映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

*過去に取り上げた作品についてはページ左下の一覧表を参照

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2008-03-03 イッツ・フリーキー!

gakus2008-03-03

 1960年代ポップ・カルチャーのアイコンとなった、アンディ・ウォーホルのミューズ、故イーディ・セジウィックの短い生涯を描いた『ファクトリー・ガール』(4月公開)の話。

 カリフォルニアの名家の娘で絵を志していたイーディ(シェナ・ミラー)はニューヨークのパーティでアンディ・ウォーホルガイ・ピアース)と出会う。その美しさに魅了されたウォーホルは彼女と行動を共にするようになり、イーディはこれによってメディアの注目を集めることになる。“普通じゃないこと”が奨励されたウォーホルの工房ファクトリーで、彼の映画作りに協力する一方、ドラッグに溺れるイーディ。しかし、ひとりの人気ミュージシャン(ヘイデン・クリステンセン)と出会い、恋に落ちことで、彼女のセレブリティ・ライフは終焉へと向かう…。よく知られているとおり、このミュージシャンはボブ・ディランだが本人からクレームがついたため、役名はボブではない。ここでも“アイム・ノット・ゼア”かい!

 しかし服装といい、話し方といい、誰がどう見てもディランにしか見えないよなあ…と思い、先日ヘイデンに取材する機会に恵まれたのでちょっと聞いてみたら、ディランのエージェントからクレームがついたのは撮影後で、その後自分の出演シーンをすてべ撮り直したとのこと。で、撮り直す前のセリフまわしは、もっとディランに似せていたらしい。しかし、その後ディランの友人であるショーン・ペンからヘイデンが聞いたところでは、この映画を見たディランは“あのミュージシャン役の俳優は良かったな”と言っていたという。

 映画自体はイーディを悲劇のヒロインに祭り上げすぎている感じで、ルー・リードが映画を非難したのも頷けなくはない。現にヴェルヴェット・アンダーグランドの演奏シーンでは“VENUS IN FURS"もどきの違う曲が聞こえてくる。

 が、それとは全然違うところで興奮させられるのは、60'sフリーク・ビートの大々的フィーチャー。ウォーホルがイーディど出会うシーンではMcCoysの“FEVER”が鳴っていて、合わせて踊っているイーディもクールに見える。彼女が“人生最良のとき”と表現したファクトリーに出入りしはじめたころの映像にはGUESS WHO“ SHAKIN' ALL OVER”が。さらにアンディとのパリ旅行ではJACQUES DUTRONC“LE RESPONSIBLE"がグルーヴィーに鳴って、イーディの引っ越しのシーンでは曲名だけで納得のTHE BIRDS“LEAVING HERE”が流れてきて、ヴォーグ誌の撮影時にはSTRANGELOVES“I WANT CANDY"がガツンと響く。またファクトリーでラリッてるとCOUNT FIVE“PSYCHOTIC REACTION”やら、STRANGELOVES“NIGHT TIME"やらが流れ、THE WHOの前身HIGH NUMBERSの“I'M THE FACE”やPRETTY THINGS“DON'T BRING ME DOWN"などのUKガレージ勢も聞こえてくる。有名なサイケ&ガレージ・コンビ『NUGGETS』の収録曲をそのままばらまきした、といった感じ。

 面白いことに、これらのフリーク・ビートは、ディランと恋仲となってからはどんどん減ってゆき、後半はかからなくなる。代わりにTIM HARDINのアコースティックなナンバー“RED BALLON”がディランと朝を迎えたシーンで聞こえてきて、さらにエンドクレジットでもフィーチャーされる。ファクトリーでのフリーキーな日々からの浄化が、なにげに音楽にも表われている。

 ジャケはいなかっぺガレージの名盤、COUNT FIVEの『PSYCHOTIC REACTION』、1966年リリース。