空想少女綺譚

 海野螢(うんの・ほたる)『空想少女綺譚』(宙出版ISBN:4776713942)。
 奇譚ではなく、綺譚ね。

思春期ゆえの不安定さで 危うい一面を見せる少女たち……。
遠い日の約束、秘密のカンケイ、あの日覗き見たオトナの世界……、
そんな「少女の日」のノスタルジーを 甘く切なく描いた「海野螢」待望の作品集。
少女とロボット、ショートカット&貧乳娘、教師と生徒、兄妹or姉弟、人妻○学生!?……。

 裏表紙の紹介文に、クラクラっと当てられて購入(そんなわけで、今回は裏表紙を書影として引用します)。なんかもう、これ以上に付け足すべきものは無いのではなかろうかというくらい、的確な内容説明。アオリ文句が、良い意味で煽っていない。
――引っ越し荷物から転がり出てきた玩具。
――幼い頃に別れた隣家の「お姉ちゃん」。
――うち捨てられたロボットとの恋。
――夕焼けの土手。
――最後の授業。
 さんざん使い古されてきた、郷愁を掻き立てるためのシチュエーションを次々に繰り出してきます。描き方に目新しさもない。けれども、暖かみがある。純朴な絵柄や作風と、描こうとしているテーマとが調和しているせいでしょう。「ヒトヅママルインチュウトウブ」では相当にメタなことをしているのに疎ましさはなく、赦してあげたくなってしまう。性表現は「含まれています」という程度。感情との結びつきを大切にしようという態度は、評価したいところ。
 惜しむらくは、物語進行の窮屈さ。短編集ということを差し引いても、詰め込みすぎという感が否めない。もっぱら読み切りを手がけているようですが、海野螢には、ある程度まとまった分量の中長編に挑んでみてもらいたい。きっと、いい作品を描いてくれることでしょう。
http://homepage2.nifty.com/unnoya/ (作者)
空想少女綺譚 (ミッシィコミックス)


▼ おとなりレビュー

エロも大事だけどちゃんとした話がないと嫌だって人にお薦めできる漫画だと思います。
http://d.hatena.ne.jp/bandai/20040924/1096033359

一般誌で書く時にどんなテーマを持ってくるかが読んでみたい。そんな作家。
http://d.hatena.ne.jp/blackrain/20041215#p2