映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

*過去に取り上げた作品についてはページ左下の一覧表を参照

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2009-08-12 バカ者どもの祝祭

gakus2009-08-12

 前回のエントリーで取り上げたサミュエル・L・ジャクソンがナレーターとして参加しているクエンティン・タランティーノの新作『イングロリアス・バスターズ』(11月公開)。かねてから話題となっていたタランティーノ初の戦争映画だが、同時にそれは彼の映画愛がこれまで以上に炸裂している快作たった!

 舞台は第二次大戦下、ナチスに占領されたフランス。かの地でもゲシュタポによるユダヤ人狩りは進行していたが、ユダヤ人の側も黙っちゃいない。抜群のリーダーシップを誇る中尉(ブラッド・ピット)に率いられたユダヤ系米国人の部隊、通称”イングロリアス・バスターズ(栄光なき野郎ども)”は、ナチスをとことん虐殺し、ネイティブ・アメリカンの好戦的な部族のごとく、その頭の皮を剥ぎ取る。運よく生き残ることができたドイツ兵は、ピットによって額にカギ十字を彫り込まれ、ナチであったことを生涯に渡って証明することになる。その一方で、ナチに家族を虐殺された若いユダヤ人女性の映画館主は、報復を決意。彼女と”バスターズ”の奔走が並行して描かれ、映画館を舞台にしたクライマックスへと物語は突進する。

 タランティーノの深すぎる映画愛は、これまでの作品の中に見られるオマージュを見ても明らかだが、本作ではさらに一歩踏み込み、物語そのものに映画愛を投影させる。どういう意味なのかは見てのお楽しみだが、個人的にはあまりにも愚直な映画愛に、この上なく嬉しくなってしまった。ある意味、タランティーノの最高傑作だ。

 もちろん、音楽面でもこれまでと同様にタランティーノの映画愛は炸裂している。オープニングでは『アラモ』のサントラを引用し、エンニオ・モリコーネによるスコアも多用する。ミッシェル・ガン・エレファントのコンサートのオープニング曲でもあった『荒野の1ドル銀貨』のテーマ曲も聴けるし(アベフトシ、合掌)、『非情の標的』のスコアは、とてつもなく泣けるシーンでフィーチャーされている。

 大戦時が舞台になるとはいえ、タランティーノのDJセンスはロックンロール以降の音楽シーンにも及ぶ。ビリー・プレストンが手がけたブラックスプロイテーション映画『シンジケート・キラー』用の楽曲”SLAUGHTER"は、ティル・シュヴァイガーふんするゲシュタポ高官を虐殺した狂暴な兵士の紹介シーンでフィーチャーされる。

 極めつけはDAVID BOWIEの"CAT PEOPLE"。このナンバーは、復讐の時を目前に控えたヒロインがメイクをするシーンで延々とフィーチャーされる。”下された裁きは2度と覆せない”と歌われる、この曲に背筋がゾクゾクした。

 ちなみに、この”CAT PEOPLE"は2種のバージョンが存在する。ひとつは映画『キャット・ピープル』用に製作されたジョルジオ・モロダーのプロデュースによる呪術的なバージョンで、もうひとつはボウイのアルバム『レッツ・ダンス』に収録されたナイル・ロジャースのプロデュースによるファンキーなバージョン。本作でフィーチャーされているのは、言うまでもなく前者。タランティーノの映画へのこだわりが、こんなところでも見てとれる。

 ジャケは、このモロダー・バージョンの国内盤シングル。ナスターシャ・キンスキーの表情が怖すぎるぜ!

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