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限界研、新刊『ポストヒューマニティーズ』よみどころ紹介 山川賢一「アンフェアな世界 『ナウシカの系譜』について」(5/10)

いよいよ発売が近づいてきた本書。

ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF

ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF

今回の評論集のゲストライター山川賢一は、すでに『成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ論』『エ/ヱヴァ考』『Mの迷宮 『輪るピングドラム』論』とアニメ評論を発表している。

成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論

成熟という檻 『魔法少女まどか☆マギカ』論

Mの迷宮 『輪るピングドラム』論

Mの迷宮 『輪るピングドラム』論

エ/ヱヴァ考

エ/ヱヴァ考


山川は『ヱヴァQ』で、『序』『破』までの熱い展開をかなぐり捨てて、陰鬱で退屈な映画へと舵を切った理由を、問うことから始める。

どうして『ヱヴァQ』は「あんな展開」になってしまったのか?


山川は、この展開は『ヱヴァQ』以前に出版した、自身の『エ/ヱヴァ考』で予言をしていたのだという。

つまり、自分なりの戦う理由を見つけたシンジが、今度は逆にそれにとらわれてしまい、独善に陥ってくというようなプロットだ。(『エ/ヱヴァ考』147ページ)


この「予言」の根拠となっているのが、山川がいうところの「ナウシカの系譜」だ。


本論は、この「ナウシカの系譜」を、『エヴァ/ヱヴァ』だけではなく、『まどか☆マギカ』『ウテナ』などを参照しつつ、たどっていく。

少女革命ウテナDVD-BOX 上巻 (初回限定生産)

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キーワードとなるのは、TV版『エヴァンゲリオン』15話で、赤木リツコが使った言葉「ホメオスタシス」と「トランジスタシス」だ。前者は実際にある言葉だが、後者はそうではない。この作中でつくられた二項対立は、行動原理をもつものと行動原理をもたないもの、ゲンドウとシンジへとずらされ、「ナウシカの系譜」作品にも見つけられる。


山川の分析は、たんにサブカルチャーの一作品を追うだけではなく、もっと根源的な、ある意味で人間の普遍性へとつらなるようなものへと伸びている。射程は広い。一作品分析を超えて、役に立つ視座を与えてくれる。本論文は、ひょっとしたら『ヱヴァ』4作目への新たな「予言」となるかもしれない。


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