gayuu_fujinaの愚草記 (別館→本館)

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ロケットとミサイルに違いは無い? 北朝鮮による衛星打ち上げと各国の報道比較(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース

7日、北朝鮮は宇宙ロケットを用いて人工衛星を打ち上げて軌道に乗せることに成功しました。これは長距離弾道ミサイル技術を用いているため、北朝鮮に核実験とミサイル発射を禁じた国連安保理決議違反となり、各国が非難を行っています。
日本では「北朝鮮人工衛星打ち上げ用ロケットと称する事実上の長距離弾道ミサイル」という奇妙に長い言い回しの報道ばかりで、宇宙ロケットによる衛星打ち上げと報じている大手メディアは全くありません。しかし国連安保理決議は北朝鮮に対して宇宙ロケットだろうとも長距離弾道ミサイル技術を使う全ての発射を禁止しているので、ロケットと表記しても問題は無いはずです。他の国が宇宙ロケットを打ち上げるのは自由なのに北朝鮮が禁止されている理由は、核兵器の開発とセットだからです。もしも北朝鮮が一度も核開発を行っていなければ宇宙ロケットは何も制限されていなかったでしょう。
ロケットなのかミサイルなのかという論争には全く意味がありません。宇宙ロケットも長距離弾道ミサイルも技術的には同じものであり、北朝鮮に対してはロケット打ち上げも含めて全て禁止されているからです。北朝鮮が使用したのは弾道ミサイルテポドン」です。そして人工衛星を軌道に乗せた以上、今回は宇宙ロケットとして使われました。しかしながら各国の立場や文化の違いによって、北朝鮮の行為を非難する姿勢は同じなのに報道に差が生じています。
(後略)

https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20160207-00054209/

ロシアとアメリカのロケット技術は、ドイツから接収したV2ロケットを祖とするのだが、その発展は大きく異なっている。
効率を優先するソビエト共産党は、弾道ミサイルと衛星用ロケットの区別を行わず、弾頭部が核兵器か、衛星用のペイロードかの違いだけで、ロケット本体は全く同一のものを利用している。
だから、ロシアのロケットは、平時には衛星打ち上げで実績と性能を上げる事ができ、そして常に最新のロケットがミサイル用としてストック可能な体制だった。
だから、ロシアのロケットはアメリカに勝るとも劣らない性能を持って居たし、ソビエト崩壊後に、格安で衛星や有人打ち上げを商業化できたのも、在庫のミサイル用ロケットを転用するだけで良く、わざわざ商業用のロケットを準備する必要が無かったからだ。
対してアメリカのロケット開発は、軍事機密としての要素が強い弾道ミサイルと、NASAが主導で開発する衛星や有人打ち上げを目的としたロケットで、別々の開発を行ったのである。
結果は言うまでもない。
クソ高くて費用対効果の悪い各種弾道ミサイルは、開発後は倉庫で出番を待って朽ちるに任せ、試射に使われる一部を除けば、保有年限を超えれば廃棄するしか無かった。
一方で、商業用ロケットはNASA主導で開発されたが、スペースシャトルという大きな「回り道」をしており、大型ロケット打ち上げに於いてはロシアとの緊張緩和を理由に、ロシアのロケットに頼っていた為、技術的にはロシアと大差ない、いや一部では負けている状況に陥っている。
なお、日本は糸川博士のペンシルロケットを祖とする固体ロケットと、アメリカから供与された液体ロケット技術の2本立てであり、基本的にアメリカと同様、軍事(ミサイル)民間(ロケット)は「別物」という扱いになっている。
だから、イプシロンロケットが「即時発射能力」「LEO1.2t、SSO0.45tという高いペイロード」等を誇っていても、即座に「弾道ミサイルに転用可能」ではないし、そうした想定すらされていない。
しかし、ロシア…というか旧ソビエトの流れをくむロケット開発をしている中国、北朝鮮といった国々では、弾道ミサイルと衛星用ロケットの区別が無い。
なので、日本のイプシロンロケットを強く警戒していて、日本の核武装には絶対反対の構えになる訳である。
LEO1.2tの打ち上げ能力があれば、小型化してない核爆弾でも打ち上げ可能なので。
ちなみに、インドのロケット技術は、意外な事にアメリカを祖とする。
これは、まず最初の観測ロケット技術について、NASAへ科学者団を送り込み、ロケット技術を学んだことによる。
しかし、アメリカはロケット発射場の建設協力を拒否した為、発射場はフランスの技術協力を得ているし、インド初の人工衛星ソビエトが打ち上げているし、インドの宇宙開発技術は、ロケット主要開発国(米仏露)から技術の美味しい所取りして行われていると言える。
なお、インドは日本と同じく、世界でも珍しい「ミサイルより先に衛星打ち上げロケットの開発をした国*1」で、インドの国産ロケットSLVIIIの開発プロジェクトリーダーが、後にインド国産の弾道ミサイル、アグニシリーズの開発責任者として成果を上げ、なんとインドの大統領にまで登りつめている。
有力な政治家が、科学技術に無知蒙昧な法学部卒ばかりの日本と違って、インド人の科学的思考を優先する部分が、あらゆる強みの源泉なのではないかと思う。
更に余談として、欧州の場合、アメリカと同様に弾道ミサイルと商業ロケットは別々の開発になっているのだが、これはEU設立で、宇宙開発は欧州共同開発、弾道ミサイル開発は国防案件なので個別開発するという棲み分けの結果であり、アメリカの様に1国で軍事と商業を別個に開発すると言った無駄な事はやっていない。

*1:更に余談だが、韓国は自前の衛星打上げが未だ成功してないのに、ロシアからコピーした弾道ミサイルの打ち上げと量産配備してるので、ミサイル開発からスタートしているロケット開発国である。もちろん北朝鮮も同様だ