映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

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2010-07-12 ジェダイは実在した

gakus2010-07-12

 アメリカ軍に“超能力”を専門とする特殊部隊が実在していた……というジョン・ロンスンのノンフィクション「実録・アメリカ超能力部隊」をベースにした社会派コメディ『ヤギと男と男と壁と』(8月)。奇想天外だがダークな方向に転がっていく原作をノーテンキに改編し過ぎたせいか、アメリカではイマイチ評価されなかったが、面白いよ、コレは!

 2003年、地方紙の新聞記者(ユアン・マクレガー)が離婚の痛手を断ち切ろうと、歴史上多くの失恋男子がそうしたように戦場へ赴く。すなわち、イラク戦争の突撃取材。そこで出会ったのが、かつて米軍に存在していた超能力部隊“新地球軍”で2番目に有能と言われた、自称“ジェダイ戦士”(ジョージ・クルーニー)。密命を帯びているという彼に同行しながら、マクレガーは驚くべき話を聞かされる。ナンバーワンの霊能力者だった軍人(ジェフ・ブリッジス)がニューエイジに入れ込み誕生した新地球軍の創設秘話、ピースに戦うための奇想天外な訓練、ライバル(ケビン・スペイシー)との軋轢、そして見つめるだけでヤギを殺してしまったこと……。

ユアン・マクレガーに向かって“俺はジェダイだ”と言い切ってしまうクルーニー。雲を動かす術やら、キラキラ眼力やらの効力があるとは思えない彼の必殺技に半ば呆れつつ魅了されるマクレガー、花とダンスでピースに新兵を鍛える新地球軍のリーダー、ブリッジス。『アバター』のスカーフェイスの悪役とは対照的な、平和思想にハマる軍のお偉いさんにふんしたスティーヴン・ラング。そして長髪とヒゲというおおよそ軍人らしくない新地球軍。皆が皆アホに見える点もいいけれど、これらが信じられないような実話に基づいている点を踏まえると、『M★A★S★H』にも通じる風刺が強く感じ取れるだろう。

 オープニングクレジットの音楽も皮肉っぽくて、イラク戦争のニュース・フッテージにSUPERGRASS“ALRIGHT”のメロディが重なるだけで、何が“オールライト”なんだか……という気にさせられる。戦場に飛ぼうとするマクレガーの心情を代弁する一方で、陽気なメロディに深刻な映像に被さる妙味。さらに、新地球軍に入隊したクルーニーの最初の訓練がダンスなのだが、ここで流れるのがおおよそ軍隊らしくないBILLY IDOL“DANCING WITH MYSELF”。歌詞の面ではやはりクルーニーの置かれた立場にマッチしているのだろうが、軍の硬質の空気に、このポップ・ロック風のナンバーはズレを醸し出す。このセンス、最高だ! ちなみに、クルーニーは劇中“70年代のクラシック・ロックを聴くと超能力の調子がいい”と言うが、その際の愛聴曲はBOSTON“MORE THAN A FEELING”。これまた歌詞がドラマにシンクロしているナンバーガで、劇中だけでなくエンドクレジットでもフィーチャーされる。

 ジャケはSUPERGRASS、1955年リリース、シングル盤の『ALRIGHT』。スーパーグラスは今年、惜しくも解散を発表してしまいました…。

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