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博物士

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Tuesday, 2007/11/27

紙屋高雪 『オタクコミュニスト超絶マ

[][] 紙屋高雪 『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』  紙屋高雪 『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』を含むブックマーク

 発売日に注文してあった紙屋高雪(かみや・こうせつ)『オタクコミュニスト超絶マンガ評論』(asin:4806713562)が届きました。

 「紙屋研究所」については御存知の方も多いでしょう。これまでその存在を知らなかったという人は,私から本書の内容解説を通して説明するよりも,直接にアクセスして触れられた方が理解が早い。

 私はというと,紙屋さんに心酔するシンパを自認しておりますので(政治的には中道左派ですけれど)発売情報が出たところで即座に購入を決めました。

 こういったウェブ起源の書籍化商品を購入する目的としては,(1)作者に対する有形の支援活動として,(2)書籍独自の付加価値が欲しくて,(3)可読性ないし一覧性の向上を求めて,(4)紙の上にインクで固定させた状態で保管するため,ということが挙げられるかと思います。私の遍歴だと,COCO『今日の早川さん』は買いましたが,小島アジコ『となりの801ちゃん』は購入を見送り,ざちおはねむす』は古本に手頃な値段がついていたので入手して,とか。

 本書『オタクコミュニスト〜』の場合,収録されているのは約30本の記事。従って,コンテンツを所蔵(アーカイブ)する目的としてならば,かなり劣ります。しかし作者自薦集としてみれば唸らされる出来。ウェブサイトでは時系列に沿って(つまり発表順)に並んでいますが,本書ではテーマ別の構成を採っています。

かかる章題のもとにこれらの作品をこの順で並べられていることに興味が持てるならば,本書は手にする価値があると考えます。それぞれ個別には既に読んでいるものであっても,総体としての組み立てによって味わいが生まれています。ワインとチーズのマリアージュ(相乗効果)のように。各章の締めくくりには《マンガではないもの》を置いてフレーバーを加えているのも演出として評価できるところでしょう。編集の妙味ですね。

 ちなみに,このあとの章は次のように続きます。

  • 第2章 恋愛とセックス――ぼくの脳の8割くらいを占める関心事
  • 第3章 仕事――働くとは面白いことかつらいことか
  • 第4章 結婚・子育て――生活と家族が生成する
  • 第5章 実家・学校時代――自分の根拠をみつめる
  • 第6章 戦争と政治――無関心といわれても

 個別の作品評ですが,ウェブ掲載の元文章と対照させてみると,大筋では異ならないものの細部に手が加えられています。きづきあきら+サトウナンキ『いちごの学校』(これは2007年8月7日に書かれた新しいもの)を例に取りますと,ブロックにして3つほど削られていました。陽気婢『えっちーず』『内向エロス』の項では,ラブコメに関する一般論が書き改められていたり。これらの修正により,評論の精度は向上し洗練されています。

 「ウェブで見られるのを,わざわざ1,890円を出して買う必要あるのか?」と思われる方々へ向けてのメッセージを送ります。書籍版で読んでみる価値,ありますよ

▼おとなりレビュー

*1:余談。本書を開くまで「エビちゃん」というのが女性だということを知りませんでした。お笑い芸人だと思ってたよ。テレビなんて観ないからなぁ...

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Friday, 2007/11/23

ブリヂストン美術館

[] セザンヌ+モリゾ  セザンヌ+モリゾを含むブックマーク

 昨夕,東京でお仕事があったのですが,帰りの便が満席で取れなかったもので泊まっていくことにしました。

 搭乗便までの待ち時間を利用して,ブリヂストン美術館での「セザンヌ4つの魅力 ―人物・静物・風景・水浴―」と,損保ジャパン東郷青児美術館「美しき女性印象派画家 ベルト・モリゾ展」へ。

どちらも今週末で会期終了だということで訪問先に選んだのですが…… 組み合わせに失敗しました(^^; いずれも楽しんできたのですけれども,どちらも印象派なので後に強く残るものがないのです。

 思い返してみると,常設展示で見たカミーユ・コロー『オンフルールのトゥータン農場』の強烈な緑がお気に入りでした。

muroyanmuroyan 2008/03/03 01:53 セザンヌ好きなので、楽しみに行ったのですが、あまりセザンヌなかったような気が・・・。モリゾ展も何回か行きましたよ。

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Sunday, 2007/11/18

名古屋ボストン美術館「レンブラント版

[] レンブラントロートレック  レンブラント+ロートレックを含むブックマーク

 とある研究会に参加のため名古屋へお出かけ。帰りの飛行機まで時間があったので美術館に寄ってきました。

 まずホテルの近くであった愛知県美術館での「ロートレック展――パリ、美しき時代を生きて」。19世紀末の頽廃的文化を表象するかのようなポスター作品を中心にした展示。しかし,どうにもロートレックの描く女性達が好きになれない。今回の展示で最も気に入ったのは,くろね子さん――もとい,スタンラン(Steinlen)『シャ・ノワール(Chat Noir)』だったというオチ。

 それから金山駅の名古屋ボストン美術館「レンブラント版画展――呼び交わす光と闇」を。こちらは心底,堪能してきました。もともとネーデルラント絵画が好きだし,銅版画が好みなので。レンブラントが銅版に彫った線は画面の中を闊達に動き回っており,書き慣れた署名の文字列のよう。金属を媒介にしているのにペン画のような柔らかな描線に見とれてきました。

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Thursday, 2007/11/15

西尾維新 『不気味で素朴な囲われた世

[] 西尾維新不気味で素朴な囲われた世界 西尾維新 『不気味で素朴な囲われた世界』を含むブックマーク

 西尾維新(にしお・いしん)『不気味で素朴な囲われた世界』(ISBN:9784061825574)を読了。

 キャラクターの魅力と,文章に押し込められた言葉遊びは,それだけで十分に小説としての楽しさをもたらしてくれる。ミステリーとしての要素はアンチとしてのそれであり,病んだ中学生によって事も無げに踏みしだかれ,徹底的に茶化される。

 本格ミステリの作法を正確に踏まえつつ,被覆を剥ぎ取って解体し,さらけ出された伽藍の上でキャラ達が繰り広げる狂宴。《脱格》とは,まさしく本作品に対して献じられるべきレッテルだろう。

▼おとなりレビュー

Saturday, 2007/11/10

[] 大学院はてな :: 降格が人事権の濫用にあたるとされた例  大学院はてな :: 降格が人事権の濫用にあたるとされた例を含むブックマーク

 国際観光振興機構事件(東京地裁・平成19年5月17日・労働経済判例速報1975号20頁)を検討してきました。

 人事評価については一般的に会社の裁量の幅が広く,低い評価がなされたことの是正を求めて争うのは難しいと言わざるを得ません。それが,本件では原告の主張が認められています。

 それで題材に取り上げてみたのですが――どうも,本件は特有の事情が大きく左右していたようで,あまり一般性はありませんでした。

 被告Yは海外における観光宣伝等を行う独立行政法人であり,原告XはYにおいて就労していた労働者。本件紛争当時,Y社では新しい人事評価制度が導入され,平成15年度下半期を評価対象期間として実施された。評価書は「海外事務所用」と「本部職員用」とで相違があり,本来は「海外職員用」のものに記載しなければならないところ,Xは平成16年4月より海外事務所から本部に異動していたこともあり誤って「本部職員用」について記載した。この過誤については,Xの直属の上司であったC所長も気づかないまま,処理を進めた。集計期間も押し迫ったところで本部の管理部長Dがこの誤りに気づき,2日以内に修正を求めたがXからもC所長からも連絡がなかった。D部長は催促をし,ようやくC所長から評価書が送られてきたものの,X本人が作成すべき書類が添付されていなかった。そこでD部長は,Xに対し直接,書類の提出を求めた。そして,本人作成書類を受領したD部長は,その場でXの人事評価を修正しはじめ,減点を行った。

 本人の自己申告では「38点」であったが,本来の評価者であるC所長(かつての直属の上司)は3つの項目で減点をし「35点」の評価を行った。

評価項目本人申告C所長による評価D部長による修正
1.自己管理能力nn-1さらに減点
2.意思疎通・信頼関係nn-1さらに減点
3.費用対効果nn-1さらに減点
4.組織理解nn減点
5.等級nn減点
6.対外的関係nnn
7.外部との連携nnn
8.言語習得nnn
(合計)38点35点29点

そこへ,D部長がさらに減点を行ったため,Xの評価は「29点」にまで下がった。この影響でXは,4等級13号俸(月額35万4600円)であったところが5等級18号俸(月額29万300円)へと降格になり,給与が下がったというもの。本件は差額賃金等を請求した。そして,この請求は認められています。

 その理由として,判旨では「人事制度が定めるルール・前提」について,興味深い認定があります。何でも,このたび導入された新しい人事制度は,D部長その人が考案したものなのだとか。制度の運用にあたっては,

  • 「評価は評価者の主観的な受け止めによってはならない」
  • 「評価は漠然とした印象や推察で行ってはならない」

というテーゼがあったようなのですが,D部長がXの評価を下げたのは正しくこのテーゼに抵触すると判決の中で評価されています。策定したルールを破ったのは,ルールを作った本人だったという……。そのため,

 「D部長による本件修正は本件人事制度が定めるルール・前提に合致したものとはいえない」

から人事権の濫用にあたるという結論が導かれています。

 そんなわけで一般的な人事評価制度を論じる素材としては適さない事件なのですが,読んでいるぶんには面白い判決です。

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Friday, 2007/11/09

時雨沢恵一 『キノの旅』

[] 時雨沢恵一 『キノ』  時雨沢恵一 『キノ』を含むブックマーク

 先週末から,時雨沢恵一(しぐさわ・けいいち)『キノの旅 -The Beautiful World-』を読んでおりました。

 人の死が忌避されていないこと,主人公が旅人であるという設定の故にエピソードの中にあっても当事者にはなりきらないこと,主人公は銃器の名手という能力を備えていながらも当該個別的生存能力が集団的な意味での社会の存続には作用しないこと,そして,主人公の(現在における)成長が起こらないこと――などジュヴナイルとしては異色である諸点に興味深く接しました。

 第I巻から毎晩1冊ずつ第VIII巻まで進めていったところで本編の買い置きが尽きたので,『学園キノ』を……。

学園キノ (電撃文庫 (1283))

 えっと,痛々しかったです。

▼おとなりレビュー

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Friday, 2007/11/02

岡田温司 『マグダラのマリア』

[] 岡田温司マグダラのマリア 岡田温司 『マグダラのマリア』を含むブックマーク

 岡田温司(おかだ・あつし)『マグダラのマリア――エロスとアガペーの聖女』(ISBN:4121017811)を読む。

 娼婦の身であった者が改悛したことにより聖女に列せられたという伝説を持つ人物像の成立に興味があったのだが,これについて述べているのは第1章〈揺らぐアイデンティティ〉のみ。かかる存在について聖書にあたり,外伝も紐解いて,混同が起こっていたとかが述べられている。だが,何となく出来上がっていたものを,教皇グレゴリウスの手による「解釈=加工」を通じてイコンになったのだという簡単な説明で終わっていて,何とも釈然としない。不明瞭な存在故に想像をかきたてられるのだというのは分かったが……。

 続く第2章からは,数多くの図版を引用して〈マグダラのマリア〉の描かれ方が説かれているが,これはモノクロで観るものではないねぇ。実物を観に,旅へ出たくなる。

 

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