映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

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2011-11-06 最新イギリス映画2題

gakus2011-11-06

 先週末に閉幕した東京国際映画祭で見た2本のイギリス映画について、忘れないうちに触れておこうと思う。

 ひとつめの『サブマリン』は、ARCTIC MONKEYSのALEX TURNERが音楽を提供したことで、その筋のファンの間で話題となっていた青春映画。

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 主人公のロイドはミドルティーンの男の子で、そんな彼の恋の行方が家庭内の離婚騒動とともに、ユーモラスに描かれる。とくにドラマチックな波乱があるわけではなく、淡々とエピソードが連ねられているのだが、ひとつひとつがリアルで、胸にジンワリとシミこんでくる点がイイ。

 アレックス・ターナーの音楽はサントラ盤(画像)収録曲がすべて使われていて、どれも印象に残るけれど、やっぱりアークティック・モンキーズでもプレイしていた"PILEDRIVER WALTZ"がシミる。“水の上を歩くなら、履き心地のいい靴が必要だ”という詞が思春期の出口のない無いものねだりを象徴するみたいで、切なくなってくる。

 本作では時代背景が特定されておらず、ファッションやヘアスタイルから1960年代ころかなと思ったりもするのだが、タイプライターに加えて家庭用VHSが劇中で使用されるのだから80年代であるとみるのが妥当だろう。

 ほぉー、と思ったのは劇中の主人公のナレーションで、”鉄橋の下僕たちはキスをした。僕の唇は腫れ上がってしまった”という箇所。これはTHE SMITHS、84年リリースのデビュー・アルバムに収録されている“STILL ILL”の歌詞のまんま。この歌詞自体が、60年代英国のセレブの自伝本からの引用であることをモリッシーも認めており、そっちの原典からの引用とも考えられる。ヒロインからして『蜜の味』『ナック』の主演女優リタ・トゥシンガムを小太りにしたような感じだから、多分に60年代的ではあるけれど、ザ・スミスのこのアルバムにも『蜜の味』からの引用があり、当時サンディ・ショウがスミスをバックに歌った“HAND IN GLOVE"のシングル盤ジャケットにもリタ・トゥシンガムが使われていたのだから、まったく無縁とは言えないと思う。

 もう一本の『ティラノサウルス』は、ブライアン・ジョーンズ殺害犯を演じたり、最近では『ブリッツ』でゲイの刑事にふんし、上記『サブマリン』にも出演していた演技派俳優パディ・コンシダインの初監督作。

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 これが初演出作とは思えない丹念な作り。妻に先立たれてうらぶれた日々を過ごす中年男(ピーター・ミュラン)と、夫の暴力に悩む人妻の交流をとおして労働者階級の生活のなかにはびこる暴力を見据えている。ゲイリー・オールドマンの初監督作『ニル・バイ・マウス』にも似たリアリティとシリアスさ、温かさが魅力。すでにサンダンス映画祭で監督賞を受賞しており、そのクオリティの高さから年末〜年明けの賞レースに絡んでくる可能性も大。

 こちらも『サブマリン』と同様に、音楽はアコースティック。劇中で一曲、葬儀のシーンで流れる印象的なナンバーがあるのだが、これが誰の曲かはわからなかった。

 どちらも今のところ、日本での劇場公開は未定。ぜひぜひ正式に公開して欲しいものです。