子どもの絵とラスコー洞窟の壁画〜『生物の進化に学ぶ 乳幼児期の子育て』(斎藤公子著)
書店の「保育」コーナーで見つけた本。
『生物の進化に学ぶ 乳幼児期の子育て』(斎藤公子/著、かもがわ出版)
書名を見て惹かれて手に取り、表紙をめくって最初のページにあったのが「ラスコー洞窟の壁画」の写真。パラパラと中を見ていくと「両生類のハイハイ運動」をする子どもの写真や幼児が描いた絵…。
・生物の進化
・ラスコー洞窟の壁画
・両生類のハイハイ
・脳発達の可塑性
・個体発生と系統発生
どれも、この夏のフェルデンクライスの講習で聞いたり、実際に体を動かして学んだことばかりです。それらが「子育て」とどう関係するのか?気になって本を買いました。
文字は就学後に学ぶもの
おしゃれなママのための育児書ではありません。斎藤公子さんが勧める子育て実践しようとしたら「おしゃれ度」は下がるでしょう。泥だらけになって帰ってくる我が子の洗濯(服・体)で忙しくなりますから。また、文字を書いたり英語を習うといった早期教育を勧める育児書でもありません。その逆で、「文字は就学後に学ぶものである」というものです。
書いてある内容を読まなくても、本に載っている子どもたちが描いた絵は、強い印象を残します。
「年長児がここまで描けるの!?」
子どもに対して失礼な話です。
本には、私にとってこれまで馴染みのあるタイプの「子どもが描いた絵」も載っています。その一方で、子どもが描いたことは分かるけれど、質の全く異なる絵が載っています。物語をつけて、そのまま絵本にして販売できそうなレベルの絵です。これは、3ヶ月間絵を全く書かず、部屋に入るのは雨の時と食事の時、それ以外は外で『山掘り』をした後に子どもが描いたものです。とても同じ子が描いたとは想像できません。(同書、63頁と65頁)絵を詳しくみると、その子が3ヶ月前に描いた絵に登場する「女の子」が『山掘り』後の絵にも描かれているのが共通点でしょうか。
この変わり方は何?
子どもってこれだけ変わるの!?
絵を見ると、わずか3ヶ月の間に子ども達の脳がどれだけ成長・発達・発育したのかを知ることができます。それは『山掘り』*1という体を動かすことを通した結果です。
計測可能・数値化を求めたら
この本を読むと、どれだけ私たち大人が「子どもは大人の縮小版」ととらえていて、大人としての経験や理屈・都合・想像だけを元にして、わかった風な顔をして小さな子ども達に「教育」「保育」をしているんだな、ということがわかります。
それと、どれほど「分かりやすい」「計測可能」「比較可能」「できるできない」といったことばかりに大人の目が向いているのかにも気づきます。
ほら、この絵の方がずっと生き生きしているでしょ?
なんてこと測れないですもんね。
子どもの発達の幅・速さ、脳の可塑性からすると、「大人は子どもの拡大版」以下なのかもしれません。
今、私はいい歳の大人になっているけれど、かつての「就学前の私」からきちんと発達しているのかしら?
*1:『山掘り』
砂場遊びではありません。大量の土を買って、大きな山を作り、それを20人の子ども達がそれぞれ山の周りから穴を掘って、真ん中で合流できるように『掘る』もの
(『生物の進化に学ぶ 乳幼児期の子育て』61〜65頁)