PS3が目指すべきだったもの

http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1219/mobile360.htm
とか読んで、なんか触発されたので。あんままとまってないけどまあそのままお送り。もう少し調べた上でまとめた奴をGameDeep vol.13に書く予定です。

Cellアーキテクチャ

本来PS3は、Cellプロセッサひとつ+IOによって成立すべきハードだったのではないかと思う。
参考:http://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20050519/ps3_r.htm
SPEがGPUの代替としても十分機能するということは、GPUの代替として機能させる、あるいはCell単体で動作して別途GPUを搭載しないというプランを考慮に置いていたということではないだろうか。
確かにハードウェアのスペックとしては可能だと思う。しかし、「そのように使うことが可能」と「そのように使う」の間には大きな開きがある。各ソフトが己の都合に合わせてSPEによるレンダリングパイプを構築する、というのはハードウェア面から見ればとても合理的だが、ソフトウェア開発にかける負担はとても大きくなる。「GPUエミュレーターを作れるスペックはあるからそれでヨロシク」と言い直せば、その無茶さが理解していただけるだろうか。
「ハードはコンフィギュラブルだから、ソフトで工夫すればなんでもできる」というのはNINTENDO64が採った方針によく似ているとも指摘しておこう。

with RSX

さて、実際に発売されたPS3には、Cellとは別にグラフィックチップとしてRSXが搭載されている。
これは、開発後期になって後付けで慌てて追加された可能性がある。WikiPediaのプレイステーション3の項の沿革・事件を見れば、Cellの開発開始時期に対してのGPUの開発発表時期の遅さが目に付く。RSXとG70は双子のGPUという指摘からも、後付けでGPUを追加した(スケジュールに無理を効かせるためにG70の設計を流用した)ことが推測できる。

CPU開発の誤算

ところでCellの開発の時期というのは、Intelが旗手となって進めていたCPUの超高クロック化が挫折していった時期と重なることにも着目すべきだろう。
それまで順調に進んでいたIntelのCPU開発戦略、超高クロック化を前提としたNetBurstアーキテクチャ路線は、130nmプロセスから90nmプロセスにさしかかるあたりで微細化による消費電力低減が予想よりはるかに悪化したことで破綻した。
このへんのタイムラインをごく大雑把に整理すると、

Cellのプランが立てられた時点ではIntelの戦略にはまだ破綻が見えていなかった。なので、Cellの開発も微細化による省電力・高速化が継続できるという予測の下で開始されたのであろう。
そのように予測し、またそれが外れてしまったことの傍証としては、Cell試作品公表の2005年2月の直後に、3月末に発表されたTransmeta社からのLongRun2技術提供の発表が挙げられる。

参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/Cell
追加で参照すべき資料:東芝-SONY-IBM半導体製造プロセス開発時期

「夢見ていたPS3」と「実際のPS3

出来上がったCellプロセッサは演算能力こそ高いものの、当初構想のように遍在させるものとしては辛い製品となった。そこらの家電にPS3みたいな冷却機構はとてもじゃないが載せられない。仮に家電への搭載が実現するとしても、早くてCellの省熱化(=省電力化)が進んだ数年後のことになってしまうはずだ(これを早めるためにLongRun2に手を出したのだと思う)。

しかも、ゲーム機としてのPS3は、Cellプロセッサ単体では完結しない。少なくともRSXを追加で必要としてしまう。

仮に当初構想で考えられていたCellベースのあらゆるところに遍在するなにか(仮に「【PS3】」と呼ぼう)があったとすれば、実のところ、PS3はRSXを追加すると決めた時点で「【PS3】+ゲームコンソール拡張」と呼ぶべきものになってしまったのではないだろうか。

ということで、とてもじゃないがPS3は最終形なんかじゃない。前言を翻してPS4が絶対に来るだろう。【PS3】の構想を一回り遅れで正しく実現するのなら、省電力&強化版Cell x 2という構成で。