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博物士

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Sunday, 2008/06/22

北村薫 『空飛ぶ馬』

[] 北村薫 『空飛ぶ馬』  北村薫 『空飛ぶ馬』を含むブックマーク

 昨晩読み始めたのは,北村薫(きたむら・かおる)のデビュー作であり《円紫師匠と私》の第一作である『空飛ぶ馬』(初出1989年,ISBN:4488413013)。

 近世文学の教授と鉢合わせしたのが契機となって研究室で珈琲をいただくことになり,さらにそれが縁で落語家・円紫師匠とのインタビューに同席することになり―― と人の繋がりが生まれていく「織部の霊」。続く「砂糖合戦」では《日常の謎》というスタイルの面白みを提示。友人と連れだっての蔵王旅行「胡桃の中の鳥」はキャッキャウフフな旅行記と見せかけておきながら,ここぞというところで幕が落ちる。あれよと思う間に歯医者の待合室で夜中の公園に現れるという「赤頭巾」の存在を知らされる。《日常》の表面化に潜む滓(おり)を見せつけられたところに「空飛ぶ馬」が提示されることにより,初雪のような清々しさをもって終幕。

 互い違いの性格を持つ5本のエピソードが重ねられることによって醸し出される作品としてのまとまりが見事でありました。

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Wednesday, 2008/06/18

NPO職場の権利教育ネットワーク

[] 大学院はてな :: 『今,職場にある危機と労働組合の役割』  大学院はてな :: 『今,職場にある危機と労働組合の役割』を含むブックマーク

 夕方から,NPO法人職場の権利教育ネットワークが主宰する講演会が開催されたので出かけてきました。札幌近郊の大学で労働法や社会保障法のゼミに参加している学生をはじめとする人たち約90人が集まり大盛況でした。

 パネリストとして話をしていただいたのは……

  1. 派遣労働者からの労働相談に携わっている札幌派遣ネットワークの方から,派遣労働者の置かれている現状についてのレポート
  2. 新たに社会福祉法人で労働組合を立ち上げて理事長の不正経理を内部告発した組合の方から,労働組合の果たした役割についての紹介
  3. 北海道の老舗デパートで安定的な労使関係を築いている組合の方から,業績不振のために店舗閉鎖せざるを得なかった局面で,パート労働者の雇用を守るために組合は何をしていたのかの紹介*1

――と,内容も充実。

 このNPO法人,職場における公正なワークルールを築いていくためには,労働組合が自分自身の役割をアピールしていかなければいけないということで設立されたもの。その対外的活動としては第1回目ということでしたが,組合活動の最前線で身を張っている方々から労働組合の果たしている役割を具体的に示していただいて,なかなか興味深いものでした。

*1:この会社ではユニオンショップ制が採られているが,いわゆる正社員のみならずパート労働者も組織化の対象にしているということであった。その意図するところについて質疑応答で質問が出たのだが,「パートも正社員も,お客様に頭を下げて買っていただかなければ給料が出ないということでは同じですから!」と気っぷの良い回答をいただいた。

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Wednesday, 2008/06/11

米澤穂信 『インシテミル』

[] 米澤穂信インシテミル 米澤穂信 『インシテミル』を含むブックマーク

 昨晩,米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)の『インシテミル(THE INCITE MILL)』(ISBN:4163246908)を読み終わりました。

 アルバイト情報誌に載った「人文的化学実験の被験者」を募る求人広告。「時給1120百円」との記載を面白がってか,見落としたか,はたまた何らかの意図があったのか,とにかく応募者12人が集められた。山奥の地下に建設された実験施設に被験者は7日間に渡って閉じこめられる。

 まず思ったのは「米澤穂信はこんな悪趣味な話も書けるんだ……」ということ。人を馬鹿にした作品というと清涼院流水が真っ先に思い浮かびますが,清涼院がミステリというフォーマットそのものをひっくり返しているのに比べれば,本作は枠の中にある。本作『インシテミル』は,本格ミステリの〈お約束〉に沿いつつ風刺的に取り扱っている。この空疎な読み物を飾るには,確かに西島大介の装画が相応しい。

 本格ものっぽいパズル的要素をしっかりと踏まえておきながら,舞台が箱庭であることに自覚的。本作については〈動機〉を話題にするのは野暮の極み。ミステリ好きを自称する方には是非とも淫してみることをお薦めする。

▼ おとなりレビュー

Friday, 2008/06/06

乙一 『暗いところで待ち合わせ』

[] 乙一 『暗いところで待ち合わせ』  乙一 『暗いところで待ち合わせ』を含むブックマーク

 夕方,ちょっと不機嫌になることがあった。夜にやろうと思っていた予定を取りやめて,乙一(おついち)の『暗いところで待ち合わせ』(2002年,ISBN:4344402146)を読む。疫学的経験則に沿えば,軽度の精神荒廃はビールと乙一の処方を以て治癒する。

 本作のプロットは,

「警察に追われている男が 目の見えない女性の家に だまって勝手に隠れ潜んでしまう」

というもの(作者自身がそう要約している)。このプロットだけでも面白いですよね。しかも本作は文庫一冊分の長編だから,状況提示が終わってから後,作者がどのように話を持っていくのか考えを巡らせながら読み進める楽しみもできる。プロットを出発点として,ミステリーになるのか,ホラーになるのか,はたまた純愛小説になるのか――

 本作では,視覚障害を持つ女性ミチルが,ささいな異変から潜んでいる者の存在に気がつきます。しかし,侵入者の存在を信ずるに至ってからも通報などはせず,変わらぬ生活が営まれます。女性視点の描写と男性視点のそれとが交互に編まれ,丹念な心理描写が織り込まれていくことにより,この奇妙ではあるけれども慈しみに満ちた連帯の風景が広がります。

 殊に,テーブルの上にシチューの皿を2つ並べ,《目に見えない存在》の反応を伺うところが秀逸。岡野史佳1/2FAIRY!』(ISBN:4592118480)の中で紹介されている英国の民間伝承

「妖精・精霊が人間の仕事を手伝う,または,悪さをしないという前提のもとに,ミルクやパンを分けてあげる」

を想起する一場面でした。

f:id:genesis:20080607120216j:image

Gaius_PetroniusGaius_Petronius 2008/06/07 18:26 ああ・・・この岡野さんの作品大好きでした…。

genesisgenesis 2008/06/08 19:31 おや,ペトロニウスさんは岡野史佳まで手を広げておいででしたか。余談ですが,男性読者にアンケートをとると『1/2F!』『海育ち』『ハッピー・トーク』を推すことが多いような気がします(^^;

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Monday, 2008/06/02

森博嗣 『タカイ×タカイ』

[] 森博嗣 『タカイ×タカイ』  森博嗣 『タカイ×タカイ』を含むブックマーク

 森博嗣(もり・ひろし)のXシリーズ第3作『タカイ×タカイ』(asin:406182578X)を読みました。

 高さ15mのポールの上に掲げられた死体。どうしてそんな場所に置かれていたのか? どうやってそんな場所まで持ちあげたのか? 

 事件現場を通りがかった大学生が謎解きを頑張ります。いわゆる「ミステリー」と言っても差し支えはないです(←ここ一連の経緯からすれば驚くべきポイント)。

 

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