Hatena::ブログ(Diary)

博物士

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Tuesday, 2005/05/31

ぼくはこんな本を読んできた

[] ぼくはこんな本を読んできた  ぼくはこんな本を読んできたを含むブックマーク

 立花隆『ぼくはこんな本を読んできた――立花式読書論、読書術、書斎論』(文春文庫/1999年/ISBN:4167330083)読了。昨日、移動中の機内で途中まで読んでいたもの。

 前半は、《知の巨人》のエッセイ。書かれた時期はまちまち。1頁を1秒で眺める読書術。書庫のために建物(通称:ネコビル)を建ててしまう書斎論。ここは読んでも役には立ちません。むしろ、そこまで人生を書物のために捧げる生き方はしたくないなと思ってしまうくらい。

 後半の書評は圧巻。立花氏は、その時々に於いて読まれるべき本は何かを紹介していく。簡にして要を得ている。ここに挙げられた本を見渡すと、今から12年ほど前の世相が良く分かる。

Monday, 2005/05/30

国会図書館

[] 大学院はてな :: 国会図書館  大学院はてな :: 国会図書館を含むブックマーク

 国立国会図書館議会官庁資料室へ行き、スペイン法の資料収集。閉架に収蔵されていた、1980年前後の議会議事録を出してもらい、立法史の研究に必要なものを探す。

http://www.ndl.go.jp/horei_jp/Countries/kunibetsu-top.htm

 で、即日複写しようとしたら「1冊につき80枚まで」ルールがあるので、5回にわけて申請しなくてはいけないという。う〜ん、外国の公文書についても著作権法を硬直的に適用する必要はないんだけれどなぁ。仕方ないので、後日郵送してもらうことにする。ちなみにA3用紙1枚につき50円。300頁ほどコピーを依頼したので、請求額が怖い。

 昼食は、館内の食堂で和定食をいただく。

 図書館を出て最高裁判所の前を通りがかると、僧侶の群れがぞろぞろと出てくるところでした。いったい何かと思ったら、もんじゅ訴訟の判決言い渡し日だったんですね。

 早めにHND羽田空港に到着。19時30分のエア・ドゥ便を予約していたのですが、16時30分の便に繰り上げてもらう(当日、空席があれば応じてもらえるのです)。

genesisgenesis 2005/06/04 00:31 後日談。8,647円の請求でした。

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Sunday, 2005/05/29

レジュメの山

[] 大学院はてな :: 学会発表  大学院はてな :: 学会発表を含むブックマーク

 日本労働法学会@慶応義塾大学にて、スペインの従業員代表制度について個別報告。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jlla/taikai/109taikai.html

http://sowhat.magical.gr.jp/thesis/20050529.pdf (配付資料)

 当日配布レジュメを268部用意したわけですが…… 重くて持ち上がりません(^^;) 仕方ないので、旅行用カートに詰め込んで会場へ向かう。

Follow the people who drag carts. They can lead you to the event.

カートを引きずって歩いている人々の後ろについてゆけ。そこがイベント会場だ。

萌える英単語 もえたん』70頁より

萌える英単語もえたん

 さて、発表はどうだったかというと―― とりあえず失敗ではなかったけれど、もっと構成をスッキリさせた方が良かったなぁと反省。細かいことを調べていると面白いことが色々見つかり、見つけたことは言いふらしたくなってしまうのですが、それを聞かされている側にとっては迷惑。情報は、多ければいいといものではないんですよね。発表中には、声を出しながら、目線は次に読もうとしている段落を追いかけるわけですが、次々と「この組み立てじゃ伝わりにくい」という箇所が次々と見つかる。平静を装いながら聴衆の反応を確認すると、やはり怪訝な顔をされている〜。

 懇親会の席上、Y.S教授に「勉強しているのはわかったけれど、構造を取りだして解説してくれると良かったね」という講評をいただきました。そう、私って貧乏性なもので、思い切って捨てられないんですよね……。会場での質問にしても、フレームを理解してもらうためには何が脱落していたのかを的確に指摘されましたし。

 これから発表内容を原稿に起こして学会誌に投稿するのですが、かなり構成を改めるつもり。

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Saturday, 2005/05/28

平河天満宮

[] 大学院はてな :: 学会前日  大学院はてな :: 学会前日を含むブックマーク

 日本社会保障法学会@慶応義塾大学。

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jassl/

 出てはみたものの、私の興味関心とは合致していなかったので途中退出。翌日の発表に備えることにする。半蔵門駅で降りてホテルに戻ろうとしたところ、近くに平河天満宮があるのに気づいて詣でておく。

http://www.tokyo-jinjacho.or.jp/syoukai/01_chiyoda/1007.html

 ちなみに、夕食はとんかつにしました(普段は菜食主義なんだけれど)。人智は尽くしたので、最後は神頼みと縁起担ぎ。

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Friday, 2005/05/27

東京大学 赤門

[] 大学院はてな :: 社会法若手研究会  大学院はてな :: 社会法若手研究会を含むブックマーク

 学会参加のため、東京へ私費出張(3泊4日)。

 ギリギリまでかかって、自分の報告で使う当日配布レジュメ150部を作る。見栄えがいいよう表紙に厚手のクリーム紙を使い、ホチキスで左側を綴じていくと――なんかコピー誌に見えてくるから不思議。

 さて、出かけようとして、最後にメールを読み出してみると、学会事務局から連絡が来ていました。「レジュメは300部用意してください」って、前々日の07時34分に言われても……。身支度をしながらもレーザープリンターに稼働してもらい、さらに18部を出力。

 午後は本郷の東京大学に向かい、研究会に参加。「ドイツ年金保険の動向」と「軍人軍属であった在日朝鮮人の年金受給権についての一考察」というテーマについて議論する。懇親会後、コンビニで学会レジュメのコピーを100部増刷。

[] 黄泉がえり  黄泉がえりを含むブックマーク

 移動中の機内で、梶尾真治黄泉がえり』(ISBN:410149004X)を読む。熊本市近郊で死者が次々と蘇った。その数、およそ24,600人。とまどう生者たち。死者たちも、やがて「特別復活者」として社会に再び関わっていく――。奇抜なSFであるが、死生観を描いた小説。『エマノン』シリーズにもあった、時間の羊水をたゆたうような感覚が心地よく、心に染み入る。

黄泉がえり (新潮文庫)

Thursday, 2005/05/26

そうだったのか 手塚治虫

[] そうだったのか 手塚治虫  そうだったのか 手塚治虫を含むブックマーク

 中野晴行(なかの・はるゆき)『そうだったのか 手塚治虫――天才が見抜いていた日本人の本質』(祥伝社新書/2005年5月/ISBN:439611009X)読了。

 あの好著『マンガ産業論』の著者によるマンガ論……と言いたいところだが、本書はちょっと変わったアプローチをしている。

 手塚治虫がマンガ家として生きたのは、敗戦の直後からバブル崩壊を目前に控えた1989年まで。この約45年間を手塚作品と重ね合わせ、時系列順に追っていく。日本という国と日本人が歩んできた足跡を辿る。そんなわけで、本書の特徴を一言で表現するなら日本論(手塚治虫研究)とでもなるだろう。

 手塚マンガを《テクスト》として読み込むことを避け、作者の思考・思索・思惑を大胆に追いかけていく。作品論として論じる場合には距離を保つことの多い、作者の生活状況や社会の風潮といったものにまで話題を広げる。

 その際、著者は2つの仮説を提示する。「手塚マンガの主人公たちは《アイデンティティの喪失》と《自分探し》という共通の属性を備えているのではないか?」というのだ。その一貫した視点で、『鉄腕アトム』や『地底国の怪人』から絶筆『グリンゴ』までを論じてみせている。ぞくぞくするほど面白い。

 エピローグでは、手塚治虫不在の16年間を著者が顧みている。歴史になっていない事象を語ることには危うさを感じるのだが、冒険的であることが本書の魅力であるから良しとしよう。

 手塚治虫を、マンガの神様としてではなく、一人の日本人として見つめる著者の視線には温もりがある。何よりも、手塚治虫という人の生き様を教えてくれたことに感謝したい。

Tuesday, 2005/05/24

NIKKEI BYTE no.265

Jaquet-Droz  Jaquet-Drozを含むブックマーク

 先日、日経BP社からメールが来ました。いったい何かと思ったら、私の写真を使いたいとのことでした。承諾しておいたところ、21日に発売になった掲載誌『日経バイト』2005年6月号が送られてきました。使われたのは「橋本周司のロボット論」という読み物で、ジャケ=ドロー父子のオートマタ(自動人形)に触れた箇所(84頁左下)。

http://store.nikkeibp.co.jp/mokuji/nby265.html

http://www.phys.waseda.ac.jp/shalab/index-j.html (橋本研究室)

 私にしても、このオートマタを見るためにスイスまで旅してきたので光栄なことだったのですが…… 載せておいた場所というのが、岡野史佳少年宇宙』(ISBN:4592126564)の舞台探訪。こんなネタ満載な記事を読まされた編集者の方も大変だったと思うん。

http://foxglove.dailybells.co.uk/swiss/f_neuchatel.html (ふみかてぃっくスイス)

スイス〈2004~2005年版〉 (地球の歩き方)

 ちなみに、このスイス旅行での記録は『地球の歩き方 スイス 2004-05』の《ヌーシャテル》の項にも掲載されています。4本投稿したら全部掲載されまして、やはり1冊もらいました。この町についての読者レビューは、100%が私の書いたものになってます(笑)

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Monday, 2005/05/23

天むす

Centrair  Centrairを含むブックマーク

 早めに名古屋市内を出て、中部国際空港へ。前便に空席があったら振り替えてもらおうと思ったのですが、あいにく満席でした。ナロウボディー機のMD-81をNGO/CTS線に投入するというのは、ちょっと輸送力不足じゃないかと思う。ところで、これは旧JASの機材なのですが、日本航空内部でも大事にされていないみたい。

1985年から就航し、今もJALローカル線の輸送力強化に貢献しています。

http://www.jal.co.jp/aircraft/aircraft/jal_11.html

つまり「古い機材なんだけれど買い換えするとカネがかかるから、仕方なく目立たないところで使ってます」ってことだよね……。

 そんなわけで空港内で時間を過ごすことになったのですが…… セントレア見物の観光客が多すぎます。空港の施設は機能的に出来ているのですが、本来的な利用者である搭乗者が食事をしたり休憩できない。平日だというのに、少なくとも観察していた11時から14時までの時間帯、どの飲食店にも列が出来ていました。かろうじて、回転の速い「天むす屋」さんで席を見つけて座れたから、事なきを得ましたけれど。

 展望デッキからの眺望は良かったです。地図に「南東:妃真加島*1」と書いてあったのを見て、ちょっとワクワクしてみたり。あ、この表示板、誤字がありますね(笑)

f:id:genesis:20050523193335:image

実は一昨日、N大まで行ったときに「工学部建築学科ってどこだろう」と探してしまったことを白状しておきます(もちろん近寄ってませんが)。


▼ 参考資料

http://www2h.biglobe.ne.jp/~sakamiti/o1.html

[] 伊勢エビの丸かじり  伊勢エビの丸かじりを含むブックマーク

 帰りの機内で読んだのは、東海林さだお『伊勢エビの丸かじり』(文春文庫/1998年/ISBN:4167177390)。面白くないわけがない。

Sunday, 2005/05/22

名古屋散策  名古屋散策を含むブックマーク

 万博のせいで帰りの便がとれなかったので延泊。この日は「ホテルライオンズプラザ名古屋」という、快適な施設に泊まれました。翌朝の朝食はビュッフェでしたが、簡素ながらひととおり揃っており満足。まずはホテルに荷物を預け、市内を散策します。

名古屋市美術館

 まず最初に向かったのは、名古屋市美術館

 特別展『エルミタージュ美術館――華やぐ女たち』を観る。副題にあるように、女性の肖像画を主題にした展示。ティツィアーノゴヤにジェラールにルーベンスといった一級の名画が55点も展示されておりました。開館直後には人も少なく、かぶりつきで楽しめたし。これだけでも名古屋へ足を伸ばした甲斐がありました。

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/

f:id:genesis:20050522172227:image

熱田神宮

 続いて、熱田さんに詣で、宝物館を訪ねる。深い森に抱かれた、清浄な境内でした。

http://www.atsutajingu.or.jp/

f:id:genesis:20050522190936:image

名古屋ボストン美術館

 それから、金山駅に隣接する名古屋ボストン美術館へ。特別展『ボストン美術館の巨匠たち――愛しきひとびと』を鑑賞。母館である米国側の収蔵傾向を反映してか、どことなくマチマチな組み合わせ。インドの彫像と、アフリカの写真と、中国の掛け軸とが同居しているんだから……。ヨーロッパの美術館に慣れた目には、奇異な感じがしました。あと、アメリカの画家って「いかにも」というクセがありますね(^^;)

http://www.nagoya-boston.or.jp/

f:id:genesis:20050522210324:image

松坂屋美術館

 美術館巡りの締めくくりに、百貨店の中にある美術館へ。『ミュシャ展――プラハからパリへ 華麗なるアール・ヌーヴォーの誕生』の最終日に駆け込む。

 館内はジェンカが出来るのではないかというぐらいに人で埋まっていました。展示の方はというと、もう溜め息の連続。特にポスターではないもの(水彩画や油彩画)は枠線の無い女の子が描かれており、「ミュシャ的な技法を伴わないアルフォンス・ミュシャ」が見られて興味深かったです。

http://www.matsuzakaya.co.jp/museum/museum.shtml

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Saturday, 2005/05/21

「スペイン通り」の前菜

[] 大学院はてな :: 日本スペイン法研究会  大学院はてな :: 日本スペイン法研究会を含むブックマーク

 スペインの法律を研究対象としている人達が集まって「日本スペイン法研究会」を立ち上げることになり、設立総会に参加してきました。会場は、南山大学(名古屋市)。日本でスペイン法を扱っている人は、多めに見積もっても20人なのですが、そのうちの13人が一堂に会するという記念碑的な出来事でした。マイナーな研究領域をやっていると訳語1つから自力で考えなくてはならないので、こういった協力体制があると心強い。団結って必要だと思うん。

http://spain.sociallaw.info/

 万博なんてものをやっているおかげでホテルが確保できず、カプセル泊まりという悲惨なことになりましたが、無理して出かけた甲斐はありました(もちろん、全額自己負担)。

 懇親会は、「スペイン通り」というレストランで。ワインもおいしかったし、料理も良かったです。

http://www.supeindoori.com/

[] Le Lettere dall'Italia  Le Lettere dall'Italiaを含むブックマーク

イタリアからの手紙 (新潮文庫)

 行きの機内で読んだのは、塩野七生(しおの・ななみ)のエッセイ集『イタリアからの手紙』(新潮文庫ISBN:4101181098)。旅に出ている間に読む海外ものはまた格別。

 本書の単行本が刊行されたのは1972(昭和47)年のこと。今でこそ老獪(?)な作家である塩野女史も、この頃は未だ若々しい。それでいて、観察眼の鋭さは萌芽が見られるし、エスプリの効き具合もいい。

hajichajic 2005/05/23 21:42 このご本、当のイタリア人から見ると色々言いたいことが多いらしく、『イタリア的考え方』なる本で某氏がブツクサと言っていました。勝手に憧れてやって来て、勝手に幻滅しないでよね、という密かな叫び。(笑)

genesisgenesis 2005/05/24 00:40 そりゃそうでしょう。あくまで、ある1人の日本人の視点で捉えた地中海世界なのですから。中立的な描写をエッセイに求めても、ねぇ。

hajichajic 2005/05/25 02:55 とはいえ、「日本人嘘つき、ニンジャがどこにもいないデース」とか言っているアメリカ人を見たら、きっと私たちも憤慨します。全然違う気もしますが。

genesisgenesis 2005/05/25 03:57 いや、それが笑い話にならないのですよ。スペインに居たとき、忍者の入門書を翻訳してくれと頼まれたことがありまして…… 記憶の中のセーラーマーズを頼りに《臨兵闘者皆陣列在前》の九字を切ってみせたことがあったり。▼ 国外では「日本」というものが意外な形で現れてくるので、面白いんですけれどね。真剣に対応しなくてすむなら。

hajichajic 2005/05/26 14:04 ニンジャの入門書。「毎日かかさず麻を飛び越せ」とか書いてあるのかしら。というかそんなスペイン語の本が。いったい犯人は誰だ。

Friday, 2005/05/20

STUDIO VOICE vol.354

[] INDISPENSABLE COMICS 2005  INDISPENSABLE COMICS 2005を含むブックマーク

 【吸血鬼もの】というカテゴリーに属するマンガの系譜をまとめてみたら面白いかも知れない、と思いついた。折も折、雑誌“STUDIO VOICE”の2005年6月号(ASIN:B0009EZ1I8)における特集『最終コミックリスト200』では「ヴァンパイア」という項目が立てられていたので、資料になるのではないかと思い買い求めてきた*1

http://www.infaspub.co.jp/studio-voice/sv-backissue/contents/2003/sv-contents.html

 この特集は「00年代マンガのすべて」という副題から察せられる通り、同時代的に評価されるべきとされる作品200を掲げている。こうした作品リストについては「××が入っていないのは何故か」といった論評のされ方が為されることも多いが、ここではそのような評価の仕方はしない。リストの内容に不満があるなら、代わって自分でリストを作成すれば良いだけのこと。

 興味深かったのは、収載200作のうち、私が読んでいたのが14作品に過ぎなかったことである。かなり読マンガ量の多い私であるが、網羅的に観測しているわけではないので、このようなことは頻繁に起こる。

 というのも、このリストに載っているのは大型グロース(成長株)であるのに対し、私は小型バリュー(割安株)の発掘に努めているから。「サブカルチャーの中でサブカルしている」とも言える。

 そんなわけで、新鮮な気持ちでリストを眺めたわけですが…… 添えられている文章の質が低い。13人が分担執筆しているのですけれども、執筆者の力量差がはっきり出てしまっている。

 申し訳ないが、1人は実名を挙げての批判の対象になっていただくことにする。【吸血鬼】の項目を書いた、山田和正氏(1982年生まれ)。

怪力少女(設定は高校生だがどうみても幼女)が宇宙人吸血鬼に強引に血吸われて性的絶頂に達してる。イっちゃう。小学生低学年女子が読むマンガか? 吸血鬼が楽しそうに女の子を「家畜」呼ばわりとかいきなりUFO乗せて宇宙から「地球よりお前が大事!」とか言うの、教育的によくないよ! バタイユやクロソウスキーなら「悪」と呼びますよ! でも魔法かけられてダブル性転換した状態で血吸ったり。ジェンダートラブル! 狂ってる!

このどこが悪いのかというと、取り上げた作品の本質(面白さ)を伝える努力をしていない。これはせいぜいがコメントであって、レビューとは言えない。この紹介文を読んで、紹介された作品に興味が湧いてくるだろうか? ウケの良さそうな単語(要素)を並べているから、「キャラ萌えするのが当然」な読者相手であれば脊髄反射的に喜ばれるのかもしれない。しかし私の価値観では、山田氏の所業はプロの水準を満たしていない。やるべきことを外してみせるというのも芸だが、山田氏は全般的に要所を外している。

 ちなみに、ここで引用したのは、おおばやしみゆきモンスターキャンディ』の項。率直に言って、このような紹介のされ方をした作者と作品が可哀想だと思う。

 それに対し、宮昌太朗(みや・しょうたろう、id:miyashow)氏は群を抜いている。どれを例に出すか悩むところだが、類似・対比作品の固有名を挙げずに紹介文を書くという難易度の高いことをしているものを引用することにする。

ごく普通の高校生のごく普通の恋愛、かと思えばさにあらず。レイプの痛み、自殺願望、童貞喪失の高揚感、離婚した両親に引き裂かれる心、腹違いの妹……と、これでもかといわんばかりのクリシェのオンパレード。にもかかわらず、メチャクチャ面白いのは、徹底してメロドラマに殉じた“物語”の強さにある。極めつけは、他人を“モノ”としか認識できない極悪人・滝川。こんな最低最悪の人物を描けたというだけで価値のある作品。

1作品につき200文字程度の短文なので、難しい。しかし、こうして同じ制約の中にある執筆者同士を比べてみると、上手下手がわかってしまう。宮氏は、この字数制限の中で内容紹介のみならず着眼点の指摘まで行っており、評論と呼ぶに足りるものを我々に提示している。なお、こちらは中野純子ちさ×ポン』の紹介文。私は、このような書評に接したときに「これは読んでおかなくては」と思う。

 宮氏は他にも、衆知度が高くて《書きにくい》であろうと思える『失踪日記』『ケロロ軍曹『エマ』などでも、小気味よい紹介文を書いている。志村貴子についてのコラム「すべてが最小限の要素で研ぎ澄まされている」も、うならさられる。伊藤剛氏との対談*2においても整った論旨を提示しており、その才能が窺える。

 1人の評論家を発見したということに、『スタジオ・ボイス』354号の価値を見出した。


▼ おとなりレビュー

作品のチョイスとレビュアーの質に、ちょっと疑問を感じるような出来だった。

http://d.hatena.ne.jp/matsukura/20050515/p1

なんだろうー、身体の関係を持った後に「実は結婚してるの」って告白されるぐらいの陳腐な結末だよ。

http://d.hatena.ne.jp/roman-taste/20050506#p8

*1:結果としては、期待に添うものではありませんでしたが。

*2http://d.hatena.ne.jp/goito-mineral/20050407#p2

miyashowmiyashow 2005/06/22 02:57 はじめまして。
ひと月以上前の記事にコメントをつけるのもどうかと思ったのですが、分不相応なほど褒めていただいているようで、申し訳ないやらなにやら……。
で、せっかく引用いただいているのですが、中段の「徹底した“物語”の強さ」という部分は、正しくは「徹底してメロドラマに殉じた“物語”の強さ」です。
「メロドラマ」が抜けてしまうと、前半からの流れがおかしくなってしまうように思うので……。

genesisgenesis 2005/06/22 21:48 ご指摘どうもありがとうございました。要にあたる箇所で引用を間違えてますね。ご迷惑をおかけいたしましたm(_ _)m 今後とも活躍されることを願っております。また何かお気づきのことなどありましたら、どうぞコメントお寄せくださいませ。

Wednesday, 2005/05/18

風の十二方位

[] 風の十二方位  風の十二方位を含むブックマーク

 先日、久しぶりにリアル書店に出かけて、気になっていた作品を大量に買い込んできた。書評を読んで気になっていたものが殆どだったもので、内容を知らないまま家まで持ち帰った。開封してみて気づいたのだが――吸血鬼ものが4作ある(^^;)

  • ネコミミモード
  • “鼻血ブー”
  • “クロエとミサキ”
  • “貧乳ショートカット”

 有馬啓太郎月詠』は今さらでしょうから、読了記録として残しておくにとどめます。私は2年ほど日本にいなかったので、乗り遅れちゃったんですよね。うにゃにゃーん♪ 他2作は、日を改めて文章を起こすつもりです。

 本日取り上げたいのは、海野螢(うんの・ほたる)『風の十二方位』(2003年/ISBN:4925148494)。以前読んだ短編集に惹かれて、初単行本も買い求めてみました。

 これまたヒロインが吸血鬼なのですが、独自性があるのは「吸うもの」と「吸い方」。血液ではなく体液ならば何でも良いということで、キスをして唾液を交換してみたり、えーと、あのー、そのー、成年向けの描写になったりする。

 なんとなく、ここまでヴァンパイアのイコンを操作してしまうと、「それはすでに吸血鬼ではなくって、残されているのは八重歯がキュートなところだけだろ」という気もしますが。

 さらにもうひとつ本作を特色づけているのは、体液を吸収されること(捕食)により被対象者が消えてしまうということ。彼らは「オメラス」と称される別次元へと転移させられる*1

 失踪という形で人々が消えていく。しかし、彼女らは食餌をしなければ存在を維持することができない。その狭間に主人公が置かれる。ここでは、『月姫』においてさっちん弓塚さつき)シナリオが掲げたものと同じ主題が提示される。海野が示した回答は青臭さがあって、練り上げ切れていない。それでも物語を真剣に作ろうとしているひたむきさを感じる。こういう作家を応援してあげたい。


▼ 書評

http://www.asahi-net.or.jp/~WF9R-TNGC/juunihoui.html (谷口隆一氏)

*1:あとがきにおいて作者は、アーシュラ・K・ル=グウィン「オメラスから歩み去る人々」(『十二方位』(ISBN:4150103992)所収)をモチーフとして本作を組み立てていることを述べている。

Tuesday, 2005/05/17

お迎えです。〔5〕

[] 『お迎えです。』論  『お迎えです。』論を含むブックマーク

もし緒川千里への好きという感情をあきらめてしまったならば、阿熊幸への好きという感情さえもあきらめてしまうだろうと確信したからだ。(中略)彼にとって「好き」という欲望に忠実であれば、どのような好きもあきらめる必要がないのだ。

http://d.hatena.ne.jp/nomas/20050515/1116140830

 田中メカお迎えです。』を、《欲望の断念》の問題として読み解こうとする分析。このような理解に立った上で、「まだ だめなのかなぁ……」というつぶやき(第5巻71頁)に始まる堤円えんちゃんの内心の動きを解釈している。とても興味深く拝読しました。

 そっか、「ガンスリンガー・ガール」も「極楽送迎」もGSGなのか。そういえば、物語空間の現実世界からの解離度も共通しているよなぁ――というのはさておき。

 その説示には大いに賛同するところなのですけれど、後段については検討を要するように思う。

死者が一様にあきらめているのは死んでいるからだとすれば、生者が欲望をあきらめないことは生きている者の倫理だということになる。

一般論としてはこれで良いのだが、作品論としては補強をしておくことが必要ではないかと感じた。それというのも、本作では「欲望を抱え込んだ死者」という者たち(ゲスト幽霊)が登場するからである。彼らが「この世」から「あの世」へと出立するのを妨げるのは未練(=あきらめられない欲望)。それは時に、表象的に鎖という形を以て描かれる。

 死者と生者の相違は、《肉体という器》を保有しているか否かである。しかしながら、欲望は肉体に結びつくものではない。欲望は、精神(霊的存在)を「この世」に縛り付けるものとして描かれる。すなわち、欲望をあきらめないことは、この世に位置するための十分条件である。

 この理解の先には、欲望をあきらめた肉体というものが浮上する。それは、生きてはいるけれども生者ではないと認識して差し支えあるまい。

 肉体は、生者として欲望を実現するための手段(ツール)である。例えば、第4巻に登場する「白バラの君」もしくは「追試の女王」こと二ノ宮楓は、「……触って みたかったのよ」と言う(97頁)。肉体を失った者は、肉体を必要とする欲望を叶えることが出来ない。それとはパラレルに、死者に対して欲望をあきらめない(実現する)ためには、死者と同質の存在(霊体)でなければならない。えんちゃんが「俺 今の状態なら 幽霊さわれる?」(第5巻127頁)というのは、それを端的に表している。

 そこからすると、上述の命題を次のように修正することで、幽霊を議論の俎上に載せられないだろうか。

 「生者が欲望をあきらめないことは、《この世》に《肉体》を留めている者としての倫理である」

 これにあわせて再読してみましたけれど、『お迎えです。』は、やっぱり名作なのです。

▼ 単行本(1999-2002年、全5巻)

  1. ISBN:4592177460
  2. ISBN:4592177630
  3. ISBN:4592170202
  4. ISBN:4592170210
  5. ISBN:4592170229

▼ 追記

http://d.hatena.ne.jp/./nomas/20050518/1116413924 (応答)

Sunday, 2005/05/15

225

[] hatena :: keywordlist  hatena :: keywordlistを含むブックマーク

 先だって実装された、ユーザー毎のキーワード編集履歴リスト。かなり昔に手がけたものは自分でもすっかり存在を忘れていたりして、重宝しています。ところが、これを公開している人って少ないですね。デフォルト設定では[非公開]になっていますし、事前の意向調査でも不人気でしたし。非難の的にされるかもしれない情報を“あえて”公開しようという人が少ないのは致し方ないと思いますけれど。

http://d.hatena.ne.jp/./hatenadiary/20050416/1113621297

http://d.hatena.ne.jp/./hatenadiary/20050511/p2

 で、以前から気になっていたことを調べてみました。キーワード周りで良く見かける人達って、どのくらいの頻度で[append][edit]しているのか? ちなみに私ですが、昨日までに4486件(20×225頁ぶん)の編集をしていたようです。

http://d.hatena.ne.jp/genesis/keywordlist

 これが多いのか少ないのか。これまで独立独歩でやってきましたけれど、たまには周囲との距離を測って自分の位置を確認してみたくなりまして。で、手当たり次第に動き回って公開している人を探し、何頁まであるのかを調べてみると……

bmpさん  1頁
sasadaさん  2頁
adramineさん  4頁
keywordmaniacさん  8頁
CAXさん  15頁
sugioさん  19頁
herecy8さん  42頁
miccheckさん  46頁
umikazeさん  58頁
caramellyさん  211頁
genesis  225頁
Piccoliさん  241頁

 IDを見て誰だか思い当たる人のところだけ巡ったので、そもそもの収集方法からして偏りがあります。そこのところご承知置きを。ランキングにする気もありません。それにしても「さすがはPiccoliさん」という結果でした。これらの履歴(公開している人の顔ぶれ)を眺めていると、その人の行動規範や、その時々の思考の向きが伝わってきて、なかなか有意義だと思うのですけれど。

cf. http://d.hatena.ne.jp/./manpukuya/20040518/makekeyword (キーワードをたくさん作ったユーザーを調査する)

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Saturday, 2005/05/14

[] 大学院はてな :: 文書送付行為  大学院はてな :: 文書送付行為を含むブックマーク

 労働法の研究会にて、海外漁業協力財団事件の検討。

 原告Xは、交通事故にあって頸椎を捻挫し、傷病休暇を取得していた労働者。被告Yは、Xが治療に専念しているのかを疑問に思ったことから、弁護士を介して探偵社A社に調査を依頼した。ところが、A社の調査員Gがバイクで尾行していたところをX夫婦に見つかり、逃亡を企てた際にXの妻に傷害を負わせた。

 XはYに対し、本件についての話し合いを求めたところ拒否された。そこでXは、Yの非常勤理事・幹事・評議員らに対し、「Yの常勤理事らの行為は卑劣で、不当かつ違法であると論評し、本件文書の送付によっても事態が改善されないのであれば、Yには自浄能力がないものと判断せざるを得ない」旨の文書を送付した。

 これに対しYは、本件送付行為がYの名誉と信用を著しく傷つけるものであるとして、Xを懲戒処分(3日間の停職)に付した。本件は、その無効確認を求めるもの。

 第一審*1は、請求を認容。ところが控訴審*2では一転し、控訴認容(労働者の請求を斥けた)。

 考えてみたのだけれど、これは高裁がおかしい。文章送付行為について、次のような判示がある。

 「……これを受け取った理事等が困惑したことは容易に推測することができるし(中略)Xの本件行為により、理事長が説明や陳謝を余儀なくされるなど、Yの業務に支障が生じたことは明らかである。」

 会社の意に沿わないことをすると「企業秩序違反」になる、というのはあんまりである。高裁判決は、原判決の論旨を引用したうえで逆の判断をしており、全体としてみても論理の流れが悪い。発端となった尾行事件は労働者1個人に関わるものであり、公益通報者保護法が想定するような事案ではない。本件行為は労使とも、積極的に奨励されるものではないだろうけれど、かといって非難すべき事柄とも思えない。「良い」と「悪い」の間には、「どっちでもない」があって然るべきだろう。

 本件は企業内部における「苦情処理」の1パターンであり、そのための世論形成として文書を送付したものといえる。そうすると、不適切な行為態様としては(1)文書・発言の内容が一定程度の真実性を備えていないとき、(2)企業内に担当窓口があるのに利用していないとき、(3)内部的な解決を待たずに外部に問題を告発したとき、(4)結果として重大な混乱を生じせしめたとき――が考えられうる。しかし本件は、そのいずれも引っかからない。原告労働者は、まず社内で解明が図られるよう求めたが使用者がこれに応ぜず、当初の意図が達せられなかったため文書送付行為に及んだものである。その文面も、穏やかとは言えないまでも過激というわけでもない。

 送付先の非常勤理事・幹事・評議員は、意識の上では「社外」の人間かもしれないが、組織上は「社内」の存在である*3。会社の業務運営をチェックするのが社外取締役の仕事なのであるから、これらの者達に対し従業員から情報が寄せられて「困惑」したとしても、企業秩序を乱したとは言えないだろう。経営にあたる者が社外取締役の質問に対応するのも「通常の業務」の内にあると思うのだが如何だろう。評者は、同旨を言う地裁判決の判断が適切であったと考える。

*1:東京地裁判決 平成16年5月14日 労働判例878号49頁

*2:東京高裁判決 平成16年10月14日 労働判例885号26頁

*3:本件に限って言えば、非常勤理事に某官庁のお偉いさん方が名を連ねているので、実際には政治的な問題だった(で、腹いせに懲戒処分を出した)のだろうなぁと推察できるのだけれど、それはさておき。

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Thursday, 2005/05/12

[] 大学院はてな :: はてなグループの教育的利用  大学院はてな :: はてなグループの教育的利用を含むブックマーク

 辻大介(id:dice-x)氏による試み。大変興味深く拝見しました。

http://d.hatena.ne.jp/dice-x/20050509#p1

http://honwaka.g.hatena.ne.jp/dice-x/

 私は、農業系の専門学校で「文章表現法」という講義を担当したことがあります。要は、就職活動を控えた学生に、エントリーシートや作文を書かせるというものなのですが。これが、ぜんぜん書けないのです。だめなパターンは大別して2つあって、(1)何を書いたらいいのか分からず書き始められない、(2)規定の字数は埋まっているけれど内容が支離滅裂――というもの。

 これは仕方ないかと思います。高校までの学校教育で論理的な日本語を書くという練習を積んできていないから。今までやったことないのに、いきなりやれと言われたって出来るものではありません。事実、私が数回ほど書き方の道筋を教えるだけで、ともかく書き進められるようになる生徒が増えました。「序破急」の3部構成にするといい、というだけで良くなったり、とか。

 とにかく文章を書いてみて、誰かに直してもらう――というのが、最も勉強になります。売られている作文の指導書を読んでも役に立たないのは、「いい作文の例」は載っていても、「悪い作文の何処をどう直せば良くなるのか」が伝わってこないからだと思います。

 で、私はかねてより(大学で職を得たら)大学生を相手にウェブを介して文章表現の演習をしてみたいと思っておりました。前述の専門学校では紙を使っていたのですが、これが大変。提出された課題の中から、「ちょっと手直しをすると良くなる例」を探し出し、朱を入れてから印刷していました(当然モノクロ)。ウェブならば、添削指導の記録を蓄積・配布していくことも容易です。勉強したくなった時には、過去の記録を読み返せば自習できます。「どこかの偉い人が書いた文章」には興味を示さない学生も、同じキャンパスで席を並べる友人知人の文章が直されていく様子ならば関心を向けるのではないでしょうか。

 また、これを読書感想文ではなく「テーマを決めた書評」という形で行っているのも注目すべきところでしょう。テーマを自由に選定させると書けない学生も、課題を設定すれば大丈夫という例が多いのです。読んだ本について書くことにするというのは慧眼。

 私は、文章の指導は国語科ではなく社会科(社会科学)の側で行った方が、論理的な日本語の訓練になると感じています(国語≠日本語)。とある教育大学附属中学校で、ディベートを取り入れてみた事例を見聞きしていますが、文章の訓練とは連動していないように見受けられました(頭の回転が速くて声の大きい子が場を圧倒してしまいますし、年齢的にも無理がありました)。個別に文章を書かせて論理性の不備を直していくというのが、大学におけるリテラシー教育として相応しいのではないかと、今回の試みを拝見して感じました。

 文章を書くことが大変だということを身を以て体験すれば、著作権に対する意識も向上していくと思いますし*1

――そのための要員として、私を採用してくれる大学はないでしょうか? 求人、お待ちしています。

*1:キーワードに辞書の内容を書き写すようなことをやめさせたい

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Tuesday, 2005/05/10

地主と都市デザイン

[] ロンドン  ロンドンを含むブックマーク

 鈴木博之(すずき・ひろゆき)『ロンドン――地主と都市デザイン』(1996年1月/ちくま新書/ISBN:4480056572)読了。

 ロンドンという巨大都市は、地主たちによって別個に開発されたエステート(estate)の集合体である――と説く、近代建築史の本。第1章ではLHRヒースロー空港[西]から中心部[東]へという横の移動を、第2章ではリージェンツ・パーク[北]からピカデリー・サーカス[南]への縦の移動を素材にする。ランドマークを追いかけながら都市の形成に思いを馳せるのは楽しい……のだが、本書は地図の扱いがぞんざいなため、ある程度ロンドンという街の構造を知っていなければならないところは気配りに欠ける。

 本書の主題は第4章「町のなりたち」で提示され、それが第5章「ジョージアンからヴィクトリアンへ」にて具体化されていく。

 その枕として、第3章「クラブの世界」を置く趣向が面白い。エステートによる開発というのは、日本でも三菱財閥が政府払い下げを受けて展開している*1。同じ集団的土地所有でも、それがロンドンでは大英帝国らしさをまとうのは、クラブの存在が関係しているとする。この章の存在が、本書を単なる建築史に留めておかない。ここで紹介されている、趣味人(ディレッタント)であることを良しとする結社の意識が興味深かった。

*1:120頁。例として、丸の内、神田三崎町、駒込大和郷

Sunday, 2005/05/08

四季 冬

[] 四季 冬  四季 冬を含むブックマーク

 森博嗣(もり・ひろし)『四季 冬――The Four Seasons, Black Winter』(ISBN:4061823639)読了。

「それでも、人は、類型の中に夢を見ることが可能です」

「人間の命など、すべて類型ではないのかね? 人の躰など、人の思考を形にするための類型だ」

 誰の発言であるかは伏せます。ここに現れているような倫理観・生命観と、これからの科学技術は向き合っていかなければならないのだろう。本書は、それがリアリティを伴っていない21世紀初頭におけるSF。

 この命題は、「思考する類型」を人と認めるのだろうか。脳裏に未だ見ぬマルチ(HMX-12)の姿を思い浮かべながら読み進める。

Saturday, 2005/05/07

[] 大学院はてな :: 学会準備報告  大学院はてな ::  学会準備報告を含むブックマーク

 今月末に開催される日本労働法学会の第109回大会にて、個別報告をします。

とき
2005年5月29日(日) 10時25分より (60分間)
ところ
慶應義塾大学 (三田校舎)
題名
スペインの従業員代表制 (で登録したのですが、実際のところは「スペインの集団的労使関係システム論」になりそう)

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jlla/taikai/109taikai.html

 id:genesis の実物を見たいという方、どうぞ足をお運びください。学会員でなくとも入場できます(傍聴費500円)。たぶん、報告後には休憩室で倒れ込んでいるかと思います。目下の心配は、報告の時まで無事に生きていられるかどうか、なのですけれど(神経が細くてねぇ)。

 理系(自然科学系)だと、壁に紙を貼り出して立っているだけでポスター発表という業績になるそうですが…… その程度で「学会発表」になって、博士号が取れたり学振に当たるなんて、うらやましい*1

 で、今日は研究会で準備報告でした。一昨日くらいから胃を病んでます。ようやく論旨が組み上がりましたので、これから聞きとりやすい文章に練り上げていきます。

▼ レジュメ

http://sowhat.magical.gr.jp/thesis/20050529.pdf

*1:それはそれで大変なのでしょうけれど、やっぱり「学会発表」というものの価値が人文社会系と理系では全然違う。うらめしや。

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Friday, 2005/05/06

四季 秋

[] 四季 秋  四季 秋を含むブックマーク

 森博嗣(もり・ひろし)『四季 秋――The Four Seasons, White Autumn』(ISBN:4061823531)読了。

 うわ〜、びっくりだよ。

 あまりにも仕掛けが大がかりすぎて、してやられました。×年(と××冊)とが、このためのカモフラージュだったなんて……。

Thursday, 2005/05/05

さよなら、ぺとぺとさん

[] さよなら、ぺとぺとさん  さよなら、ぺとぺとさんを含むブックマーク

 木村航(きむら・こう)『さよなら、ぺとぺとさん』(ファミ通文庫ISBN:4757719000)。

 つまんない……。

 さして厚みのないキャラクター達が、ドタバタ騒いでいるだけでした。

Wednesday, 2005/05/04

[] 大学院はてな :: 世界がもし100人の博士でできていたら  大学院はてな :: 世界がもし100人の博士でできていたら を含むブックマーク

 学振の申請書づくりに勤しんでいる同胞に捧ぐ。

▼ 創作童話 『博士(はくし)が100にんいるむら』

http://www.geocities.jp/dondokodon41412002/index.html

 残酷性を備えてこそ童話。ちなみに私ですが、まだ博士号を取っていない(留年して単位取得退学を回避している)ので、今なら統計外に戻れます。来年度は「むしょく」か「ゆくえふめい」である確率が、24%かぁ。私の周囲だと、もっと高い数値を示している。あははー(^^)

 学振の話に戻すと、年齢要件のせいで今回が最後のPD応募です。修士課程を4年かけて修了したうえ、博士課程6年目のD3なもので。日本スローライフ学会があったら、理事に選出してもらえるんじゃないかと思う。

 前回は、出身研究室選定理由書を添えたせいで、ペラペラな葉書が来ました(泣)。そこで今回は、法学研究科を出て国際広報メディア研究科へと転出することにします。地域研究(エリア・スタディ)をやろうかな、と。コード表Cが[024]から[856]になるのには、ちょっと遠い目……。

f:id:genesis:20050506144841:image


 追記。

 上記の創作童話、ネタはネタとして生暖かく放っておいたのですが、影響力が大きすぎるみたいなので(苦笑)、ちょっと書き足しておきます。自殺率はパーミル(‰)の単位になるはず。それをパーセント(%)で表現する以上、何らかの誇張(統計的なマジック)がありますよね。検証は、なんばりょうすけ氏が手がけられているので、そちらに譲ります。調べれば調べるほど、人文社会系は数値が悪化するだけだろうし。

http://d.hatena.ne.jp/rna/20050505#p1 (児童小銃)

Tuesday, 2005/05/03

四季 夏

[] 四季 夏  四季 夏を含むブックマーク

 森博嗣(もり・ひろし)『四季 夏――The Four Seasons, Red Summer』(ISBN:4061823396)読了。

 真賀田四季は、あの日に至る。『すべてがFになる』の、はじまりの時間に。

 この小説を読むべきであったのだろうか。空隙が埋められたことで安堵する私と、あの冷徹な《美しさ》が損なわれたように感じる私とがいる。

Monday, 2005/05/02

世界の終わりの魔法使い

[] 世界の終わりの魔法使い  世界の終わりの魔法使いを含むブックマーク

 西島大介(にしじま・だいすけ)『世界の終わりの魔法使い――Ça ne fait rien』(ISBN:4309728464)を読む。

 なんかヨクワカラナイ。いや、ストーリーはわかりやすいのだけれど、作品の位置づけがヨクワカラナイ。

 非立体的かつ記号的な絵柄。

 水平・垂直に裁ち切られた空間(コマ)。

 冒険、勇気、がんばる、信じる。

 これらの要素は、ここ数十年に渡るマンガ表現の試みを意図的に否定しているように見える。この作品からは、フェティシズムを喚起させるものを感じ取ることは難しい。端的に言うと、萌え要素やキャラ属性といった尺度から逸脱している。それは新しいというよりも、むしろ手塚的なるものへの回帰をイメージさせる。だが不思議と、古いという印象は持たない。仕組まれたノスタルジー、とでも言うべきだろうか。

 「世界」や「影」といったものを通じて表現される《実存》の認識を、どう読み取ればいいののか。かれこれ3回ほど読み返しているのだが、未だにそれがヨクワカラナイ。

 作者からの模範解答は“San Fairy Anne”(どうでもいいさ)だが……


▼ おとなり書評

 今回は自分の言葉でうまく表現できなかったので、少し多めではあるけれども、上述の疑問に対する回答を提示してくれるのではないかと思われる5箇所を掲げておく。

とても透明。どこにも引っ掛かりがなくて、ぼうっと読んでいると何にも気づかないまま最後までストンと落ちてしまいそうな感覚。

http://d.hatena.ne.jp/Erlkonig/20050303/1109779903

いわゆる「セカイ系」のモチーフを過剰に氾濫させることで、逆説的にセカイ系への批評を試みようとする態度は、西尾維新の『きみとぼくの壊れた世界』と同一の地平を共有しており、同時に上記西尾作品に対する一つの回答でもある。

http://d.hatena.ne.jp/frigidstar/20050323

これからは漫画でも自覚的なサンプリングが常套になるのかも。

http://d.hatena.ne.jp/inuimu/20050402

村上春樹の世界の終わりが外の世界を感じさせる閉じた世界であったのに比べて、西島大介の開いた世界は外を感じさせない開いた世界になっています。

http://d.hatena.ne.jp/kazutokotohito/20050317#p1

西島大介の評価のされかたは新海誠にちょっと似ているかもな、と思う。

http://d.hatena.ne.jp/yskszk/20050227#p3

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