Genmai雑記帳

・・・人にやさしく

東京高裁:遺言無効(脳動脈硬化症)

昭和44年(ネ)2919 遺言無効確認・所有権取得登記抹消等請求控訴
昭和52年10月13日 東京高判
判示事項

動脈硬化症のため遺言能力が否定された事例

id:gen-mai の S52.10.13・東京高判・S44(ネ)2919遺言無効.pdf
(抽出・加工あり。原文参照)

(一)〜死因を脳溢血後遺症としての脳軟化症・冠状動脈硬化症に基因する心臓衰弱〜
(二)〜発病後は一切仕事に就かず、公的な場所には顔を出さず、家人との会話も乏しいまま、おおむね家庭内で茫乎無為の生活〜
(三)〜新郎の父として結婚式に出席することを憚らなければならない程度の障害〜無気力さを推認〜
(四)〜言語障害や無気力、無関心の度合いがかなり進んでいたものであることを窺わせる。
(五)〜言語障害が調査官の調査に応じえない程度に重いものであったこと〜遺産の分配についての自己の意見を進んで裁判所に申し出ようとする意欲が太郎に存しなかったことを窺わせる〜子供らの紛争に対し〜自己の態度を決定する能力がないばかりでなく、妻Hの相談相手にもなりえない状態〜推測される。
(六)〜脳動脈硬化精神障害(脳動脈硬化症)の中心症状〜は進行性の精神機能低下〜知能の領域では痴呆〜、情意の領域では性格変化〜、精神機能全般の低下の結果〜注意・記憶・計算・理解・思考が不良となり、正当な判断が妨げられ〜感情が鈍くなり、自発性が低下〜、日常の精神生活の内容は貧困・空疎なものとなり〜数年ないし10数年のうちに〜漸次進行〜高度の障害となり、卒中を起こすと症状が顕著になる〜
〜鑑定結果〜明らかな言語機能の障害〜関心・自発性・意欲の欠如・低下に徴するとき〜脳溢血後遺症としての脳動脈硬化症があり〜遺言当時〜かなり進んだ人格水準の低下と痴呆〜否定〜難しい〜

〜遺言当時中等度の人格水準低下と痴呆〜、是非善悪の判断能力〜事理弁別の能力に著しい障害があったとした〜鑑定結果は相当〜、〜遺言当時太郎は有効に遺言をなしうる〜必要な行為の結果を弁識・判断するに足るだけの精神能力を欠いていた〜無効〜

〜脳動脈硬化症による痴呆は精神機能全般の低下にかかわらず他の痴呆ほど平均的等質的でなく、日常的な判断力や元来の人格があとまで保たれていることが特性〜、あくまで他の痴呆と比較した〜相対的特性〜、一部の機能が完全に保たれているのではなく、機能低下にかなりの凸凹があるというにすぎず〜

☆遺言と遺言執行の実務・〜「公正証書遺言」によるべきか〜で取り上げておられましたので、読んでみました。