清野静 『時載りリンネ! #1』

 公務員試験予備校のお仕事で,日帰り帯広出張。移動のお供は,清野静(せいの・せい)『時載りリンネ!〈1〉はじまりの本』(ISBN:4044732019)。朝早かったので行きの便ではうとうとしていたし,帰りの便は待ち時間のうちに水分補給の名目で飲んだ発泡酒の良いで寝こけていたので移動中には半分しか読めませんでしたが,帰宅後に読了。
 200万字の文字を読むにつき時間を1秒間止めることのできる種族「時載り」の女の子をヒロインとする小説。久しぶりに,のっけからファンタジー色あふれます。設定の面白さもさることながら,快活に進む文章のテンポも,紡がれる言の葉のセンスも良い。
 強気なヒロインの造形も見ていて微笑ましい(が巻き込まれたくはない)。失礼を承知で言えば,口調といい振る舞いといい「涼宮ハルヒ」を彷彿とさせるところがあるのですが…… 
 ところが,残念ながら第7章以降は出来が悪いと申し上げざるを得ません。ライバルとなるルゥが出てくる第6章まではキャラクターの魅力で引っ張っていたものが,《時砕き》というものが登場してからというものストーリーが破綻しています。自覚を促しにきた悪役(と見せかけて実は守護役を引き受ける)お姉さまにしろ,真の悪役にしろ,ヒロイン(リンネ)の能力開化に対する働きかけと上手く結びついていない。何となく大団円に持ち込んでいるけれど,ヒロインも敵役も行動原理がおかしいので納得のいかない結末。
 魅力を感じるところはあったので続刊を読んでみようとは思うものの,またいつか機会があれば,ね。