Hatena::ブログ(Diary)

博物士

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Tuesday, 2004/08/31

[] ベネルクス旅行記(7/7)  ベネルクス旅行記(7/7)を含むブックマーク

 BRUブリュッセル発のブエリング航空便で、昼過ぎにVLCバレンシア帰還。

http://www.vueling.com/

 機内では、セルバンテス作:牛島信明編訳「ドン・キホーテ」(岩波少年文庫、ISBN:4001131250)を読了。スペイン文学で有名なものって、これしか無いのではないかと思うのですが、原作は長大なので読めずにいたのでした。この版は、1/6に要約したもの――ですが、とりあえず「読んだことがある」と言えるようになったので良し。

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Monday, 2004/08/30

ワーテルゾーイ

[] ベネルクス旅行記(6/7)  ベネルクス旅行記(6/7)を含むブックマーク

 ゲント(Gent)を日帰りで訪問。ブリュッセルから片道40分(往復切符13.6ユーロ)。駅からは路面電車に乗って旧市街へ。

 まずは聖バーフ大聖堂(St. Baafskathedraal)へ。ファン・アイク(Van Eyck)兄弟による祭壇画『神秘の仔羊』(Lam Gods, 1432年)の前へ。いい絵だなぁ。ここもルディオン社が日本語ガイドブックを発行しているので(ISBN:9055442933、7.5ユーロ)解説を読みながら眺めると楽しめます。宗教画は、細かい意匠に寓意があって、なかなか気づかないですから。

 鐘楼(Belfort en Lakenhalle)に昇り、グラスレイ(Graslei)のギルドハウスを眺めてから、レストラン「シェ・レオンティオン」(Chez Leontine)にて昼食。名物料理ワーテルゾーイ(Waterzooi van Kip)を食べてきました。鶏肉と野菜のクリームシチュー。おいしくって、はにゃ〜ん。1品目に日替わりスープ、デカンタでハウスワイン、食後の珈琲まであわせて21.4ユーロ。

http://www.waterhuisaandebierkant.be/


 15時36分にブリュッセルへ戻ってきて、市内の散策。いちおうこれでも法律家なので、最高裁判所とEU本部へ。

 それから教会めぐり。ノートルダム・デュ・サブロン教会(Eglise Notre-Dame du Sabron)とサン・ミッシェル大聖堂(Cathedrale St.-Michel)へ。大聖堂では、またもやパイプオルガンの練習をしている人がいて、しばらく響きを楽しんできました。

 夕食は、「ゴーフル・ドゥ・ブリュッセル」でベルギーワッフル。今回は、いちごをトッピング。うん、やっぱりブリュッセル・タイプは、そのままより何か乗せた方がおいしい。

http://www.belgium-travel.jp/(ベルギー観光局)

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Sunday, 2004/08/29

埋葬のフィグアー

[] ベネルクス旅行記(5/7)  ベネルクス旅行記(5/7)を含むブックマーク

 ブルージュを09時過ぎに出発し、ブリュッセル(Bruxelles)へ。ホテルに荷物を預け、ベルギー王立美術館(Musee Royal des Beaux-Arts)へと馳せ参じたのが11時40分。

「当館は、まもなく閉館いたします」

はわわ〜、まだ見終わっていないですよ〜(泣)「青の順路;15〜16世紀」と「茶色の順路;17〜18世紀」とを鑑賞するのに、それぞれ2時間かかるほどの質と量。館内の食堂で昼食を取り、珈琲を飲んだことを差し引いても、半日では足りません。館内放送のあった16時30分には、ようやく「黄色の順路;19世紀部門」の途中に辿り着いたところでした。20世紀はゴミ同然の奇怪な前衛主義的なるものが置いてあるだけなので見る気はなかったのですが、写実主義印象主義のあたりをじっくり見られなかったのが心残りです。

 本日の添付画像は、ジュリアン・ディランス『埋葬のフィグアー』(1885年頃)。三次元より二次元の方に興味が向く目が、強く引きつけられてしまうほどに魅惑的。大理石の彫像に手を触れてみたくなったことは何度かありますが、抱き締めたくなったのは初めて……

http://www.fine-arts-museum.be/

 中心部に出て、老舗ダンドワ(Dandoy)へ。ベルギーワッフルには2つの様式があるのですが、ブリュッセル・タイプをそのまま食べてみました。なんか物足りない…… これは、コーンフレークをそのまま食べても味気ないのと同じで、アイスクリームや果物をトッピングする土台にすると、おいしさが引き立つ味付けになってる。そのまま食べるなら、リエージュ・タイプにすべきでした。

 1619年から放尿しつづけている小便小僧(Manneken Pis)を見て、グラン・プラス(Grand Place)へ。うわっ、地ビールの即売会をやっているですよ〜。もちろん参加するですよ〜。会場を2周して、コクのありそうな褐色のビールに決め、2ユーロを渡してをグラスに注いでもらう。惚れ惚れする旨さでありました。

 帰り道、今日もフライドポテトをひと袋買いこみ、おつまみ兼夕食に。

http://www.belgium-travel.jp/(ベルギー観光局)

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Saturday, 2004/08/28

ベルギーワッフル

[] ベネルクス旅行記(4/7)  ベネルクス旅行記(4/7)を含むブックマーク

 今日は、まるまる一日ブルージュ(Brugge)めぐり。街並みの美しさもさることながら、美術館の所蔵品も素晴らしいということで、早起きして出かけました。

 グルーニング美術館(Groeningemuseum)では、本日最初の来場者。市内5箇所の美術館を選んで入館できるという、お得な共通券を15ユーロで購入。ルディオン社(Ludion)から刊行されている日本語ガイドブック(ISBN:9055443530、12.5ユーロ)を片手に、じっくり見て回りました。どれも一級品。

 グルートゥーズ博物館(Gruuthusemuseum)。豪勢な貴族の館。

 聖母教会(O.L.Vrouwekerk)。内陣に飾られた絵画も見物でした。

 メムリンク美術館(Memlingmuseum)。大作は少ないけれど、これまた見応えあり。エミール・クラウス『アステネのリス川』(1885年?)が気にいったので、絵葉書を購入。

 ここで昼食休憩。レストラン「グルートフーゼ・ホフ」にて、日替わりメニューを。たまねぎのスープ、鶏肉を焼き上げたもの、炭酸水、プチ・シュー、珈琲で17.55ユーロ。ベルギーは、どこで食べても安くておいしいなぁ〜

 午後は、ベギン会修道院(Begijnhof)&愛の湖公園(Minnewater Park)の散策から開始。救世主大聖堂(St. Salvatorskathedraal)では、パイプオルガンの練習をしている人がいて、たっぷり無料コンサートを楽しんできました。

 鐘楼(Belfort)に昇って町を見渡し、民族博物館(Museum voor Volkskunde)で一世紀ほど前の暮らしぶりを眺め、運河沿いの風車を見る。

 20時からは、鐘楼に取り付けられたカリヨン(組み鐘)によるコンサート。といってもホールに集まって神妙にしている必要はなく、街の中で耳を済ませていれば聞こえるというもの。ビールと軽食を買い、マルクト広場のベンチに腰掛けて楽しんできました。街の印象は、視覚ではなく、嗅覚・聴覚・味覚に左右されるのではないかというのが持論なのですが、ブルージュは音の町。カリヨンの澄んだ響きが思い起こされます。

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Friday, 2004/08/27

マルクト広場(ブルージュ)

[] ベネルクス旅行記(3/7)  ベネルクス旅行記(3/7)を含むブックマーク

 ホテルをチェックアウトし、アントワープ駅(Antwerpen)のコインロッカーに荷物を収納。駅の北側から23番のバスに乗り、目指すはベルギー王立美術館(Koninklijk Museum voor Schone Kunsten)。いい絵がいっぱい観られて、幸せ。

 プランタン・モレトゥス博物館(Museum Plantin Moretus)。産業としての印刷業に初めて着手したクリストファー・プランタン(1520?-82)の家。図書館の閉架書庫に足を踏み入れたときのカビの香りが好きな人ならオススメ。今でも稼働するという活版印刷機や、革表紙の本などを眺めることが出来ます。建物もいい具合に古びていました。

 おやつには、さくさくのベルギーワッフル。肉屋のギルドハウス(Museum Vleehuis)、ステーン城(National Maritime Museum Steen; 国立海洋博物館)にも足を運んでみましたが、どちらもさして面白くはありませんでした。

 聖パウルス教会(Sint Pauluskerk)。壁一面に絵画が並べられており、どれも逸品。惜しむらくは、高いところに掲げられていたため、良く見えなかったところかな。

 ベルギー人はフライドポテトが大好きで、フライドポテト専門店があちこちにあります。私も、軽い風邪ならリンゴとフライドポテトで治るぐらいに大好き。というわけで、ひと袋買って昼食代わりに。


 鉄道に1時間ほど乗り、ブルージュ(Brugge)へ。12世紀には欧州最大の内陸港だったそうです。ところが、海とを結ぶ運河が埋まってしまい、船がやって来られなくなって衰退してしまったのだとか。しかしそのおかげで、古い街並みがそっくり残されています。今までいろいろな所を訪ね歩いてきましたが、家々が建ち並ぶ様子ということであればブルージュほどに美しい町を知りません。小雨が降りしきる天候でしたが、嬉しくなって、日が暮れるまでぐるぐると歩き回ってきました。

 夕食は、マルクト広場にあるレストランにて。スープ、ムール貝、アイスクリーム、珈琲で22ユーロ。

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Thursday, 2004/08/26

ネロとパトラッシュ

[] ベネルクス旅行記(2/7)  ベネルクス旅行記(2/7)を含むブックマーク

 荷物をホテルに預かってもらい、ハーグ(Den Haag)観光へ。今回の旅はフランドル絵画の鑑賞が目的なので、美術館だけを巡る方針。

 まずはマウリッツハイス美術館(Mauritshuis)。レンブラント(1606-69)『テュルプ博士の解剖学講義』、フェルメール『青いターバンの少女』などは印象に残るけれど、どうも好みではない。風景画に気に入ったのがあったのだけれど(A.V.D.Neer作)絵葉書になっていないようで残念。

http://www.mauritshuis.nl/

 それから、パノラマ・メスタグ(Panorama Mesdag)へ。マウリッツハイスは期待が高すぎて「それほど」という印象になって3しまいましたが、こちらは期待しないで行ったのが良かった。H.W.メスタグが、1881年に、漁村スヘーフェニンゲン(Scheveningen:英スケベニンゲン)を描いた風景画。ものすごく大きい。高さ15m×周囲113mの円筒形。これはアイデアの勝利。緻密さには欠けますが、それを補って余りある迫力です。

http://www.panorama-mesdag.nl/


 ホテルに戻って荷物を回収し、アントワープ(Antwerpen)へ移動。駅前のツーリスト・ホテル(Tourst Hotel)にチェックイン。54ユーロ。

http://www.demahotels.be/

 まずはルーベンスの家(Rubenshuis)へ。17世紀の画家ルーベンスのアトリエが美術館となっているところ。ルーベンスの絵は工房による集団制作だそうで、まとめて観てみると作品の仕上がりにバラツキが大きい。時々、手を抜いたようなものが……

 ノートルダム大寺院(O.L.Vrouwekathedraal)。「フランダースの犬」でネロが最期を迎える場所。ルーベンスの祭壇画「キリストの降架」は、まさしく大作でした。

http://www.dekathedraal.be/

 17時になると美術館が閉まってしまいます。行くところが無くなったので、路面電車の4番線に乗り、終点のホーボーケン(Hoboken)へ。「フランダースの犬」の舞台となったところ……というのは最近判明したそうです。この物語、地元の人にはまったく知られていないのだとか。日本人がネロとパトラッシュの面影を求めて数多くやってくるので、観光局の人が探し当て、ここに銅像を建てたのだとか。足を運んでみるとわかりますが、アパートの前にちょこんと置かれていて、どうでもいい扱いをされています(^^;) ノートルダム大寺院の前にも記念碑が置かれていますが、こちらの出資者は“TOYOTA”だし。

 夕食。ベルギーは、オランダとうってかわって、おいしそうなレストランがありすぎて目移りしてしまう。駅前通りにある店に入り、日替わりメニュー「鶏肉のマスタード風味」をいただく。17ユーロ。

http://www.belgium-travel.jp/(ベルギー観光局)

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Wednesday, 2004/08/25

スケベニンゲン

[] ベネルクス  ベネルクスを含むブックマーク

 31日(水)まで旅行に出かけてきます。バレンシアにいるなら近くの村で行われる「トマト祭り」に行こうかという考えもあったのですが、どうも私向きではなさそう。そこで、避暑をかねてフランドル絵画を見に行くことにしました。気温は、スペインよりも12℃くらい低いみたい。訪問予定は、ハーグ(オランダ)、アントワープブルージュ、ゲント、ブリュッセル(ベルギー)です。

 添付画像は、とあるホテル予約サイト*1のものなんですが…… スケベニンゲン……

http://ankyo.at.infoseek.co.jp/chinmei.html(世界の「珍名」所)

[] ベネルクス旅行記(1/7)  ベネルクス旅行記(1/7)を含むブックマーク

 今回の旅行は、ブエリングという新しい航空会社が就航したおかげで実現しました。往復で131.21ユーロ。12時50分にVLCバレンシア(スペイン)を出発し、定刻より早めの15時にBRUブリュッセル(ベルギー)着。北駅で乗り換えて、そのままオランダ行きの特急へ。――と思ったら、国境を越えたドルトレヒトで停まってしまった。どうも体験談を聞くと、この辺りで運行が中止になるのは、よくあることらしい。10分ほど待たされたあげく、元の列車に乗れという指示が……

 およそ2時間30分で、目的地ハーグ(Den Haag)着。女王の住まいや国会議事堂がある政治の中心地。小雨はぱらついていて、人影が少ない。何より寒い。みんな薄手のコートを着ているですよ(^^;) ホテルにチェックインしてから街の中を歩いてみましたが、綺麗だけど面白みに欠ける感じがしました。生活の匂いがしないんですよね。

 何より困ったことは、食事のとれそうな場所が見つからない。プロテスタント圏ということで、覚悟はしていたのですけれど。カトリック圏では食事に時間とお金をかけますが、新教では質素・倹約を重んじるので外食が発達しないのです。以前、アムステルダムやジュネーブでは昼をサンドイッチで食いつなぎ、夜はスーパーで買い込んだ食料品で過ごしました。ところが、ここハーグでは18時で商店が閉まっており、パンを買える店すら見当たらない。かくなるうえは致し方ない――とハンバーガーで夕食にしました。反米主義を標榜する者にとっては、かなり悔しいものがあります。ささやかな抵抗で、M社ではなくBK社にしましたが。それでも、アメリカの代名詞であるハンバーガーを口にするのは、1年6箇月ぶり……。しかも、低カロリー飲料はコーラ・ライトしか選択肢が無い。

 宿泊は、パーク・ホテル。ネット割引価格で75ユーロでしたが、4つ星の格にふさわしいところでした。

http://www.parkhoteldenhaag.nl/

tanizakuratanizakura 2004/08/24 22:41 スケベニンゲン、、、、、、。小林めぐみさんの作品にコードネームで出てきたなぁ。>特殊駆逐業者出勤ファイル

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Tuesday, 2004/08/24

[] 南仏プロヴァンスの12か月  南仏プロヴァンスの12か月を含むブックマーク

 考え込んでしまった。相手は、ピーター・メイル(Peter Mayle)の「南仏プロヴァンスの12か月」(A Year in PROVENCE, 1989, ISBN:4309461492)。

 葡萄園つきの農家を買い取って南フランスの田舎町に越してきた筆者による、月ごとの歳時記。訳者あとがきによると、小説が書けなかったので、身近な出来事を書いたのだそうな。登場するのは、隣のブドウ農家や、家の修繕を頼んだ職人、あるいは買い物に出かけた先で立ち寄った食堂の亭主。

 ほのぼのとしたお話――なのだが、この本が売れるのはロンドンと東京だけではなかろうか、と。

 職人に細工を頼んだら、二箇月後にやって来た? 地元のオリーヴオイルとワインが旨い? パンはパン屋によって味が違う?

 そんなの当たり前でしょう。

 見知らぬ異国への憧れを持たないと、かくも感想が変わるものなのか。地図帳を引っ張り出してきて調べたところ、我が家(バレンシア)から南仏マルセイユまでは直線距離にして640km。ほぼ東京‐青森間に相当する。行ったことはないが、人間の気質が極端に変化するほど離れているわけではない。違うところというと、オレンジ畑がブドウ畑に替わっているところ。その風景にしても、北海道育ちの私にとっては、別段、憧れの対象でも何でもない。内地の人が《北海道》に対して持つものは、「北の国から」に込められた幻想でしかないのだから。

 つまるところ、異邦人が新しい地で最初に得た驚きと、都市を捨てて農村に移り住んだ喜びとを表現したものが本書なわけです。異国での疎外感や、田舎の人間関係の難しさといったものを、うまく隠しているが故に、《夢のような生活》を演出できています。。

 自分には起こりえない空想の物語だと思って読むなら、美しい筆致の本書は束の間の快楽を与えてくれることでしょう。都市を離れれば収入の途を閉ざされる労働者にとっては《夢物語》であることを、お忘れ無く。作者は、場所を選ばない文筆業なのです。

 さらには…… これは南仏だからこそ書ける話ではない。新しい街に移った時、新しい仕事を始めた時、その時に瑞々(みずみず)しい感性を働かせることが出来るなら、そこが《プロヴァンス》になるということではないのかな。

 ちょっと変わり種だけれど、これも「海外在住日記」に。

南仏プロヴァンスの12か月 (河出文庫)

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Monday, 2004/08/23

[] 脳の見方  脳の見方を含むブックマーク

 養老孟司「脳の見方」(1986-93年、ISBN:4480027815)。

 う〜、わからない。まったくもって理解が及ばない。解剖学者が哲学を論じているのだ、というところまでは努力した。それで、おしまい。ミシェル・フーコーゲーテモンテーニュらの名前が出てきていることは視覚によって知覚したが、脳の認識作用が働かない。

 「バカの壁」とは、まさにこのことであったか。

[] からだの見方  からだの見方を含むブックマーク

 そのまま引き下がるのも釈然としないので、続けて養老孟司「脳の見方」(1988-94年、ISBN:4480029125)を開く。

 よかった。こちらはエッセイ集だ。馬鹿な私でも、かろうじて言葉として読みとれる。

 筆者は、とかく屁理屈をつける。こういうと世間一般では悪口にとられるらしい。だが、私の本業は理屈をこねまわすことであるから、それが屁理屈であろうと理屈になっていればよろしい。黙りこくってしまえば、すなわち廃業。食っていけなくなる。

 養老翁の説諭は、巧の技である。何故哲学めいたことをやるのかと問われれば、講座に研究費がまわってこないので、カネのかからないことをやっているのだと答える。医師ではあるが解剖学者であり、人を生かすのではなく、人が死んだあとに出番がやってくる。そんな師にかかると、葬式は「楽しい」ものだという。故人と生前仲の悪かった人が、そのことを気にして立ち回り、葬儀の雰囲気を作ることがあるとか。解剖の申し出に反発するような人をみて「ははぁ、さては」等と思い当たるなど慧眼である。

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Sunday, 2004/08/22

[] 白詰草話  白詰草話を含むブックマーク

 Littlewitch白詰草話』あらかた終了。

 残念ながら失敗作、かなぁ。先に“Quartett!”に触れ、独創的な動的システムFFDの効果的な使われ方を知ってしまっているが故に、欠点が際だってしまう。

 本作『白詰草話』は、遺伝子工学を駆使し、戦闘能力に特化して創造された生命体《エクストラ》のお話。要は、ろりろりでふりふりな女の子と退廃にふけるという、うらやましいお話。ところが起動直後、主人公の謎めいた独白シーンで「あ、これはまずいな」と思ってしまった。FFD(フローティング・フレーム・ディレクター)は、文章を読ませるのには不向き。そこで、鬱々としたシナリオを読まされたのでは滅入ってしまいます。

 登場人物にしても、型どおり。ムスカみたいな小悪人が出てきたと思ったら、やっぱり『天空の城ラピュタ』を思わせる台詞回しだし……

 本作は、シナリオの分岐が生きていないので、一本道で構成しても問題なさそうです。小説における挿絵のように配置したほうが、むしろシナリオに注力できたのではないかと思う。難解なだけならともかく、不可解なところが多々ある。物語性の弱さ、稚拙さ、不自然さが惜しまれます。

 大槍葦人さんの絵は相変わらず美麗です。音楽もいい。これを立派なCG集と割り切れるなら、決して損はしないでしょう。

http://www.littlewitch.co.jp/

白詰草話 ~Episode of The Clovers~

――と書いて帰宅したところで、これでは批評ではなく批判だなぁと思い直したので補筆。

 絵がいい。音楽もいい。システムも優れている。それなのに……という残念さが隠せないのです。評価基準としてシナリオの質を重視する立場だと、特にね。

 率直に言って、キャラクターが「立っていない」。実験体である少女は、正統たる透花、幼さを体現する沙友、変化をつけるためブロンドにしたエマ。彼女たちは一方的な好意を寄せるだけの、いわば《お人形》。ライバルを演ずる有能な科学者高宮エレンは、敵役に終始する。同僚の女性2人は、片や別れた恋人、残るは男に目もくれない……。この配役で盛り上がる物語にするとなると、パターンになっちゃいます。つまり、年端のいかない少女達を拐(かどわ)かすか、かつての女性と縒りを戻すか。これで主人公がクセのある人物ならば、スパイ映画よろしく美女とあらば誰とでもベッドを共にするというのもあり。でも、そんなことができるタフさに欠ける人物だし。

 つまり、登場人物が出そろった段階で先の展開が予測できてしまった、というのが難点。それを割り切って、うら若き乙女達との快楽にふける娯楽作品として作るなら、それでも良かったと思う。ところが、アクのある野郎を跋扈(ばっこ)させ、さしたる意味を持たない専門用語を散りばめ、しまいには旧約聖書を加えて撹乱させようなどとするから、かえって不快に感じてしまったのです。

 シナリオの不出来が、他の良さを覆い隠してしまった。そんなふうに思えて、残念なのです。

bookstorebookstore 2004/08/22 03:01 いろいろとリンクをたどってきました.
キーワードの渡辺製作所関連のことですが,アレをギャルゲーカテゴリに入れるのはどうかと思います.
どれもガチな対戦格闘ゲームですから.

genesisgenesis 2004/08/23 18:53 こんにちは。ご指摘ありがとうございます。▼ お尋ねの件ですが、【リスト::ギャルゲー】はキーワードによる繋がりを深めることを主眼に置いたため、かなり広義に捉えております。ご指摘のように“MELTY BLOOD”は格闘ゲームに属しますが、「ギャルゲーのキャラクターを使った」作品でありますから、無関係ではないだろうということで一覧に収載しておきました。誤解を招きかねないのは確かですので、表現を工夫してみることにします。どうもありがとうございました。

Saturday, 2004/08/21

[] 人工水晶体  人工水晶体を含むブックマーク

 吉行淳之介「人工水晶体」(講談社文庫、ISBN:406184296X)読了。

 表題作は、芥川賞受賞作家が白内障に罹り、当時の最先端の治療法である「人工水晶体(眼内レンズ)移植手術」を受けた顛末をつづったもの。併録作は、製薬会社の広報誌に17回にわたって連載された養生訓と題する小編。

 1986年の第二回講談社エッセイ賞受賞作ということだけれど、それほどのものだろうか? 文体は明晰であるから、体験記として優秀であることはわかるのだけれど。「××賞」というのは、出版社や書店にとって重宝する【売り】文句でしかないのかな。名刺を作ると、肩書きをつけたくなるのと同じ心理なのかも。

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Friday, 2004/08/20

[] ことばの力  ことばの力を含むブックマーク

 外山滋比古「ことばの力」(中公文庫、ISBN:4122016940)読了。

 世に名文家と言われる人は数多くいるけれど、《言の葉》に関して書き連ねている人となると、外山滋比古が思い浮かびます。私が随筆というものを意識するようになったのも、教科書に載っていたこの人の文章がきっかけだったように思う。

 本書で繰り返し登場する話題は、《音声としてのことば》。近代日本の文化は史部(ふみとべ)的な性格を持ち、語部(かたりべ)が虐待されていたのではないかと言う。ここで一瞬、天原ふおんカタリアツメベ探訪談」が頭をよぎったのだが、それはさておき。曰く、文字を中心とした教育に力点が置かれたため、耳と口のことばがおろそかにしてしまったのではないか、と。

 ここに興味深い指摘がある。小学校の3年生ぐらいまでは、先生の話を聞くことが勉強の中心であるが、45分間という授業時間、聞き続けられるだけの耳の《しつけ》が出来ていない。その理由を考えるに、子供に教えるべき大人たち自体からして「ことばの耳がよくないのではないか」と言うのだ。

 これは一理ある。以前、学習塾の教壇に11.5年間ばかり立っていたのだが、学年が下がるほど、授業を成立させるのが難しかった。教える内容は簡単。小学4年生だと「火事を発見したら、どうしますか?」「119に電話する!!」という程度。困難なのは内容ではなく、所定時間の間、生徒を座らせ続けることであった。経験からいうと、小学校で成績の悪かった子供が中学校で急に伸びるということは、まずない。少なくとも義務教育レヴェルでは、先生の「話を聞く」ことが能力に直結する。その能力は学年が進んでも差が開く一方で、後から身につけるのは至難の業。独学が重要になる大学受験で逆転がありうるけれど、それでも15年間のうちに開いた学力差を乗り越えるのは容易ではない。就学前の幼児期に言葉の訓練をしたかどうかは、一生に関わるものだと思っている。

 ただ私にしても、「耳の訓練」ということまでは考えが及んでいなかった。でもご安心めされよ。かの外山氏にしても、相手の名前を聞いて覚えるのは難しく、初対面の人から名刺をもらい、目で見ることで安心すると述べているのだから。

yukattiyukatti 2004/08/20 20:23 映画の関連語は、すべて「リスト::日本の映画」「リスト::外国の映画」に置換、ということなのでしょうか。
いちおう日本の映画は「映画作品タイトル 邦画」、外国の映画は「映画作品タイトル 洋画」で関連付けられている分は出てきます。ご参考まで。

yukattiyukatti 2004/08/20 20:23 あ、上記はキーワード検索の検索語です。

yukattiyukatti 2004/08/20 20:24 相当数あると思います(数百以上かもっと)

genesisgenesis 2004/08/20 20:51 こんにちは。【映画作品タイトル】を通してのご活躍は存じあげております。▼ お尋ねの件ですが、できるかぎりのことを試みてみようと思います。目当てのものが決まっている人であれば検索機能で足りますが、それに加えて一覧化されたものがあっても困ることはないでしょう。▼ 先日、【アニメ作品タイトル】から【リスト::アニメ作品//タイトル】への分類作業を完遂しておりますので、経験と実績はあります。ただ、ご指摘のように映画は登録量が多いので、一気に動かすわけにはいかないですね。時間のある時に少しずつ編集していこうと思っております。

yukattiyukatti 2004/08/20 20:58 拝承しました。わたしも折があればリストしていきますね。

yukattiyukatti 2004/08/20 21:04 できればのお願いなのですが、「邦画」や「洋画」は一般的にも使われていること、データベースや検索語としてもキーワードとされうることなどから、キーワードの説明文内に残しておいていただきたいのですが…。(個人的には、むしろ無いものには付け加えていくくらいにしたいなと)

genesisgenesis 2004/08/20 23:04 作業手順の種あかしになるのですが、【邦画】もしくは【日本映画】を本文中に含むものを取り出して置換することにより、リストアップしておりました。▼ いったん集積してしまえば、後から書き足すのは難しいことではないので、御了承いただけませんでしょうか。

yukattiyukatti 2004/08/20 23:40 なるほど、わかりました。

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Thursday, 2004/08/19

[] ムツゴロウの世界博物志  ムツゴロウの世界博物志を含むブックマーク

 畑正憲ムツゴロウの世界博物志」(文春文庫、ISBN:4167108283)読了。

 ムツゴロウさんというと、動物とじゃれあっている人という印象しかありませんでした。文章は初めて読んだのですが、まさに印象そのまま。テレビでは知らなかったことというと、ひとつだけ。随分と下ネタが多い(笑)

 その行動範囲の広さには恐れ入りました。57の短編が収められているのですが、そこに登場するのはハワイのクジラ、アラスカのヒグマ、オーストラリアのカンガルー、ブラジルのカピバラ(巨大ネズミ)、オーストラリアのコアラ、パラグアイのカピ、インドネシアのオランウータン…… なんか大陸の配置など無視してめちゃくちゃですが、登場順。しかも、これで1/5。

 昔話ではなく、どうもその時々の出来事を書いているらしい。事実、《あとがき》には脱稿後の予定が記されており、これからスリランカ、アルゼンチン、ブラジル、チベット、フィンランド、南極を訪問するとある。マイレージ、いったいどれほど貯まるんだろうなぁ(笑)

 動物好きの好々爺と思っていたら騙されます。でも、欲望に従って生きていても嫌みを感じさせない。すごい人だわ。

Wednesday, 2004/08/18

[] 食べ物さん、ありがとう  食べ物さん、ありがとうを含むブックマーク

 さくらちゃん話法を御存知でしょうか? 鳥さん、おさかなさん、ホットケーキさん、たこ焼きさん……というように擬人化しておき、最後に「はにゃ〜ん」と言わせれば木之本桜ちゃんっぽくなるという表現手法のこと。

 ――という話はさておき。川島四郎サトウサンペイ食べ物さん、ありがとう」(朝日新聞社ISBN:4022603917)読了。フジ三太郎などで知られるマンガ家が、栄養学を学びに行くという構成。小ネタが詰まっているのですが、要点を挙げると次の5点。

  • 青野菜をどっさり食べよう
    • 赤血球は、葉緑体の中の Mg を Fe に入れ替えて作られる。白い野菜(レタス、キャベツ、はくさい)では血が造れない
  • お腹がすいたときに食べる
    • 時間を決めて食べる必要はない。野生動物を見習おう。
  • 食べたらすぐ寝る
    • 「ウシになる」というのは使用人を働かせるための方便
  • 火山国ニッポンはカルシウム不足
    • ヨーロッパでは、水にも野菜にも Ca が含まれている
  • 脂は駄目、油がいい
    • 肉の脂は人間の体温(37℃)だと固まってしまう。魚や植物のそれなら、血流に負担をかけない

 いずれも良く言われていることなのですが、話の進め方が面白いので「そうか」と思わせる魅力がある。巧みな話術が、聞く人を引き付けるのでしょう。

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Tuesday, 2004/08/17

アメリカ素描

[] アメリカ素描  アメリカ素描を含むブックマーク

 司馬遼太郎アメリカ素描」(ISBN:4101152365)読了。

 歴史小説家と知られる著者が、40日間かけてカリフォルニアと東部諸州を旅をする。そこでの知見をもとに、1985年(昭和60年)の4月から12月にかけて読売新聞紙上に連載された文章をまとめたもの。

 新聞社から渡米の話があったとき、冗談ではないと思ったという。本書は、その場面から始まる。アジアの白地図に光を当てるのは好きだが、アメリカやヨーロッパには興味がない、というのだ。それでも、数年越しで誘いに乗る気になった。しかして、サンフランシスコに着き、司馬が最初に目にしたのはハングル文字の看板を掲げる在米韓国人の店であった。ロサンゼルス滞在中、ふと会いたくなったのはヴェトナム人だという。いかにも彼らしいエピソードである。アジアの諸民族が数千年に渡って繰り広げてきた歴史を丹念に探り当ててきた五感が、北米大陸でも「アジア」を浮き彫りにしようとしてしまうのだろう。

 余談であるが、司馬遼太郎は「日本の歴史の歴史」を変えた人物である。私が学習塾の教壇に立っていた間に、中学校で教える(教わる)歴史は根本的に変わったのである。従来は《政治史》が中心であったところ、今日では《産業経済史》へと置き換わっている。偉人の名を覚えることに必死になっていたであろう三十代以上の世代なら、子供達が菱垣廻船や干鰯といったことを学んでいることに驚かれることと思う。その変化は『菜の花の沖』がもたらしたものであろうことは間違いなかろう。

 そんな司馬の目に、合衆国という存在は「文明だけで成立し、文化を持たないもの」として写る。筆者のいう《文明》とは「普遍的・合理的・機能的で、誰もが参加できるもの」のこと。《文化》とは「特定の集団(=民族)においてのみ通用する特殊なもので、むしろ不合理ですらある」と定義される。

 例えば、日本の《文化》では「貧しさがときに誇りにさえなる」(77頁)。対して米国では

If you're so smart, how come you ain't rich ?

お前がそんなに利口なら、どうして金儲けできないんだい?

という格言に変わる(298頁)。

 文明と文化のどちらが優れているか、そのようなことを考察しているのではない。アメリカというものは《文化=慣習》を持たず《文明=普遍性》だけで成り立っているが故に、20世紀において唯一、地球全体に影響力を及ぼす存在になったのではないか―― 本書は一貫して、この仮説を検証することに費やされている。それは決して、アメリカを持ち上げるのでも、卑下するものでもない。司馬史観とも称される彼なりの哲学でもって、この類い希なる国を計測しようと試みている。

 筆者は、行く先々で人に会い、話をする。その執念たるや凄まじい。人間の観察だけで本書が出来上がっている。もし私が旅行に出た時のことを書き残すと、それは時間と光景の記録になる。

 私は、人間嫌いであることを広言してはばからない。よって、旅に出る時は大抵一人であるし、旅先で話し相手を求めることもしない。小高い場所に昇って街並みを眺め、博物館に足を運んで人類の足跡を観察する。しかして司馬は、その反対を行く。最後の方に少しばかり本音を見せるところがあり、ブロードウェイにも「がまんして立ちよらなかった」と、心残りを吐露している(382頁)。滞在期間40日間とは決して長くはない。私には、観劇のための数時間すら惜しむほど短くはないように思える。だが彼は、もう二度と来ることのないニューヨークで、そこに暮らす人々に会って話すことの方がが、世界最高水準といわれる上演を観るよりも楽しかったのだろう。

 アメリカは何故繁栄しているのか、何故あこがれの対象となるのか。それを、カネやモノではなく、《文明》《文化》それに《自由》という概念を用いて解き明かしてみせる。アメリカという国は、移民を吸収して育った多民族国家であるから、参加しやすさを風土的に有しているのだと説く。

 司馬は、この掴み所のないように思える存在を「おでん」と表現する。中に放り込めば溶け合ってしまう「人種のるつぼ」ではなく、「さまざまな人種が、オデンのようにそれぞれ固有の形と味を残したまま一ツ鍋の中に入っている」ようだと例えるのだ(188頁)。本書はさながら、ハンペン(WASP)とダイコン(アジア人)とコンニャク(黒人)を、じっくりスケッチした好著、とでも讃えられようか。

Monday, 2004/08/16

[] 機長の危機管理  機長の危機管理を含むブックマーク

 桑野偕紀+前田荘六+塚原利夫「機長の危機管理 何が生死を分けるか」(講談社+α文庫、ISBN:4062566540)かろうじて読了。

 きっぱり言います。愚書。買ったことを後悔したのは、ほんとに久しぶり。

 著者は、いずれも日本の航空会社で機長を務めている人物。本書の欠点がここにある。危機管理に関する本を、いみじくも機長が書くとはどういうことなのかを、執筆者が理解していない。

 本書では危機管理の基本を(1)危機に気づくこと、(2)危機を排除すること、(3)危機を回避すること、(4)危機を乗り切ること――と冒頭で述べている。さて、そこで想定している《危機》とは何なのか? そこに執筆者の考えが及んでいないように思えます。

 言うまでもなく、機長にとっての《危機》とは航空機事故。しかし、ここで丹念に墜落や衝突の防ぎ方の講釈をされても意味がない。このような本を著すならば、《危機》を防ぐためにどのような視点が必要なのかを、パイロット養成や航空機事故を「素材」にし、それを他の一般的な事柄に敷衍していくということになるのではないでしょうか。それが出来ていないが故に、落第と申し上げているのです。

 危機に対処する思考の持ち方については第3章で扱っているのですが、認知心理学の教科書を引き写したようなひどい出来。やたら英語を多用し、理解を妨げるモデル図を提示し、対語を並べたて、わかったような気にさせる――よくある手法なんですけれどね。本文中に、書名の「機長の危機管理能力」を箇条書きで説明している箇所があります(141頁)。そこを引用してみましょうか。

  • 業務管理能力(Routine Manegement Ability)
  • 危険管理能力(Risk Management Ability)
  • 危機管理能力(Crisis Management Ability)

これは即ち、

  • 係長級の管理能力(Secretarial Manegement Ability)
  • 課長級の管理能力(Managerial Manegement Ability)
  • 部長級の管理能力(Directorial Manegement Ability)

に相当すると解説しているのですが…… 失礼ながら、これは「機長」にしか書けないという筋合いのものではありません。加えて、縦書きなので英文は読みづらいったらありゃしない。しまいには「行動のパターン(pattern)化」など、どうして英語を添えているのか、訳を問いただしたくなるものまで。外国語を並べておけばスゴいことを言っていると思ってもらえるとでも誤解しているのでしょうか。米国から輸入したものを消化しきれていない、という未熟さの表象でしかありません。

 本書は、自動車学校の教官が読んだら話のタネに出来る、というほどのものです。つまり、危機管理を指導する人の立場から書かれているに過ぎず、危機を防ぐシステムの構築を実際に組み立てるにあたって何の役にも立たない。

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Sunday, 2004/08/15

[] リスト再編案  リスト再編案を含むブックマーク

 ワークンググループ*1に対して行った提案内容を転記しておきます。

 現在、【リスト::コンピュータゲーム関連キーワード】にかかっている負荷を軽減するため、【リスト::ギャルゲー】として分離分割させることを考えております。試作版は、次の箇所をご覧下さい。

 数日お待ちして御意見を募ったうえで、作業に着手しようと思います。コメントは、はてなグループ側(g:cgame-keyword:id:genesis:20040812)にお願いいたします。

[] A I R  A I Rを含むブックマーク

 劇場版AIRのCM。大阪版は無事にやり過ごしたものの、東京版を見たら反射的に涙腺がゆるんできた。週末は、ずっと「夏影 -summer lights-」を聴いて過ごす。

*1id:candoid:yms-zunid:yos_piyo で構成

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Saturday, 2004/08/14

[] 幸福論  幸福論を含むブックマーク

 柴門ふみ「幸福論」(PHP文庫、ISBN:4569570704)読了。

 筆者は「東京ラブストーリー」等で知られる漫画家。夫の弘兼憲史氏も同業者で、こちらは「課長島耕作」の作者。バブルにうかれていた頃の世相をつぶさに観測した夫婦、とでも讃えられるでしょうか。

 「幸福論」と仰々しい題名が付けられていますが、副題が本書のすべてと言ってもいい。

人生は甘くはないが、そうひどくもない

この一言を投げかけられるところに、柴門ふみという作家の能力を見て取ることができます。

 先日、遊びにいった先で酒井順子負け犬の遠吠え」を読ませてもらいました。本書と対極にあるような本でしたね。要約すると、30歳を過ぎて結婚できない女は負け犬なんだ、と明るく開き直る。で、それを読んだ人が、あたしも負け犬なの〜と連なっていく。うわ、ついに一般社会も追随してきましたか……

 えっとですね、この《立ち向かわない》という姿は、オタク界隈で先行して発生している現象なのですよ。碇シンジという人物像が出現し、時を同じくして斎藤環が《ひきこもり》というラベルを与えました。それと同じこと。6ないし9年先んじているオタクの方は既に反転を起こし、「活発・快活・朗らか」であることが尊ばれるようになりつつあるから。そういう視点でみると、「負け犬の遠吠え」は巧妙なタイミングで《負け犬》というラベルをつけたところに意義がある。この本の的確な書評としては、id:strictk:20040811 を推挙しておきます。

 話がそれました。本書「幸福論」ですが、読んでいるとスッと心の中に入ってくる。そして、前を向いてみようという気にさせてくれる。そんな魅力に満ちあふれています。

負け犬の遠吠え 社会的ひきこもり―終わらない思春期 (PHP新書) 幸福論―人生は甘くはないが、そうひどくもない (PHP文庫)

 もっとも、おカタイ人生についての話題は最初の方だけ。後半は、映画や音楽や流行やらを、彼女の鋭い分析眼で解きほぐしています。

  • 男性に『源氏物語』が好きという人はほとんどいない。それは、男が読みたくない恋愛の姿が描かれているからだ。(82頁)
  • 日本文学の伝統(中原中也太宰治)は、自分がいかに繊細かをアピールすることをテーマとしてきた。(109頁、映画『セックスと嘘とビデオテープ』を観て)
  • 人は他者との相対関係によって自己像を形成する。だだっ広いところに住むアメリカ人は、他人との接触が少ないが故に自分自身の判断基準がゆらいでしまい、強く主張して自我を支えないとアイデンティティを喪失しそうになるのではないか。(116頁、映画『パリ、テキサス』を観て)
  • 人称。フォークソングは対等で「きみとぼく」。「君と僕」なら村上春樹。オイラとテメエは「ドラゴンボールZ」。「俺と貴様」じゃ同期の桜。「♪俺にはおまえが〜」は演歌の真髄。(238頁、チューリップ「心の旅」)

思わず、ふむふむと肯いてしまう。この観察力こそが、柴門ふみという作家の源泉なのだろうな。

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Friday, 2004/08/13

[] わしらは怪しい探検隊  わしらは怪しい探検隊を含むブックマーク

 シイナを変換すると【椎名繭】が筆頭に出てくる私のパソコン。人生これでいーのだろーかと思い悩む瞬間。試しにアユを入力してみたら、やっぱり【月宮あゆ】が第一候補でした。

 椎名誠わしらは怪しい探検隊」(角川文庫、ISBN:4041510015)読了。1980年に出版された『怪しい探検隊』シリーズの第1作。1974年に行われた神島(三重県・三河湾)遠征の話を主に、その前後の年のことも交えて書かれたもの。シリーズ第4作『あやしい探検隊 海で笑う』(ISBN:4041510104)を先に読んでしまったこともあって、登場人物達の若々しさというか、はじけっぷりというか、無謀さ、凶暴さ、異常さが際だちます(^^;)

 当人が楽しかったと思っていることを、楽しく書いているので、読んでいて楽しい。

こぎおろしエッセイ のんびり行こうぜ (BE‐BOOK)

[] のんびり行こうぜ  のんびり行こうぜを含むブックマーク

 野田知佑のんびり行こうぜ」読了(ISBN:4101410038)。1984年秋から1986年冬にかけてのエッセイを集めたもの。

 筆者はカヌーイストとして知られる。椎名誠氏とは遊び仲間であるからして、この二人の本を読んでいると、連れだって出かける場面が頻繁に出てきます。しかし、同じアウトドア・エッセイストでも、書き方のアプローチが全く異なる。主語からして違う。シーナさんは「俺はァ」なのに対し、野田さんは「ぼくは」なのだから。

 そこから、野田知佑は柔和で温厚で包容力がある、などという幻想をもって結論づけてはいけない。あくまで文体の違いを述べているだけに過ぎないのだから。「田舎の人は純朴ないい人」といった誤った固定観念などは見事に粉砕し、「田舎の倫理は『弱肉強食』である」ことを自らの腕っぷしで実証してみせる気骨の人、なのです。自然礼賛の一方ではなく、「街や人工のものが大好き」という人の存在を認めているところに、先達の余裕がみてとれます。

 彼の人が静かに怒りを露わにするのは、公権力に対峙する時。本書の中に、ニュージーランドからやって来た青年(ポール・カフィン)が、シーカヤックで日本一周に挑むエピソードがあります。4箇月をかけての冒険で障害となったのは、海上保安庁の妨害であったという。事務所に出頭しろと言ってみたり、海上でパスポートの提示を要求したり…… ゴムボートによる急流下りレースでは、警察が1日のうちに14回中止要請に来て、開催するなら中止勧告があったことを書面にして残せ、と言い渡したこともあったとか。もし、パンプローナ牛追い祭りのようなものを企画しようとしたら、警察と役場とマスコミから徹底的に弾劾され挫折するだろうことは、想像に難くありません。諏訪大社の御柱祭(おんばしらさい)のように、宗教色でもないとね。

http://www.onbashira.jp/

 日本において冒険する自由は、役所によって抑え付けられている。当人が危険の存在を熟知し、死傷しても構わないからやってみたいのです――といっても認めないのが、日本の根底にあるシステムなのだから。

 これは難所に出かけていくという《冒険》に限りません。例えば、何か素晴らしいアイデアを思いついて、新しい事業に乗りだすことにしたとしましょうか。すると、所轄官庁というものが乗り出してきて、何のために必要なのか良くわからない書類をたっぷり提出するよう命じていくのが常です。日本国憲法が高らかに歌い上げているはずの《営業の自由》など、どこ吹く風。

 先ほど登場した青年が日本一周を達成した時、祝賀会が催されたそうです。その会場は「ニュージーランド大使館」で、大使も歓談に加わっていたとか。国民気質の違いを、これほど如実に示すエピソードは無いでしょう。

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Thursday, 2004/08/12

ホルムヘッドの謎

[] ホルムヘッドの謎  ホルムヘッドの謎を含むブックマーク

 林望ホルムヘッドの謎」(ISBN:4167570017)読了。

 リンボウ先生の著作で最初に文庫所収となったものだとか。そのせいか、読んでいて初々しさがあるんですよね〜 文章に硬さといいますか、緊張感がある。最近のものになると「そこらへんにある《なんでもないもの》を斜に構えてみる」というのが持ち味になっているのですが、本作だと「めずらしい《誰も知らないようなこと》を書いてみる」といった感じがあります。

 全13篇のうち、6本がイギリスもの。で、そこに、そろりそろりと、本業である*1 書誌学・国文学の話題を織り込んでいく。書き始めるにあたり、編集者氏から「エッセイの連句ってのはどうでしょう?」との助言を受けたとのことですが、全体を眺め渡してみると「なるほど」と肯かされる。ただ、「源氏物語」にまつわる「頭中将は何故泣いたか」や「あばら家の姫たち」などは、構成の点からすると少々離れすぎとも思える。

 わずか10年ほどの間に100冊を超える著作を上梓している筆者、近年のものは筆が荒れているような気がします。最初期に著された本作と比べると、ですけれどね。

 うわ、やられた! と思ったのは表紙画。牧歌的な田園の夕暮れ時が描かれています。これを「林望イギリスはおいしい=英国かぶれ」という図式で見ると、手痛い仕返しをくらうことでしょう*2

[] 幻の旅  幻の旅を含むブックマーク

 併せて林望「幻の旅」ISBN:4167570041)も。

 1993年11月に上梓された、これまた最初期の作品。

旅行の実の楽しさは、旅の中にもなく後にもない。ただ旅に出ようと思つた時の海風のやうに吹いてくる気持ちにある

 萩原朔太郎『虚妄の正義』を引用して、この本は始まる。言うなれば本作は、《旅に出よう》と思った時に心の中から湧き出でて去っていく、儚(はかな)い風を集め、叙情的に歌いあげた詩集。そこに現実感はない。はたして「僕」は誰なのかわからないし、ここに書かれていることが真実なのか虚構なのか曖昧模糊としている。

 そう。だって、これは「幻の旅」なのだから。

幻の旅 (文春文庫)

*1:その後、林望氏は大学教授を辞しており、現在はエッセイストを専業にしておられる。

*2:その正体は、川瀬巴水木版画「埼玉・田宮村」

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Wednesday, 2004/08/11

[] 崩れ  崩れを含むブックマーク

 人の持つ時間は有限。しかして世の中には無尽蔵とも思える書がある。さらに、私に与えられた経済資源は限りなく乏しい。よって、何を読むかという選択をしなければならない。そのふるい分けの方法には様々であろうが、私はある一点に着目して決する。書名である。数百頁に及ぶ本文を、たったの一行にまとめるのは至難の業。しかし、その労苦は書物を上梓しようとする全ての者に等しく課せられているので、競争条件としては平等。しかも、本文を開いてみる必要がないので、選定にかける時間も少なくて済む。

 「△△必勝法」といったあたりは、棚から取り出してみる価値もない。偶然の出会いを求めているときに、手にとって装丁を見るのは危険ですらある。表紙買いしてみたものの、羊頭狗肉とは斯くの如きものであったか――と感じ入った経験は、萌え同人誌に手を染めたことがある者なら誰しもがお持ちのことであろう。

 さて、古書店でのこと。文芸書の棚を前にして視線を走らせていた私は、久方ぶりの興奮に打ち震えた。それが本書、「崩れ」との出会いである。もし、これが理工学書の棚に置いてあったのなら何の不思議も無い。本書はエッセイなのである。作者は幸田文幸田露伴の娘と言えば御存知の方も多かろう。私にとっては、名エッセイストの父は露伴という作家なのか、という程度の認識しかないのだけれど。

 山岳国ならではの自然現象として存在していながらも認知されていないものを、文学の対象として把握する。それだけでも「崩れ」の存在意義は十二分にあると言って良い。それが幸田文という名手の手によって綴られていることは、あらまほしきこと、この上もない。

 山菜摘みに出かけた著者は、大谷崩れ(静岡県)を見て「崩れ」というものに思い当たる。それからというもの、日本各地の「崩れ」を訪ねてまわり、その眼に写ったものを書き記したのが本作なのである。大沢崩れ(富士山)、松之山町(新潟県)、男体山(栃木県・日光)、稗田山崩れ(長野県・北安曇)、鳶山崩れ(富山県・立山)、桜島(鹿児島県)。驚くなかれ、この時、筆者は70歳をゆうに超えているのである。

 そして最後に登場するのが、有珠山(北海道・虻田町)。噴火で被害を受けた二箇月後に温泉町を訪問したところで幕を閉じる。つまり、あの雲仙普賢岳の火砕流が起こるよりも遙か以前に、幸田文「崩れ」というものに着目していたことにある。しかし、その目は恐怖におののいてはいない。かといって科学者のそれでもない。崩れを「大地の弱さ」として見る、まぎれもない文学者の姿である。

崩れ (講談社文庫) 崩れ

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Tuesday, 2004/08/10

[] 心地よい退屈  心地よい退屈を含むブックマーク

 大槻ケンヂ行きそで行かないとこへ行こう」(新潮文庫ISBN:4101429219)読了。1992年に上梓された単行本の文庫版です。

 ちなみに、今夏における私の行動指針は「読みそで読まない本を読もう」。一時帰国した際、古書店に行って特売になっていたものを、とにかくスーツケースが一杯になるまで連れてきました。そんなわけで当分、作家が脈絡なく入り乱れる書評になるのですよ〜

 この人の文章、かねてから読んでおきたいと思っていたのですけれど、ようやく果たせました。理由は、例によって例の如く、TINAMIでの高橋龍也氏インタビューにおいて、「雫−しずく−」は「新興宗教オモイデ教」が下敷きになっている――と聞かされていたからなんですが。

http://www.tinami.com/x/interview/04/page1.html

 面白かった。

 エッセイ集なので気楽に読めちゃう。中島らも氏との対談場面が出てくるのですが、ノリが似ている。筆の運び方もいい。作詞も手がけているということが作用しているのでしょうか。1つのフレーズの区切り方が短く、さくさくっとした食感。上手いなぁ。

 登場するのは、浅草のレンタルビデオ店、夕張のラーメン店、通天閣のビリケンさん、渋谷のムルギーカレー、新宿のホモ映画館、浅草のストリップ劇場、日光江戸村などなど。

 幾つかの短編は評価が落ちます。テーマの重苦しさに、執筆者が呑み込まれてしまったんだろうなぁ。それを差し引いても、作者の力量を感じさせる一冊でした。

行きそで行かないとこへ行こう (新潮文庫)

Monday, 2004/08/09

「赤毛のアン」の生活事典

[] 山田栄子さんが出てこないのはいけないと思います。  山田栄子さんが出てこないのはいけないと思います。を含むブックマーク

 テリー神川「赤毛のアン」の生活事典』(1997年、講談社ISBN:4062069695)読了。

 作者はモンゴメリーの「赤毛のアン」に魅せられ、舞台となったプリンスエドワード島に移住した人物。ティールームを経営するかたわらで研究を続けて書きためたのが本作です。

 率直に言って、出来が悪い。

 この本は《事典》であることに留意すべきです。どういうことかというと、冒頭から順番に読んでいっても、まったく楽しくない。百科事典を【あ】の項から開いていくようなもの。そこで《事典》としての価値を判断してみるに、これが落第点。全10巻ある原作の一節を引用して解説がはじまるのですが、いったい何頁のどの場面なのかの説明すらありません。リファレンス性を持っていないのです。これを《事典》というのは、項目の羅列になってしまったことを悪びれもせず、開き直っているとしか思えません。

 あのね、作者が色々と調べて回って多くの知識を得たということは分かるのですよ。でも、それを書物にまとめるなら、ある切り口で切り取って、取捨選択しなくてはいけないでしょうに…… 知っていることを詰め込んでみた、という粗雑な感じが漂ってきます。

 第8章の植物篇が特にひどい。「赤毛のアン」に登場する草花樹木を網羅してみました――というのが、ありありとしています。「スイートピーはマメ科のつる草です」といった、植生について知りたくて本書を手に取る人がいると思っているのでしょうか? 書くべきは、この島ではどの季節にどのような花が咲くのかだとか、トウヒやシラカバが登場することで物語の描写にどのような影響を与えているのか、という「赤毛のアン」に関わる話題でしょうに。

 他方、本書で最も期待されているであろう舞台(アボンリー村)のことなんか、わずか14頁で終わってしまいます。本書を読んだところで、プリンスエドワード島に行ってみようという気は、これっぽっちも起こりません。

 これは、編集者の力量不足が原因。文筆を本業としていない人物に本を書かせるなら、編集者がしっかりしていないとダメなものに仕上がってしまうという悪い例ですね。喫茶店の経営者が、客を相手に茶飲み噺を聞かせるのとは違うのですから。同じ曲を奏でても指揮者によって異なる趣のものに仕上がるように、あるいは、同じ料理が盛りつけ方によって味わいを増すように、どのような本を目指すのかをアドバイスしてくれる編集者は大切なのです。。

 言うなれば本作は《舞台探訪》ものですが、こうした企画にはアプローチの仕方があります。(1)原作(赤毛のアン)は真実であると信じ込み、虚構の世界を現実に存在するかのごとく演出する、(2)物語は物語として割り切り、作品が舞台としている時代(あるいは作者の暮らしぶり)を明らかにする、という流れがあります。(1)はシャーロック・ホームズの愛好者に良く見られる手口です。シャーロッキアンは「探偵氏は実在し、かつ、今でも存命である」として振る舞いますから。チャールズ=ヴァイニー『シャーロック・ホームズの見たロンドン』(河出文庫ISBN:4309461689)。(2)の例としては、森薫+村上リコ「エマ ヴィクトリアンガイド」(ISBN:4757716435)が挙げられるでしょうか。いっそのこと(3)原作を読んでいないことを前提にして、物語風に書き進めるという方法だってあります。

エマヴィクトリアンガイド (Beam comix) シャーロック・ホームズの見たロンドン―写真に記録された名探偵の世界 (河出文庫)

 この『「赤毛のアン」の生活事典』は、そのどれでもない。迷走しているのです。これなら私に編集を任せてくれれば、少しはまともなものになっただろうに――と、僭越ながら思ってしまう。

 ちなみに、ホームズもメイドさん赤毛のアンも、すべて同時期、ヴィクトリア朝のものです。類書としてはホームズに関する優れた著作があるので、比較すると本書の弱点がまざまざと見えてしまいます。

 原作を隅々まで読みこんでおり、視学官とかレイヤーケーキが出てきたのがどこなのかをそらんじている人でもなければ、本書は楽しめませんね。衣装や鉄道などは興味深い話題を提供しているし、お菓子については良く調べてある。良い素材を手に入れているのに、それを生かし切れていない構成になっているのが勿体ないです。

cf. http://anime.tv.yahoo.co.jp/meisaku/anne/

cf. http://www.geocities.co.jp/AnimeComic/5815/

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Sunday, 2004/08/08

[] すべてが空である  すべてが空であるを含むブックマーク

 小泉八雲日本の心』講談社学術文庫ISBN:4061589385)読了。20の小片を集めた随筆集です。少しばかり読み進めたところで、一体いつ頃書かれたものであろうと調べたら、およそ1890年代に綴られたものでした。一世紀は経っているのに、まったく古さを感じさせません。これが日本の「原風景」だよなぁ、と思わせる場面が至る所に出てきます。それは私が実物を目にしたことのない、稲穂がそよぐ田園や、丁稚が走り回る商家の店先であるのに。

 作者は、またの名をラフカディオ・ハーン(Lafcadio Hearn)。1850年にギリシャで生まれた英国人。日本人(小泉節子)と結婚し、1896年に帰化。1904年に亡くなっていますので、今年は没後ちょうど100年になります。

 少しばかり「日本」に対する思い入れが強すぎ、美化しすぎているという嫌いはあります。それが、惚れ込んだ国のことを母国(英語圏)の人達に理解してもらおうとする意気込みの反映だとすれば、もっと肩の力を抜いてもいいんですよ――と言いたくなるほど。あ、このエッセイ、もともとは英語で書かれたものを日本語に翻訳しているのですよ。

 鋭さと暖かさが伝わってくるのは何故だろう。大学で西洋文学の講義を受け持っていたという知力の故なのか。はたまた、ギリシャ・イギリス・日本と、帰るべき場所を複数持った環境のなせる技か。そうではあるまい。これは、多数の書を読み、諸国を見聞しさえすれば、誰もが書けるような代物ではない。

 例えば東洋には見られない「擬人化」ということについて、彼は次のように説く。曰く、西洋人は自然を擬人的に観察しており、女性美の理想を通してしか世界を関知できないのだ、と。釣合・均整・幾何学的対称といったものに対する偏愛も、そこから生じるとする。そうして彼が賛美しようとするのは、驚くなかれ、襖(ふすま)に描かれた模様の不規則性なのだ*1

 仏教や神道に対する博識ぶりにも驚かされるが、その描写力には舌を巻く。次に掲げるのは、輪廻転生について思いを巡らせる場面である。

目に見え、手に触れ、量ることの可能なもので、一度も知覚を持ったことのないものがあるだろうか。喜びや苦しみに一度も おののき ふるえたことのない原子、一度も声を挙げたり話したりしたことのない大気、涙になったことのない露――いったい そういうものがあるだろうか。

「塵」より引用

こんな擬人化、とても出来ませんよ……

*1:「永遠に女性的なるもの」より

Saturday, 2004/08/07

genesis2004-08-07

[] Automatic Maid  Automatic Maidを含むブックマーク

 海外在住日記

 中心街の書店まで買い物に。「解雇法コンメンタール」という、なかなか良さそうな本を見つけ、42.75ユーロで購入。

 その足で“Imagenes”に行ってみたら、新作大量入荷しているではないですか! 即、確保。バレンシアだと入荷量が少ないので、買い逃すと手に入らなくなるし。高価な学術書を買った直後で心許なかったのですが、手持ち資金を全投入してきました。

で、“Mahoromatic”のことを少しばかり。原作だと第3話に、お手伝いさんってどんな人なのかを問わる場面があります。アニメだと第2話で、「ふ、普通のお手伝いさんだよ」に台詞が差し替えられていた場面。西語版でも

Mahoro: Ella es una sirvienta normar y corriente...

彼女は普通の、ありふれたお手伝いさんだよ。

になっていました。日本の女優の名前を出されても困りますからね。でも、巻末の注釈には市原悦子さん&中村玉緒さんの写真が載せられていて、と〜っても親切。他にも、「鍋」とは何ぞや、という説明まであって、作りがていねい。

 カバーを外してみたら、ちゃんと4コマ漫画もありました。さすがに、カバー裏にあった脱衣のマホまで再現するのは控えたみたいですが(笑)

 出版元は、IVREA。近刊は“Midori, echame una mano”(邦題:美鳥の日々)だそうです……

http://www.editorialivrea.com/

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Thursday, 2004/08/05

Doraemon  Doraemonを含むブックマーク

 海外在住日記

 先ほど、メールが届きました。差出人は、在バルセロナ日本国総領事館。用件は……

スペインでは毎年夏に「ドラえもん」の長編映画が上映されていますが、今年も8月末から 2002年に制作された「ドラえもん のび太とロボット王国」がロードショー公開されることになりました。

この度、映画配給会社の御厚意により、この映画の公開を記念して 日本語版の無料試写会が8月21日(土)午前11時30分から Muluti-Cine Aribau で開催されます。

入場料は無料で、日本人の方に限らずスペインの方など、どなたでも入場できます。

http://www.barcelona.es.emb-japan.go.jp/

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/genesis/20040805

Sunday, 2004/08/01

Valencia  Valenciaを含むブックマーク

 海外在住日記

 リーガ・エスパニョーラ3チームの日本遠征は、いずれもスペインの放送局で生中継していました。私は、TOYOTA対亀田製菓、もとい、VCFバレンシア‐アルビレックス新潟戦の最後の方だけ見たのですけれど……

 “Valencia”のことを「ヴァレンシア」と書いている人、多数いらっしゃいますね。スペイン語に【ヴ】という音は無いので、「バレンシア」が正しいのですよ。

――と、ちょっと八つ当たりしてみる。

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