流しのニック・ケイヴ

gakus2007-11-20

 ブラッド・ピットが自身のプロダクションで製作し、主演も務めた『ジェシー・ジェームズの暗殺』(1月公開)は、19世紀の米国西部の英雄を背後から撃ち殺し、卑怯者のレッテルを貼られて歴史に悪名を残した男ロバート・フォードにスポットを当てたウエスタン。ジェシーに憧れて彼の強盗団に入り、忠実に仕えようとしていたフォードが、なぜ凶行に及んだのか。映画は150分以上を費やして、その心理的な動きに迫る。

 ヒロイックなイメージとは裏腹に気ムラで、危うさもあるジェシー・ジェームズを演じたピットは本作でベネチア映画祭で最優秀男優賞を受賞。しかし実質的な主演は、やはりフォードを演じたケイシー・アフレックの方。憧れのヒーローになりたくてもなれないもどかしさや、命の危機にビビる小物ぶりなどが良く表現されていて、アウトローにはなれそうもない小市民ぶりが妙に胸に迫る。簡単に言ってしまえば、19世紀のダメ男映画。

 ジェシーを暗殺して悪名を馳せた後にフォードが入った酒場で、流しのギター弾きがジェシーを哀れむ歌を歌っているのだが、これがなんとNICK CAVE!この映画の音楽を手がけていることは事前情報として知ってはいたが、まさかこんなところでお会いできるとは。西部男らしく付けヒゲ姿で、“あの卑怯者がジェシーを撃っちまった〜”と、独特のよく通る声で吟遊詩人よろしく歌っている。監督のアンドリュー・ドミニク出世作をオートラリアで撮った人だが、オスートラリア出身のケイヴとなんらかのつながりがあったのか? プロデューサーに名を連ねるリドリー・スコットとのイギリスでの接触が? それともブラピの趣味か? 何とも気になるところであります。

 ジャケはNICK CAVEの最新プロジェクト、GRINDERMANが今年リリースしたアルバム。ちなみに本作の音楽は、このプロジェクトで組んでいるウォーレン・エリスとの共同作業。

 そういえばニック・ケイヴはこの前に、脚本を手がけたオーストラリア映画『プロポジション』があり、最近日本でもDVDになったはず。探さねば。