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博物士

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Saturday, 2009/03/28

[] 大学院はてな :: 粉飾決算を行っていた営業所長のうつ病自殺と安全配慮義務  大学院はてな :: 粉飾決算を行っていた営業所長のうつ病自殺と安全配慮義務を含むブックマーク

 研究会で前田道路事件(松山地裁判決・平成20年7月1日・労働判例968号37頁)を題材に議論。

 ある建設会社の営業所長が経理操作によって1800万円の過剰出来高を計上したことが明るみになり,支店長から「会社を辞めれば済むと思っているかもしれないが,辞めても楽にはならないぞ」と叱責された数日後に自殺。使用者には安全配慮義務違反があったものと主張する遺族から損害賠償請求が提起された事案です。

 この種の事案だと,まず労働者が自殺しているという現実(結果)があります。ところが「叱責」の態様についてみてみると,人格を否定するような罵倒ではない。こんなことを言われたら多くの人が死にたくなるよね,というものでもない。さらに,問題となった粉飾決算にしても,決して褒められるものではありませんけれども,帳簿上の操作であって実際に損害を出しているわけでもない(かといって,事後的に回復可能な程度の金額でもない)。さらに,自殺した労働者は,うつ病に罹患した人に典型的にみられる症状(エピソード)を会社の人達には気づかれないまま自殺に至っており,予見可能性ないし結果回避可能性が著しく乏しい事案。

 裁判所は,上司による叱責と労働者の死亡との間に相当因果関係を認め,執拗な叱責は違法であり精神障害発症の予見可能性があったと構成したうえで,原告労働者の側の過失を6割として減額することにより処理しました。しかしながら,判決の理論構成が決め手を欠くものであるということもあり,参加者の中でも論点の捉え方をめぐって相当に議論の分かれる事案でした。うつ病による自殺についての事案であっても長時間労働といった事情が存在していない本件は,損害発生に対する本人の寄与を議論するうえでは興味深い事案でありましょう。

 

[] 大学院はてな :: 終了のお知らせ  大学院はてな :: 終了のお知らせを含むブックマーク

 長らくご愛顧いただいておりました(?)当コーナーですが,今回をもちまして終了いたします。このたび大学院を退学することになりましたもので……。新年度からは,従前からの専門学校講師ならびに公務員・教員予備校講師に加え,某大学にてスペイン語の非常勤講師として勤める予定です。任用手続については当の本人も把握できていないのですが,シラバスに自分の名前があったので,公表しても差し支えないでしょう。

 語学教育についての打診は数年前よりいただいていたのですが,外国語を専門としておられる方にお任せするべきだろうと思い,お断りしておりました。ただ,具体的にお話を聞いてみたところ,確かに時間単価は最低賃金の8倍近いのですけれども,地方都市だと担当可能なコマ数が少ないので,わざわざ“内地”から移住してきていただいても生活するには足りない収入にしかなりません。すでに札幌にいる人で遣り繰りしなければならないという事情があり,かつ,母校の新入生が大学に馴染んでいく時期に支えていくという仕事ができる――ということで,お受けした次第です。

 H大学でスペイン語の教育にあたる者は総勢7名ですが,その中でみても(さらには全国的にも)法学を出自とする者ということで相当に異色の存在かと思います。これを機に,私自身も大学教育のあり方について実地に経験を積みながら勉強していくつもりです。2009年度の前期は文系4学部(文・教育・経済・法)のクラスを担当します。(未だお会いしてもおりませんが)担当学生の皆さん,どうぞよろしく〜。

 なお,在野の身ではありますが労働法&社会保障法の研究も続けていきます。取り上げ方は変わっても社会問題への関心を無くしたわけではありませんので,今後も形を変えつつ,話題を取り上げていくつもりです。

 ちなみに。これで「地理学」「歴史学」「SPI対策」「ビジネス文書」「政治(憲法)」「知的財産(特許法)」「行政法」に加えて「スペイン語」まで教える科目の幅が広がりました。器用貧乏?

tanizakuratanizakura 2009/03/29 10:00 御無沙汰しております。
長いことお疲れ様でした。法律の話は身近なようでなんか別世界なようなイメージがあったので、genesisさんの記事は面白かったです。新しい職場もいろいろ大変だと思いますが、がんばってください。

Gaius_PetroniusGaius_Petronius 2009/03/29 10:13 ご無沙汰しております。ご健闘を記念しております。・・・・最近南アメリカ関係の仕事がちらほらあって、スペイン語とボルトがる五が少しでもできればな・・・とか思いますが、言葉はできるようになりたくなると際限がないので、今は英語と中国語だけで、手を出さないようにしている次第です。

genesisgenesis 2009/03/29 11:28 tanizakuraさん: 
新しい「職」ではありますが,「職場」が変わったという感じがありません〜。出講日は週に1日のみ,しかも控室を経由して教室に向かうだけ,なので。良く使う大学生協の店舗が北部店に変わったのが実感できる差かな(笑)

genesisgenesis 2009/03/29 11:44 Gaius_Petroniusさん: 
ビジネスツールとして有用なのは,疑いようもなく英語&中国語ですものね。それ以外の言語は話せたら便利ではありますが,それはまさしくペトロニウスさんのように体験を通じて意欲をもった人であれば自発的に抱くインセンティブでしょうし。目下,“必修だから仕方なくスペイン語を学ぶ羽目になった”学生さん達に,どうして大学では第二外国語という制度があるのかを私なりに説明する言葉を編んでいるところです。

hachimasahachimasa 2009/03/29 20:28 こちらでははじめまして。八柾と申します。いつも楽しく読ませてもらっています。
新年度からはスペイン語教育についての記事なんかも読めるのではないか、と期待しております。
実際に授業を受けられれば幸いなのですが、第二外国語のみの担当とのことで、新入生が羨ましいです(笑)

then-dthen-d 2009/03/29 22:20 どうもご無沙汰しております。場所は変わられないようですが、新たな旅立ちになることと思います。また、専攻の労働法についても今後生かせる場所があるといいですね。私事になりますが、私も転勤と相成りました。おたがい新しいところでがんばりましょう〜。

genesisgenesis 2009/03/30 17:19 hachimasaさん: 
そういえば,はじめまして,なのですね。今までよりも「ネットで見ました」遭遇率が格段に上がりそうなのも心配。たぶんH大関係者なのだろうという人は2クリックの範囲内でも多数いますし……

genesisgenesis 2009/03/30 17:24 then-dさん: 
労働法が「専攻」ではなくなりますけれども,まだしばらくは「専門」です。実のところ,対外的に表示する社会的身分が変更になりますが,労働法の研究は続けていますし,生活スタイルは変わっていません。東京へ出かけたときなどにお声掛けしますので,またお話ししましょう!

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Thursday, 2009/03/26

米沢穂信 『儚い羊たちの祝宴』

[] 米澤穂信 『儚い羊たちの祝宴』  米澤穂信 『儚い羊たちの祝宴』を含むブックマーク

 米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)『儚(はかな)い羊たちの祝宴 The Babel Club Chronicle』(ISBN:4103014725)を読了。

 収められているのは5つの短編だが,それらを大学生が文学に興じる団体「バベルの会」が繋いでいる。とは言っても,桜庭一樹青年のための読書クラブ』のように確固たる存在としてあるのではなく,最後の一遍を除いては,その存在が仄めかされるだけの微かな影。

 帯には,次のように記されている。

あらゆる予想は,最後の最後で覆される――。

ラスト一行の衝撃にこだわり抜いた,暗黒連作ミステリ。

それならば,と取りかかった。

 第一編「身内に不幸がありまして」は,なるほど,煽り文句に偽りがない。《ラスト一行》の有無によって,事件の構図を捉える視座が大きく異なる。これは秀逸。

 ただ,第二編以降になると,それほどのものではなかったというのが率直な感想。

 第三編「山荘秘聞」と第五編「儚い羊たちの晩餐」では,とある禁忌が題材に据えられている。が,これにしても,であった。その昔,『猟奇の檻』(1995年,日本プランテック)という作品がございまして…… 

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Tuesday, 2009/03/24

両角+森戸+梶川+水町 『LEGAL QUEST

[] 両角+森戸+梶川+水町 『LEGAL QUEST 労働法』  両角+森戸+梶川+水町 『LEGAL QUEST 労働法』を含むブックマーク

 水町勇一郎先生から,両角道代(もろずみ・みちよ),森戸英幸(もりと・ひでゆき),梶川敦子(かじかわ・あつこ)先生との共著になる新刊『LEGAL QUEST(リーガルクエスト)労働法』(有斐閣ISBN:9784641179042)をお送りいただきました。ありがとうございます。

 著者4名の生年は非公開扱いになっていますが,記憶によれば,平均年齢をとると30代半ばをちょっと過ぎたあたりになる(はず)。

 ちょうど講演の原稿を書こうとしていたところでしたので,タネ本にするべく,依頼があったテーマの部分を読んでみました。この本の特徴は,判例の取り込み方の巧みさですね。特に労働法の場合には判例法理によって成長してきたという側面が強いので,講義の最中に裁判例を数多く参照します。古い教科書では「自分で『百選』を読め!」でしたが,最近では判例のポイントを本文に織り込むようになってきています。本書ではそれが洗練され,法科大学院向けのケースブックで培われたテキスト作りの技が取り込まれています。

 ざっと読んだ印象では,法学部“ではない”学生向けだろう――と思ったのですが,「はしがき」によるとコンセプトは法学部(さらには法科大学院)向けなのだとか。教える立場からすると「これ1冊」を買い求めてもらえば何とかなるし,読みやすいので使い勝手は良さそうです。

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Thursday, 2009/03/19

北村薫 『夜の蝉』

[] 北村薫 『夜の蝉』  北村薫 『夜の蝉』を含むブックマーク

 《円紫師匠と私》シリーズ第二作『夜の蝉』(ISBN:4488413021)を読む。

 ここしばらく年度末の慌ただしさに身を置いていたので,北村薫(きたむら・かおる)ならば鎮静剤になるだろうか――と思って書棚から取りだしてきたのだけれど,この巻は存外にざわざわとした読後感を残すものでした。

 収載されているのは3つの短編。「朧夜の底」では書店に陳列されていた本の並びが変えられており,「六月の花嫁」ではチェスの駒が冷蔵庫で発見され,表題作「夜の蝉」では郵便で送った招待状の宛先と差出人が書き替えられていた……。いずれも人間関係の移ろいを描くものであり,しっとりとした文章が流麗な良い作品ではありました。が,少なからぬ醜いものが潜みます。ちょっと“今この時に触れたかったもの”とは違っていたかな。


 

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Sunday, 2009/03/15

米澤穂信 『秋期限定栗きんとん事件〔

[] 米澤穂信秋期限定栗きんとん事件〔下〕』  米澤穂信 『秋期限定栗きんとん事件〔下〕』を含むブックマーク

 米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)の〈小市民シリーズ〉新刊『秋期限定栗きんとん事件〔下〕』(ISBN:4488451063)を読了。今日もご本が読めて,しあわせ。本当は昨晩,読み始めたのですけれどね。花粉症の薬が効いてきて,物語が佳境に差し掛かったところ――小鳩くんと小佐内さんが現場で邂逅した場面で意識が途切れてしまったのでした。

 それで先ほど続きから読み始めたのですが,この箇所は読んでいて実に心が躍った。小佐内さんが狼の本性を剥き出しにした長口上から始まる末尾の50頁は,既に3度読み返している。『春期〜』で〈小市民〉たらんことを目標に掲げ,『夏期〜』で互恵関係が破綻に至り,『秋期』の上巻では二人が離れていた時間があったからこそ,小鳩くんと小佐内さんの会話が続いている場面が有り難く楽しい。

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Sunday, 2009/03/08

杉井光 『さくらファミリア!〈1〉』

[] 杉井光さくらファミリア!〈1〉』  杉井光 『さくらファミリア!〈1〉』を含むブックマーク

 気が晴れるものを読もうと思って杉井光(すぎい・ひかる)『さくらファミリア!〈1〉』(ISBN:4758040125)を開いた。ドタバタラブコメ。

 読み進めるうちに,だんだん怖くなった。このネタ(宗教的な意味で)大丈夫なのか?? 杉井さんの身の安全が心配になって,かえって陰鬱に……

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Saturday, 2009/03/07

労働判例969号

[] 大学院はてな :: 「秋葉原で働いた方がいい。」  大学院はてな :: 「秋葉原で働いた方がいい。」を含むブックマーク

 研究会で東京セクハラ(T菓子店)事件を題材に取り上げて議論。第一審(東京地裁・平成20年3月26日判決・労働判例969号13頁)は請求を棄却していたのに対し,控訴審(東京高裁・平成20年9月10日判決・労働判例969号5頁)は一転して請求を認容し,損害賠償(慰謝料50万円+遺失利益99万円+弁護士費用20万円)の支払いを命じた例。

 セクシャルハラスメントないしパワーハラスメント事案は,事実認定(そもそも何かをやったのか?)が左右する部分も大きい。すなわち,問題とされる言動が有ったのか無かったのかがまず争点となりやすい。そのうえで法的評価に入るわけですが,身体的接触(eg.太ももを撫で回した)は「ハラスメント」という新しい概念を持ち出すまでもなく「強制わいせつ」で処理できます。それが,問題行動とされるものが下品な会話であったりすると,受け止める側の人物によって評価が変わってきます。

 ちなみに。筆者は,酒席でも話が妙な方向に進むと「えっちなのはいけないと思います!」と止めに入ってしまうのですが,同席した女性に「××さんったら潔癖性だよね〜」と呆れられること度々。ハラスメントの原告適格って,年若い女性とは限らないと思う今日この頃。

 閑話休題。

 本件では,店長A(男性)が契約社員X(20歳前後の女性)に対する発言が問題となっています(但し,民法715条による請求であって被告Yは使用者になっており,本当の当事者であるAは訴訟の相手方になっていないという変な事件)。第一審と控訴審とで事実認定に差異があるため,細かく発言が認定されています。

「頭がおかしいんじゃないの。」

「昨夜遊びすぎたんじゃないの。」

「(ショッピングセンター名)にいる男の人と何人やったんだ。」

「僕はエイズ検査を受けたことがあるから,Xさんもエイズ検査を受けた方がいいんじゃないか。」

「秋葉原で働いた方がいい。」

「処女にみえるけれど処女じゃないでしょう。」

――って,なんか変なのが混じってるです(笑) 「アキハバラで働く」ことは,世俗的には精神的虐待をもたらすものらしい。

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Wednesday, 2009/03/04

秋期限定栗きんとん事件

[] 米澤穂信秋期限定栗きんとん事件〔上〕』  米澤穂信 『秋期限定栗きんとん事件〔上〕』を含むブックマーク

 米澤穂信(よねざわ・ほのぶ)の〈小市民シリーズ〉新刊『秋期限定栗きんとん事件〔上〕』(ISBN:4488451055)を買ってきました。前巻を読んでからでも2年ほど待ったのかな。どれくらい楽しみにしていたかというと,買いに行く前の晩に『夏期季限定トロピカルパフェ事件』を再読したくらい(案の定,すっかり忘れていました)。

 店頭で「あれ?」と思ったのは書名。『マロングラッセ事件』だと思っていたら『栗きんとん事件』だったので,びっくりだよ。しかも,読んでみたら「栗きんとん」は本作の本質と関わってこないし……。

 小鳩君に彼女ができて,小山内さんはお付き合いを始めて―― 純度の高い恋愛要素を織り込んだ創元推理文庫富士見ミステリー文庫と区別が付きません。

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