先従隗始・温故知新

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MF02フュージョンのハンガー交換、ブッシュ取り外してオーバーホール(ひとりで家で)


実はフュージョンのエンジンハンガーはコマジェに次いで「もろい」。
ウエハースとキットカットぐらいの差しかない。


いくつかのバイク屋が経験で知ってる通り、エンジン側のマウント部のブッシュはエンジン熱ですぐグリス切れするが
なんせホンダはグリスピボット大嫌い(本田宗一郎のせい…・ピボットなんかで手抜きしないで分解整備しろって言う)
カブだけはグリスピボットが長年なく、バーディとメイトは以前からあったぐらい。


本気でやるなら、自前でブッシュアウター&インナーとエンジン本体ハンガー部に貫通穴を開けて、市販のグリスピボットをつけることはできる。


すぐグリス切れしたブッシュは、振動と異音の巣になる。イオンなく絶好調ではなくなる。
次にサビが増えて膨張して詰まりだす。水分油分が枯渇してゴムパッキンも硬化する。残ったグリスは石質化する。


ある程度進行するとまったくブッシュアウター&インナーが固着一体化して動かなくなり
ハンガーに無理(設計外の応力)がかかって、容易に折れる。ほとんどがエンジン側の根元で折れる。
常に乗って距離を伸ばすより、長年あまり乗らない期間が長いとこうなりやすい。
常に乗ってるとむしろブッシュは常に動いて、摩耗し、ガタガタするようになる。
結局はエンジン後輪部が左右にグラグラするのは同じでも、両者の故障内容はかなり違ってくるわけ。


同じ部品のフォーサイトや、その後のフォルツァでは、こういう脆弱性は聞かれない。シリンダーが水平だから熱が伝わりにくいのもあるか。
やはり85年設計のフュージョンにはいろいろと稚拙な脆弱設計があるのだろう。スーパーディオもリード90も結局は熱対策で負けた。


 ◇


というわけで初年度式で32年間ばらしてないブッシュは大変なことになっていた。
いくら556吹いても中まで届かない。石質グリスと硬化ゴムとサビがパンパンに密封されてシーリングが完璧なのだ。


もはや鍛造への圧入に等しく、半端な叩きやプーラーではむしろそれら工具が壊れてしまった。


だがしかぁし
ベテラン過ぎる当ブログ筆者geasszeroは朝倉世界一の俺様のコンロッドよりも強い。
車両メーカーの現場ラインや設計にも居た男はこんな程度では諦めない。暇さえあればレストアできる。(バイク屋は時間工賃なのでここまでくると部品交換しか受け付けないが)


何が必要かはわかっている。あとは設備を持ってる工場だ。
このトルクになるともうバイク屋のレンジでは対応できない。大型車整備工場に行かねば。


青梅市東青梅。奥住自動車。典型的な老舗整備屋だ。
こういうところは、設備と経験だけでなく、長くやっていて山積みになっている「今は使わない治具」がいっぱい埋もれている。


案の定、手動レバー式の油圧プレス機はあった。
だが案の定、ブッシュインナーがすっぽりハマる内径26mmの円筒が中々見つからなかった。
(他の整備屋を当たる時は、事前に自分で内径26mmで厚み3mm以上の、油圧プレスに耐える鉄パイプを必要な長さにカットして持参スべきだろう。)


ブッシュのアウターとインナーの外径差はなんと半径1mmしかない。プーラーやプレスに必要な「爪」=引っ掛けるぶぶんがほとんどない。
だから治具は円筒しか使えない。ちゃんと断面が水平が取れてるやつ。
奥住自動車には他の工具のパーツなどから、、たまたま内径26mmでブッシュインナーが引っかからずアウターがハズレない、理想的なものが在庫してた。


それでも一番最初のプッシュでは、ものすごく硬かった。3割超えるまではものすごく硬かった。ベテラン工が驚いて力を込めるほど硬かった。
治具探しで時間がかかったが工賃は500円にまけてもらえた。


中は固着したゴムとサビと石化グリスだらけ。マイナスドライバーでなでて刺して落とすの繰り返し。
整備用のスクラブハンドクリーナーを活用する。
濡らした湿式作業のほうがドライバーでこすってもサビなどはよく落ちる。石化した塊は乾いてる時にゴリッと剥がす。
仕上げは明るい屋外で金ヤスリと紙やすり。


清掃してきれいな状態を見ると、やはりあまり摩耗はしていない。摩耗が進む前に車庫の置物になっていたのだろう。固着なのでゴムパッキンも30年ものと思えないほど状態がいい。
長年動かされずグリスなどの硬化が進んでからまた動き出したのでブッシュが全く動作せずハンガーがねじ切れた。なんせ折れた部分が全く外れなかった…マウントボルトを抜いても駄目。エンジンとの間に棒を差し込んでレバレッジでずらさないと動かない。
以前に再販後のほぼ新車の輝きのやつを車体からエンジン外したことがあったけど、あれはなんでもかんでもスルスルと取り外せたが…


ハンガーの構造を見ると驚くほど細くて強度がないから…アルミ削り出しで高剛性ハンガー自作したいぐらい。


はっきりいって、作業性を考えたらブッシュだけの交換でもキャブまでは撤去した方がいい。キャブまでの配管とケーブルは曲げられるのでバッテリー付近にどかせる。
ネットで「ブッシュが中々ハズレなかった」と嘆いてるブログの大半はここまでやっていない。


よほど状態が良くないと、ブッシュを外そうと叩いた時にアウターとインナーが固着して両方外れてくる。アウターの外側は圧入で動かない部分なのでむしろ556吹くと簡単にハズレてくる。
でもきちんとやるならむしろ両方とも外した状態で叩くなりして分離した方がいい。


再度組付けの際は、今までと向きを変えて組み付ける。
どうしてもエンジンをハングする以上、ブッシュアウターの内側の上だけがインナーの形状で削れている。
つまり向きを変えると新品の面を使いまわせる。


あと1万kmしか乗らないので今回は再利用とした。予定距離によっては交換してしまう。
むしろ固着がひどすぎて半ば諦めそうになったが、ゴムパッキン注文済みが結果的に無駄にならなくてよかった。


ハンガー自体の取り外しは、エンジン根本から折れてる分には、ハンガー各部を分解した上で、リアサスはつけたまま取り外せるが
エンジンが前のめりに倒れてくるので、ジャッキするか、結束ベルトを右サスとシリンダーにからめて固定してしまう(インマニを回避すること)。


正常ハンガーの組付けは後日以下に追記。


マウントボルトも86年式だと固着しており、(全てのネジが固着…トランク固定ボルトとか)
50kgかけられるインパクトでもゆるまなかったが、ホンダ店では60cmぐらいのロングハンドルでどうにか回していた。これで千円なら授業料としては安い。アストロで同じハンドルを買えばこれも安い。


以下、ひとりでエンジンをずらしてハンガーを交換してまたエンジンを上げてくっつける方法。


ハンガーをエンジン側から外すと前のめりに倒れてきてしまうので下にジャッキするか石積みする。
エンジンを少し後ろへどかさないとハンガーが挿入も取り出しもできないので、リアサスを上だけ外す(センスタ立ててるので後輪下に何かはさまないとボルト抜いた瞬間にゴトッと落ちる)。


ハンガーのゴムブッシュは容易にナットが緩むので事前にラバーグリスを塗布しておく(周辺を清掃の上、ブッシュ動作が絡むシャフトやボルトも含め)。


ハンガーは先にフレーム側から取り付ける。
次にエンジン側を取り付ける。まずは右側の内側ハンガーブッシュだけ外側ブッシュへ挿入。
(ちなみに外側ブッシュを取り外した場合、やや短いほうが右側用だそうでhttps://blogs.yahoo.co.jp/v_a_l_6/70950627.html


ここでエンジンを吊り上げる必要があるので、パレット積み荷用のバックル式結束ベルトをエンジンに通す。カインズホーム黄緑色2m298円。
中心線よりやや左に、ハーネスもホースも回避しながら通せる一線がある。ハンガーのAB結合部分の狭い隙間からベルトを落とし、セルモーターを抱っこしながらそこのハーネスは回避し、オイルパンから後輪部へ上げていく。シリンダー部のオイルラインホースも下をくぐって回避する。シートフレームにベルトを掛けて、後輪側にバックルを配置。


ハンガーを挿入しフレームへ取り付けた後はエンジンを前へ戻して良いのでリアサスを取り付け直す。けっこう腕力で持ち上げれば片方づつネジ穴は合う。


エンジンマウント穴とハンガーに数cmの落差がある。結束ベルトを引っ張って上げていく(ベルトは手のひらに一回転させる)。
どうしてもネジ穴が前後にずれるので、ゆするなどして合わせる。リアはサイドブレーキするのは当然。


先程、右だけ内側ハンガーブッシュをつけてあるので、ネジ穴が合ったらマウントボルトを挿入。
左はまだ内側ブッシュがないのでマウントボルトは容易に最終位置まで貫通する。
ボルトが最終位置へ来て出っ張ってきたら内側ブッシュを挿入し、ベルトで上げるなり手足であちこち揺するなどして穴の位置関係を合わせ、内側ブッシュを外側ブッシュへ差し込んでしまう。


あとは通常通り組み上げていく。
エンジンが汚いと結束ベルトは泥油で汚れてこうした作業にしか使い物にならなくなるので注意。



1型ともなると、コスモ星丸くんの1985年設計製造なので、ただ分解してもただ組み上げても必ずなんか不具合が出てくる。まして中古車はトンデモオーナーのトンデモ整備不良の宝庫。


まずバイスターターのパッキンは完全に死んでグラグラ。でももう長年グラグラだったようでキャブ側も少し削れてしまってる。パッキン交換では追いつかないだろう。しかもこれキャブレターパッキンセット2千円でしか入手できないので(車種によってはバイスターターAssyしか頼めないとか)。


どうせあと1〜2万kmしか乗らないので、ビニールテープで隙間なく、1回転以上かぶせず、ピッタリで巻いた。クリアランスはぴったり。
ガソリンは溶剤なので、ビニールテープの粘着剤は負けて無効化してしまうが、バイスターターへ来るガソリンは量も圧力も少ないし動作時しか流れてこない。それに粘着剤が徐々に死んでも、そのときにはもう挿入によってパッキンとして整形済みなので問題ない=水道管のシールパッキンと同じ。
テープなので距離があるため漏れにくい。冷却水ドレンボルトにも使える。


このビニテ、田園で拾ったんだよね。ニチバンだしいい仕事するわ。


ただひとつ組付けミスをした。
ヤフオクで幾つか出品画像を見ながら組付け方法を探るのだが、たまたま誤組付けの画像通りにやってしまい、バイスタータシリンダーのパッキンの一つ上の溝に、クリップをはめてしまった。こうなるとバイスターターニードルは初期位置でもキャブの穴を塞がないので常にチョークかかりっぱなしになってマトモに走ってくれず、回転が中々落ちない、スロットルひねってもあまり進まない。その後10ほどのヤフオク画像で正位置を確認し、上の広い溝でクリップをはめたら今度はバイスターターシリンダーがキャブの穴の最後の位置まで差し込めた。走行も異常なし。


お次はエアインテークの破損だ。
86年式だから…エアクリーナー側の端部が割れてる。
エアクリーナーからのインテークホースも、クランクケースエアクリーナーへつなぐ分岐ホースが見事に折れてもげてる。


普通は部品交換だが、1型は新品価格がものすごいことになっていて、つまんないカウル固定ボルトが200円以上したり。
ヤフオクでも足元を見てボロパーツでもボッタクリ価格。佐賀県ジュピターてめーw


直すしか無い。
凝った手法だと、エアクリケースは材質がPPと相場が決まってるので、ダイソーでPPプレート買ってきて、ヒートガンなどでプラ溶接して成形してしまう。(エアクリの柔らかいホースはPE)
でも今回はそんな道具購入費用は出したくない。1万km程度使える簡易補修ですます。
インテークホースから下へ90度分岐したドレンホースは折れてしまってるので、2りんかんでアドレスV125用200円のクランクケースエアクリーナーエレメントを購入。これを適当に切ってホース内部から、クランクケースエアクリ側のホースへ、ぶち込む。
現状のままだとフィルターも何もないまま、ホコリごと吸い続けてしまうので、すでにホース内部はホコリで汚れていた。だからせめてリーク部分は塞がないにしても、エアクリエレメントを通すようにする。このエレメントがインテークホースとクランクケースエアクリ側ホースを接続する構造物にもなっている。元からこのクランクケースエアクリからもエアを吸い込む設計で、転倒時はブローバイガスをこちらにも流してるらしい。


Jの字インテークダクトのエアクリ側端部の割れは、これも塞ぐにはPP溶接が必要で予算がかかりすぎるので、同じくエアクリエレメントを切って取り付ける。割れた穴より少し大きく切って、カッターでスリットをつくってはめ込み式にする。
このまま組み付けるとホコリはエレメントを経由するようにはなるが、エアクリボックスを通してないので土砂降りで走行すると水をかぶってしまう。なのでダクトにビニールテープを巻いて成形しながら、簡易エアクリボックス構造を作ってしまう。


以上の補修で、すこし純正よりエア量は多いのだが、高速道走行でも特に異常はないので。
エアインテークルートにエレメントが出っ張っているが、この程度では性能に支障はきたさない。もしエレメントが脱落したり崩落して飛んでいっても、キャブ手前に網が二重であるので大丈夫。



ついでに
http://d.hatena.ne.jp/geasszero/20170602/1496328837
バイスターターの断線の修理