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博物士

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Thursday, 2007/08/30

谷原秋桜子 『砂の城の殺人』

[] 谷原秋桜子 『砂の城の殺人』  谷原秋桜子 『砂の城の殺人』を含むブックマーク

 谷原秋桜子(たにはら・しょうこ)『砂の城の殺人』(創元推理文庫ISBN:9784488466039)を読了。

 〈美波シリーズ〉の第3作であるが,前2作が富士ミスからの移管であったのに対し,本作は新作書き下ろし。

 倉西美波の今度のバイトは廃墟探検家の撮影助手で,なんと「2日で5万円」。深い山の中にある目的地に足を踏み入れると,そこにミイラが――。

 文章の運び(特に会話進行)にぎこちないところがあったり,家の間取り(というか柱のあるべき場所)が妙だったりはします。既刊3作だと歴史に残る名作にはならないだろうな,というのは正直な感想。でも,推理小説の定番たる《嵐の洋館》を書いてみました!という作者の意気込みがひしひしと伝わってくる意欲作です。作者に力量がついてたところで仕切り直しをし,別シリーズを手がける頃には凄いものを書いてくれるのではないか,と思います。

 巻末では柴田よしきが「きらきら輝く青春ミステリ」と題して解説を書き,「骨太の本格推理青春小説」であるとして本作への賛辞を送っていますが,これには大いに賛同。作中の人物(美波)のみならず,作者(谷原秋桜子)の成長をも見守りたくなる。

 良いものを読んだ,と幸せにひたりました。グロース株よりもバリュー株への投資を志向する読者諸氏へ推薦。

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Sunday, 2007/08/26

竜騎士07 『ひぐらしのなく頃に』小説

[] 竜騎士07ひぐらしのなく頃に』小説版  竜騎士07 『ひぐらしのなく頃に』小説版を含むブックマーク

 仕事が一つ片付いたところで,本を読んで休養。明るいうちに,竜騎士07ひぐらしのなく頃に 第一話〜鬼隠し編〜(上)』(ISBN:9784062836371)を読んでおくことにする。

 メディアミックスの類が好きではないのですが,ゲームの原作者が手がけるというのならば――と思って買ったのです。

 が,読み終えて思いました。ノヴェルタイプのゲームを,原作そのままに小説へ置き換えてもつまらないなぁと。

 ノヴェライズ版の書き手が原作者と違うのであれば,エピソードの取捨選択だとか文体の差異などを比べて楽しむこともできます。しかし,この『ひぐらし』の小説版,原作であるゲーム版でのテキストが備えていた持ち味をそっくりそのまま文章化しているのです。というか,テクスト抽出して印刷したような印象。それ故,原作のストーリー展開が忠実になぞられており違和がまったく無いものの,小説ならではの味わいというものも見当たらない。

 だいぶ記憶も薄れてきていたので内容を思い返すには便利ですが,「映像なし」「音声なし」だと,ぜんぜん盛り上がりません。

「本作品はサウンドノベルです。

 音楽や背景、キャラクターによって楽しく演出された世界を、小説の感覚で読み進んで行きます。」

http://07th-expansion.net/Soft/Prolog.htm

 ゲームにおいてスクリプト演出が果たしていた効果を(逆説的に)確認する役には立ちますね。あと,近代文学の人たちが文芸評論として『ひぐらし』を取り上げやすくなりますよ,とか。

Saturday, 2007/08/25

[] 大学院はてな :: 使用者と共謀した執行委員長への損害賠償請求  大学院はてな :: 使用者と共謀した執行委員長への損害賠償請求を含むブックマーク

 研究会にて,日産プリンス千葉販売事件(東京地裁判決・平成19年2月22日・労働経済判例速報1971号3頁)の検討。

 原告Xは労働組合の上部団体,被告Y1は会社。そして本件では,組合の執行委員長Y2も被告である。

 X組合は,Y1社を単位とする下部組織としてZ組合を組織していたところ,Zの委員長であったY2がXからの脱退を主導。Xから530名が脱退して新たな労働組合が結成された。脱退後には,Y2の給与全額を会社が負担するなどしていた。

 そこでX組合は,Zを御用組合化するために会社がY2を懐柔し,脱退誘導行為および脱退援助行為を行ったためにXからの大量脱退が起こったものであると主張し,共同不法行為に基づく損害賠償の支払いを求めた。

 裁判所は請求を認容。

 「在籍専従者としての身分を引き続き確保したいという自己保身の目的や執行委員長の退任を迫るXへの反発から,〔Y1社の社長〕及び〔常務取締役〕と共謀し,Y1社の従業員がXから脱退するについて,これを主導する加害行為を行ったと認めるのが相当である」

と認定し,会社と執行委員長が連帯して200万円を支払うよう命じた。

 「労労対立」という構図というのは組合が分裂した時などに時折見られるものである。本件の特徴は,憲法28条に由来する団結権の侵害があったとして労働者個人に対して不法行為によって生じた損害の賠償を命じていること。労使関係法における重要なリーディング・ケースになりそう。

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Monday, 2007/08/20

永田諒一 『宗教改革の真実』

[] 永田諒一 『宗教改革の真実』  永田諒一 『宗教改革の真実』を含むブックマーク

 永田諒一(ながた・りょういち)『宗教改革の真実――カトリックプロテスタントの社会史』(講談社現代新書2004年,ISBN:406149712X)を読了。

 副題に〈社会史〉と銘打っているのが本書の肝,らしい。「社会のなかの普通のひとびとの暮らしぶり」に焦点をあてる,ということらしく,『宗教改革の真実』と言いながらも三十年戦争やユグノー戦争などには全く触れない。

 冒頭では,ルターは『95箇条の論題』を扉に貼ったのか否か,という些末なことから始まる。それから,木版画のパンフレットや聖画像破壊運動(イコノクラスム)などを題材にして民集の間に宗教改革が広まっていく様子に触れたあと,第7章以下で「修道士の還俗と聖職者の結婚」や「宗派が異なる男女の結婚」などアウグスブルク市での具体例を素材にエピソードを展開する。

 興味深かったのは,第11章「グレゴリウス歴への改暦紛争」。1582年に教皇グレゴリウスXIII世によってグレゴリウス歴の改訂が行われたが,カトリックの首長から法王勅書によって発布されたものであったため,プロテスタント諸国では導入が遅れた。ドイツの場合は1700年の採用であり,百年以上もの間カトリックプロテスタントで祝祭日にズレがあった。新旧両派の共存が行われていたアウグスブルク市では,その多くがプロテスタントであった精肉販売業者たちがカトリック住民を困らせようとし,謝肉祭(カーニバル)前に実施される肉食断ちを長引かせたのだとか……。

 こうした幾つかのエピソードは興味をひくものの,〈社会史〉であるが故に著名な出来事は登場せず,盛り上がりに欠けるのは否めないところ。別な書物で政治史を紐解いたうえで,副読本として読むのが相応しい性格のものだろう。

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Tuesday, 2007/08/14

[] 紅山雪夫 『ヨーロッパものしり紀行』  紅山雪夫 『ヨーロッパものしり紀行』を含むブックマーク

 寝付けない……。

 定時に起きる必要のない気楽な文筆業なので,起き出して本を読む。途中で眠くなっても大丈夫なように,細切れになっている紅山雪夫(べにやま・ゆきお)の『ヨーロッパものしり紀行』を読み始めた――のだが,結局は読了してしまった。

 シリーズのうち《くらしとグルメ編》はアルプスの氷河地形から話が始まり,牧畜業からチーズ,そしてワインへと進んでいく。軽い蘊蓄集です。旅行中に添乗員がコメントしてくれる内容としてはいいのだけれど,まとめて読むには足りない。

 旅行記として読むならば,先日読んだ同じ著者の『ドイツものしり紀行』の方が具体的で面白かった。単行本の時の題名が『ドイツの城と街道』(ISBN:4895592766)なので「ドイツ」と言ってもロマンチック街道などに偏っているのだけれど,旅の予習には手頃。

ドイツものしり紀行 (新潮文庫) ヨーロッパものしり紀行―くらしとグルメ編 (新潮文庫)

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Tuesday, 2007/08/07

男鹿和雄展

[] 男鹿和雄 男鹿和雄展を含むブックマーク

 東京でお仕事に備えて前日泊。早めの便で移動し,東京都現代美術館で開催されている『ジブリの絵職人 男鹿和雄(おが・かずお)展』を観る。

 もう素晴らしいの一言。

 『幻魔大戦』に始まり,『となりのトトロ』『もののけ姫』『耳をすませば』を経て今日に至るまでの間に氏が手がけた背景画や美術ボードが,たっぷりと展示されています。少し早足で見て回っても2時間はかかりました。15時30分に入館した際,待ち時間は無かったものの,場内にはかなりの人が詰めかけていました。

 場内で販売されていた画集(2,800円)を記念に買い求めてきたが,出来が大変に良くて嬉しい。ジブリ・グリーンとでも称すべき鮮やかな記憶色が綺麗に出ている。展示されている作品が網羅されており,細部までじっくりと眺め返すことができる。

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Friday, 2007/08/03

とかちつくちて

[] 東野圭吾どちらかが彼女を殺した 東野圭吾 『どちらかが彼女を殺した』を含むブックマーク

 とかちつくちてきました(十勝の帯広まで出張で出かけてきました)。

 移動中に読んだのは,東野圭吾どちらかが彼女を殺した*1

 妹の死を自殺に偽装された男が,残された証拠から2人の人物が犯人であると割り出した。ところが,どちらが犯人であるか絞り込めない―― 

 どうして自ら犯人捜しをしようと思い至ったのかという冒頭の部分については留保するにしても,結末部の運びは堪能させてもらった。作者が,敢えて明確に書かないでおいてくれたおかげで,読了後にじっくりと考えることができるという見事な構成。

*1:〈新書版〉ISBN:406181687X どちらかが彼女を殺した (講談社ノベルス) 〈文庫版〉ISBN:4062645750 どちらかが彼女を殺した (講談社文庫)

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Wednesday, 2007/08/01

平井正 『オリエント急行の時代』

[] 平井正 『オリエント急行の時代』  平井正 『オリエント急行の時代』を含むブックマーク

 平井正(ひらい・ただし)『オリエント急行の時代――ヨーロッパの夢の軌跡』(2007年1月,ISBN:9784121018816)を読む。

 1883年10月4日(日)午後7時30分にパリのストラスブール駅を出た第1号列車の道筋に沿い,ドイツ,オーストリア,ハンガリー,ルーマニア,ブルガリア,オスマン帝国へと話が進む。叙述は単なる旅行箪ではなく,むしろ当時の政治情勢をふんだんに織り込んだものになっている。

 例えば,1885年にベオグラードを経由してコンスタンティノープルへ向かう経路が開通したにも関わらず,不便な「ブカレスト経由コンスタンツァ行き」が残されていた話。ルーマニアにとっては,パリ行きの鉄道が自国を通るかは死活問題であったのだと述べられている。オリエント急行は輸送路であるというよりも《西欧》とバルカンが繋がっていることを表象するものである,というのが本書の基本姿勢。

 19世紀末から20世紀初頭にかけての西欧史を,ある一点から具体的に詳述したものであり,興味深く読んだ。

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