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博物士

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Thursday, 2008/01/31

木ノ歌詠 『幽霊列車とこんぺい糖』

[] 木ノ歌詠 『幽霊列車とこんぺい糖』  木ノ歌詠 『幽霊列車とこんぺい糖』を含むブックマーク

 暖房費の節約で早めに布団にくるまってみたはものの寝付くには早すぎたので,木ノ歌詠(このうた・えい)『幽霊列車とこんぺい糖――メモリー・オブ・リガヤ』(富士見ミステリー文庫,2007年10月,ISBN:482916400X)を読みました。

 味覚障害で生理不順で自殺志望の少女が飛び込もうとして出かけてみたら田舎の村を通る路線は廃止になっていた。レールの上で寝っ転がっていたらリガヤと名乗る女の子が現れて――という話。

 プロットはさておき。心情を説明する描写に違和がありました。具体的には,

  • 学資保険で主人公が「あははははっ!」(72頁)
  • パン工房の石窯でリガヤの従姉が「くくっ……」(172頁)
  • 生保勧誘のオバサンが「チコちゃん」連発(189-191頁)

の3箇所。いずれも重要な場面なのですが,こんな言葉で因果の流れが変わっちゃうの?という感じがしてしまいます。

[] 美少女探偵ヴィクトリカ  美少女探偵ヴィクトリカを含むブックマーク

 対外的に吹聴するほどではないけれど心がけているということは結構ありまして。

 例えば「ブックマークするのは数年後にも価値が残ると思うものだけ」とか,「ブログは1日1テーマ」とか。

 でも,どうしても今日のうちに突っ込んでおきたい。

■ 桜庭ワールド沸騰 ―― 朝日新聞 2008年1月31日 夕刊 be *1

 「99年にライトノベルでデビューし,美少女探偵シリーズでブレーク。」

http://book.asahi.com/clip/TKY200801310183.html

――って,なんやねんそれ。直木賞作家の出自における代表作が黒歴史かい(;^^)/

Gosick 01: Light Novel Gosick 02: Verbrechen ohne Namen Gosick 03: Manga / Roman Gosick 04: Fuersprecher eines Narren Gosick 05: Manga / Roman

 本稿執筆時における検索結果を記しておくと,「google:“美少女探偵ヴィクトリカ”」であれば id:kaien:20040702:p1 を筆頭に5件がありましたが,「google:“桜庭一樹+美少女探偵シリーズ”」は当該記事だけです。

*1:北海道版の題名による。

trivialtrivial 2008/01/31 23:18 >韓国や台湾、ドイツで翻訳が進む。
これがちょっと気になりました。『私の男』『赤朽葉』とみるのが自然ですが、案外既に翻訳されている「美少女探偵シリーズ」のことを言っているんじないか、と。

genesisgenesis 2008/02/01 00:59 む。言われてみれば,私も,気になります。ドイツ語版だと第4巻まで出ているようですね。

sahiro316sahiro316 2008/02/08 08:28 好きな作品ですけれども、詰めの甘さが目立つような気がします。<『幽霊列車とこんぺい糖――メモリー・オブ・リガヤ』
特に”閉塞された田舎”のモチーフはさすがに無理があるような。超過疎地域のうちの田舎だって、あそこまでの閉塞感はないですよ。ちょっとありえない気がします。
「心情を説明する描写に違和」というのは目から鱗ですね。ところどころひっかかると思っていたらそのへんでした。
しかしこの作品最大のお楽しみはなんといっても”百合”! いやいや、あれは素晴らしかったですよ! ……腐った読み方だったですねorz

genesisgenesis 2008/02/08 20:50 sahiro316さん,コメントありがとうございます。『リガヤ』では閉塞感というものが文言上は書かれていながらそれがあまり機能していないのは,場所的な不便さについてはそこそこ描写しようとしているけれども,社会関係において息が詰まる原因としての“人間関係のしがらみ”のようなものがなかったためではないかと思います(cf.桜庭一樹の地方都市シリーズ)。主人公(ミサっち)はパン工房の主人とも上手くいっているし,内面的にもお人好しであるから余所者であるリガヤとも関係性を深めてしまう(そこが百合っぽさではないかと)。
例えば四半世紀前,紡木たく『ホットロード』の頃であれば暴走族のメンバーになってしまうことを納得させた《荒れた家庭》というモチーフでありますが,本作だとリガヤの無法度は廃棄車両で××するというレヴェル。ミサっちにしてもリガヤにしても,切迫感の欠けていたことが本作の弱点ではないかと。

Sunday, 2008/01/27

上遠野浩平 『しずるさんと偏屈な死者

[] 上遠野浩平 『しずるさんと偏屈な死者たち』  上遠野浩平 『しずるさんと偏屈な死者たち』を含むブックマーク

 昨晩は結婚式(ただし二次会要員)で,遅くに帰ってきました。引き出物を開けてみたら鮭とばだったんですが……

 酔いが醒めるのを待つ間に,上遠野浩平(かどの・こうへいい)『しずるさんと偏屈な死者たち』(2003年,ISBN:4829162147)を読みました。上遠野の代表作といえば『ブギーポップ』シリーズなのですが,肌に合わないので途中放棄。別シリーズだったらどうだろうと思って手を伸ばしてみました。

 安楽椅子ならぬ病院のベッドの上から動かずに推理するしずるさんと,彼女のお見舞いにやってきて事件を語って聞かせるしずるさんによる短編4編。

 あ,ミステリーの文法で書かれたこれなら支障なく頭に入ってきます。

 しかし,文章の質と作品の評価は別。「何ですか,そのオチは……」とげんなりしてしまいました。謎めいた話を語って聞かせるという趣向に終始するならば良かったのですが,ほとんど情報が与えられていないのに探偵役が謎解きをできてしまうのが納得いきません〜。

 まぁ,富士ミスですしね。作品世界の雰囲気は好きなんだけれどなぁ。

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Wednesday, 2008/01/23

柏木博 『日用品の文化誌』

[] 柏木博 『日用品の文化誌』  柏木博 『日用品の文化誌』を含むブックマーク

 日帰りで東京出張。

 新千歳のラウンジでは研究会で報告される方の著書を読んでいたのですが,機内でハードカバーを広げるのは難があるので,柏木博(かしわぎ・ひろし)『日用品の文化誌』(1999年,ISBN:4004306191)を。以前,出張中に本が切れたので,渋谷にあった古本屋に飛び込んで買い込んだものだったと思う。

 本書は,生活の中にある日常品の成立と普及について説くもの。雑学の類ではあるが,雑誌『図書』に連載されたものであって異様なまでに堅い。ペーパータオルの項では,清潔願望というキーワードを経由してアメリカ消費社会の考察にまで辿り着いてしまうぐらい。

 高密度に編まれた博学の書でありました。

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Tuesday, 2008/01/22

桜野みねね 『Healing Planet(ヒーリ

[] 桜野みねねフェアリアルガーデン 桜野みねね 『フェアリアルガーデン』を含むブックマーク

 昔むかし,『まもって守護月天!』というお話がありました。

 優しくはあるけれども押しは強くない少年のところに精霊シャオリンが現れ,つられて女の子が続々と周りに現れるという一種のハーレムもの。愛すべきは離珠(りしゅ)という,ちんまいツインおだんご頭娘だったのでし

 掲載が始まったのは1996年4月のこと。エニックスの『少年ガンガン』が掲載誌でありました。同誌は桜野みねねの他にも天野こずえを擁しており,独特な空気感を漂わせる場が次第に形成されていったのです。その後,スクウェア・エニックスから引き抜きを受けた作家陣を据えて2001年にマッグガーデンが設立されます。少年漫画でも少女まんがでもない何かがレーベルとして生まれるに至る分水嶺として,桜野みねねの名は刻まれることでしょう。

 とはいえ,『守護月天』は再逢(Retrouvailles)において失敗しています。桜野作品を端的に示すならば『Healing Planet(ヒーリング・プラネット)』(ISBN:4757504926ISBN:4861270707)を参照するのが相応しいでしょう。

フェアリアルガーデン(1) (BLADE COMICS)

 その桜野みねねによる数年ぶりの作品が『FAIRIAL GARDEN(フェアリアルガーデン)』(asin:4861274680)。

 《フェアリア》と称される妖精を産む種が開発されている世界でのお話。妖精の研究に没頭する父母と折り合いをつけられずにいる少年が,拾ってきた鉢植えを育てたところ妖精が咲いた。ところがそれは妖精の中でも希少な《フェアリアル》で……。

 ぽやや〜んとしたエルフ耳の妖精,おバカな級友,タレ目でアホの子なメイドさん

 懐かしき桜野みねねが此処にあります。

 ただ―― 『守護月天』に郷愁を感じないとしたならば,評価するのは難しい出来というのも正直なところ。もはや〈癒し〉の時代は前世紀の彼方。フェアリアルとの邂逅は唐突だし,ストーリーも全然進まない。心を閉ざしている少年を軸にしたテーマを描こうという意欲が感じられるのだが,ぽわぽわとした作風の故に長引きそうな構成。無事に(打ち切られることなく)完結を迎えられるのかが心配されるところではある。

 空気の肌触りを楽しむ作品として捉えるならば,実に柔らかな風合いが楽しい。

▼おとなりレビュー

桜野みねね作品は常に想いの伝わらなさをテーマにしてきたが、今回も言葉がわからないクレアをヒロインにすることでそれを描こうとしているんだろう。」

http://d.hatena.ne.jp/arctan/20080115/1200422721

「ひたすら絵と、そして雰囲気を楽しむ作品だと思う。」*1

http://d.hatena.ne.jp/kaien/20080121/p1

「いわゆるボーイ・ミーツ・ガールな一目惚れ話なのですが、すぐそこにいるのに届かない想いを描く手腕はさすが守護月天の作者さん、という感じ。」

http://pasteltown.sakura.ne.jp/akane/games/blog/archives/2008_1_24_1345.html

*1:それにしても海燕氏の〈良かった探し〉は秀逸である。

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Sunday, 2008/01/20

我孫子武丸 『殺戮にいたる病』

[] 我孫子武丸 『殺戮にいたる病』  我孫子武丸 『殺戮にいたる病』を含むブックマーク

 夕食後にうたた寝をしてしまったため,深夜になっても寝付けない。ならば眠くなるまで本を読もうと,我孫子武丸(あびこ・たけまる)のサイコサスペンス『殺戮にいたる病』*1を手に取る。

 面白かったので,そのまま読了。

 冒頭に「蒲生稔」が逮捕されるエピローグが置かれてから本編が始まる。その本編では,「犯人」「犯人の肉親」「第二の被害者の関係者」という3人の視点から猟奇殺人――行きずりの女性を絞殺して乳房を切り取るという犯罪を描きます。

 犯人の〈異常〉行動の描写それだけでも興味深かったけれど,結末には驚かされました。ミステリーとしても傑出した出来だと思います。

*1:文庫版 ISBN:4062633760,ノベルス版 ISBN:4061817914

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Saturday, 2008/01/19

労働判例942号

[] 大学院はてな :: 出向元と出向先の両方から受けた休職命令  大学院はてな :: 出向元と出向先の両方から受けた休職命令を含むブックマーク

 研究会で日本瓦斯(日本瓦斯運輸整備)事件*1が取り上げられたのですが,検討の中で興味深い指摘がありました。

 Y1社において雇用されていた労働者Xに睡眠覚醒リズム障害の疑いありとの診断があったことから,残業の少ないY2社に出向して勤務していた。問題となった時点でXが就いていたのは,Y2社の中でも比較的軽易な業務である充填部での業務であった。平成13年4月頃,Xは体調不良により有給休暇を取得することが多くなったためY2社が診断書の提出を求めたところ,医師から「自律神経失調で休養を要する」との診断が示された。そこでY2社はXに休職命令を発し,約3か月の休職期間を3回に渡って延長してきたが,平成17年9月に休職期間満了によりXを退職させることにした――というもの。

 議論で問題となったのは,終業規則上の根拠条項。この事件では出向先のY2社も出向元のY1社も,両方とも休職命令を発しています。

 Y1社の就業規則45条 「従業員が次の各号のいづれかに該当する場合は休職を命ずる。(1)〜(3)略 (4)前各号の外,特別の事情があって休職させることを適当と認めたとき。」

 Y2社の就業規則49条 「従業員が次の各号のいずれかに該当する場合は休職を命ずる。(1)心身または精神の衰弱故障により業務に堪えないと認めたとき。」

 使用者にしてみれば,念のためというつもりでY1社からもY2社からも休職命令を発したのでしょう。しかしながら論理的な問題としては,出向元と出向先のいずれから休職を命令できるのかは慎重な判断を要するところ。加えて,Y1社が根拠に挙げているのは抽象的な「特別の事情」であり,吟味する必要があります。

 他にも,休職期間の満了により自動的に退職の扱いになるものとしている判示には疑問があります。この事件は本人訴訟ということで労働者側に弁護士がついていないため,論点が上手く整理されないまま審理が進行したのかもしれません。

*1:東京地裁判決,平成19年3月30日,労働判例942号52頁

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Wednesday, 2008/01/16

有栖川有栖 『マジックミラー』

[] 有栖川有栖 『マジックミラー』  有栖川有栖 『マジックミラー』を含むブックマーク

 年末年始には風邪をひいて家にこもっておりまして,有栖川有栖(ありすがわ・ありす)の〈国名シリーズ〉を7〜8冊ほど読んでいました。読んでいる最中には楽しみましたが,読了後にこれといって感想も無く,古本屋へ持っていくもの箱へ。

 そんななかで『マジックミラー』*1だけは手元に残しておこうと思いました。第7章「アリバイ講義」のために。

 作品については,もはや今日においてトラベルミステリーは厳しいなぁ,というのが率直なところ。探しさえすれば別な経路があるだろうというのが予め分かっていると,興味が湧かない。昭和の中葉に時刻表トリックが脚光を浴びたのは,航空機に乗ることが特別だった時代背景もあったからだろう。本作では「切符についた指紋」という要素を加えることで,ようやく乗り切っている。

*1:ノベルス版 ISBN:406181480X,文庫版 ISBN:4061853902

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Saturday, 2008/01/12

労働判例941号

[] 大学院はてな :: 実労働時間は在社時間の8割?  大学院はてな :: 実労働時間は在社時間の8割?を含むブックマーク

 研究会で検討課題となったネットブレーン事件(東京地裁平成18年12月8日判決,労働判例941号77頁)を読んでいたところ変わった説示に出くわしました。

 論点は,システム開発に携わっていた労働者の労働時間(つまり,時間外割増賃金の請求)。この会社では,以前はタイムカードで出退勤時刻を管理していたが平成13年頃からCybouzを用いて管理するようになり,従業員は画面からクリックして「出社時間」および「退社時間」を記録していた。

 タイムカードは打刻された時刻にその場に居たことは証明できるが,その間の時間帯すべてが労働時間であったとはいえない――との反論が持ち出されることがあります。例えば,就業規則に定められた終業時刻の後もダラダラと居残りをした後にタイムカードを打刻たようなことがあれば就労していたとは言えない,というもの。

 この問題については,タイムカードが適切な時刻に打刻されているかどうかをチェックするのは使用者の責務であるとされており,反証に成功しない限りにおいて客観的な資料であるタイムカード記載の時間をもって実際の労働時間と判断するのが一般的です。

 さて,今回の事件。Cybouzによって記録されたデータをもって出退勤時刻とする,としたうえで,次のような説示があるのです。

 「出勤時刻から退勤時刻までの間の時間すべてを労働時間と認めてよいかについては疑問が残る。本来,時間外勤務については,当該時間ごとにどのような勤務をしたかについて原告が個別に主張立証すべきものであるところ,本件ではそれはなく,他方,出退勤時刻については明確になっており,出勤後退勤までの間は基本的に労働していると認めるべきであることからすれば,少なくともその8割については実働時間とみてこれに基づく金額を被告が支払うべきものとするのが相当である。」

 この判断は,かなり異常です。これが慰謝料請求であれば裁判所の判断で割合を操作できますが……。控訴審に係れば変更される可能性の高い箇所でしょう。

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Thursday, 2008/01/10

野村美月 『“文学少女”と死にたがり

[] 野村美月“文学少女”と死にたがりの道化 野村美月 『“文学少女”と死にたがりの道化』を含むブックマーク

 出張の帰路,羽田空港のラウンジで野村美月(のむら・みづき)『“文学少女”と死にたがりの道化(ピエロ)』(ISBN:4757728069)を読んでおりました。

 物語を激しく愛し,本をむしゃむしゃと食べてしまう“文学少女”遠子先輩。そんな彼女に〈本日のおやつ〉を書く元・天才美少女作家,心葉(このは)。

 本作では太宰治人間失格』を中心に据えてストーリーが展開され,十年前に起こったある事件へと接近していく。

 惜しい。

 ドジっ娘が転んでくまパン見せて,てへっ☆ これはお約束。ならば反復もお約束ではないか。ねこさんでもパンダさんでもよい。二度,三度と見せるべきであろう。

――というのはさておき。

 主要登場人物2人とゲストヒロインに登場段階で属性を貼り付けまくったために,かえって本筋の面白みが削がれてしまった感がありました。ストーリーで意欲的なことに取り組んでいるのですが,キャラで遊んでいたぶん紙幅が圧迫されて,肝心な場面の描写が手薄になってしまった感があります。

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Wednesday, 2008/01/09

故郷スイスの村のぬくもり アルベール

[] アンカー展  アンカー展を含むブックマーク

 翌日のお仕事に備えて,前日の内に東京へ。

 夕方に少しばかり時間があるので絵を観に行こうと思ったのですが,「××美術館」と名の付くところの案内を見ても西洋絵画のめぼしいものがない。国立西洋も長期休館中だし。

 それで検索範囲を少しばかり広げてみたところ『故郷スイスの村のぬくもり アルベール・アンカー : 日本初の回顧展』というのを見つけました。場所は Bunkamura の地下1階「ザ・ミュージアム」。東急の本店を初めて訪れたのですがハイソでございました。

 ほとんど予備知識なしに会場へ行ってみたのですが,実に有意義でした。

 アルベール・アンカー(Albert Anker, 1831-1910)はインス村の出。パリでも活動はしたが,故郷スイスの情景を題に採り続けたのだとか。系譜としては自然主義に属するがバルビゾン派とも親交があり,写真の技術が発達を遂げたのと同時期に活動を展開している。

 孫をあやす老人や食事風景など,貧しくはあっても勤勉な農民の暮らしぶりが映しだされている。また,教育にも熱心だったようで,学校と子供達も一つのテーマを形作っていた。鮮やかで写実的。特に肌と髪の表現は素晴らしいまでに緻密。

 お気に入りは《髪を編む少女》でした。娘が三つ編みを結っている姿を描いたものですが,暗い背景であるために明るい金色の髪が映える。引き締まった横顔がステキ。

 記念に絵葉書を何枚か買い求めてきたのだが,単独で観ると冴えない。今回の出品作のうち何枚かには,4年ほど前にヌーシャテル(Neuchatel)の美術館で会っているはずなのだが,どうにも記憶にない。あの時は,オートマタが目当てだったしなぁ……

 今回,アンカーの手になる作品が約100枚も一堂に会していたことで,その全体によってメッセージが形作られていたのだろう。

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Friday, 2008/01/04

上月雨音 『SHI-NO アリスの子守唄』

[] 上月雨音 『SHI-NO アリスの子守唄』  上月雨音 『SHI-NO アリスの子守唄』を含むブックマーク

 上月雨音(こうづき・あまね)『SHI-NO ―シノ― アリスの子守唄』(ISBN:4829163534)を読みました。

 シリーズの第2巻。主要登場人物は志乃ちゃん(小学5年生)と僕(オンボロアパート暮らしの大学1年生),それにキララ先輩(バイタリティが溢れてエロおやじ)の3人。この巻は志乃ちゃんの学校が舞台ということで,彼女の担任である高屋敷なる人物が登場する。

 良かったのは,高屋敷と〈僕〉が志乃ちゃんについて対話する場面でした。高屋敷は,この物語世界の中において,通常世界に通じる常識の代弁者として登場します。

「私は,時々,あの子の事が怖くなる」

と吐露する高屋敷は,志乃について抱いている心情を〈僕〉に向かって明かします。ダークでミステリアスという属性ラベルの示すところが何に起因するものであるかを浮き彫りにしようと試みる,長いダイアログ。通常一般人として到達しうる最高限度の認識で《志乃》という存在を如何に捉えられ得るのかが語りかけられます。

 これに続く第3巻『天使と悪魔』,さらに第4巻『愛の証明』も読了しています。こちらでは涼風真白という魅惑的な新キャラが登場して,やはり《志乃》についてが話題になるのですが,セリフに納得はできなかったなぁ。そのせいか,前後編と位置づけられる両巻は評価が少し低め。

 特筆すべきは東条さかなの挿画。ちょっとくだけた場面で描かれる,くりくりっとした瞳が大変によろしい。

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