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博物士

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Monday, 2005/10/31

The marchant of Venice

[] ヴェニスの商人  ヴェニスの商人を含むブックマーク

 マイケル・ラドフォード監督作品『ヴェニスの商人』を観てきた帰り道。

http://www.venice-shonin.net/

この先にはネタバレがあります。

 「音楽が良かった〜」

 「うん。声楽も,器楽曲も」

 「さすがMGM」

 「?」

 「Metro-Goldwyn-Mayer」

 「あ,『トムとジェリー』の。最初に「が,がお……」*1「がお〜」って吠えるやつね」

 「アル・パチーノ*2の演技も良かった」

 「もう最高だよ〜」

 「特にセリフ回しがね」

 「元が戯曲だけに,耳で聞いていて心地よかった」

 「韻を踏んだ言い回しなんかは,日本語にしてしまうと味わいが伝わらないもん」

 「くだけた言い回しを避けていたから,擬古文調になっていたし」

 「かといって,古英語にしてしまったら分からないもんね〜」

 「当時の雰囲気にするなら,いっそのことイタリア語にしてしまったらどうかとも思ったんだけど―― それじゃシェイクスピアじゃなくなっちゃうか」

 「日本語字幕は,さすが小田島雄志先生という仕上がり。なっちじゃなくて良かったよ」

 「訳者が戸田奈津子だったら,観に来ませんってば(笑)」

 「他の変なところといえば,ポーシャ*3の居城かなぁ。ばりばりのCG合成で浮いてた。」

 「しかもイタリアの建築様式じゃないし*4

 「そういえば差別問題なんだけれど。アラゴン王が……」

 「あ,やっぱり気になるよね。私はスペインを莫迦にするなぁ!って内心で吠えてた*5

 「別にユダヤ人だけを嘲笑の対象としていた作品ではなかったんだね」

 「スペイン人も,モロッコ人も」

 「シェイクスピアは当時の時代意識に沿って書いていたのだろうけれど」

 「そういった政治的な文脈を切り離すためにラドフォード監督が苦心したのが分かるよね」

 「その代わり,原作では背景に退いていたシナリオの粗が前景化してしまったけれど。あんな女達のどこに惚れるの? 理解不能だよ(笑)」

 「それにしても,アントーニオ(金を借りて肉を担保に取られそうになった男)は非道いなぁ」

 「というと?」

 「だってさ,恩赦の条件としてシャイロックキリスト教へ改宗することを要求していたけれど,それだけの意味ではないもの」

 「あぁ,そうか。ユダヤ教徒でなくなるということは,高利貸しを営めなくなるということか。財産の全額が没収されそうなところでシャイロックに半分が残るよう取り計らっているから,観客は〈アントーニオ=いいひと〉という印象を持つけれど……」

 「シャイロックは生活の手段を奪われてしまった」

 「裁判ではユダヤ人に〈慈悲〉を求めていたけれど,反対からの〈慈悲〉は寛容さに欠けるなぁ」

――と,いろいろツッコミどころ満載で,会話が盛り上がる。有名な原作の筋立ては維持しつつ,奇をてらわずに映画化しており,楽しめる作品でした。

*1:それは観鈴ちん

*2シャイロック(ユダヤ人の高利貸し)役。

*3:資産を使い果たしたバッサーニオが惚れた相手。バッサーニオがアントーニオに金を借りさせたのが今回の事件の発端。見栄を張ってポーシャへ求婚しに行こうとするから,衣装代だの旅費だのが必要になる。しかも,他にも金融業者が居るというのに,よりによってシャイロックから金を借りようと言い出した張本人。冷静に考えると,こいつが一番の悪者。

*4:ルクセンブルクで撮影したのだとか。

*5:イベリア半島北東部に存在した国の名前。後のスペイン王国を形作ることになる。16世紀には,イタリア半島南部を占めるナポリ王国もアラゴンの支配下にあった。ちなみに,イギリスが「アルマダの海戦」でスペイン無敵艦隊を破ったのは1588年。『ヴェニスの商人』が書かれたのは1596年であり,英国人がつけあがっていた世界史の主役へとのし上がっていった頃である。

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Sunday, 2005/10/30

チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる

[] チェーザレ・ボルジア  チェーザレ・ボルジアを含むブックマーク

 昨晩は研究会の後,後輩に誘われて(自棄)酒を飲みに行く。家に帰り着いたところで尽き果て,寝台の上で倒れ込む。26時過ぎに目が覚めたので,読みかけであった塩野七生(しおの・ななみ)『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷*1を開く。

 今を去ること500年前,ローマ法王アレッサンドロVI世の私生児として生まれながら,枢機卿にまで登り詰めた美男子。そして〈緋の衣〉を脱ぎ捨てて還俗し,ローマ法王領/ナポリ王国/フィレンツェ共和国/ヴェネツィア共和国/ミラノ公爵に分立していたイタリアの統一を目論んだ武人。かのレオナルド・ダ・ヴィンチを技術顧問として雇い入れた才覚者であり,後にはマキャヴェッリをして『君主論』を書かせることになるマキャヴェリズムの体現者。そして,カエサル(Caesar)の名を戴く者,それがチェーザレ・ボルジア(Cesare Borgia, 1475-1507)。

 暗殺,裏切り,権謀術数…… 間違っても為政者にはなりたくないねぇ。

 本作は35年ほど前に書かれた,塩野の初期作品。後に続く塩野文学のエッセンスが萌芽を見せているのですが,欠点もはっきり見て取れる。今でこそ読みやすい文体へと向上してきていますが,この頃は読点の打ち方が奇妙で,文の修飾も冗長。とにかく読みづらい。少なくとも名文とは言い難い。

 そういえば――と,思い出したのがカーラ教授こと川原泉(かわはら・いずみ)の『バビロンまで何マイル?』(ISBN:4592883187)。こちらも書庫から取りだしてきて再読。

バビロンまで何マイル? (白泉社文庫)

 溺れかけていたノーム(地霊)を助けた御礼として「ソロモンの指輪」をもらった仁希と友理は,指輪の力で時代を移動させられてしまう。そこで取り上げられているのが1500年に起こったナポリ王子(匿名A)暗殺事件であり,まさにチェーザレの物語。

 塩野七生マキャヴェッリの叙述を援用して政治の視点から綴るのに対し,カーラ教授はチェーザレの妹ルクレツィア(と,その二度目の夫アルフォンソ)からの視点で描く。エピソードの取り上げ方に,それぞれの持ち味がはっきりと出ており,組み合わせて読むと相乗効果で面白みが増す。お試しあれ。

*1:文庫版:ISBN:4101181020,著作集:ISBN:4106465035,単行本:ISBN:4103096012

Thursday, 2005/10/27

中にだめって 書いてあったよ

[] 大学院はてな :: 日本学術振興会  大学院はてな :: 日本学術振興会を含むブックマーク

 学振からハガキをもらいました*1

http://www.jsps.go.jp/j-pd/pd_saiyo.htm

*1:伝説によると,特別研究員に採用されれば封筒がもらえるらしい。この世の名残に見てみたかったなぁ……。

hajichajic 2005/10/27 17:54 il||li(つω-`。)il||li

doubletdoublet 2005/10/27 20:58 面接でも封筒が来ますよ。

genesisgenesis 2005/10/28 01:49 そうなんですか〜 でも,今回が(年齢上限のため)最後の応募だったので,自分で使うことはない知識を手に入れてしまいました。

doubletdoublet 2005/10/28 02:09 私のときは封筒が来て、面接の結果補欠採用。「予算の都合が付けば採用する」という連絡が来ましたが、一年たってもなしのつぶて。腹が立ったので年齢上限に達するまで二度と出しませんでした。悲しい思い出です。

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Wednesday, 2005/10/26

無責任の構造

[] 無責任の構造  無責任の構造を含むブックマーク

 岡本浩一(おかもと・こういち)『無責任の構造――モラル・ハザードへの知的戦略』(ISBN:4569614604,2001年)を読む。

 著者は社会心理学者。原子力安全委員会の委員を務める。本書は「バケツでウラン」ことJCO臨界事故の事故調査委員会の委員を委嘱」されるところから始まる。これを事例として,組織が必ず持つ〈無責任の構造〉を解き明かしていく。

 冒頭において,「いま 差し迫った状況に立っていて とり急ぎノウハウだけを読みたい」場合には中盤(第3章2)以降から読み始めると良い,と書かれてあったので指示に従ってみたが,ちっとも面白くない。「賃金のために仕事をしているのか!」という言葉が聞かれる職場は全体主義的風土がある,などと言われても,なんだかなぁという感じがする。

 これは駄作を買ってしまったかも,と思いつつ,戻って最初から読んでみると,印象が違う。前半の理論編(特に第2章「無責任をひきおこす集団のメカニズム」)はうってかわって面白い。例えば,「個人で意思決定した場合よりも集団で討議して決めた方が,より冒険的な選択を容易に選ぶ」という現象(リスキーシフト)の紹介などは興味深かった。

 筆者は,〈無責任の構造〉を克服するには,属人主義から属事主義へと発想を転換することが必要だと説く。しかし,そうなるとシステムの問題なので,組織の中の一個人として振る舞えることがあるかというと甚だ心許ない。うなずくところは多くても,活用しにくい本。

 労働法の問題としては,公益通報者保護法における「内部通報制度」に絡んでくるところ。参考文献に含めておこう。

Monday, 2005/10/24

Salon del Manga XI

[] Salon del Manga XI  Salon del Manga XIを含むブックマーク

 今週末には「スペインのコミケ」こと「第11回サロン・デル・マンガ」が開催されます。この期間にバルセロナへお立ち寄りの際には,ぜひ足を運んでみてください。日本からの召致ゲストは,田中比呂人さん。

http://www.ficomic.com/salonmanga2005/

 土曜日(29日)にはカラオケ大会(日本語で)。課題曲の一覧を見ると,現在の流行が何となく分かるのですが,目新しいところでは次のようなものが加わってます。

http://www.ficomic.com/salonmanga2005/concursokara.html (曲目)

 日曜日(30日)はコスプレ大会。昨年から「世界コスプレサミット」の選考会を兼ねています。

http://www.tv-aichi.co.jp/cosplay2005/spain/index.html

http://www.ficomic.com/salonmanga2004/fotos.html (前回の公式写真)

http://barcelona.sociallaw.info/manga/salon2003.html (拙稿:一昨年の取材録)


▼ 追記

 今年の大会に参加した人のレポート。

http://d.hatena.ne.jp/gammaray01/20051029

http://d.hatena.ne.jp/gammaray01/20051030

http://d.hatena.ne.jp/gammaray01/20051031

*1:MAGISTER NEGI MAGI

gammaray01gammaray01 2005/11/08 08:11 紹介していただいてありがとうございます。
やっとこさ2巻目に突入したので、面白い翻訳を紹介してみようかな、と考えています。
要はアイデアをパクッってもいいでしょうかという事なんですが。

習い始めて半年のヘタレなのでそちらの記事とは程遠いものになると思います。

genesisgenesis 2005/11/08 12:41 どうぞどうぞ。楽しみにしております。

gammaray01gammaray01 2005/11/09 07:14 わーい。では遠慮なく。

とりあえず面白いなぁと思ったのはCHIYOTAなんですが、
どうやって説明しようかなぁ、と鋭意混迷中です。

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Sunday, 2005/10/23

ヒビキのマホウ

[] ヒビキのマホウ〔1〕  ヒビキのマホウ〔1〕を含むブックマーク

 依澄れい麻枝准ヒビキのマホウ』〔1〕(ISBN:4047137138)。

 発売直後に買って一度読み,保留しておいたもの。再読してみたのだが,やはり何とも評価しづらい。

 ストーリーは,これといった才能に恵まれていないヒビキが,マホウツカイの権威であるシロツキ先生の助手として暮らすところから始まる。

 ドジっ娘が成長していく様を描くビルドゥングスロマン教養小説)――のように見えるけれど,ヒビキ(=主人公)の成功は,陰で支えるシロツキ(=全能の人)の助力によって達成されている。すなわち,主人公自身が能力を獲得し成長するのではなく,主人公が庇護者を獲得することにより成功がもたらされる。実際に物語を駆動させているのは「家族の回復」という命題。ヒビキは「シロツキの助手=家族」であるというだけで,遙かに優位な立場に置かれている。

 これを「やさしさに満ちた世界における心温まるファンタジックストーリー」と受け止められるのは,きっと純真な人なのだろう。こんなお話があっても悪くはない。でも,私には向かないようだ。

hajichajic 2005/10/23 13:47 つまり『蠅の王』において、大佐が助けに来てくれなければどうなるか、という問題ですね。子供は大人がいるから良い。しかし大人はいったいどうすれば。

genesisgenesis 2005/10/23 15:05 後半は間違いじゃないと思いますが,前半で比較対象をゴールディングとしているところは疑問……

simulasimula 2005/10/23 16:46 こんにちは

一巻で作品評価をしてしまうことにはちょっと疑問があります
外伝にあるようにヒビキはいつかシロツキから卒業していくと思うので、シロツキのおかげで成功しているヒビキというような図でこの作品を読んでしまっていいのかと疑問に思うので

genesisgenesis 2005/10/23 18:55 simulaさん,コメントありがとうございます。▼ 物語の「序」に当たる部分しか示されていないところで作品全体の評価をするのは早計ではないかと,いうことでしたらご指摘の通りです。しかし,個々のストーリーの面白さというのも,また別に語ることは出来ると考えています。シリーズ全体としては良くても一部のエピソードはつまらないとか,逆に出だしは良かったのに結末で失速してしまったということもありますし。ここで私が述べているのは,あくまでも第1巻に対する見方です。次巻以降においてヒビキの成長していく様が描かれていくであろうことは察しがつきますが,それはまた別個に評価すべきところでしょう。▼ 完結していない物語について語ることの面白さは,途中で評価が変わっていくことにあるのではないかと思います。今回は否定的ではありますけれども,中間報告として見解を表明しておくことにしました。なお,期待も出来ないような代物については無視するというのが私の方針です。▼ さて本作ですが,設定においてこれといった新奇さを持っていないことを否定できないように感じます。本作の見どころを指摘しようとしても,捉え所のない〈ありきたり〉なものであることを示す結果になってしまう。このままでは『魔法遣いに大切なこと』のように,陳腐な物語になってしまう。このような見方を裏切るような展開をしてくれたらいいのですけれど。

simulasimula 2005/10/24 00:10 丁寧なレスありがとうございます▼上のコメントをしたのは、>でも,私には向かないようだ。▼や>ヒビキ(=主人公)の成功は,陰で支えるシロツキ(=全能の人)の助力によって達成されている(ヒビキの成功は全てシロツキの助力という訳ではなく、シイが寝込んでから回復するまではシロツキは関わっていない)等、少し語調が強く、部分ではなく作品評のように感じたからです▼genesisさんの評価が現段階に描かれているもののみということでそうではないことが分かり、その点は良かったです▼ヒビキのマホウの魅力についてですが、一見普通のハッピーエンドに見えつつも、マホウという奇跡が存在する世界にもかかわらず、先生は体をなくす、ミヅキやナナコは生き返らないということを受け入れるという痛みの受容が存在することではないかと僕は考えています▼あと、新規さがないというのは確かに感じますが、それが陳腐な物語とまでなってしまうかは今後を見守りたいと思っています

hajichajic 2005/10/25 00:46 キング『アトランティスのこころ(上)』です。わりと良い話なのでぜひお読み下さいませ。

Friday, 2005/10/21

テーブルの雲

[] テーブルの雲  テーブルの雲を含むブックマーク

 林望(はやし・のぞむ)『テーブルの雲――A Book for a Rainy Day』(ISBN:4101428212)。1993年刊行。ビルバオ空港での待ち時間に読んだ。

 恩師に食べさせてもらった十万円のマグロ,イギリスの富士山,ミュンヘンを闊歩する裸体主義者,国語教育論――

 今回も,機知に富んだ語り口で楽しませてくれる。旅先へ連れて行くのに,うってつけのエッセイ。日常を離れたところで読むリンボウ先生は,また格別。

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Wednesday, 2005/10/19

大学の話をしましょうか

[] 大学の話をしましょうか  大学の話をしましょうかを含むブックマーク

 森博嗣(もり・ひろし)の新刊『大学の話をしましょうか――最高学府のデバイスとポテンシャル』(ISBN:4121501950)。先日,学会に向かう機内で読んだ。

 この春に名古屋大学を退職したらしく*1,そのせいか大学に対する「遠慮」が無くなって,ちょっぴり辛辣(従来比)。もっとも内容は,犀川助教授や水柿助教授に仮託して語られていた〈自由な思考〉を,一般論として推し進めれば到達するであろう帰結を,自身の言葉として述べたもの。こうしてまとめられていると,教育論として参照できるから便利。

 ただ,賛同できる内容かというと,ちょっと躊躇する。

 まず「研究者を目指す私」としては,森氏の学問に対する真摯な態度を尊敬する。次に「学生としての私」としては,語られる対象たる大学についてのイメージの隔たりに戸惑う。旧帝大とはいえ地方の法学部だと,本書で描かれているような大学の姿とかなり違っている。前提となる事実の隔たりが大きい。

 そして「教育に携わる私」あるいは「労働法に携わる私」としては,非常に怖い。森氏の発想は,突き詰めていけば(括弧付きの)自由主義に基づいている。私の基本理念は〈世の中の大多数は弱い人間が占めている〉〈人間は失敗する生き物である〉という後ろ向きなもの*2。すなわち,みんなが知的エリートになれるわけではないし,みんなが雇用社会で生き残れるわけではないと悲観している。結局のところ,森氏の描いている理想の姿は〈強い人間〉なのかなぁ。成功できるだけの意志の力を手に入れた存在。

*1:146頁では「デビュー以来九年も大学に勤めていたのです。」と過去形になっている。

*2:だから,アナクロなことに「労働者の集団化」を研究テーマにしている。また,強者の論理が支配するアメリカ(グローバリズム)に背を向け,社会連帯を重んじるヨーロッパの思考を取り入れようともしている。

Monday, 2005/10/17

大原美術館

[] 倉敷  倉敷を含むブックマーク

 倉敷に足を伸ばす。岡山からは普通列車で16分ほど。

 まずは大原美術館へ。倉敷紡績(クラボウ)の経営者であった大原孫三郎(おおはら・まごさぶろう,1880-1943)の名を冠した私設美術館。欧米の美術館と比べると西洋画のコレクションが貧相なのは当然だが,当時の財力と情報でこれだけの作品を揃えたのは賞賛に値する。収集に当たった画家,児島虎次郎(こじま・とらじろう)の鑑識眼に感服する。

 紡績工場の跡地「倉敷アイビースクエア」内にある別館「児島虎次郎記念館」へと移動し,彼の作品も鑑賞。時代順に並べられており,渡欧を経てタッチの変化していく様子が良く分かる。

http://www.ohara.or.jp/

 続いては,同じく工場跡地を利用した倉紡記念館*1。労働問題を考えるうえでは,とても興味深い展示が多かった*2

 向かいにあるアイビー学館。これはひどい。西洋近代絵画の複製パネルに解説を付けて展示する,というアイデアはいい。しかし,まったくメンテナンスがなされておらず,おそらく20年以上も前に制作してそのままになっているのであろうパネルは褪色している。こんなものを見せられたりしたら,絵画の印象は悪くなってしまい,かえって有害。床のカーペットもぼろぼろで,運営者の良識を疑う。

 順路の最後にあった,古い倉敷の街並みを移した写真が面白かったので溜飲を下げた。しかしながら,とてもじゃないが料金を払って入場したいところではないことに変わりはない。

http://www.ivysquare.co.jp/

http://kankou-kurashiki.jp/data/01/01/1/

 さて,岡山空港に到着すると,遅延のお知らせが。羽田で発生した電波障害の影響で,前便が遅れているためだとか。空港内で珈琲を飲んで待つ。

 JL1684 OKJ 17:25*3 / HND

 JL1039 HND 19:00 / CTS 20:30

*1:隣接して「いがらしゆみこ美術館」があり,建物の前まで行ってみたのだけれど,ここに男一人で行くのは何か間違っていると思い,引き返してきた。

*2:労働法の研究では日本を代表する機関である「大原社会問題研究所」が,元々は倉紡の附属施設だったということを,ここで知った。

*3:定刻より45分遅れ。

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Sunday, 2005/10/16

岡山大学

[] 大学院はてな :: 学会  大学院はてな :: 学会を含むブックマーク

 日本労働法学会@岡山大学

 労働契約法制をめぐってのシンポジウム。懇親会では roumuya さんと挨拶を交わす。

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Saturday, 2005/10/15

清水泰幸さん

[] 大学院はてな :: 学会  大学院はてな :: 学会を含むブックマーク

 日本社会保障法学会@岡山大学

 発表をひととおり聞いて,15時過ぎに退出。大雨だったため,タクシーで駅の東口まで戻る*1。駅前の喫茶店で珈琲を飲んでからホテルへ戻り,推理小説を1冊読む。

[] 法月綸太郎の新冒険  法月綸太郎の新冒険を含むブックマーク

 読んだのは,法月綸太郎(のりづき・りんたろう)『法月綸太郎の新冒険』(ISBN:4061820656)。作者と同名の探偵役(=作中でも小説家)が事件に臨む。

 シリーズの中では後ろの方になる短編集。最初に読むのは不適切だということは承知しているが,それを考慮しても,あまり好みの文体ではなかった。

*1:バスで帰ろうとしたのに,連れがさっさとタクシーに乗り込んでしまった。

Friday, 2005/10/14

[] 大学院はてな  大学院はてなを含むブックマーク

 学会参加のため,岡山へ*1

 JL1002 CTS 08:30 / HND 10:00

 JL1683 HND 10:45 / OKJ 12:00

*1:全額自己負担

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Thursday, 2005/10/13

白い花の舞い散る時間

[] 白い花の舞い散る時間  白い花の舞い散る時間を含むブックマーク

 友桐夏(ともぎり・なつ)『白い花の舞い散る時間 〜ガールズレビュー〜』(ISBN:4086006472)読了。

 「うたたねこや」における微妙な物言いが気に掛かっていたところに,「積読を重ねる日々」での絶賛が加わったので,興味を持って買ってきました。

 今日はいつになく早く目が覚めたので,こんな朝には少女向け小説に浸ってみるのも悪くないと思い読み始めたのですが――

 うわ〜 うわ〜 うわわ〜 とんでもないものを読んでしまいました。

 本作が著者のデビュー作。投稿を繰り返した末に掴んだ受賞。はっきり言って文章はさほど上手くありません。荒削りであって,洗練されていない。「溜め」が弱いから,読み手の心に揺さぶりをかけるようなセリフまわしになっていない。

 でも,生まれ落ちた着想が押しとどめられることなく,巧妙に組み上げられた構成の上に危ういながらも乗っかって,とんでもない作品になっています。学習塾のチャットルームに素性を明かさず出入りしている5人が,夏休みの合宿と称して人里離れた洋館に集合し,実際に顔を合わせることになる。そんな甘酸っぱい雰囲気で始まる冒頭部からは,到底思いも寄らぬ結末。この内容がこの表紙でこの題名のコバルト文庫になっていることは,〈リリカル・ミステリー〉としか説明できない。これが作者に秘められた実力の発露なのか,それとも奇跡がもたらした福音なのか。

 この驚きは,味わってみる価値が十分にある。


▼ おとなり書評

kiichokiicho 2005/10/14 23:02 いや、僕の感情に任せた駄文にリンクを張っていただいて恐悦至極です。

それはともかく、このクライマックス部分は本当に仰天しました。それまでいかにも少女小説的な世界だったところに、突然まったく異なる世界観にひっくり返されるサプライズは、確かにこれはミステリの領域の作品なんだなあ、と感じました。真相が反転する驚きとでも言いますか…。

個人的には、この作者の次回作以降にも期待しています。

genesisgenesis 2005/10/18 02:35 こんにちは。この作者は次に何を書くのか――というのが気に掛かります。期待と言うよりは,関心かな。

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Wednesday, 2005/10/12

皇帝達の都ローマ

[] 都市に刻まれた権力者像  都市に刻まれた権力者像を含むブックマーク

 青柳正規(あおやぎ・まさのり)『皇帝達の都ローマ――都市に刻まれた権力者像』(ISBN:4121011007中公新書,1992年)。パリのホテルにて読了。

 カエサルの総合都市整備計画によって地中海帝国としての偉容をととのえたローマは、以降、歴代皇帝たちによって公共事業を施されるとともに、彼らの政治的意図を誇示するための大造営事業の場となった。永遠の都ローマの栄光は都市に刻みこまれていったのである。しかし、最強の軍隊、発展と拡大という豊かな国家としての理念が行き詰ったとき、新しい理念に向けて改造することは、歴史を推積してきたローマには不可能であった。

出版社の紹介文を引用

 カエサルが着手した〈永遠の都〉ローマの都市計画を,コンスタンティノープルへの遷都に至るまでの約400年間を記述する。

 著者は1944年生まれ。東京大学文学部の教授で,考古学と美術史が専門。そのせいか,やたらと文体が堅い。良く言えば手堅く信頼感があるのだが,悪く言えば躍動感に欠ける。人物史と建築史を織り交ぜて綴るのだが,どっちつかず。全体を貫くテーマが弱いので,あとがきで突如

 カエサル以来の都ローマの歴史が,建物と都市に刻印されていることを前提としてたどってきた本書は,その前提が正しかったことを,コンスタンティヌスによる遷都によって証明されるという皮肉にいま遭遇している。〔396頁〕

と言われても,そんな〈前提〉はどこで述べられていたっけ? ということになってしまう。悪い内容ではないのだが,とっつきにくい本。

Monday, 2005/10/10

悪意

[] 悪意  悪意を含むブックマーク

 東野圭吾『悪意』(ISBN:4061821148*1id:ton-boo さんが東野作品を立て続けに読んでいたことがあって,その時期に気になって買っておいたもの。長らく放ったらかしにしていたものを旅行に持って行き,パリへ向かう機内で読んだ。

 人気作家・日高邦彦が仕事場で殺された。第一発見者は、妻の理恵と被害者の幼なじみである野々口修。犯行現場に赴いた刑事・加賀恭一郎の推理、逮捕された犯人が決して語らない動機とは。人はなぜ、人を殺すのか。超一流のフー&ホワイダニットによってミステリの本質を深く掘り下げた東野文学の最高峰。

出版社の紹介文より引用

 被害者とは高校時代からの友人であり,これまた作家である野々口。そして,野々口とはかつて同じ学校で共に教師をしていたことのある加賀刑事。犯人が綴った「手記」と捜査記録とが交錯し,視点が行き交う。

 Why done it? ――何故,人は人を殺すのか。

 この作品で掘り下げられていくものは,ただひたすらに「動機」。雲母を剥離させていくかのような丹念な捜査を経て,秘匿されていた犯人の心裡(しんり)が少しずつ描写されていく。面白い小説でした。

*1:文庫版は,ISBN:4062730170

ton-booton-boo 2005/10/10 12:39 東野圭吾は芸風が幅広いなぁと思います。なんじゃこりゃー、と放り出したくなることもあれば唸らされることも。どうも悩ましい作家です。
そんな私は、最近、雑誌と仕事関係の技術書以外に本を読んでいません。最後に買った文庫本、3ヶ月たってもまだ読了していないというどうしようもない状況……。うーん、いかんです。

Saturday, 2005/10/08

労判861号

[] 大学院はてな :: 配転の必要性  大学院はてな :: 配転の必要性を含むブックマーク

 研究会にて,ネスレジャパンホールディング(配転本訴)事件(神戸地裁姫路支部決定・平成17年5月9日・労働判例895号9頁)の検討。

 食品メーカーY社には3つの国内工場があったが,姫路工場の「ギフトボックス係」を廃止することにした。そこで当該部署にいた60名に対し,霞ヶ浦工場へ移動するか,退職金優遇制度を利用して退職することを提案した。この配転命令に先立って,Yは事前に従業員の家庭状況および生活状況を考慮することはしていなかった。

 この対象となった労働者のうち,X1は非定型精神病に罹患している妻(障害年金を受給している)の介護ができなくなること,X2は高齢である母の介護(要介護認定2〜3)ができなくなることを理由に,いずれも配転を拒否した。本件は,配転命令の無効確認請求である。

 なお,対象となった従業員のうち9名は霞ヶ浦工場へ転勤し,49名は退職している。

 裁判所は,請求認容。本件配転は無効であるとした。

 配転命令に関するリーディング・ケースは東亜ペイント事件(最高裁第二小法廷判決・昭和61年7月14日・判例時報1198号149頁)である。ここでは,配転命令が無効となる場合として

(1)業務上の必要性がない場合,又は,

(2)業務上の必要性がある場合であっても,その配転命令が他の不当な動機・目的によってなされたものであるとき,若しくは

(3)労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等の特段の事情のある場合

という枠組みを示している。(1)に該当する場合は(事実上)無いと言っていい。(3)については「著しく」という文言を用いて極めて高いハードルを設定しているため,労働者側の主張が認められた事例は限られたものとなる。この判断枠組みが有効に機能するのは(2)に当てはまる場合に限られていた,というのがこれまでの傾向と言えよう*1

 本件でも16頁に於いて同じ枠組みが示されており,これを踏襲しているかのように見える。しかしながら,あてはめ部分の22頁では,また次のように述べているのである。

 労働者が配転によって受ける不利益が通常甘受すべき程度を超えるか否かについては,その配転の必要性の程度,配転を避ける可能性の程度,労働者が受ける不利益の程度,使用者がなした配慮及びその程度等の諸事情を総合的に検討して判断することになる。

 このように「比較考量」を行うというのは,従来の判断手法からすれば逸脱したものである(昭和61年最判以前への回帰であるかのように見える)。最高裁のあまりに酷なフレームは,学説の多くが強く批判してきたところ。本件では,配転に当たって家庭生活への配慮が示されており*2,労働者にとっては好ましい変化の兆しかもしれない。

*1:配転命令が無効とされた事例としては,明治図書出版事件(東京地決・平成14年2月27日・労判861号69頁:アトピー性皮膚炎の子の看護),日本レストランシステム事件(大阪高判・平成17年1月25日・労判890号27頁:心臓病に罹患した子の養育),北海道コカ・コーラボトリング事件(札幌地決・平成9年7月23日・労判723号62頁:躁鬱病の長女と障害のある次女)などが挙げられる。

*2:裁判所は,原告の主張に沿って,育児介護休業法26条への配慮を使用者に求めている。

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Friday, 2005/10/07

τになるまで待って

[] τになるまで待って  τになるまで待ってを含むブックマーク

 森博嗣(もり・ひろし)『τ(タウ)になるまで待って――PLEASE STAY UNTIL τ』(ISBN:4061824511)読了。

 なんか久々に,思いっきり突き放された感覚を味わった。読後のカタルシス,すなわち爽快感というものが微塵もやってこない。

 Gシリーズ第三作。これは推理小説などでは決してない。紛れもなく森ミステリィだ。

Wednesday, 2005/10/05

真実の口で順番待ちをするヘンリエッタ

[][] チャオ フラテッロ チャオ フラテッロ!を含むブックマーク

 本日の添付画像は,「サンタ・マリア・イン・コスメディン教会にて『真実の口』の順番待ちをするヘンリエッタ」。

 今回の渡欧では,少々無理のある経路をとってローマから帰国便に乗りました。それというのも『GUNSLINGER GIRL』に惚れ込んでしまいまして,湧き出る漂泊の想いは絶ちがたく―― ともあれ,これで『ガンスリンガー・ガール』の舞台探訪をしてきたと胸を張れるようになりましたので,ここに正式発表を致します。

 ただ,ものすごく心残りなことが。撮ってきた写真を照査したところ,「イタリア下院」が合致しないのです。全体としては似通っているのだけれど,扉の横にあるべき装飾が無いし,建物に比してオベリスク(石柱)が大きすぎる。改めて地図を見てみると,私が「モンテチトーリオ宮」だと思っていたものは,隣の「キジ宮殿」だったのでした。ぁぅぁぅ。悔しいですよ〜 またローマに行かなくては……

 この取材の準備として,同人誌版を買い求めました。『まんだらけ』にて,5,250円。ショーケースに入っているプレミア付きのものを買ったのなんて初めてだよ。

hajichajic 2005/10/07 00:15 撮影のためにちびっこエッタをせっせと配置するgenesisさんの姿が脳裏に浮かんでしまいます。お疲れさまでした。ちなみに私もこないだまでピッティ宮とベッキオ宮がどっちがどっちだかヨクワカラン状態でした。

genesisgenesis 2005/10/07 00:49 それ,ぜんぜん違いますから。片や形容詞(ヴェッキオ=古い)でシニョリーア広場にあるし,片や人名(ピッティさん=館を建てさせた商人)でアルノ川の対岸じゃないですか!

hajichajic 2005/10/07 18:03 わあ、とっても説明的なコメントをありがとうございます。個人的にはピッティさんはなかなか良いセンスをしていると思います。でも破産。きっと商売はお上品じゃやっていけないんですね。

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Monday, 2005/10/03

アリタリア航空とヘンリエッタ

[] JL5064  JL5064を含むブックマーク

 08時17分,帰国しました。

 NRTからHNDへとリムジンバスで移動(3000円)。毎度のことだが,この首都横断がつらい。複数の空港を持つ大都市は多数あるけれど,これほどまでに乗り換えが不便なところは珍しい。CTS発着の欧州路線,そろそろ開設してくれないだろうか。

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Sunday, 2005/10/02

アリタリア機内食

[] ローマ (4/4)  ローマ (4/4)を含むブックマーク

 09時52分,テルミニ駅を出発。30分ほどてフィウミチーノ空港に到着。それほど待つこともなく搭乗手続を完了。空港内の売店を見て,待ち時間を過ごす。免税店街は数が多いが,興味のない高級品が多い。重たくて割れやすいワインを土産にすることはしないことにしていたのだが,慣習を破ってリモンチェッロ(Eur9.3)を購入。これは未だ日本では手に入りにくいからね〜。

 13時15分の予定が45分ほど遅れたものの,JL5064便(コードシェア便なので,実際はAZ784便)にてFCOローマを離陸。

 アリタリア航空に乗るのは久しぶりだったのですが,きめの〈粗さ〉がイタリア。食事中に早速と珈琲を持ってきたり(普通は食後),音楽の収録数が少なかったり(すぐにループする),セルフサービスの飲料がコーラか水かの二択だったり,ゴミ箱が一杯になって溢れても回収しなかったり(笑)

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Saturday, 2005/10/01

ヘンリエッタ@トレヴィの泉

[] ローマ (3/4)  ローマ (3/4)を含むブックマーク

 09時00分,五百人広場(Piazza dei Cinquecento)からバス40番線に乗り,ヴェネツィア広場(Piazza Venezia)へ。最初の訪問地はコロンナ宮殿(Palazza Colonna)。教皇マルティヌス5世により創建された宮殿を美術館にしているもので,映画『ローマの休日』では終幕における記者会見が行われた場所。大広間の荘厳さは,モノクロームの映画でも伝わってきたが,実際に目の当たりにすると圧倒的な存在感を放っている。ここも時代に合わせて絵画を古い方法で展示していたが,部屋の大きさに合わせた大振りな作品が多く,遠目で見ても良い作品を選んで並べていることが分かる。有名なところなのに,土曜日の午前中にしか開館していないことが幸いして訪問者は少なく,ゆったりとした時間を過ごす(Eur8)。

 次は,ヴェネツィア宮殿(Palazzo Venezia)。16世紀にはヴェネツィア共和国大使館であったところ。ルネサンス期の作品を収集しており,宗教が多いこともあって,かなり渋い構成(私は好き)。コの字型になっている奥の方は彫刻やら陶磁器やら興味のない分野だったので省略(Eur4)。

 続いてはヴィットーリオ・エマヌエーレII世記念堂(Monumento a Vittorio Emanuele II)。1970年のイタリア統一に寄与した国王を讃えるモニュメント。内部にはイタリア統一戦争に関する陳列があるが,軍事的な国威発揚の傾向が強すぎて,外国人が見て興味を持てるようなものではなかった。

 売店の中を抜け,サンタ・マリア・インアラコエリ教会(Santa Maria in Aracoeli)の中を横断すると,カンピドリオ広場(Piazza del Campidoglio)に出る。まさしく抜け道。古代ローマの聖地であるカンピドーリオの丘にはカピトリーニ美術館(Musei Capitolini)*1が建つ。彫像が展示の中心だと聞いていたので大した期待もせずに出かけたのだが,絵画も良いものが見られて大満足。特にルーベンスが描いたローマ建国の神話『ロムルスとレムス』(Romolo e Remo)が良かった。胸像にしても展示の仕方が良くて,なかなか。市役所からはフォロ・ロマーノ(Foro Romano)の絶景を眼下に見渡すことができ,しばらく見とれる。(Eur7.8)

 美術館を出てからは,フォロ・ロマーノの散策。ローマ時代に人々が集った公共広場。長らく埋もれていたために,二千年も前のものが思いの外に残っている。

 コロッセオで右折し,カラカラ浴場(Terme di Caracalla)へ。中には入らず,外観を見て大きさを実感するに留める。さすがに歩き疲れたので,途中,バールでカプチーノを。北東へと進み,サン・ジョヴァンニ・イン・ラテラーノ教会(Basilica di San Giovanni in Laterano)に詣でる。キリスト教が公認されてから最初に建てられた教会であり,「教皇のアヴィニョン捕囚」(1309-77年)があるまではローマ法王庁が置かれていた場所。身廊に沿って並ぶ十二使徒の彫像が見事。

 地下鉄に乗ってフラミニオ駅まで行き,国立近代美術館(Galleria Nazionale d'Arte Moderna)へ(Eur6.5)。ちょっと評価に苦しむところ。手前の19世紀部門はすごく良かった。後ろ側の現代美術は,例によってゴミ置き場に見える。デュシャン『泉』の実物(?)は見られましたが……。他の都市だと1950年頃を境にして別な美術館になるところなのでしょうが,三千年のローマだと「最近の200年」でまとめてしまっている。

http://www.gnam.arti.beniculturali.it/

 外に出ると夕暮れ時。帰りは美術館の前から路面電車に乗り,フラミニオ駅で乗り換えてバルベリーニ駅で降り,クイリナーレ宮殿(大統領官邸)の側をまわって,トレヴィの泉(Fontana di Trevi)へ。コインを投げ込み,再訪を願う。

 夕食は,テルミニ駅の東側にあった中華料理店で。「チンジャオロース」に赤ピーマンが使われていて,イタリアだなぁと思う。

*1:カピトリーノ美術館(Museo Capitolino)とコンセルヴァトーリ美術館(Museo Conservatori),それに市庁舎(Pal. Senatorio)にある新館の総称。

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