映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

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2009-07-13 ラブソングではありません

gakus2009-07-13

 このところ80年代ネタが多いが、今日もまた。今年のアカデミー賞で外国語映画賞にノミネートされたイスラエル製アニメーション『戦場でワルツを』(秋公開)の話。

 物語はアリ・フォルマン監督(『セイント・クララ』)の実体験に基づいている。主人公の映画監督には、1982年にパスレスチナ難民キャンプで虐殺事件が起こったときの記憶がない。19歳だった自分は従軍していたはずだが、なぜ何も覚えていないのか? 彼は戦友たちを訪ね歩いて当時のことを調べ、やがて衝撃的な事実に直面する…。ひと言でいって、重い。第二次大戦期にナチスによって多くの同胞を虐殺されたユダヤ人が、この時代では今度は虐殺する側に回っているという皮肉。時と共に変容する”記憶”を描く上で、アニメーションという手法はふさわしいものに思える。とにかく見ごたえのある映画だが、それなり覚悟は必要だろう。

 休暇をもらって戦地から戻って来た主人公が繁華街で耳にするのは、PUBLIC IMAGE LIMITED”THIS IS NOT LOVE SONG"。懐かしい曲のフィーチャーには、観客に当時の事を思い出させるという効果があるが、個人的にはそれにハマった。自分がこのレコードを買った年は高校生だったが、UK音楽にハマッた時期で、レバノン情勢にはまったく関心がなかった。ある意味、平和ボケ。というか、サブカル・ボケ。しかしレバノン情勢について考えるようになったのも音楽のおかけで、翌年リリースされたHUMAN LEAGUE"LEVANON”がきっかけとなった。当時は今のようにネットも発達してなかったので、情報を得られる手段といえば新聞やニュースぐらいで、それもタイムラグがあったように思う。ポップ・ミュージックも同様に、自分にとっては"ニュース"的な役割を果たしていたのだが、それでも虐殺事件から2年後だから、"NEW"とは言えないわなあ…などと考える映画でもありました。

 ジャケはこの曲を収めたパブリック・イメージ・リミテッド、1983年のアルバム"COMMERCIAL ZONE"。実はこれ、P.I.L.の正規のアルバムではなく、この頃脱退したキース・レヴィンがバンドに無断で発表した、いわばブートレグ。”THIS IS NOT A LOVE SONG"は、翌年リリースされたP. I. L.の正規のアルバム『THIS IS WHAT YOU WANT』でも聴けるが、ホーンを重ねてジョン・ライドンのボーカルも録り直したまったくの別バージョン。劇中で流れるシングル・バージョンは非正規版の方で聴ける。ブイブイとうねるベースラインにヒンヤリとしたキーボードがからむ、こっちの方が個人的には好きだ。