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博物士

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Monday, 2011/12/26

[] 研究論文 「アニメ《舞台探訪》成立史――いわゆる《聖地巡礼》の起源について」 を発表しました  研究論文 「アニメ《舞台探訪》成立史――いわゆる《聖地巡礼》の起源について」 を発表しましたを含むブックマーク

 このたび刊行された釧路高専紀要の第45号におきまして「アニメ《舞台探訪》成立史: いわゆる《聖地巡礼》の起源について」と題する研究論文を公刊いたしました。

本文(PDF)のダウンロードはこちら (または CiNii で)

釧路高専トップ図書館研究紀要 > 第45号 > 拙稿(41〜50頁)

 以下,解題。

 今を去ること2年前,2009年9月24日に『ちっちゃな雪使いシュガー』の舞台とされるローテンブルク(ドイツ)を訪ねる途上,車窓を眺めていたところに啓示が降りてきました。ながらアニメにおいて背景が果たしている役割は何か? 持っていた紙片に言葉を書き留め,ホテルに戻ってキーボードを叩き,帰国してからも書き続け,同年12月までの3か月で約4万字の論文を用意しました。

 困ったことになったのは,その後のこと。論文は書き上がったものの掲載してもらえる媒体が見つからない――ということになってしまったのです。このテーマの先行研究は〈観光学〉もしくは〈社会学〉の領域で発表されているのに対し,私の出自は〈法律学〉と〈地域研究〉なもので,投稿を希望しても受けいれてもらえないという事態に……。発表媒体を探すのに1年ほどを費やしていたところで釧路高専への赴任が決まり,ようやく発表の運びとなったものです。

 ただ,このたび発表したのは元々の原稿のうち一部を切り出して加筆したものでして,全体の中では前置きに当たる部分です(それだけで約1万8千字,A4換算10頁になってしまいましたけれど)。

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 今回の発表部分にも少しだけ述べておりますが,私が投げかけたいのは「舞台探訪のことを聖地巡礼って言うな!」ということです。これまでにも「アニメ聖地巡礼」についての先行研究は幾つか出されていますが,私が思うに,用語の定義がきちんとなされていないために数多くの論者が根本的なところで過誤に至っているように見受けられます。すなわち,《聖地》とか《巡礼》といった言葉につられて過度に「おたく」の特性を導いてしまっているのではないか,と。アニメを見て背景に描かれた場所へ行くことと,映画のロケ地を見に行くこと――両者を区別することに,どのような哲学的意味がありますか?  

 同じような旅行行動であっても,その契機が〈実写映画〉であるか〈アニメ〉であるかでは,まったく別なものとして受け止められているのが実状である。認識の差を如実に表しているのが,その呼び名であろう。実写作品であれば《ロケ地訪問》等の用語で捉えられるのに対し,アニメ等由来の場合には《聖地巡礼》との用語を被せられ,類似の観光行動であっても異なる態様の行為として識別されている。とはいえ,この《聖地巡礼》という呼び名が議論に混乱をもたらす遠因となっているのではないかというのが筆者の見解である。

 本稿は,アニメ・コンテンツにまつわる《舞台探訪》ないし《聖地巡礼》について歴史的な流れを追うことにより,その成立過程を明らかにし,もって適切な議論のための基盤を提供しようと目するものである。

はじめに

 加えて先行研究に欠けているのは,ジャンルを横断する視点と,歴史を縦糸として紡ぐ視座ではないかと考えています。

 これまでに発表された《聖地巡礼》にまつわる研究は〈観光創造〉からのアプローチが多く含まれているのですが,萌える町おこしの話であれば『らき☆すた』から話が始まるのも構わないでしょう。ただ,『らき☆すた』だけを対象として考察を進めると,固有の事象と共通する現象との区別がつかなくなってしまいます。複数の作品を比較分析することによって共通項を見出そうとするとき,その際の1つの基軸になるのは『おねがい☆ティーチャー』であろう,というのが私の理解です。

 今日においてアニメの《舞台探訪》として認識される観光行動には,3つのメルクマールがあった。まず第1が,アニメが現実に存在する場所との結びつきを持つようになった『天地無用!』ないし『セーラームーン』である。次いで第2が,虚構性に立脚する表現手段とみなされていたアニメが,実写映画と同程度にまでリアリティを獲得するに至った『耳をすませば』である。そして第3が,それまでは個別的な旅行行動の一種であった舞台探訪が,インターネットとデジタルデバイスいう情報ツールをまとうことにより社会化し,一種の二次創作活動にまで進展することになる『おねてぃ』である。

おわりに

 本稿は“別稿を期す”で締めくくっておりますが,続きは折を見て発表したいところです。

Art Collection おねがい☆ティーチャー Vol.01 Art Collection おねがい☆ティーチャー Vol.02 Art Collection おねがい☆ティーチャー Vol.03 おねがい☆ツインズ  Art Collection Vol.1 おねがい☆ツインズ  Art Collection Vol.2

Sunday, 2011/12/25

genesis2011-12-25

[] 釧路市立美術館『釧路歴史探訪』  釧路市立美術館『釧路歴史探訪』を含むブックマーク

 地元に関わる12点だけの小さな展覧会。でも,1936年制作の《釧路市鳥瞰図》が見たかったので出かけてきました。町にゆかりができてから古地図を眺めると,現在の都市の構造で疑問に思っていたことが氷解して面白いです。

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Tuesday, 2011/12/20

genesis2011-12-20

[] 杉井光『終わる世界のアルバム』  杉井光『終わる世界のアルバム』を含むブックマーク

 寒くなってきたので(暖房を節約するため)夜は早めに毛布にくるまって読書。表紙をみて,杉井光『終わる世界のアルバム』を読み始め,3晩で読了。

 人が少しずつ消えていくたび,残された者達の記憶も書き替えられ,消えた人はいなかったものとして作り替えられていく世界。そんななかで消えた人々の記憶を留めている少年が主人公。あるとき,クラスに女の子が1人増えていて――という設定。

 ん〜,評価しづらい。最初に読んだ杉井光の作品がこれであれば相当に印象が変わることと思う。どうにも既視感が先に立ってしまうのが困りもの。このヘタレ主人公と幼なじみ,前にも別な作品に出てこなかったっけ? みたいな。やるせなさが読後感を支配するのは,終末ものであることからくる必然だろうか。

 紡がれる言葉は,杉井光の持ち味が存分に発揮された端麗なものでした。

終わる世界のアルバム

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Saturday, 2011/12/17

麻耶雄嵩『隻眼の少女』

[] 麻耶雄嵩『隻眼の少女』  麻耶雄嵩『隻眼の少女』を含むブックマーク

 先週末,図書館の司書さんが書店まで直接,買い出しに出かけておいででした。今回は何を買ってきたのかを見に行ったところ,新着図書の棚に並んでいたのが麻耶雄嵩(まや・ゆたか)『隻眼(せきがん)の少女』 司書さん自身はあまりミステリーを読まない人だし,在校生がリクエストをかけるような本でもない(蔵書傾向からして本格ミステリーマニアが校内に潜んでいる気配はしない)。尋ねてみたところ,〈日本推理作家協会賞〉ならびに〈本格ミステリ大賞〉を受賞した作品だから,というカタログスペックで選んできたものらしい。

 『翼ある闇』は(例えでなく)壁に向かって投げつけたなぁ,と思いつつ出だしを読んでみる。自殺願望を持つ語り手が因習の受け継がれる寒村を訪れたところ,伝説の岩の前で水干(すいかん;表紙の平安装束)を着て片眼は義眼な本日デビューの探偵少女と出会う。

隻眼の少女

なんですか,このキャラが立ちまくった探偵は(^^; あまりに面白そうだったので借りてきました。

 土曜日の午後,家にこもって読了。やっぱり麻耶雄嵩麻耶雄嵩でした。ミステリーの作法を踏まえたうえでぶち壊しにかかってくる。でも,本作については,苦々しさ(フザケヤガッテコノヤロウ)というより切なさが読後感を支配する。1985年と2003年の二部構成となっていることからして読み進めるうちにある想像が生まれてくるのですが,それすらも仕組まれた罠で,結末には崩れ落ちそうになりました。

 「賛否こもごも」と言いたくなる作品ですが,結末でゾクゾクするミステリーを久しぶりに堪能しました。それにしても,男って哀しい生き物だね……

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