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博物士

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Saturday, 2009/11/28

[] 労働法判例 :: 資格試験の勉強をするお仕事  労働法判例 :: 資格試験の勉強をするお仕事を含むブックマーク

 研究会に参加して,国・さいたま労基署長〔鉄建建設〕事件(大阪地裁判決・平成21年4月20日・労働判例984号35頁)を素材に議論してきました。

 原告Xは,土木建築業を営む被告Y社の技術系従業員。「技術士」の合格者増加を目標として立てたY社は,平成10年,Xに対し同試験を受験する対象者としての指名を行った。Xは同年度ならびに翌年度は不合格であったが,受験3回目となる平成12年8月の筆記試験に合格した。Xは12月9日に行われた口頭試験を受験したところ,試験終了直後に脳内出血を発症して倒れた。本件紛争当時,Xは左半身マヒの障害を負っている。本件は,Xは原処分庁(さいたま労基署長)に対し労働者災害補償保険法に基づく補償給付を求めたが不支給処分がなされたため,その取消を求めるものである。

 Xにかかっていた業務上の負荷についてみると,発症前1か月の時間外労働時間数は「28.5時間」,発症前6か月平均でみても「47時間10分」に留まっていたために行政認定では業務上外と判断したようである。しかし裁判所は,

「本件会社においては,原告に対する受験指示も含めて技術誌試験の受験が業務命令で行われていたものと推認され,同認定を覆すに足りる証拠はない。」

と説示します。そこで,Xが受験勉強に費やしていた時間として計算した発症前1か月において「83時間」を加えると,Xの労働は量的な負荷がかかるものであったと認定。技術士の受験についても合格率が低く難易度の高いものであることから質的な負荷もあるとしました。結論として,Xの発症は業務上のものであったと判断したものです。

 高度な業務に携わる労働者についていえば,自己啓発のために学習をする時間は使用者からの厳密な指揮監督を受けている時間とは言い難いのであるから,問題の処理としてはホワイトカラー・エグゼンプションの導入を考えるべきではないか――というのは,荻野勝彦(id:roumuya)さんが「人事労務管理に関する政策と実務の落差」という論文の中で展開しているところであり,その是非をめぐっては政策論議として検討するべきところでしょう。

 ただ,本件に限ってみれば,Xの受験勉強はY社の業務であったと評価して差し支えないだろうという事情が存在します。会社が受験費用を負担していたり,論文添削や模擬試験も会社内で行われていましたが,ここまでは良くある話。本件では,Xに受験を命じた大阪支店の支店長が受験者の家族向けに「依頼文書」を発しているのですが,その中では 

  • 試験日まで毎日夜9時就寝,朝2時起床
  • 出勤時刻まで受験勉強
  • 試験日までの土,日,祝,夏季休暇,全て勉強させて下さい

という指示が出されておりました。いったいどこの小中学校ですか?と言いたくなるような文書ですけれども,時間の使い方に関して事細かに使用者がコントロールしようとしていたことが窺われる事情です。実際に依頼文書のとおりに実行していたとは思えませんが,それでも睡眠時間を5時間に抑えるような指示を出すのは安全配慮義務違反でしょう。これが民事の事案だとすれば,受験勉強に費やした時間について「労働の対価」たる賃金を請求できるかという大問題が起こってしまいます。今回は労災認定にかかる行政訴訟ですので,自宅での受験勉強時間数が裁判所の認定したとおりだとすれば(←実は訴訟遂行の上ではここが揉めそうなところ),業務上という判断が妥当な気がします。

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Sunday, 2009/11/22

[] 府中市美術館 『ターナーから印象派へ』  府中市美術館 『ターナーから印象派へ』を含むブックマーク

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 ホテルを10時過ぎにチェックアウト。荷物を品川駅のコインロッカーに預け,京王線で府中駅へ向かう。小金井街道を歩き,徒歩15分ほどで府中市美術館へ。お目当ては,現在開催中の『ターナーから印象派へ――光の中の自然』展。風景画好きとしては是非とも観ておきたい企画。

 出品作の殆どは英国のものであったため初見の品ばかり。自然主義というと18世紀中葉のフランス絵画が真っ先に思い浮かぶところなのですが,それとの比較で言えばイギリス絵画は随分に緻密で,太陽光が柔らかい。会場に入って最初に目にしたウィリアム・ヘンリー・ハント(William Henry Hunt, 1790-1864)の『プラムと銃とヘーゼルナッツ』『イワヒバリの巣』は,まさしく今回の企画展の意図するところを的確に伝えるものでした。この2枚だけでも足を運んだ価値がありました。

 さらに展示作を見ていくと,良く見慣れた建物を発見。確認すると,やはりバレンシア大聖堂の近くに建つ「ミゲレテの塔」でありました。説明によると,ナポレオン戦争の時期に英国人は長期間にわたって大陸へ渡ることができなかったことから,戦争が終わるとこぞってヨーロッパ大陸に出かけ絵を描いたのだとか。「ミゲレテの塔」の隣にあるオルチャータ屋さんには何度か行ったことがあるのですが,その場所が1832年にはどうなっていたのかを見ることが出来て楽しかったり。

 昨日と一昨日に観た大作揃いの絵画展も悪くはないのですが,こういう小振りな佳作が集められた展覧会の方が満足度は格段に上でした。

[] 江戸東京たてもの園  江戸東京たてもの園を含むブックマーク

ジブリの風景 宮崎作品が描いた日本/宮崎作品と出会うヨーロッパの旅 [DVD]

 府中市美術館を出た後,バスに乗って武蔵小金井駅へ。中央線を越えて小金井街道をさらに北上し,小金井公園内にある「江戸東京たてもの園」へ。先日,『ジブリの風景――宮崎作品が描いた日本』というビデオプログラムを観たのですが,そのなかで『千と千尋の神隠し』に登場する「釜爺の引き出し」のモデルとして「武居三省堂」が紹介されていたことに興味を持ってやってきました。

入口から時計回りにぐるっと巡っていったのですが,建物の中に入って間取りなどを眺めていると結構な時間がかかります。「高橋是清亭」の「二・二六事件で殺害がなされた部屋」では解説員さんの話など聞いておりましたため尚更。

 地図で見たら大したこと無いように思えたのに,思いのほか駅から遠かったことに懲りて,帰りはバスで戻りました。

[] 『とある科学の超電磁砲』の舞台探訪  『とある科学の超電磁砲』の舞台探訪を含むブックマーク

 武蔵小金井駅からJRにて立川駅へ。現在放映中の『とある科学の超電磁砲(レールガン)』が面白いもので,この機会に「学園都市」を見ておきたくなったのです。原作では東京西部としか記述されておりませんが,同志からの情報で立川&多摩センターがロケ地になっていることが伝えられております。

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いちどは伊勢丹の横まで行っておきながら,撮影にあたっては「立川南駅」から「立川北駅」を見るのだということに気がついて連絡通路を2往復したり,

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行けば分かるだろうと思って北口に出てみたけれどさっぱりだったり……。

 今回の旅行の帰りには夕方18時45分に羽田空港を出る便を予約してありました。事前に時刻表を調べてあって,多摩地区から空港までは所用1時間20分程だということは知っておりました。立川駅に着いたのは15時過ぎだったのであまり時間もなかったもので,高島屋前歩道橋からの眺めを見て終わりにし,モノレールに乗りました。

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 立川北駅を16時08分に発車するモノレールに乗ったあとに携帯電話で乗り継ぎを確認して,困ったことに気がつきました。乗車中の車両が多摩センターに到着するのは16時32分。羽田空港に出発30分前に着こうとすると,京王多摩センター駅を16時48分に出なくてはいけない……。しかも日没時刻のことをすっかり失念してしまっていたため,下車したときには薄暗くなっていて撮影できるような状態ではない。

 でも,16分あれば,きっと何かできるよね!

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 ビルの前を通り過ぎ,「脱ぎ女」の出没地点に行こうとするも(立体交差になっていることを薄暗いところでは地図から読み取れなかったために)諦めて三越前を走り抜け,

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駅に着いたのは16時50分でした……。しかも,ここで携帯電話のバッテリーが切れてしまい時刻表検索ができない状態に陥りました。乗り換え案内が提示していたスケジュールから8分遅れで移動して,何時に到着するのか調べられない。結局,羽田空港第2ターミナルの端にあるエアドゥのカウンターに駆けつけたのはチェックイン受付終了1分前。

 『とある魔術の禁書目録(インデックス)』巡りには丸一日を宛てなければならない,という教訓を得ました。

Saturday, 2009/11/21

genesis2009-11-21

[] 国立新美術館 『ハプスブルク展』  国立新美術館 『ハプスブルク展』を含むブックマーク

 国立新美術館で開催中の『THEハプスブルク――華麗なる王家と美の巨匠たち』を観に行く。定冠詞に英語の“THE”を付けてハプスブルクを語るのは如何なものか。週末の午前中ということもあって人だかりができておりました。出品作は大作が多く豪華絢爛。

[] スペイン法研究会  スペイン法研究会を含むブックマーク

 午後は研究会に参加。「スペインの不動産登記法」「憲法制定と占領政策」「チリの新・労働争訟解決制度」の3本立て。財産法は不得手なもので一本目の報告は聞いているのが精一杯でしたが,他2本は実に興味深いものでした。ハイチとフィリピンと日本とは,アメリカの占領政策における憲法制定という手段で繋がっているのではないか,という指摘はまったく考えたことがありませんでした。チリの話は,まさしく私の専門分野でしたし。

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Friday, 2009/11/20

国立西洋美術館 『古代ローマ帝国の遺

[] 国立西洋美術館 『古代ローマ帝国の遺産』  国立西洋美術館 『古代ローマ帝国の遺産』を含むブックマーク

 昼過ぎのエア・ドゥ便にて東京へ。国立西洋美術館にて開催中の『古代ローマ帝国の遺産――栄光の都ローマと悲劇の街ポンペイ』を観に行く。17時を過ぎてから入管したのですが,延長開館の時間帯だけあって人も少なく,落ち着いて見られました。

 最初のフロアではアウグストゥスらの胸像が出迎えます。トーガのひだまでも滑らかに表現された美しい造形。圧巻であったのは,ポンペイにあった邸宅から壁2面をそっくり持ってきた『庭園の風景』ならびに『モザイクの噴水』でした。今回の出品物の中には,フレスコ画を壁からはがして額に入れたものも幾つかあります。美術作品として保存するのであれば致し方ないことではあるけれど,壁画である以上は元々の建物と「込み」で見たいよなぁ――と感じながら眺めておりました。それが今回『庭園の風景』『モザイクの噴水』については,15分間のVR(ヴァーチャル・リアリティ)映像で再現が試みられています。モザイクの色が褪せていなかった頃,実際に水をたたえた状態であればどのように見えていたのであろうかを思い浮かべる助けとなりました。

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Sunday, 2009/11/15

[] 九州国立博物館+福岡県立美術館  九州国立博物館+福岡県立美術館を含むブックマーク

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 午前中は太宰府へ。通りがかったので天神様にご挨拶しておこうと天満宮に寄ったところ子供がたくさん。七五三であったのをすっかり失念しておりました。境内を抜けて連絡トンネルを通り,九州国立博物館へ。企画展は『古代九州の国宝』を開催していたのですが,なにぶん本業が社会科学なもので,先史時代にはあまり興味がありません。むしろ,朝鮮半島や中国大陸との文化交流に焦点をあてた平常展の方が興味深かったです。

 福岡市内に戻ってきて,目指したのは福岡県立美術館。「名画に恋して――大原美術館コレクション展」を観る。出品作は以前,倉敷を訪問したときに観ているのですが,旅先で再開するというのも何かの縁でしょう。ここで気に掛かったのは建物の老朽化。壁紙が染みだらけで,メンテナンスに予算が回ってきていないように思われました。

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 その後,西新のラーメン店『しばらく』にて遅めの昼食。やはり福岡へ来たからには最低2軒は食べておかないとね。夜は旧知のN先生を誘い出して飲みに出かけました。

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Saturday, 2009/11/14

[] 福津+太良  福津+太良を含むブックマーク

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 岡野史佳『フルーツ果汁100%』の舞台として登場する「玄海彫刻の岬恋の浦」は,経営主体が変わるなどして長らく休業が続いておりました。それがこのほど「恋の浦ガーデン」として再開したということで,fumica.comのメンバーとともに訪問。

 前から寂れたところでしたが,改装後は……ますます閑散としています(^^; 入口付近にあった遊戯施設が一部撤去されて「4駆ランド」や「ドッグラン」になっているのですが,そのために「疎らに廃墟が残る荒野」になってしまいました。「チューブ滑り台」も下半分が取り除かれて上部が残るのみ。目的の「野外美術館」は変わりようがないのですが,メンテナンスが出来ていないというのは不安材料です。13時に到着し,広い園内を2時間かけて往復移動をし,15時に退出。

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 今回の企画提案者が「かき焼きを食べたい!」というので,たっぷり2時間レンタカーを走らせて有明海へ。具体的な目的地を聞いていなかったのですが,降りたところは佐賀県太良町の「勇栄丸」という牡蠣焼き小屋。美味しかったのですが,自分で自動車を運転してまでは行きたくないなぁ……

 再び2時間かけて福岡市内へと帰還。メンバーの行きつけになっている「長浜ラーメン福重屋」へ。レンタカーを返却したあと博多駅近くでお酒を楽しんで散会。

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Friday, 2009/11/13

[] 定点観測:新千歳空港(新国際線ターミナル)  定点観測:新千歳空港(新国際線ターミナル)を含むブックマーク

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《前回》 d:id:genesis:20090910:p2 ← → d:id:genesis:20100221:p1 《その後》

[] 小倉  小倉を含むブックマーク

 久しぶりに福岡旅行をすることにしました。札幌→福岡は航空便のスケジュールが良くないため,金曜日の午後便で移動。現地在住の知人に訪問を伝えたところ「その日はゼミをやっています」ということだったので,それならば――とこちらからK先生の労働法ゼミを訪問することにしました。日本最初の工業地帯も見ておきたいしね。

 1410CTS新千歳空港発,1645FUK福岡空港着。地下鉄で移動して,1714博多発の新幹線「こだま」に飛び乗り1733に小倉着。次はモノレールに乗り,旦過(たんが)駅で一旦下車。10分間隔で運行している次のモノレールが来る迄のあいだに,駅の出口から徒歩5歩のホテルにチェックイン。18時を8分ほど過ぎたぐらいで北九州市立大学に到着。解雇の金銭解決に関するO法律事務所事件を題材にした議論を見学。

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 正規の時間90分+延長25分で検討を終了した後,K先生の奥さんも加わっての懇親会を設けていただきました。お店は,ゼミ生であるFさんの知り合いが経営しているという「炭火炙り焼 蔵龍(ざりゅう)」*1。ここで,赴任してから2年以上が経過しているというのにK先生は人生2度目のもつ鍋だということが発覚。K先生はゼミ生から,鍋のシメをチャンポン麺にするか米にするかで派閥争いができるほど重要な問題なのだ――と諭されておりました。もつ鍋というと濃いめの味付けという印象を持っていたのですが,この店のものは和風だしで仕立てたスッキリあっさり味なところが特徴。モツもていねいに処理されていて美味しくいただきました。K先生,翌日は早朝から旅行だというのに遅くまで付き合ってくれてありがとう。

*1:北九州市小倉北区古船場町2-13。旦過駅「コクラセントラルイン」横の路地を進んだところ。Fさんから,開店したばかりなうえに仲通りにあって分かりにくい場所なので客が少ないんですよ〜とこぼされたので,お礼代わりに書いておきます(笑)

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Friday, 2009/11/06

栗本薫 『絃の聖域』

[] 栗本薫 『絃の聖域』  栗本薫 『絃の聖域』を含むブックマーク

 『ぼくらの時代』が肌に合わなかったのはナウでヤングだったせいなのかと思い,栗本薫による《伊集院大介》シリーズの第1作『絃(いと)の聖域』を読む。古書店で探してきたので上巻は講談社文庫版(ISBN:4061362526),下巻は角川文庫版(ISBN:4041500494)とちぐはぐなことになりましたが差し支えはなし。

 1978年から『幻影城』への連載が開始された作品。長唄,とりわけ三味線に秀でた家元という〈旧家〉を舞台にした奇怪な殺人事件。うん,探偵小説はかくあるべしだよね。年老いた家元は妾と離れに引きこもっていて,実娘は入り婿と折り合いが悪く,夫は敷地内に妾を囲っているし,妻は外に愛人がいるようだし,息子は冒頭からやおい展開まっしぐら。唯一,常識人かと思われた娘も中途からヤンデレ化……。人間関係を記述すると愛憎入り乱れているのに,下巻に入ったあたりまで読み進めると各々が事情を抱えている様が説かれ,そのいずれもが愛おしくなってくるほどに人間味あり。この味わいは不朽。

Gaius_PetroniusGaius_Petronius 2009/11/07 11:57 この作品は、不朽ですね。僕らシリーズは、もう読めたもんじゃないけど・・・あれは時代性に凄く依拠し過ぎてますものね。

genesisgenesis 2009/11/15 17:06 興味を持ったところですので,伊集院シリーズについては折を見て続作も読んでおこうと思っております。

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Thursday, 2009/11/05

栗本薫 『ぼくらの時代』

[] 栗本薫 『ぼくらの時代』  栗本薫 『ぼくらの時代』を含むブックマーク

 文学研の読書会から,追悼のために栗本薫としてのデビュー作『ぼくらの時代』を取り上げます――との連絡をもらっていたものの都合により不参加。でも本は手配してあったので,この機会に読んでみる。1978年の作品で江戸川乱歩賞受賞作。

 幾つか出ている版のうち,購入したのは最も新しい新風社文庫版(ISBN:4797496029)。表紙にむさ苦しい人物が3人描かれていますが,おそらく主要登場人物のイメージ図でしょう。それでもって舞台はテレビ局で,歌謡番組の収録中にスタジオ内の観客席にいた少女が死ぬという筋立て。アイドル全盛期のレトロな雰囲気の詰め合わせ。

 第1,第2の事件まではハウダニット&フーダニットという趣で進んでいたものが,解決篇ではホワイダニットとしての色合いが濃厚。アイドルの追っかけという舞台設定自体も当時の世相を強く反映しているところであるが,それ以上に作品の受容に限定を掛けるのが本作における〈動機〉。事件の手口は少し時代が古くなった程度だと思いますが,おそらく当世においてこの〈動機〉は事件を成立させないのでは? ミステリとしては賞味期限をとうに過ぎていて,青春小説としての価値も批評においてでしか掬えないだろうと感じました。

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Sunday, 2009/11/01

東野圭吾 『白夜行』

[] 東野圭吾白夜行 東野圭吾 『白夜行』を含むブックマーク

 夜中にふとミステリが読みたくなり,積んであった本の中から東野圭吾白夜行(びゃくやこう)』(ISBN:4087474399)を選ぶ。

 19年前に起こった殺人事件で被害者であった男の息子と,容疑者であった女の娘。歩んだ道はまったく異なる2人であったが,2人の周囲では奇妙な出来事が起こる―― 随分と分厚く文庫では850頁ほどあるけれども,この分量がなければ終章でのカタルシスには至らないと納得。

 読後に残るのは実に奇妙な心情。感動でもなく,悲嘆でもなし。ただただ静かな幕引き。「サングラス」だけはいただけない超展開でしたが,それを除けば佳作でありました。

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