YAMANA, Sawako

 山名沢湖さんの既刊を、まとめて読了。
 初期作品集『いちご実験室』は表紙買いして放ってありました。いかにも講談社の「なかよし」らしい流れの作品群でしたが、それほど上手いとも思わなかった。
 それが、『委員長お手をどうぞ』〔1〕は、目を見張る出来映え。第1話(学級委員長)でぐらぐらっときて、第2話(保健委員長)でよろっときた。第4話の冒頭で、きゅー。図書委員長の恥じらいあふれる表情と、リボン付きポニーテールに陥落。
 しかし、【少女漫画】の定義について語りたくなりますねぇ。『Amie』でデビューしているので系譜上の分類でいうと少女漫画家になるわけですけれど、掲載誌でみると少年寄り…… 投影対象たる主人公の設定に従って考えてみても*1、83.3%が少女漫画成分によって構成されているわけで。21世紀、少女漫画は【男少女まんが】*2 として生き延びていくことになるのでしょうか。ちょっと心配(と言いつつ、ちょっと嬉しい)。
 物語づくりがしっかりしている。委員長ものというジャンル自体は古来より脈々と続いておりましたが、そこからオムニバスへとストーリーを広げていく独創性は賞賛に値します。
 続いて『スミレステッチ』。全編に漂う浮遊感。この不条理というか非常識度は、竹本泉谷山浩子に通ずるものがあります(先達2人は遙か先を行っているので追いつかない方がいいと思うですけれど)。読者層を調査したら、共通してそうな気がするん(マイナー・メジャー同好会になったりして)。帯に銘打たれた「俊英・山名沢湖」に、偽りはないでしょう。
 『白のふわふわ』は、昨年11月に同時刊行された3冊の中では少々古め(と言っても2001年頃)のものが多い。『いちご実験室』で見られる“もたつき”を引きずっている感じがします。ま、あまりハジけてないというだけで、決して悪くはないのですけれど。
 短期間のうちに、これほど上達がはっきりわかる作家も珍しい。この先、山名沢湖の新刊が出たら必ず買うことを決意。
いちご実験室―ふわふわショートストーリーズ (講談社コミックスデラックス) 委員長お手をどうぞ 1 (アクションコミックス) スミレステッチ―7 stitchers of Yamana world (Beam comix) 白のふわふわ―9 clouds of Yamana world (Beam comix) 
http://utata.s18.xrea.com/(書評:うたたねこや)


【追補】 新井葉月少女生理学』のあとがきに山名沢湖の名前が挙がっていて、おや?と思ったのですが、古くは『いちばんいい笑顔あげる』に「山名佐和子」名義で登場していたとは気づきませんでした……(情報出所:http://www.moemoe.gr.jp/~nakayosi/

*1:主人公が少女ならば少女漫画に属するとする分類法。

*2:女のコが読んで「きゅん☆」とするより、兄貴な方々が読んで「うをを☆」とくるタイプの少女まんがのこと。流星ひかる正義の味方も楽じゃない』163頁を参照。