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2012-02-09

評価経済社会を議論するときに気になるポイント

最近、評価経済社会ノマドなどの議論を見るようになった。流行に敏いtechwaveでも取り上げている。

さて、この評価経済社会の議論が始まると、以下のなような流れで議論が発展することが多い。

  • すでに日本では無理していっぱい働かなくても適当に働くだけで生きていけるだけの余裕はある
  • 現在貨幣経済の価値は下落しつづけており、それに変わって他者からどれだけ評価されているか、また、他者の興味をどれだけ喚起できるか、という部分が重要になってくる
  • そのような社会では、企業の中にいて自由に情報を発信できない人に変わり、自由に情報を発信できるノマドの価値が高くなる

僕はこの意見自体を否定するつもりは全くないのだが、以下の記事でこの議論をする際、いつも問題となる破壊力のある指摘が取り上げられていた。この記事は今話題の佐々木俊尚さんが、phaさんや玉置沙由里さんなどの評価経済社会の住人を集めて討論会をした内容をまとめたものだ。

玉置: phaさんにお聞きしたいんですけど、今はリッチでもいろいろな形が出てきていると私は思っているんです。お金があってリッチだという人もいますがphaさんみたいにソーシャルネットワークコミュニケーション能力が高いという形でリッチな人もいて、でもそのどちらも持っていない人はどうしたらいいんでしょうか?

pha: それは難しい問題ですよね。

米田: ノマドのような議論になると、「それはコミュニケーション能力があって、個人として優秀だからやっていられるんでしょ?」という批判があったりしますね。

佐々木: いや、それは事実なんですよ(笑)。身も蓋もない言い方ですが。僕はこの時代を格差社会だと思っています。かつてはこういう議論になると必ずどうすれば日本人全員が幸せになれるかという話になって、なぜかみんなが政治家のような意見を言いたがって、「いや、このままじゃ日本はダメだよ」みたいな話になるんです。しかし、ここまで分断が進んで温度差が広がって個人個人の住んでいる圏域が細分化されている状況のなかでは、政治家でもない限り個人が日本を背負うことはできなくなっていると思います。

 だから、「自分は」こういうことができるからこういう選択肢を選びましたという話はできるけれど、それができない人だったら別の道を考えればいいじゃないですか、ということです。私はあなたの生き方まで背負う義務も権利もありません、という身も蓋もない話じゃないかと思います。

この部分はよく議論になるポイントで、簡単に言ってしまえば評価経済社会っていうのは、コミュニケーション能力やそれに付随する編集の力などがより評価される社会のことであり、いわばそれはFacebookTwitterなどのリアルタイム性が高く、よりパーソナルなものに情報の流通経路が変化することである。

新たな情報の流通経路が生まれることで、今まであまり付き合うことの出来なかった人とつながれたり、これまで築くことの出来なかったおもしろい人間関係を多くの人と構築することが出来たりする。でも、この構造に気づけない人はいつまでたっても新しい情報の流通経路を意識することが出来ない。

いつも貨幣経済社会と評価経済社会の議論がはじまると、この両方持ってない人はどうするんだ問題がすごく気になってしまい、結局考えがまとまらないのだが、この辺りに答えはないにしても折り合いを付けてくれる議論があったらいいなー、と思う。そもそも評価経済社会は明らかに貨幣経済社会よりも生きていける人が少なそうなのが特に気になる。

2012-02-06

ソーシャルとコンテンツとインターネットを結びつけるアーキテクチャ

買ったけど実は読めてなかったWired Vol.2。すいません、この号も必読レベルでした。

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といってもすでにWired Vol.2の記事の多くはWiredのWeb上で読めます。この中の「読む」が変わるという特集の中で、AmazonKindleが展開しているKindle Singleが紹介されていました。

そもそもebookは買っても物理的に枕元に存在するようなプレッシャーがないので、最後まで本を読み通せないという指摘が上の記事にありました。この問題に関して「Kindle Single」は、この問題を解決するため、より短く、一つのテーマに特化して書かれた比較的短いコンテンツを1ドルから5ドルで販売するという、簡単に言うと長文ブログ記事を1ドルで販売しようという試みが紹介されています。

Amazonによると、Kindleストアの売上ベスト10のうち、Kindle Singleが8タイトルもランクインしているそうで、米国ではKindleがすでに大きな市場になっていることを考えると明らかに成功しているフォーマットです。日本でもAMN新書のような似たような企画が行われていますが、まだKindle Singleのような物量作戦は行われておらず、これからという感じでしょうか。

上記の記事を読みながら、改めてコンテンツというものをソーシャルインターネットに結びつけるアーキテクチャについて考えて見ました。そもそもアーキテクチャというものは何かというと、「ハードウェアOSネットワークアプリケーションソフトなどの基本設計や設計思想」のことですが、ここでは、コンテンツに関するアーキテクチャとして、以下の「アーキテクチャの生態系」において議論されたWebサービス設計思想自体がユーザーの行動を定義付けるという方の考え方で議論してみます。

アーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたかアーキテクチャの生態系――情報環境はいかに設計されてきたか
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脳の報酬系自体が最も影響の大きいアーキテクチャである

過去にも一度、ブログで取り上げましたが、ニコラス・G・カーの「ネット・バカ」という本においてインターネットにおけるコンテンツへの接し方そのものがインターネットのユーザの脳の報酬系に影響を与えているというテーマが論じられています。

ネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていることネット・バカ インターネットがわたしたちの脳にしていること
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脳の報酬系というのは簡単に言うとどのような行動をしたときに快楽物質が出るかという話なのですが、ネットのハイパーリンクというクリックにおいてたくさんの情報が流れてくる構造そのものや、近年TwitterFacebookのリアルタイムに情報が流れ続けるという状態にユーザが長時間置かれることにより、短い期間で絶え間なく多くの種類の情報を摂取し続ける状態の中毒症状に多くのユーザーが陥っている、という指摘がありました。

これって、結構、自分の周りでも多いかもしれませんが家に帰ったらメールチェック、TwitterRSSリーダーFacebookをひたすら1分間おきくらいに開いて交互にチェックしつづけて、過ごしている人いないでしょうか?このような時間の過ごし方をしていくと、脳の報酬系ブラウザを通して提供される大量の情報を処理することに最適化していくのですが、この脳の最適化により長文を書いたり、長い本と向き合ったりする行為がだんだんできなくなっていくことがインターネットというメディアの性質なのだと述べています。

そもそもTwitterから始まったソーシャルストリームの流行を見てもFacebookのように、刹那的に情報をフローで提供しつづけることが現在のWebサービスの主流になりつつあります。これって、要は多くのユーザーの脳がこの処理に対して報酬系最適化しているため、この形態以外だと逆にユーザーの脳において参入障壁ができているという話しでもあるのかもしれません。

僕はこの話が最近になってますます重要なトピックになっているように感じます。そもそも実感として、長い本を自分で読めなくなっていますし、自分の行動を見ても当てはまる部分が多いからです。

自分の行動を振り返って考えてみる

そもそも自分の行動を振り返ってみると、常に以下のコンテンツが積まれている状態です。

  • 大量の雑誌。「GQ」、「クーリエ・ジャポン」、「ゲーテ」、「ブルータス」などをほぼ定期購読しているので、家に常に読むべき雑誌が余っている。
  • RSSリーダーFacebookTwitter、Crowsnetに常に大量の情報が流れ続けてきている。
  • 毎日録画されつづけている大量のアニメコンテンツがある。多すぎるので全部は見れない。
  • 本は常に何冊も積まれている。

これらを全て同時並列的に処理しながら、気になったトピックをブログを書いています。この状態で、一冊読むのに10時間くらいかかる本を読むということ自体がなかなか難しいのですが、それ以上に、最近、本を1時間くらい読むと、ちょっとTwitterをみたり、Facebookをみたり、雑誌を読んだりしてしまいなかなか集中力が続かない状態です。

実感としてコンテンツの消費傾向そのものにこの脳の報酬系の変化が関わってきているというのを感じます。

2chまとめサイトに人があつまる理由でもある

この脳の報酬系の変化により、人気が出てきていると思うのが2chまとめサイトです。過去に、2chまとめサイトに対して以下のような考察をしました。

上のエントリーでは、2chまとめサイトに人気が集中する理由として、FOXニュースを例に出して、普通のニュースよりも極論を扱う方がユーザを集めることができることを述べました。

というのも、世の中にはCNNに代表される客観的な報道は無料かつ溢れており、むしろそのようなニュースは見るに値せず、自分にとって面白おかしい強い意見のニュースこそ見たいという人が多い。この構図は簡単にまとめると、

  • 普通のニュースが簡単に手に入ることが保証されている
  • 一箇所だけ、自分にとって都合の良いニュースを報道してくれるメディアがある
  • 自然とその報道だけを見るようになる。他のニュースはあまり記憶にも残らない。

みたいな流れになり、TwitterFacebook上では個人の興味がそのままネットワークに流れるため話題は自然とFOXニュースに集中し、アクセスも増えることになる。

もう一歩踏み込んで考えると、2chまとめサイトというのは右寄りだったり、「ゲームハード」、「アニメ」ネタなどを筆頭に、多様性があるようにみえて実は多様なニュースに対して、お決まり通りの一定のレスポンスを返すメディアとして機能しているように見えます。

つまり、あるニュースが流れたときに2chまとめサイトで、どのような取り上げ方をされるかというのはおおよそ検討がつきますし、2chまとめサイトの管理人もそのようなお決まりの反応をまとめるようにしているように見えるのです。これはつまり、ある一定の反応をまとめることがユーザーにとって快感であり、結果的にユーザの注目を集めることにつながる、ということです。

以下のエントリーで、現在、2chまとめサイトがコンテンツに対して大きな影響力を持っていることを書きました。

この影響力の大きい2chまとめサイトが脳の報酬系をベースに最適化が行われていることを考えと、ソーシャルとコンテンツとインターネットを結びつけるアーキテクチャはネット・バカで論じられた「インターネットが脳の報酬系に与える影響」なのではないかと考えています。

ソーシャルとコンテンツの関係に関してはまだ考え中

実はイマイチまとめきれてないのが、ソーシャルとコンテンツの関係です。というのもFacebookTwitterなどのリアルタイムの反応が返ってくるシステムが事実上の標準となったことにより、ソーシャルにも間違いなく脳の報酬系に関する影響が出てきています。ただ、では、この変化がどのようにコンテンツ消費に関わってくるかというと、現状は2chまとめサイトにより間接的に受けている影響の方が大きい気がします。何かアニメ専用の視聴アプリのような、より熱狂をリアルタイムにシャアする仕組みなどが出てくると、コンテンツの熱量をのように高めるか、という問題に関してより面白いアプローチが見えてくるのかもしれません。

まとめ

ソーシャルとコンテンツとインターネットを結びつけるアーキテクチャに関して考察しました。ご意見、ご感想などもしあれば、Twitterやっているので、@gamellaに送っていただければ。