映画×ロケンロー備忘録




映画とロックを愛するフリーライターの雑記帖。映画におけるロックの使われ方についての雑感を徒然と書いております

*過去に取り上げた作品についてはページ左下の一覧表を参照

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2011-11-18 ”自由”までの道程

gakus2011-11-18

 ビートルズ関連のアイテムがショップを賑わす、この時期、前回のエントリーで触れた『ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールド』の他に、ポール・マッカートニーが企画した9.11同時多発テロ直後のチャリティ・コンサート”コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ”の、バックステージのポールの姿を追うドキュメンタリー『ポール・マッカートニー/THE LOVE WE MAKE』の映像ソフトも年末にリリースされる。そしてこちらもまた、それに先駆けて劇場公開が決定。

 このコンサートは、9.11への対処により命を落とした消防士や警官の遺族に向けたベネフィット・コンサート。ボールは父親が消防士の仕事をしていたこともあって、彼らに共感を覚え、ヒーローを讃える趣旨で、このライブを発案した。「僕には消防士のように人を救うことはできない。でも音楽をプレイすることはできる」

 コンサートの告知に加え、新作『DRIVING RAIN』のリリース前ということもあって、プロモーション用のインタビューに飛び回るポールの姿から始まる。車から降りて街を歩くと、たちまち人に囲まれ、サイン攻めに遭うものの、愛想よくそれに応えるポール。ホームレス風の男に”俺をあなたりのコンサートに出してくれ”と真顔で言われたりもするが、そこは百戦錬磨のポール、軽くいなしてしまう。プロモーション活動だけでなく、コンサートに向けて若いバンド・メンバー達とリハーサルを重ねる姿も。ポール抜きで“I'M DOWN”のコーラスの練習をしているメンバーの姿が、なんだか微笑ましい。

 で、コンサート当日。楽屋ではピート・タウンゼントビリー・ジョエルら出演者が次々と訪れ、ポールに声をかけてゆく。今や父親より有名になった娘のステラ・マッカートニーもやってくる。個人的にグッと来たのは、ジェイムス・テイラーとポールとのツーショットで、アップルでのデビュー盤について昔話をするところ。ちなみに、バックステージの模様は実際のコンサートの模様と交互に映し出され、ステージの模様以外のドキュメント映像は、当日以前の映像も含めてすべてモノクロ。

 ”最後は皆で僕の新曲をやりたい、この日のため急きょ作った曲だ”と、ポールは出演者たちに、後に『DRIVING RAIN』の最後に収録される"FREEDOM"について熱心に説明する。この時点では、まだ誰も耳にしたことのないナンバーで、トリにもってくるのはリスキーとも思えるが、ポールは”皆で一緒に歌える曲だ”と力説。ピートは、こう答えた「大観衆と一緒に曲作りをするようなもんだな」。誰に語ったのか失念したが(確かクラプトン)、ミック・ジャガーにこの曲をプレイすることを納得させるため、ポールはひとりで”FREEDOM”を演奏して見せたらしい。オーディションを受けるような気分だったと、苦笑しながら語る。ある意味、この映画は”FREEDOM”を初めて人前で演奏するための、ポールの道のりをたどったドキュメンタリーと言えるかもしれない。

 一点、引っかかったのは「僕は平和主義者に常々言ってきた。”ヒトラーのような男が攻めて来たらどうするんだ?”と。戦うべきだ」。これは、のちの米国政府の好戦的な対応を思い返すと、賛否を呼びそうな発言。とはいえ、ビートルズ・ファンの視点とはては、”まだジョンをライバル視してるんですか?”と、ついツッコミたくなる。

 ツッコミついで。”コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ”というタイトルは、ジョージ・ハリスンが1971年に行なったチャリティ・イベント”コンサート・フォー・バングラデシュ”からの借用だとポールは語る。そういえば、このライブのフィナーレもジョージがチャリティ目的で書いた曲("BANGLA-DESH")だった(ただし、この曲のシングル盤はコンサートの一週間ほど前にリリースされていた)。でも、ジョージはこの曲を自分のオリジナル・アルバムに収録するようなことはしなかったぞ。

 ライブ自体じっくり聴かせる作りでないのは、すでにこのコンサートの模様がソフト・リリースされているからか。ともかく演奏を楽しみたい方は、↓こちらをどうぞ。国内盤DVDは廃盤となっているようです。

Concert for New York City [DVD] [Import]

Concert for New York City [DVD] [Import]

ジャケはポールのアンピニエント・ユニット、THE FIREMANが1998年にリリースしたアルバム『RUSHES』。ここに収録された"WATERCOLOUR GUITARS"がエンドクレジットでフィーチャーされる。”火消人”の曲を使うとは、さりげなく粋な演出。

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