映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

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2008-01-06 振り返ってみた

gakus2008-01-06

 2008年最初に観た映画…というか、DVDなんだけど…は、ボブ・ディランのドキュメンタリー『ドント・ルック・バック』。昨年、購入して封を開けないままになっていたが、年末にディランの半生をモチーフにした『アイム・ノット・ゼア』(これについては後日触れますが、面白い!)に刺激され、ぜひ正月休みのうちに見直そうと思っていた。

 この映画は1965年にディランが行なったイギリス・ツアーの模様を追った作品。ファンに追いかけられ、記者の質問責めにされ、旅先で作詞・作曲をするなどのディランのオフステージの素顔を追いかけている。十数年前に初めて見たときは、ディランのクールなたたずまいを単純がかっこよいと思ったが、改めて見直すとこの“クール”が、成功に対するとまどいや慎重な姿勢であったことが何となくわかってきた。ストーンズに比べると、その姿勢はずっとストイックで、ロックスター的なバカ騒ぎとは無縁。歌詞に込めた思いをそのまま引き受けるような潔癖さというか、生真面目さというか。クールというより、不器用さも含めた“熱”が感じられるようになった。

 で、このDVDには監督D・A・ペネベイカーと、当時のツアー・マネージャーの音声解説が含まれているんだけど、こちらもなかなか興味深い内容。ホテルの部屋でタイプライターを打つディランの、脇に座っている金髪女性がマリアンヌ・フェイスフルだとか、ディランの車に同乗しているのがジョン・メイオールであるとか、気づかなかった多くのことに目からウロコ。ディランにやりこめられる学生記者が後にクリサリス・レコードの社長になったというビックリな逸話や、やはりディランに議論をふっかけられて、なんだかかわいそうになってくるタイム誌の記者が、そのときの取材を後日、誠実に記事にしたという、ちょっとイイ裏話も聞ける。アニマルズを抜けたばかりでヒマだったアラン・プライスがステージで共演するわけでもなく、ただツアーに同行しているのも、なんだか面白い。

『アイム・ノット・ゼア』でケイト・ブランシェット演じる“ディランの分身”は、モロにこのころのディラン。“女優がディランを演じる”ということで話題となっているケイトだが、全米の映画賞でも助演女優部門で健闘しているようでアカデミー賞にも引っかかってくる可能性は高い。本作も、2月に公開される『エリザベス/ゴールデン・エイジ』も、この人がスクリーンに作り出す強い磁場だけで見せきってしまうのだから、改めて凄い女優であると思う。

 ジャケは、歌詞の単語を書いた紙をポイポイと捨てるディランの姿があまりに有名な、冒頭のシーンで流れる“SUBTERRANEAN HOMESICK BLUES”収録、BOB DYLAN、1965年のアルバム『BRINGING IT ALL BACK HOME』。劇中、女の子のファンに“この曲はあなたらしくないから好きじゃない”と言われてしまう、バンド・サウンドのナンバー。そんな意見も意に介せず、この時の英国ツアーを最後にディランはアコースティック・ライブを封印する。

アイム・ノット・ゼア [DVD]

アイム・ノット・ゼア [DVD]