塩野七生 『ロードス島攻防記』

 ロードスという島がある。
――以上,お約束*1
 塩野七生(しおの・ななみ)『ロードス島攻防記』(ISBN:4101181047)読了。イタリアの商人が聖地巡礼者のためエルサレムに建てた病院兼宿泊所が,やがて起こった第1回十字軍(1096年〜)を機に宗教団体として認可された。これが「聖ヨハネ騎士団」の興り。中東に獲得した領土を維持するため,騎士団は軍事目的化する。1291年,イスラム勢力に追われてパレスチナを離れ,ロードス島に本拠地を構えることとなった。以後,イスラム船に対して海賊行為を働くようになる。
 1453年にビザンティン帝国を滅ぼしたオスマン=トルコは,ついに東地中海からのキリスト教勢力一掃を目論む。この本は,1522年に起こったロードス島攻防戦を扱う。ヴェネツィアの外交資料を紐解いて外側の状況を説き,宗教改革への対応に追われていて動き出そうとしない西欧諸国の構図を描く。内側は,若き騎士のカップリング(仏×伊)によるやおい展開。
 社会構造が大きな変革期を迎えた時,旧世代に属する者は自らの存在意義を問われ,やがて歴史の舞台から退場していく。諸行無常,盛者必衰の理-the low-*2
――のはずなのに,今でも「聖ヨハネ騎士団」はローマに現存し,日本は承認していないものの「マルタ騎士団」という国家的組織として存続している。乙なものだ。

*1:cf. 水野良ロードス島戦記』(ISBN:4044604010

*2:IME に組み込んであった『A I R』辞典がこんなところで発動。面白いから,そのままにしておこう。