イースト・プレス新刊など

2010年がやってきまして最初の記事ですな。ううむ…


古本屋で石川雅之の本が105円で売ってたから買った。カタリベ。
読んだ。
ううむ…


今更だけど『ひまわりっ』終わった。
最終回はある程度まあテンションが持続してたかというと間違いなくフルスロットルだったというのは少し難しいですが、
締め方は締め方として読後感のいい終わり方だったと思います。
最終回、節子でてこなかったよね…?(部長とかも)
次の連載もすぐ始まる…モーニング編集部も凄いし東村先生もスゴイ…!


気持ち悪いほどKISSを推してる気がしますがやはり面白い。雑誌として。
今出てる号(もう次のになってしまったかな?)の後の方に載ってた、
新人賞受賞の人の漫画がすごく藤枝奈巳絵だ!
しかしあちらは変人多く高めのテンション、に比べ恋愛要素は随分少女漫画らしい。
結構新しいことやってるんじゃないかなー、と思いました。


さて、感想が3つ。
最近は面白い漫画が全然ないよーないよーと言っていたのですが、
まあそれで更新もしようがなかったとも言えますが、
いやしかし結構そういうエアポケット的状態になることはままあるのですが、
そういうときは大体、大きい本屋とかいつも行かない本屋とか行けば解消されてしまいます。


要するに実際に本が売られてる新刊コーナーに行って、実際に並んでいる新刊を眺めることが最も、は言い過ぎか、しかし有益なリサーチなんですよねー、ぼくにとっては。
色んな書店を回れば大体売れ筋とかは同じですが、しかしながら、被ってないところが見つかればそれがその書店の固有の色が出てくるところであり、結果的に良い出会いになりやすい!と思いました特に今回は。
普通に売れ筋が分かるのも有益ですが、自分の場合はバイト先も書店なので大体それはレジ打ってれば分かるのでやはり棚の固有な部分に目がいきます。


さて話が戻りますが、1冊目は金成陽三郎原作、上野愛作画『デカルトの憂鬱〜見知らぬ私〜』。
結論から言ってしまうと、ぼくにとってはもう一つ、というところでした。
惜しいと感じたのは、第1話がとても面白いのにその後の展開がぼやけてしまう点。

ある夜、突然殺されてしまった私、誰に? 何故?
魂だけが他人の体で蘇ったまま、私は、私の殺人事件の謎を追い、今まで知らなかった、自分自身を知ることになる――。

というのがあらすじで、大体1話めの内容ですが、これ、続き気になりますよね。
推理小説ではなんとなくどこかで見たことがあるような導入ですが、
だからこそこの面白い材料をどう料理するのか、興味深くなるものです。

で、推理モノとして売ってるのでネタバレが恐くあまり書けませんが、
推理モノとしては、好みもあると思うのですが、いわゆる問題編の記述にいわゆる解答編で明かされる事実が凡そ含まれている、というまあ本格めいたものがぼくは好きなわけです。
というか推理小説を元々読む人にとっては程度と好みの差はあれど持つであろう嗜好ではないかとも思います。
嗜好なのでもちろん強く主張はできませんが…。


少し話は逸れますが、こういった話の場合は提示される謎は「犯人は誰か」というよりもむしろ「何故殺されたか」になると思うんですよ。
ミステリだとホワイダニットとか言うんですが(Why done it?)、
「誰がやったか」のフーダニットをそっちのけにするなら少なくともこれをちゃんと前フリして全体のテーマに絡めたような納得のいくオチにしてほしかった…。


まあ、「推理漫画」と銘されているものを真面目に推理モノとして読んでも仕方ないとは思います。
そういう意味では東京創元社の『ラ・プティット・ファデット』とかはミステリ漫画してました。
同じ金成さんの金田一少年も個人的には結構好きです。たまにバカミスっぽくなるけど。


上記の点を抜きにしても、視点の問題というのもあるなーと思ってまして、
デカルトの憂鬱』はずっと主人公の一人称視点で描かれるのですが、
こいつが右往左往するだけで何もしないし、
一人称の特徴である「その人ならではの視点」があまり活かされてなかった気がする。
つまり、主人公が子供なら子供にしか分からないこと、などそういう意味でですね。
これなら視点は途中で探偵役(一応)に切り替える方が面白かったかもと思うんですよ、
「自分から見た自分」「他人から見た自分」というテーマはそれでも充分語れるし。
あと容疑者をひとりずつ当たるとかしても王道パターンで面白いと思うんです。


というのを沢山想像できるのが、導入部の発想が魅力的な証拠なのになあ…


さて、無駄に推理要素の話などしてしまったので長くなってますが、2冊目。
かわかみじゅんこ『パリの鈴木家』


これ面白かったです!
何がかと言えば、さっき書いたような視点の問題が上手く描かれてるからです。
突然パリに引っ越しになった鈴木一家のヒロヤ13歳中学生が異国で思うことは、
「ねえ、僕」「この国で友達できると思う?」
「大体さー」「「好き」ってどーゆーことなんだよ」「肉が好きとか犬が好きとか同じ種類?」
普通!どころか、恐ろしいほど中坊!


もちろん、言語の問題、宗教の問題、などなどフランスと日本の違いに戸惑う姿も描かれていて、しかしその中でもヒロヤはいち男子中学生なのです。
そして表現上でその点が、実に効果的に働いているのです。
即ち「鈴木家」という名前にも表れるところ、サラリーマンの父、のんびりした母、ギャルでミーハーなお姉ちゃん、そして思春期男子ヒロヤと、主役一家を日本人のステレオタイプ的に描いている点にも表れるように、「(パリにやってきた)日本人」を描くことがこの作品の主眼のひとつです。


そして、この作品は元々フランス語圏であるベルギーで出版されたものです。
ヒロヤをこうして疑いなく「日本人的」に描くことで、
『パリの鈴木家(原題:It's Your World)』はフランス語圏の人たちに「日本人(が考えるようなこと)とのギャップ」を効果的に読ませることに成功している、のです。


フランスの文化があれこれ描かれてるのも面白かったですね〜
かわかみじゅんこさんってフランスに暮らしてたとかなんでしょうか?


さて3冊目、次は新鋭・衿沢世衣子先生の『ちづかマップ』です。
いやーこれも面白い!
これはフランスとは打って変わって卑近な東京(と京都)の町を舞台にした話。


実は推理漫画の話はこれへの布石でもあります。
『ちづかマップ』は講談社のミステリ雑誌メフィストに連載された作品。
原題は『尋ネ人探偵』。
そう、これもミステリ漫画の一種なのです。


といっても話には殺人やトリックなどは無く、町を歩きながら人探しをするという、どちらかといえばエッセイに近いようなものになっています。
ですがここで本日のミステリ用語その2「日常ミステリ」に注目します。
ようするに、大掛かりな舞台は用いず日常的な小さな謎を解決する推理小説のジャンルであり、「人探し」はここでたくさん扱われる謎のひとつであります。


まぁーもう細かいことを今日は書きすぎて疲れてしまいましたが、
すっきりした読後感と寓話っぽいあらすじはかなり日常ミステリっぽくてグッドです。
そして扱う町が素晴らしい。
本郷・浅草・そして日暮里!ぼくの好きな日暮里!ひぐらしのさと日暮里!
そして制服女子高生を書かせたら衿沢世衣子


という感じですね。いやほんとおすすめなんでどうぞ。
出してる単行本がイーストプレス太田出版青林工藝舎って人なかなか居ないっすよ


デカルトの憂鬱―見知らぬ私― (クイーンズコミックス)

デカルトの憂鬱―見知らぬ私― (クイーンズコミックス)


パリの鈴木家(Cue comics)

パリの鈴木家(Cue comics)


ちづかマップ

ちづかマップ