高橋しん 『世界の果てには君と二人で』

 高橋しん『世界の果てには君と二人で――最終兵器彼女外伝集』(ISBN:4091807461)を読む。
 これでも外伝なの? と思うが,外伝としか表現しようがない。巻頭カラー4コマ「わたしたちは散歩する」で,ちょっぴりバカップルぶりを見せているものの,基本的にはちせが登場しない。
 実質的な収録作は3本。
 第1に,空を往く光を見た中学生の男女を視点に戦争の始まりを描く「世界の果てには君と二人で。あの光が消えるまでに願いを。せめて僕らが生き延びるために。この星で。」。これは「作品は題名が9割」という標語が脳裏をかすめます。
 第2に,戦争の最中に戦場でまみえた少女と兵士を“おまもり”の視点で描く「LOVE STORY, KILLED.」。あぁ,これは良い。ちせとシュウジのラヴ・ストーリーに収束しきれないメッセージが『最終兵器彼女』には込められていたことを認識させてくれる。極限状況の中で壊れていきながらも未だ滅びずにいる猥雑なセカイの姿は,確かに『サイカノ』のそれだ。そして作者は,乾いた筆致で終末を辿る。血飛沫が舞い銃声が耳をつんざいているはずの白く明るいコマ。彼女――この物語では少女に名前など与えられていないのか――が発する「何するんですかぁ?」の間延びした言葉や表情。人の命が2つ消えゆくというのに,何故か晴れ晴れとした印象を与えて幕が下りる。
 第3は,セカイが滅びた後の「せかい」を舞台とする『スター☆チャイルド』。これは…… 好意的な評価をしている前田久に委ねよう。