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博物士

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Wednesday, 2006/11/29

[] 塩野七生 『賢帝の世紀』  塩野七生 『賢帝の世紀』を含むブックマーク

 毎晩,少しずつかけて塩野七生(しおの・ななみ)『賢帝の世紀』を読み終える。

ローマ人の物語 (24) 賢帝の世紀(上) (新潮文庫)

 上巻(ISBN:4101181748)は,トライアヌス(Traianus,在位A.D.98-117)の治世。ドナウ川の北,現在はルーマニアにあたるダキアの地を併合して帝国の版図が最大となった時期について。面白い箇所は,

「ローマ人が人材登用にコネを重要視したのは,彼らの現実主義的成功のあらわれの一つであったとさえ思う。コネとは,責任をもってある人物を推薦することだ。」(文庫版249頁)

かな。今日も専門学校へ行って公務員受験&民間企業就職について対策授業をしてきたわけなのですが,その学校には「コネを大切にしよう」という標語が掲げてあります。最初に見たときはのけぞったものですが,最近だと《コネ》って有り難いものだなぁと思うようになりまして。推薦者を介して信用で結ばれる関係,ということですからね。えっと,あれだ,つまり《セカイ系》でいうところの[中状況]ってこと(※オタク概念で説明する習慣は控えましょう)。

 中巻(ISBN:4101181756)は,ハドリアヌス(Hadrianus,在位A.D.117-138)の治世。少年愛とか,視察巡行とか,パンテオン(Pantheon)の建造について。

 下巻(ISBN:4101181764)ではハドアヌスと後継者アントニヌス・ピウス(Antoninus Pius,在位A.D.138-161)が半分ずつ。先人2人の功績で何も新たな施策を展開せずに済んだ平穏な時代として語る。

ローマ人の物語 (25) 賢帝の世紀(中) (新潮文庫) ローマ人の物語 (26) 賢帝の世紀(下) (新潮文庫)
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Sunday, 2006/11/26

[] Kanon 舞台探訪 (橋)  Kanon 舞台探訪 (橋)を含むブックマーク

 準急鷲羽さんから,全国縦断上映キャラバンに参加のため札幌まで来るとのメールが届く。そこで急遽お会いすることに。

 正午過ぎに現在地を問い合わせると……ものみの丘を探しに山登りをしておいででした*1。待ち合わせ場所に指定されたのは札幌市電「山鼻19条」――って,どうしてそんな半端な電停?

 他に待ち人も居ないようなところなので,初めて会うにも関わらず直ぐにそれと分かる。「それでは橋を見に行きましょう」という準急鷲羽さんの先導で豊平川へ。

南19条大橋

京アニKanon

 環状通に沿って東へ進んだところで「ここです」と示される。うん,確かにこれは,『京アニKanon』第8話「追憶の幻想 〜fantasia〜」の本編開始直後に出てくる階段だ(左右反転しているけれど)。

f:id:genesis:20061126141903j:image

京アニKanon

橋の下をくぐり抜ける通路に描かれている壁画も,アニメでは何だか分からなかったけれど,こうしてみると左側の黄色い方はスカイダイビング,反対側はスキューバダイビングを描いたものだと分かる。あぅ〜 この撮影地点,某ブティックホテルへの通路になっていて,カメラを構えているのが気恥ずかしいのですけれど……

f:id:genesis:20061126200934j:image

すみれ

 「まだ続きがあるんですよ」という準急鷲羽さんに率いられ,さらに環状通を東方向へ。案内されたのは,有名なラーメン店すみれ」札幌本店の駐車場。ここから,精進川というせせらぎの方向を向いて橋脚を眺めると……

f:id:genesis:20061126204427j:image

うわ,びっくりだよ。

http://homepage1.nifty.com/shao/motomachi8.html (お箸が重い:第8話詳解)

http://legwork.g.hatena.ne.jp/ (舞台探訪アーカイブ

http://mixi.jp/view_community.pl?id=1239686

*1:「ものみの丘」については,藻岩山だとする説(=アイヌ語起源説)も一部で主張されている(→嫌です.org)。私見では,原作段階で札幌が登場するのは不自然なので否定的。

Thursday, 2006/11/23

桂遊生丸 『かしまし』 #4

[] 桂遊生丸 『かしまし』 #4  桂遊生丸 『かしまし』 #4を含むブックマーク

 原作:あかほりさとる×作画:桂遊生丸(かつら・ゆきまる)『かしまし〜ガール・ミーツ・ガール〜』第4巻(ISBN:4840236291)。

 この巻では,登場人物達が実にいい表情を見せます。特にとまりん(来栖とまり)の困惑,憂い,戸惑い,溢れ出る激情――といった負の感情が上手く表現されている。

f:id:genesis:20061123175602j:image *1

本編の最後には,はずむも決意を秘めた良い顔をしているし。

 今はとろんとした夢見がちな瞳をベースに描かれているけれども,これに〈眼差しの強さ〉を込められるようになったら,きっとすごいことになるのではないか。桂遊生丸の将来が楽しみ。

*1:引用は,56頁(右上),69頁(中央下),71頁(右下),72頁(左)から。もともとはモノクロであるが,各々が異なるコマであることを示すため,引用者において地色を加えた。

Tuesday, 2006/11/21

小林章夫 『召使いたちの大英帝国』

[] 小林章夫 『召使いたちの大英帝国』  小林章夫 『召使いたちの大英帝国』を含むブックマーク

 去る日曜日,移動中の機内で小林章夫(こばやし・あきお)『召使いたちの大英帝国』(ISBN:4896919351)を読む。

 19世紀の大英帝国における使用人を視覚的に,かつ手際よく把握しようとするならば,村上リコ森薫『エマ ヴィクトリアンガイド』(ISBN:4757716435)の方がまとまっている。家事使用人にあった厳格な序列――男性であれば家令(House Steward)や執事(Butler)/フットマン(Footman)/近侍(Valet),女性では侍女(Lady's Maid)/家庭教師(Governess)/乳母(Nurse)/メイド(Maid)――が図示され,そこに森薫による挿絵が添えられているので,視覚的に理解できる。

エマヴィクトリアンガイド (Beam comix)

 それに対して本書は,いかにも英文学研究者が書いたもの。労働者たちの賃金のような実態の把握であるとか,仕事の「手抜きの仕方」といったウィットに富んだ視点が多く含まれている。特に第5章「貞操の危機――主人と使用人の緊張した関係」は,裏の事情を垣間見られて興味深い(子どもを孕んで捨てられてしまう例や,逆に結婚相手をつかまえた例などが紹介されている)。他にも,ウェット・ナース(乳を与える乳母)の求人広告(胸ならびに乳首の状態についての要求項目)であるとか,俗信(お乳の出を良くするためにビールを1500ccを1日4回に分けて摂取することが奨励されていた)など,下世話なことではあるけれど実態を伝える小ネタを豊富に提供している。

 また,第7章「貴族の没落と召使いの変化」では,(1)新興実業家の経済力が貴族のそれを上回ったことの他に,(2)第一次世界大戦において貴族の子弟が命を落としたため,召使いを使いこなす能力を備えた人材を失ったことや,(3)新大陸アメリカに渡った召使いが本国に還流してきたときに,主人との関係が変化したことなどを述べている。制度の隆盛期のみならず衰退期の事情についても触れているところに本書の価値があろう。

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Monday, 2006/11/20

増田彰久 『近代化遺産を歩く』

[] 増田彰久 『近代化遺産を歩く』  増田彰久 『近代化遺産を歩く』を含むブックマーク

 去る土曜日,移動中の機内で増田彰久(ますだ・あきひさ)『カラー版 近代化遺産を歩く』(中公新書ISBN:4121016041)を読む。

 幕末から明治,大正,昭和初期にかけての営みを写真で綴る。「時計塔」「駅舎」「トンネル」など目に付きやすく分かりやすい近代化から始まり,「火の見櫓」「工場」「煙突」と《懐かしさ》で語られるものへと進み,「温室」「ホテル」「刑務所」といったところで蘊蓄(うんちく)を披露して締めくくられる。全26テーマ。いずれも面白く興味深い好著。

 ところで表紙の写真は何だか分かるだろうか。*1

*1:明治22年ころに建造された,レンガを焼くための窯だそうである。

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Sunday, 2006/11/19

ヨーロッパ肖像画とまなざし

[] ヨーロッパ肖像画とまなざし  ヨーロッパ肖像画とまなざしを含むブックマーク

 ホテルを出たあと少し時間があったので,乗換駅の金山にある名古屋ボストン美術館へ。受付の横にあるロッカールーム(無料)に旅行鞄を預け,企画展『ヨーロッパ肖像画とまなざし Five Centuries of European Portraiture』を観る。1,100円。

 ティツィアーノ(16世紀),ヴァン・ダイク(17世紀),ル・ブラン(18世紀),ミュシャ(19世紀)など67点で構成。

 人混みに揉まれることも無く良好な環境で鑑賞できましたし,企画展にありがちな「水増し」も見受けられませんでした。展示品の選定に品があって良い。あえてケチをつけるとするなら,粒が揃っているが故に感じる平板さ――かな。

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Saturday, 2006/11/18

[] 大学院はてな :: 日本スペイン法研究会  大学院はてな :: 日本スペイン法研究会を含むブックマーク

 研究会参加のため南山大学へ。今年3度目の訪名です。

http://www.derecho-hispanico.net/

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Wednesday, 2006/11/15

『ファウスト Vol.1』

[][] ライトノベルへの禅譲 〜美少女ゲームと第3のポジション〜  ライトノベルへの禅譲 〜美少女ゲームと第3のポジション〜を含むブックマーク

問題状況

美少女ゲーム年代記 - ライトノベルの揺籃g:rosebud

 さて,問題の文章に最も納得していないのは,書いた当の本人だったりします。着想(id:genesis:20061109:p1)で示した《第2仮説》を書き下してみたところで気がついた難点は,

  • (1) 美少女ゲームとライトノベルの関係は,因果関係(αがあったためにβが起こった)ではなく,牽連関係(αとβの間にはリンクが張られている)で把握すべきものらしいこと
  • (2) 時期的に近接しているからといって,異なる領域で起こった事象の間に関係性があるかのような結論を導くのは当然ながら無理があること
  • (3) 両者の間に影響関係があったと仮定するにしても,具体的な例を挙げてみようとすると適切な事例を選ぶのに苦慮すること(例えばキャラクター造形の移動にしたところで抽象的な話しかできそうにない)

――です。

 どう手直ししたものか考えあぐねていたところで,東浩紀「メタリアルフィクションの誕生 動物化するポストモダン・2」ISBN:4061795538ファウスト Vol.1』(2003年10月講談社)を読んだのです。それで,なんだかあずまんの掌の上にいるような気分になって意気消沈し,書きなぐった状態のままになっております。

 当初,2004年の春に「ライトノベル(論)ブーム」が発生したものとして仮説を組み立てていました。それがですね,東の理解では,その起源を笠井潔の「ジャンルX」論*1大塚英志『キャラクター小説の作り方』(ISBN:4061496468,2003年2月)にまで遡っています。東=大塚=笠井の組み合わせを前にして議論を組み立てるのは……心境を察していただけると嬉しい。

 あと,《第1仮説》の方でも,自分で提示しておきながら不明だった点がありました。「狭義のライトノベル」(=電撃文庫富士見ファンタジア文庫)と「メフィスト賞作家」の関連性をどう説明づけるのかについて。森博嗣すべてがFになる』(ISBN:4061819011)の登場は1996年4月ですから,キャラクター(的)小説に対して葉鍵史観は沈黙しなければなりません。うぐぅ。こちらについては,ミステリー史を追いかけなくてはいけないだろうと思って留保していたところなのでした。

1

 そんな状況で夏葉薫さんのご意見を拝聴したわけですが,

 前史として『星界の紋章』でSFがライトノベルに接近したところで上遠野浩平が登場、まずはSFとライトノベルの間で書き手の往来が起こり、その後90年代ライトノベルの影響下にある世代の舞城、佐藤、西尾の脱格系の登場でミステリがライトノベルに接近し、ジャンルフィクションの世界がまずライトノベルを発見して――とかなんとかまあ、言えなくはないけれど、要はおっさん小説の場であるべき講談社ノベルス戯言シリーズが売れたから、じゃないのかと。

http://d.hatena.ne.jp/K_NATSUBA/20061113

素直に,綺麗な見取り図だなぁと思います。《戯言シリーズ》を結節点にすると,系統間の動きについては腑に落ちるところが多い。西尾維新については私なりに系譜を組み立てていたのですが(id:genesis:20061019:p1),披露してみたところ難色を示されたので再検討が必要だと思っていたところでした。

 言い訳しておくと,2002〜04年という時期についてはスペインに留学していた関係で,肌感覚としては感知していないことが多いん。もっと調べないといけないですね。

2

  • ライトノベルは「おたくカルチャーの先導役」ではない
    • ライトノベルは「おたくカルチャー」の一角を担うレベルに達した
  • 今日見られる「ライトノベル」は美少女ゲームが育てたものではない
    • 今日見られる「ライトノベル」には美少女ゲームが育てた側面が存在する

http://d.hatena.ne.jp/kim-peace/20061115/p2

 後者については,平和さんの仰るような言い方に抑えておくのが妥当でしょうね。とすると,うん,あの部分は全て破棄かな。微弱な牽連関係を摘示したくて書いたわけではないから。

 ただ,前者については譲れません。というか,第3のポジションをラノベに禅譲するので受け取ってください。「あたしはもうダメ」に対しては「そんなことないよ」以外の言葉は無効です。

 2004年前後に「かつて美少女ゲームが占めていた役割」はライトノベルへ委譲された――というグランドデザインは間違っていないのだと思う(意図を的確に表現できていないのは確かなので,そこを中心に書き改めましょう)。具体的に示すなら,2006年4月,世界は涼宮ハルヒの前に平伏しました(うち一部は長門有希に)。ライトノベルは第3のポジションを得たのだと,勝利宣言を出してもいいのではないでしょうか。

 文中で《マイナー・メジャー》という立ち位置を持ち出したことの意味ですが,アニメとマンガの影響力があまりに大きすぎるために「それ以外」の領域が霞んでしまうためです。前掲のハルヒにしてもアニメ化の関与が大ですが,多くのカネとモノと情報と同人誌市場を動かしたことに意味がある。

 「男女共に人気のある作品」についても美少女ゲームの影響を言えるのか,ですが,言えないとする理由はありません。そもそも私の理解では,葉鍵系ビジュアルノベルは〈ポスト乙女ちっく少女まんが〉の影響を受けている(id:genesis:20060217:p1)というのが持論です。ただ〈内面性〉に関していえば,そんな迂遠な道筋を辿らなくても,少女まんがから直接に(あるいはアニメを経由して間接的に)影響を受けたとすればいいような話なので,言い出すつもりはありません。とすると,美少女ゲームが獲得したものとは何のことなのか,というのがご質問の真意だと思うのですが,これについては未だ整理しきれていません。ごめんなさい。

3

美少女ゲームの行き詰まり。ビジュアルノベルを構成するシステム部分(骨格)については,リーフ三部作以降それほど大きな変化がないことは本稿で述べた通りである。

 東浩紀による〈美少女ゲーム〉史観に影響されすぎなんじゃないのかなあ? むー。

http://d.hatena.ne.jp/rulia046/20061115/p4

 ……もう開き直って割り切りましょうか。少なくとも「ビジュアルノベルを構成するシステム部分」に関して言えば,東浩紀の言説を否定する理由は無いと考えます。「本は,紙とインクで出来ています」と同旨のものと把握して。東浩紀と似通って見えるのは,共に剣乃ゆきひろ高橋龍也に対する敬意(リスペクト)が共通基盤としてあるからでしょう。

 なお,東が〈美少女ゲーム〉と言う場合,それは「1996年以降のビジュアルノベル形式」という狭い意味で用いていますが,私の場合には「1982年以降のすべて」を包含していることだけは注記しておきます。おそらく,陵辱ものや調教SLGなど,東浩紀が語り得ないものまで言及しないうちは違いが出てこないと思いますけれど。今はこれが精一杯。

4

 中高生のライトノベル読者のほとんどはオタクコミュニティとのつながりを持ちません。結果として、オタク界隈では美少女ゲームの影響力が強いように見えるわけです。

 このように、ライトノベルの歴史や変化を考える際には、私は作り手よりむしろ読者の側に目を向けるべきだと思っています。

http://d.hatena.ne.jp/USA3/20061115#p1

 私見ではライトノベル語りが浮上してきたのは、端的に言って「語る場所が増えた」ことによる人数の増加という点が重要だと思います。もっと言えば、ブログの隆盛です。

http://d.hatena.ne.jp/hanhans/20061115/p3

 議論が一周してきましたね。

 もともと,発端となった読書会の中で議題になっていたのは,2004年に起こったライトノベル(論)ブームを駆動したものは何だったのだろうか――でした。本来の読者層たる中高生はサイレント・マジョリティであって観察できない。そうなると,18歳以上のネットで繋がっているおたく層,評論家,雑誌社などから考えざるを得ない。でもそこに隣接分野の動向を重ね合わせてみたらどうだろうか,というのが提示した仮説だったのです。

 締めくくりに代えて,言及していただいた方々に御礼申し上げます。切り捨てなければいけないところと,まだ活かせそうなところとが峻別できてきました。


▼ 補記

*1:「ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?」第61回『ミステリマガジン』2003年5月号所収。この論考は,笠井の近著『探偵小説と記号的人物(キャラ/キャラクター)』(ISBN:4488015212,2006年7月)にて踏まえられている(らしい)。

Monday, 2006/11/13

北国シネマフロンティア

[] Kanon 舞台探訪 (映画館)  Kanon 舞台探訪 (映画館)を含むブックマーク

シネマフロンティア

f:id:genesis:20061113161514j:image

 『京アニKanon』第6話「謎だらけの嬉遊曲 〜divertimento〜」の中で登場した映画館。JR札幌駅に隣接する商業施設「ステラプレイス」の7階。上部の縦縞模様は,壁面に設けられた凹凸に照明をあてて作り出されています。

http://homepage1.nifty.com/shao/motomachi6.html (お箸が重い:第6話詳解)

http://legwork.g.hatena.ne.jp/ (舞台探訪アーカイブ

http://mixi.jp/view_community.pl?id=1239686

Saturday, 2006/11/11

[] 大学院はてな :: 長期間経過後の懲戒権行使  大学院はてな :: 長期間経過後の懲戒権行使を含むブックマーク

 研究会にて,ネスレジャパンホールディング事件(最二小判・平成18年10月6日・公刊物未登載)の検討。

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20061010130337.pdf

 1993年10月26日ならびに1994年2月10日,社内で暴行事件が発生。両事件の被害者Aが加害者X1,X2らを被告訴人とする告訴状を警察等に提出していたため,Y社は捜査を待って処分を検討することにする。

 1999年12月28日,検察庁は不起訴処分とする。2001年4月17日,Y社はXらに諭旨戒告を通告し,同月26日に懲戒解雇にした。本件は懲戒解雇の無効確認を求めたもの。

 第一審(水戸地龍ヶ崎支判・平成14年10月11日・労働判例843号55頁)は請求を認容。これに対し,控訴審(東京高判・平成16年2月25日・労働経済判例速報1890号3頁)はXの請求を棄却していた。

 最高裁は破棄自判。Xの請求を認容する判断をした。

 本件諭旨退職処分は本件各事件から7年以上が経過した後にされたものであるところ,被上告人においては,A課長代理が10月26日事件及び2月10日事件について警察及び検察庁に被害届や告訴状を提出していたことからこれらの捜査の結果を待って処分を検討することとしたというのである。しかしながら,本件各事件は職場で就業時間中に管理職に対して行われた暴行事件であり,被害者である管理職以外にも目撃者が存在したのであるから,上記の捜査の結果を待たずとも被上告人において上告人らに対する処分を決めることは十分に可能であったものと考えられ,本件において上記のように長期間にわたって懲戒権の行使を留保する合理的な理由は見いだし難い。

 というわけで,(1)就業時間内に(2)社内の人間が関係者である事案においては,7年以上を経過しての懲戒権行使(退職処分)は許されないとの結論が得られた。当然の判断だと思われるところ。おかしいのは,懲戒権の行使を是認していた高裁判断(裁判長:久保内貞亜)の方だろう。

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Thursday, 2006/11/09

ライトノベル年代記

[] ライトノベル年代記 [1998, 2004]  ライトノベル年代記 [1998, 2004]を含むブックマーク

 文学部での読書会に参加。新城カズマライトノベル「超」入門』(ISBN:4797333383)を参照しながら,“ライトノベルを論じる”ことについて語り合う。

 レポーターのAさんは,今回が初報告。読書量は多い人なので知識はあるものの断片的な情報になってしまい,うまく繋がらない(感想の開陳になってしまい,Aさんも苦労していた)。読書会においては,(1)先行研究による到達点を示し,課題図書の位置づけを明らかにする,(2)課題図書の内容を要約してポイントを浮き彫りにする,(3)それらを素材として討論すべき議題を報告者が設定する,(4)呼び水として報告者としての私見を添える――という手続が必要なのだけれど,これは場数を踏んで身につけてもらうものだしね。

 そんなこともあって,いつもより多めに口を挟んできました。

 私が提示した《作業仮説》は,第1にカドノ・インパクト(1998年),第2にサブカルチャーにおけるまいじゃーたる地位の獲得(2004年)。

第1仮説

 現在におけるライトノベルの本流が電撃文庫であるとすれば,その前の時代にあって勢力を誇っていたのは富士見ファンタジア文庫。この力関係が変化したのは1998年頃のことであり,上遠野浩平ブギーポップは笑わない』(ISBN:4840208042)の登場が影響したと言えるのではないか。

 ここから次世代グループに時代が移行したものと仮定し,それ以前に主流をなしていた作品群――具体的には,RPGの作法を小説に持ち込んだ神坂一スレイヤーズ!』(1990年〜)等と比較することによって,小説を成り立たせる構造レヴェルの変化(例えば,視線人物の複数化)を論じてみてはどうだろう。

 同じ1998年に,ファンタジア文庫では賀東招二フルメタル・パニック!』(ISBN:4829128399)が,コバルト文庫では今野緒雪マリア様がみてる』(ISBN:408614459X)がお目見えしているので,レーベル内部における勢力の変化ということも言えそうではないか(標語を与えるなら,ファンタジーから学園へ)。

 ミステリー好きな参加者からはメフィスト賞(1996年〜)受賞作とラノベの関係を問う声がありましたけれど,この対比も面白そうですね。

第2仮説

ライトノベル☆めった斬り!

 これは「美少女ゲーム年代記」(g:rosebud)を書くために,大森望三村美衣ライトノベル☆めった斬り!』(ISBN:4872339045)を読んで周辺状況を調べている中で感じたこと。

 おたくカルチャーにおいて高位に位置するものがアニメ(メジャー・メジャー)やマンガ(メジャー・マイナー)なのは数十年に渡って不変ですが,「マイナー・メジャー」の地位を占めるものは移り変わりがある。で,およそ1996年から2004年にかけては,美少女ゲーム(特にビジュアルノベル形式のもの)が影響力を持っていたのです。それは,アニメの原作となった数(下位コンテンツから上位への昇格現象)で端的に表される*1

 見えにくいところでは,かつて美少女ゲーム業界には人材の吸引力が働いており,《業としての物書き》になりたい人を獲得していたのでしょう*2

 そのような状況が変化したのは,ライトノベル評論が急激に活発化した2004年前後のこと。以降,美少女ゲームは「マイナー・メジャー」の地位を譲って一歩後退し,新進クリエイターの登竜門としてライトノベル(の新人賞)が相対的に浮上したのではないでしょうか。

 すなわち,ライトノベルを読者の側から作品として鑑賞していたのでは観測できない地殻変動が,作り手の側において生じていた――というのが「ライトノベル論ブーム」の実態であり,対外的には「ライトノベルの発見」だと見るのです*3

 ちなみに,「クリエイターの個人化」という観点からみれば,2000年暮れから始まるTYPE-MOON月姫』の動向も対応させられそうです(奈須きのこがギャルゲーとラノベの境界を〈空〉にしたことで,越境が容易になった)。やや牽強付会になりますが,2002年2月に『ほしのこえ』が発表された時,新海誠が個人として注目されたことはアニメの領域におけるシンクロニシティかと思います。

――と,アイデアを散らかしている間は気楽でいいんだけれどねぇ。


▼ 関連

 奈須きのこよりも桑島由一ヤマグチノボルあたりのほうがライトノベルとエロゲの越境者としては重要かと。(中略)

 三重の『カナリア』ショック、ということを俺は常々言っているわけですが、もう一回繰り返しておきます。(後略)

http://d.hatena.ne.jp/./K_NATSUBA/20061111

*1:なお,「ノベライズ」については議論が紛糾したことを書き添えておく。報告者のAさんからは「ノベライズ作品は売れているのに評価されていない」という問題提起があった。

*2:美少女ゲームにおいてシナリオライターが個人として着目されるのは VisualArt’s/Key の登場後のようです。『PC Angel』誌を調べていて気がついたのですが,作品情報にシナリオライターの項目が加わるのは,1999年に入ってからのこと。以前,id:cogniさんと話していた時に「私はシナリオを(ヒロイン単位でもシナリオライター単位でもなく)作品単位で把握しているんです」といって怪訝に思われたことがあるのですが,これは1990年代の前半,ゲームデザイナーの方が重視されていた時代に自分の評価基盤を形成したせいではないかと自己分析しています。

*3:「まいじゃー」が交代した理由を美少女ゲーム側の事情から考察するならば,(1)モチーフに関しては『CROSS†CHANNEL』等で行き着くところまで辿り着き,進化の袋小路に入ったから,(2)「ボリュームたっぷり\9,240」というビジネスモデルが限界を来したから,(3)コホート(cohort)現象が起こって消費者が年老いてしまったから,などを挙げられるのではないでしょうか。

Tuesday, 2006/11/07

西尾維新 『ネコソギラジカル』

[] 西尾維新ネコソギラジカル 西尾維新 『ネコソギラジカル』を含むブックマーク

 西尾維新(にしお・いしん)の戯言シリーズ第6作『ネコソギラジカル』を読む。

  1. ISBN:4061823930 上巻「十三階段」
  2. ISBN:406182399X 中巻「赤き制裁 vs. 橙(だいだい)なる種(しゅ)」
  3. ISBN:4061824007 下巻「青色サヴァンと戯言遣い

ネコソギラジカル (上) 十三階段 (講談社ノベルス) ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種 (講談社ノベルス) ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)

 前々作『サイコロジカル』と前作『ヒトクイマジカル』がつまらなかったので期待せずに読み始めたのだが,期せずして面白かった。文章に淀みが無くなり,文勢が回復している。冒頭部分だけ読んで止めるつもりだったのだが,そのまま中巻の半ば程まで読み進める。結局,二晩で読了。

 これまでに蒔き散らかしてきた伏線を拾い集めつつ,結末へ向かう回。ボスキャラ西東天(さいとう・たかし)の配下「十三階段」が襲い来る。ちょっと登場人数が多いだろうと思ったけれど,作中の主人公に先手を打って言われてしまったので,その点についての異議は差し控えることにする。全3巻を手元に揃えた時,その厚さには唖然としたものの,実際に読んでみれば納得できる量であったし。

 西東天のホワイダニット(世界を統べる《物語》の終わり)については端から理解の埒外なので,それはそれとして留保しておきたい――というか,同意したら人間を廃業だろう。これは最早,《神々の戦い》だし。

 結末への道程は綺麗に片を付けていて好ましかったのだが,この【終幕】だけはいただけない。時間的に離れた平穏な場面を貼り付けておくことでハッピー・エンドを演出するのは,ちょっとね……。だって,それじゃ『ガルフォース エターナル・ストーリー』(ASIN:B00005HUZ2)なんだもん*1。望ましい未来の姿が【終幕】であるにしても,途中経過を省いてしまったら幻影だよ。効果的な演出ではあるけれど,物語では無いと思うんだよね。戯言遣いの本領たる《言葉》で「漆黒サヴァン」との物語を紡いで欲しかったなぁ。

*1:知らない方のために。『GALL FORCE ETERNAL STORY』(1986年,柿沼秀樹監督)では,終幕で三当事者による全面抗争にまで発展するが,主人公らは闘争の舞台となった惑星カオスを炎に包むことで終止符を打つ選択をする。このように本編は劇的に幕を引くが,いったん場面は暗転し,突如として現代らしき光景が現れる。そこでは,本編とは別な時間軸で暮らす7人の登場人物の日常が映しだされる――というもの。

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Sunday, 2006/11/05

西尾維新 『ヒトクイマジカル』

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 西尾維新(にしお・いしん)戯言シリーズ第5作『ヒトクイマジカル――殺戮奇術の殺戮奇術の匂宮(におうのみや)兄妹』(ISBN:406182323X)を読む。

 起承転結の転。

 序破急の急。

 シリーズの主人公「いーちゃん」が,それまでの行動原理に背くような動きを見せる回。《死なない研究》をしている木賀峰(みがみね)助教授の許を尋ねたところ,タイヤをパンクさせられて帰れなくなってしまう。その夜に起こったのは――

 ミステリー的な性格は後退し,結節点として必要なストーリーの展開に紙幅が割かれている。そうしたキャラクター小説としての位置づけについては理解できるのだが,この巻だけをみると叙述が少々冗長に過ぎていて,いただけない。

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Saturday, 2006/11/04

西尾維新 『サイコロジカル』

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 西尾維新(にしお・いしん)戯言シリーズ第4作『サイコロジカル』を読む。

  • ISBN:4061822837 上巻「兎吊木垓輔(うつりぎ・がいすけ)の戯言殺し」
  • ISBN:4061822845 下巻「曳(ひ)かれ者の小唄(こうた)」

 私,走り幅跳びの自己最高記録は1m40cm。玖渚友より運動能力は上だねっ!

 結末まで読めば納得の出来(ヒロイック・ストーリーだと思えばね)。でも,中だるみしてる。一文ずつが少しずつ長くなっているのと,ストーリーに関連しない描写が多いのとで,ちょっと散漫な印象を受ける。

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Thursday, 2006/11/02

きゆづきさとこ 『GA 芸術科アートデザ

[] きゆづきさとこ 『GA 芸術科アートデザインクラス きゆづきさとこ 『GA 芸術科アートデザインクラス』を含むブックマーク

 きゆづきさとこGA 芸術科アートデザインクラス』〔1〕(ISBN:4832275933)は,高校の美術専攻クラスを題材にした四コマ漫画。キサラギ(ドジっ子&眼鏡っ娘),ノダミキ(迷惑をもたらすピンク髪),トモカネ(暴走するショートヘア),ナミコさん(お母さん役),キョージュ(黒)の5人で進行する。

 冒頭の十数頁(COMICぎゅっと!掲載分)は,キャラクターが立っていないうちから過剰に動き回るので流れを掴みにくい。それが中盤からはキャラ造形が安定し,美術ネタと登場人物の持ち味とが上手く組み合わさるようになっていて,良い感じにまとまっている。続きが楽しみな作品。

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Wednesday, 2006/11/01

長月みそか 『ほ〜むる〜む』

[] 長月みそか 『HR(ほ〜むる〜む)』  長月みそか 『HR(ほ〜むる〜む)』を含むブックマーク

 長月みそか(ながつき・みそか)『HR 〜ほーむ・るーむ〜』〔1〕(ISBN:4832275992)。これは手放しで褒めたい。だって,中学2年生(14歳)の女の子が,丸襟シャツ(もちろん白)で,紺ブレザーの制服(プリーツスカート)ですよ! これ以上,何を望むというのでしょう。

――というフェティシズムだけで済ませるには勿体ない良作なので,もう少しご紹介を。

 主役を張るのは表紙の3人。ドジキャラ担当でトラブル加速役の梶井素子まほろさんっぽく横方向にアホ毛を装着),チビっ子担当でありながらバスケ部キャプテンしかも策謀家という新機軸な田山ハナ,それに,トラブル発生係でありながら恋には奥手なツリ目っ子中原千夜。これに,千夜の恋のお相手「北原愁一」,秘かに恋の鞘当てを演じるメガネっ娘な生徒会長「夏目琴音」などを加えて学校生活が繰り広げられる。

 まんがタイムきららCarat芳文社)掲載の四コマ漫画ということもあって,何気ない日常描写を積み重ねる構成になっている。オチも,ほとんどが“くすっ”と微笑するようなもの。時折,恋の進展を感じさせるエピソードが挟まれるけれども,思春期ならではの小さなドキドキで仕上げられている。全編を通じて描かれるのは,ほんわかした懐かしい時間。

あでい いんざ らいふ (TENMA コミックス LO)

 もっとも,展開については際だったところが無いので,スクールライフを題材とする同種作品との差異を強調するのは難しいところ。しかし,ふくらみかけ少女を描かせたら長月みそかは当代一流である。前作『あ でい いんざ らいふ』(ISBN:4871827070)を併せ見て,その作風を感じ取っていただきたい。


▼ 追補

 『HR』の舞台である「橋沢市立山葉第二中学校」は長月みそか作品に共通する世界になっている。作中,別作品における描写が反映されている箇所が幾つかある。以下,気づかなくても問題は無いが,分かると嬉しいコマ。

  • 41頁。文化祭で校門を飾る一対のパネルのうち,女子側は音子(ねこ)。『あ でい いんざ らいふ』併録の「すてぃるぶる〜」に出演。
  • 48頁。3コマ目でスカートを洗っているのは知早たか子。『あ でい いんざ らいふ』第1話と同じ時間軸。
  • 68頁。生徒会長(琴音)の前でうろたえるのは鈴木先生。同人誌『しゅくだいがおわらない』(こどもちゃれんじ発行)収録の「先生と私のケジメ」に出演。「すてぃるぶる〜」にも登場。
  • 70-71頁。図書委員をしているのは知早
  • 75頁。4コマ目に音子。

http://www.coma.ais.ne.jp/~ohw/onehit/notes/idiom.html (登場人物プロフィール)

anpo-sumeragianpo-sumeragi 2006/11/03 16:28 ああ、なるほど。
以前作者の方のホームページに)『あ でい いんざ らいふ』の感想を書き込み、『HR』の単行本か楽しみにしています、と書き込んだところ「追補」のようなレスを戴きましたが・・・・。41ページと68ページしかわからなかったです。修行が足りないな、私。

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