡単には保険が下りない。そのせいで悲劇はひっきりなしに起こる。保険会社から骨髄手術の医療費が下りるのを待っているうちに死んでしまった人、病院をたらいまわしにされたあげく命を絶たれる少女、医療費が払えず路上に放り出される入院患者などなど。利益率アップを目指す大病院では、患者を治療しないほどボーナスが出ることもあるというから、ゾッとさせられる。人の命を救うはずの医者が、人を殺すことで多額の給料をもらっているのだから。そして、あろうことか911の際に命がけで働いた消防士にも、救出作業のために負った病気に保険料が支払われていないという。

 で、ムーアは“他の国もこんなものなのか?”という疑問を抱いてカナダやイギリス、フランス、挙句の果てには米の仮想敵国キューバにまで足を運ぶ。しかし、どの国も健康保険化入者の待遇はアメリカに比べるとはるかに極楽で、医療費はタダは当たり前、イギリスではどれだけ薬を出されても支払いは一定額で、フランスでは治療後の有給休暇を無限に取れる制度もあるんだとか。フランス在住の米国人は“こんなに恵まれていて、故郷に残っている家族や友人たちに申し訳なく思う時もある”としんみり語る。

 で、ムーアがパリの街を歩くシーン、“フランス人が人生を楽しんでる一方で、アメリカでは医療費を払えない患者が無理矢理タクシーに乗せられ、貧民街に送り込まれる”というナレーションがかぶるが、ここで流れるのがジェーン・バーキンセルジュ・ゲンズブールのおなじみのデュエット「ジュテーム」。性愛色全開のこのナンバーだけで、フランス人の人生って楽しそうだと思えてくる。病気や怪我は、いつ自分に降りかかるかわからない。安心してセックスするためにも、誰でも受けられる医療制度の確立は必須なのです。

 ジャケは、この曲を収めたジェーン・バーキンセルジュ・ゲンズブールの同名アルバム、アメリカ盤。1969年リリース。

hannahanna 2007/07/31 08:07 ちょっと「シッコ」観てみたい気持ちになりました。あまりにもつらい現実をつきつけられると目を背けたくなるけれど、外国のことだからまだ人ごとで映画として楽しめる?
 フランス人にはなれないが、フランス人の暮らしぶりや生き方は本当にうらやましいね。
お金が無くても、無い中で楽しく生きる・・・

gakusgakus 2007/08/01 01:47 いやいや、とんでもない。現実の悲劇には外国のことでも胸が痛むし、怒りも沸いてきますよ。
映画自体は飽きずに見れる良質の作品なので、ぜひ。

hannahanna 2007/08/01 23:49 ではぜひ!25日からだったかな。日本でもこういう映画出来ればいいのに・・・。
伊丹監督が生きてたら介護保険かなんかに鋭く切り込んだりしたのかな???

gakusgakus 2007/08/03 01:50 どうでしょうね。マイケル・ムーアのような知名度と行動力があって、初めて出来ることかもしれません。