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博物士

 

Monday, 2007/03/26

横溝正史 『犬神家の一族』

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 文学研究科の読書会へ参加。今回はミステリの古典を読んでみようということで,横溝正史(よこみぞ・せいし)の『犬神家の一族』がお題。

 市川崑監督による『犬神家〜』のイメージが強く刻まれていたが,原作を読んでみると冒頭からして雰囲気が異なる。だって,あの奇怪な遺言を残した犬神翁は,かつて衆道で寵愛を受けた美少年だった,とか出てくる(で,このことが原作ではかなり重要な意味を持っていたりする)。

 シナリオの運びに関しても,1950年から翌51年にかけて雑誌連載されたという成り立ちからくる〈次回への引き〉がアクションシーン(冒険活劇)として現れているなどして,比べてみると色々面白い。特に1976年の映画作品との比較では,1970年代中葉に到来していたオカルトブームを背景として原作の改変に繋がっているのだという指摘が参考になった。

オカルトの帝国―1970年代の日本を読む 犬神家の一族 [DVD]

Wednesday, 2007/03/21

新井輝 『ROOM NO.1301 #1 おとなりさ

[] 新井輝ROOM NO.1301 #1 おとなりさんはアーティスティック!?』  新井輝 『ROOM NO.1301 #1 おとなりさんはアーティスティック!?』 - 博物士 を含むブックマーク

 シミュレーターだなあと思います。とことん物語がなくて、「作者の手を離れてキャラクターが勝手に動き出す」という状態をひたすら描写している感じ。(中略)

 これも小説作品のひとつのありかただと思いますけど、物語とかテーマとかを重視する人にとっては耐え難い作品なのかもしれません。

http://d.hatena.ne.jp/Erlkonig/20070318/1174197785

 id:Erlkonigさんが期待する〈近代の遺物〉だったら,此処にいるですよ〜。

 もっとも“耐え難い”というのは 舞城王太郎煙か土か食い物』に対する印象(→id:genesis:20060829:p1)でして,そこまでの忌避ではありません。岩田洋季護くんに女神の祝福を!』も“どうにも受け付けない”作品でした(→id:genesis:20050329:p1)が,『1301』はシリーズ続作が特価で売りに出ていたら読んでもいいかな――というくらいには評価している。私にとって『ROOM NO.1301』は“どーでもいい”という位置づけで,お菓子に例えて言うならば素甘(すあま)。出されたら頂戴するけれど,自分から買って食べようとは思わない。

 物語(tale)よりも語り(narration)を楽しむための作品,なのでしょう。

 他にも「キャラが戯れている」作品というのはありますが,先に挙げた『護くん』の他『ぱにぽに』『苺ましまろ』等と比べても『1301』には〈えぐみ〉が全くありません。文体にしても,撥音・濁音や改行が取り立てて多いわけでもなく,極めて素直。評価をマイナス方向に揺らす成分を持たないのですね。ですから,この種の作品群を苦手とする私でも読了はできます。

Friday, 2007/03/16

池上俊一『シエナ――夢見るゴシック都

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 結婚式に出るため東京へ向かう。移動中の航空機では,池上俊一(いけがみ・しゅんいち)『シエナ――夢見るゴシック都市』(ISBN:4121016149)を読む。

 端的に言って,ダメな本です。学者が書いた本の悪いところばかりが目に付く。

 イタリア中北部,トスカーナ地方にあってフィレンツェと派を競い合った中世都市を題材に取り上げたもの。素材としては間違いなく面白いはず。ところが,西洋史の研究者である著者が「わたしだけの凝った作品」を目指してしまったため,何が楽しいのかつかみかねるような話題を延々と繰り出すものが出来てしまった。独りよがりも甚だしい。

 テクストはあれどコンテクストを持たないため,事典のような叙述になっているのが欠点。もしコントラーダ(街区)について知りたいと思い立ったような場合には参照すると助けになるだろうが,ひとまとまりの読み物としては評価できない。

Thursday, 2007/03/01

乙一 『きみにしか聞こえない』

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 乙一(おついち)の山を消化しようと思い,手持ちの文庫本のうち最も刊行時期の古い『きみにしか聞こえない』(ISBN:4044253021)に収められている3つの短編を,毎晩1つずつ読んだ。

 まず表題作「Calling You」。脳内に携帯電話を手に入れた少女が,青年と通話する話。ところがこのケータイ,どうやら別な時間にいる人と結んでいるらしい。やがて二人は,互いの実在を確かめることに―― あれ,そうすると時間が××しているのに××するという問題が生じるけれど……と思ったら,それが結末でした。初期の乙一を評するに際して“せつなさ”という表現が用いられているのを目にすることがあったが,なるほど。

 2本目「傷 ―KIZ/KIDS―」。オレは,他人の身体のキズを移動させることのできるアサトに出会った――。設定が突飛なところは似たり寄ったりなはずなのに,どうもこの短編の世界観には上手く入り込めなかった。導入部では二人のであった場所として“特殊学級”という空間が用意されていたのだけれど,これが有意義に感じられなかったせいだろうか。あるいは,アサトという人間の行動原理に共感できなかったせいだろうか。

 3本目「華歌」。これまで,小説のところどころにイラストが差し挟まれていても,それは《挿絵》であって付加価値に過ぎないと思っていた。しかし,この短編は絵のために文章がある。わずか4枚であるけれどもイラストが起承転結の如く配されており,羽住都(はすみ・みやこ)の描いた絵の引き立たせるために文章が編まれている。これ以上は望むべくない相乗効果だ。

Friday, 2007/02/09

ジャック・ケッチャム(Jack Ketchum)

[] J.ケッチャム 『地下室の箱』  J.ケッチャム 『地下室の箱』 - 博物士 を含むブックマーク

 締切の直前に読む小説は楽しい。ドキドキする*1

 休憩しようとジャック・ケッチャム(Jack Ketchum)『地下室の箱(Right to Life)』(邦訳:ISBN:4594031463)を開いたところ,そのまま読了。

 妊婦がさらわれて,箱の中に詰め込まれて,磔にされて,猫にすり寄られて,鞭で打たれて,ツナサラダを食べて,焼き印を押されて,それでもって胎児が育ったところで…… というお話。原作の表紙(ISBN:1887368566)は艶っぽいですが,ポルノ性は極小です。

 率直に言って,凄味(すごみ)はありませんでした。被害者のツンツン度が高すぎるために精神的圧迫の描写に至らず,悲壮感に薄いせいだろう。『ひぐらしのなく頃に』の北条沙都子シナリオや鷹野三四の過去編との比較でいうなら,本作『地下室の箱』は霞んでしまう程度の強度しか持たない。加えて,いつの間にか加害者の方がヘタレてしまうのは如何なものか。

*1:一種の「吊り橋効果」であると解釈されます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8A%E3%82%8A%E6%A9%8B%E7%90%86%E8%AB%96

 
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