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2006-01-23

[]東京地検特捜部の「劇場捜査」ここに極まれり

ライブドアの堀江社長が東京地検特捜部に逮捕されました。テレビ各社は特別番組に切り替え、高速道路から、ヘリコプターから、堀江社長が乗っているとみられる(あくまでみられる)車の移動を生中継していました。興奮気味にリポートする記者、ここぞとばかりにホリエモンバッシングをするコメンテーターなど「お祭り騒ぎ」の状態になっていますが、まだ逮捕されただけで有罪と決まったわけではありません。何度もいいますが、原則は推定無罪です(断罪するのは判決が出てからでも遅くない。むろん、逮捕を招く経営をやっていたとか、株が暴落したとか、経営者としての道義的な責任はあるでしょう)。

耐震偽造問題にタイミングを合わせた陰謀説」や「ホリエモンの裏にいる黒幕が…」など、今回の捜査についてはなどさまざまな見方がありますが、個人的には新聞労連委員長の美浦克教さんの「ライブドア立件にかける特捜検察の意思」とほぼ同じ意見です。『日本の証券市場、証券取引の秩序維持』のために『「新しい判例をつくる」ぐらいの気構えで、強い意志を持って動く』。つまり、言うことを聞かないワンパク小僧が走り回っているのは他の子供に示しがつかないので、お尻ペンペンしてお灸をすえておこう、という親心みたいなものでしょう。

それにしても不思議だったのは今回の捜査と報道の関係です。ご存知の方も多いと思いますが、東京地検特捜部はネタが取りにくい(取材が難しい)とされています。正式な発表なども基本的にはありません(以前は記者会見していたような気もしますが、最近はどうなんでしょう)。しかし、今回はNHKの強制捜査「フライング」報道から始まり、その翌日からは早くも「錬金術」の手法(粉飾決算が行われたとされる決算期の特定、投資組合を使った資金の流れなどかなり細かかった)が明らかになり(パソコンやメールの解析がそんなにすぐにできるのか?)、幹部の聴取状況や逮捕状の執行はほとんどリアルタイムで報道されるなど、意図的なリークがあったとしか思えないものでした。

「悪の巣窟」ヒルズに乗り込む正義の味方のような(「まるでヒルズ族狩りだ」と言っていた友人がいた)強制捜査といい、夜の東京を舞台にした移送劇といい、「劇場捜査」と呼んでもいいほどのインパクトがありました。堀江社長の手法や態度には賛否がありましたが、M&Aや株主主義、時価総額経営などをある種の「新時代」として推奨していたメディアや政治家も多かったはずですが(あざらしサラダさんの「▼こんな人間は信用できない」もご参考に)突然の手のひら返し。M&AもIT業界も一緒くたに非難されています。せっかく根付き始めたベンチャーキャピタルへの偏見、IT関連企業のIPOなども厳しくなるかもしれません(小林雅氏が「ネット業界をいじめるな!」というエントリーを書いています)。そういう意味では、美浦さん指摘の『日本の証券市場、証券取引の秩序維持』は、公判を待たずして達成したと言ってもいいかもしれません。

推定無罪に戻ると、以前に西日本新聞が逮捕された容疑者のコメントを弁護士会の協力で掲載して新聞協会賞を受賞しましたが(「容疑者の言い分―事件と人権」という本にまとめられている)、本当に「特例」だったのでしょう。記者クラブ問題、事件・事故によるメディアスクラムが発生した場合に、マスコミは捜査機関をチェックするためだとか、権力を監視するだとか、人権を守るためなどと説明していますが、毎度の「お祭り騒ぎ」を見ていると、それは建前であることがよく分かります。仮に、自分が特捜部に逮捕されたことを考えるとぞっとします。有罪・無罪の判断が正式に下される前に、そしてそれがどのような結果であったとしても、マスコミによって「有罪」が印象付けられ、人生が「終わって」しまうでしょう。

堀江社長は逮捕直前まで、個人メディアであるブログを書いていました。一方、マスコミは有罪と決め付けたような質問を堀江社長に繰り返していました(テレビでいくつか電話インタビューを見ましたが、本当にひどかった)。マスコミの本来の役割は果たされているのでしょうか? 洪水のような報道の中でこそ、立ち止まらなければいけないときがあります。

関連エントリー・東京地検特捜部を知るための本(特捜部を知るためにぜひ読んでもらいたい3冊です)