第2回 空ノ雨雲さん(東方手書き作者)

【そらのあまぐも】
東方手書き作者。大阪府在住。通称:喋らない霊夢の人。
2009年12月3日、pixivにて喋らない霊夢を主人公においた『東方な四コマ』を投稿開始。同月16日にそれまでの四コマをまとめた『【東方】東方な四コマ漫画【手書き】』を投稿し、ニコニコデビュー。その余りにも綺麗な動画内容から、『絶滅危惧主』『期待の常人』とも呼ばれる。この4コマは『東方日記(とうほうだいありー)』とタイトルを変えて、現在もpixiv・ニコニコで連載中。漫画家を目指し20年以上執筆を続けている、ベテラン漫画描きさんでもある。

サイト:雨降る箱庭
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自分の絵や漫画を見てもらえて、その感想を気軽に言ってもらえるというのは、本当に凄いことなんですよ。

空ノ雨雲ノ東方


──東方見聞録、第二回。今回は喋らない霊夢の人こと、空ノ雨雲さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。

空ノ雨雲:はい、よろしくお願いします。


──早速ですが、ソラノさんと東方の出会いをお聞きしてもよろしいでしょうか。

空ノ雨雲:まずニコニコを見るようになった経緯から言うと、流星群と組曲*1と、あと初音ミク*2がキッカケですね。最初見たときはYou tubeだったんですけど。そこからニコニコ動画に入っていきました。


──流星群にミクですか! ちょっと意外な感じです。

空ノ雨雲:ミク曲で1番初めにハマったのは『初音ミクの消失*3でしたね。まぁ、そんなに色々聴いているわけじゃないんですけど。そうやってニコニコ動画に慣れ親しんでしばらくたって…ある日、同じくニコニコを見ていた兄が「このゲームは音楽が良いから聴いてみろ」と言ってきて。それが東方との出会いでしたね。


──てっきり二次創作動画がキッカケなのかと思っていたのですが、音楽が始まりだったんですね。

空ノ雨雲:その頃はまだキャラクターとかも全然知らなくて。ちょうど、『チルノのパーフェクトさんすう教室』*4が流行ってた頃だったので、このチルノって子が主人公なのかなーと思ってました。本格的にハマるのは実際にゲームに触れてからです。


──東方にハマられる前は、どういう動画を見てましたか?

空ノ雨雲:ゲーム実況動画ですね。最近は全然見てないけど。ボルゾイ企画*5とか、あとP(ピー)さん*6が好きでした。まぁランキングに上がってるのをみるのが基本でしたね。ゲーム好きだったら、実況動画はみんな通る道なんじゃないでしょうか。僕とかは、東方を始める前は対戦ゲームでのオフ会にもよく参加してた、結構ガチなプレイヤーだったので。まぁ言ってしまえばスマブラ*7なんですけども。


──元々はそういう場に参加していたんですね。

空ノ雨雲:そうですね、スマブラDXの時代、まだ一般的にオフ会というモノが主流じゃなかった頃……7,8年前から参加してました。ネス*8をよく使ってましたね。Xも購入していたので、ほんの少し前、半年〜1年くらい前までは、そういう集まりに頻繁に顔を出してました。東方projectを実際に手に取ったのは、そのオフ会で薦められたのがキッカケですね。萃夢想と、緋想天を最初にプレイしました。


──スマブラ繋がりで、格闘ゲームから入られたと。

空ノ雨雲:そうそう。まぁ買ったのはいいけど、そこまでやらずにそのキャラの絵ばっかり描いてました。それからそもそものSTGの方もプレイするようになって、それと平行して二次創作動画も見るようになりましたね。


──1番初めに見た二次創作動画は何でしたか?

空ノ雨雲:たぶん、東方陰陽鉄*9ですね。ブロントさん*10が幻想入りする動画で、あぁ、こういうのもあるのか、と思った記憶があります。


──東方二次創作で特にお気に入りの作品はありますか?

空ノ雨雲:んー、色々ありますけど……手書き作品だと、匿名既望さんの『東方不憫劇場』が好きです。めちゃくちゃ面白いんですけど、評価が見合ってないと思いますね。もっと伸びて欲しいです。あとは、ペケさんの『東方チョメチョメ手描き漫画』。デフォルメ絵が有名なので、そこまででもないと思われがちなんですけど、この人の画力はかなり高いです。相当描いてる人じゃないと、あんな絵は描けないですよ。それと手書きじゃないですけど、『東方ライブアライブ』ですね。


──ソラノさんは何度か東方ライブアライブの応援イラストも描かれてますよね*11

空ノ雨雲:まぁこのときは、ニコニコに投稿するなんて、考えもしてなかったわけですが。




空ノ雨雲ノ動画


──動画の投稿を始めたのは?

空ノ雨雲:ただの偶然ですね。元々、4コマ漫画を描こうとは思っていましたが、東方を描こうとは思っていませんでした。オリジナルを描こうとしてたんです。でも、動画編集ソフトを見つけて、ああそれなら東方手書き劇場を投稿できるんじゃないの、と思って作り始めました。それだけ。


──元々、4コマを描こうというのが前提にあったんですね。

空ノ雨雲:4コマは手軽に始められて、漫画の練習にもなる。漫画の基礎なので。


──素人の知識なんですけど、手塚治虫もそんなこと言ってますよね。

空ノ雨雲:4コマをまとめられない人は、読み切りの漫画もまとめられないです。


──やはりそうなんですか。そういう話って、文献とかでしか見たことがないんですけど、実際プロを目指している方の世界でも本当のことなんですね。

空ノ雨雲:そうですよ。4コマは簡単だから、と言いますけど、簡単であって難しいものです。


──ソラノさんが第一話を投稿されて…おそらく自身が考えるよりはるかに大きい反響だったので、驚かれたと思うんですが。

空ノ雨雲:わけわかりませんでした。なんでこうなったの?という。


──あのときは凄かったですよね。うpされた当時、リアルタイムで見てたんですけど、今までにない人が来たなーと思ってました。そんな空ノ雨雲さんの東方日記シリーズですが、制作するに当たって、一番に考えていることはなんですか?

空ノ雨雲:他の二次創作がやらないことをやる、というのが前提です。


──それが、まずは喋らない霊夢だった、と。

空ノ雨雲:まぁ喋らない霊夢って誰もやらないですからね。


──確かに、二次創作の霊夢は、原作と同じか、やや過剰にした感じが多いですよね。

空ノ雨雲:二次創作の霊夢は、やっぱり外道な性格なことが多いので、だったら逆な方向に持って行ってやろう! というのを考えて、性格はそれで固まりました。だけど、そのキャラ付けだと、普通に喋るようにしたら面白くない。そんな風に考えていたら、最初の話が喋らないで完結するネタで。あ、じゃぁ喋らなくてもいいんじゃないの、と思いついて、このキャラが生まれました。


──第1話の頃だと、まだ喋らないと決まってはいなかったんですね。

空ノ雨雲:微妙に安定してませんからね。


──最初のころはなんとなくジト目な感じですよね。前半ルービック・キューブネタがだいぶ続きましたけど、あの辺も特に考えがあったわけではなく?

空ノ雨雲:特に意識してないですね。箱の中にはいってたものを何にしようかな、と考えて、ふっとルービック・キューブが出てきた、それだけの話ですね。僕って結構そういうの多いですよ、思いつきというか。


──瞬発的にネタを出していく感じですか。

空ノ雨雲:4コマに関しては、ネタは思いついたものをぽんぽん描いていく感じです。


──個人的には、秋姉妹のキャラが気に入っているんですが(笑)。

空ノ雨雲:あの辺もなんとなく、ジト目で関西弁で漫才やったら面白いんじゃないの、という思いつきです。


──あのキャラクターはインパクトありましたねー。

空ノ雨雲:秋姉妹は、オリキャラーな設定ばかり浸透してて面白くないじゃないですか。


──あのキャラは素晴らしいですよね。いっそ、秋姉妹だけで動画作ったりしませんか!?

空ノ雨雲:ネタがありません(きっぱり


──ですよね(笑)。と、そのような独自のキャラ付けも多い中、輝夜などのキャラクターは逆に、原作に近い性格に設定されていたりします。

空ノ雨雲:二次創作ではニートニートばかり言われてますからね。普通にニートをやらせても面白くないですし。だったら思い切り働き者にしてしまえ!と(笑)。


──個人的にはどのキャラクターがお気に入りですか?

空ノ雨雲:キャラクター設定で大成功したのはやっぱり霊夢ですね。原作のキャラクターの中でもお気に入りです。基本的に主人公優遇なんで、僕は。



──でも俺の嫁!って感じじゃないんですよね。

空ノ雨雲:みんながそんな風に言う感じのキャラ愛は、僕の中には存在しません。好きすぎてどうしようもない、という感じなんですかね。


──東方日記のコンセプトはニヤニヤできる笑い、とのことですが、今までこういう作風の作品は描かれていましたか?

空ノ雨雲:いえ、描いてないですよ。


──初挑戦なのに、すごくハマってますよね。

空ノ雨雲:そもそもほのぼの系に路線を決めたのが、東方な4コマ漫画その3くらいですか。


──pixivで三本目、ということですか?

空ノ雨雲:いえ、ニコニコにあげた動画で三つ目ですね。


──結構後になってから決まったんですね。

空ノ雨雲:動画を見てればわかるんですけど、途中から「この動画はほのぼの系です」っていう注意書きが加わっているんですよ。それまでは無理にギャグを使おうとしてた感じがあったんですが、ほのぼの系で路線を決めた後は、もうほとんど無視しましたね。ある程度でいい、無理に笑わせる必要はない、と。


──ほのぼの系は初挑戦とのことですが、苦労することはありますか?

空ノ雨雲:いえ、ギャグに比べればよっぽど簡単ですね。世界観やキャラの進め方や演出が出来ていれば、たぶん誰でもできるはずです。ギャグを思いつく必要がないので、ギャグ漫画より簡単です。


──動画制作と漫画執筆に違いはありますか。

空ノ雨雲:コマ割が使えないのは大きいですね。見せ方自体が変わってきます。外伝のときは、アクションを一枚絵でやらなきゃいけないし。やろうと思えばコマ割でできないこともないんですけど、動画にするならそれはなんか違うな、と思ってて。だから僕の作品は、動画としてはレベル低いですよ。編集もほとんどしてないし、効果音とか付けてないですしね。
あと、ニコニコでは受け手と作り手が凄く近いというのがありますよね。そこが面白いからこそ、動画制作を続けているところはあります。自分の絵や漫画を見てもらえて、その感想を気軽に言ってもらえるというのは、本当に凄いことなんですよ。


──空ノさんの動画は内容は綺麗なのに、コメントとのギャップが凄いですよね(笑)。

空ノ雨雲:まぁあれはニコニコの風潮でしょう。見てる人が楽しんでくれてるのが、一番良いです。



空ノ雨雲ノ歴史


──最初に漫画家になろう!と決めたのはいつ頃なんですか?

空ノ雨雲:小学生のときですね。そもそも初めに絵を描いたそれが、すでに漫画でしたから。


──小学生から、となるとかなり前からですよね。キッカケはあったんですか?

空ノ雨雲:カービィ*12です。カービィのCM見て「あ、これ動かしたい」と思った。それがキッカケ。


──始まりはすごくささいなことだったんですね…。pixivの空ノ雨雲的歴史を見ると、現在に至るまでの流れがよくわかります。

空ノ雨雲:そこにはないですけど、小学4年生くらいのときには、カービィをキャラクターにして、それなりにストーリーのある作品を描くようになってました。ただひどいもんでしたけどね。


──でも小学生の時点で、ここまで熱中して漫画を描ける人はそういないと思います。

空ノ雨雲:変わり者なんですよ。昔から。大して絵も上手くないのに、漫画を描いてそれを見せたがるという。


pixivに投稿された、空ノ雨雲さんの絵・漫画の歴史。
小学校1年生の初めての漫画から、中高、専門時代、そして現在。人の歩んできた道がわかる、貴重な記録だ。


──中学時代にはいると、かなり長編の作品も執筆されるようになってきていますね。

空ノ雨雲:このころは、終わらせる気がまったくないので、半ば連載漫画みたいになってるんです。ただ惰性で続けていくだけの漫画をノートに描いてました。もちろんマトモなもんじゃないですよ。


──高校後期の作品の中に、明らかに今と画風のちがう作品がひとつあるんですが、これはわざとなんですか?

空ノ雨雲:この辺りは芸大の受験をしようと考えていてアトリエに通ってた頃で、人体デッサンをやってたんです。その影響で頭身をちょっとリアルに描くようになってます。まぁそのアトリエはすぐやめたんですけどね。


──そして、高校を卒業して漫画専門学校時代。漫画専門学校って、一般的に馴染みのない学校だと思うんですけど、どんなことを学ぶんですか?

空ノ雨雲:うーん、まぁ何かしらの課題を出されて、それを描くというだけですよ。正直、漫画を描くにあたっての知識を事細かに教えてくれるところではないです。漫画に関してはとりあえず描いてみろ、という感じですからね。まぁ当然のことですけど。やる気のない人が入ったところでなんの意味もないところです。


──漫画をずっと描いてきた人が、更に精進するための学校なんですね。

空ノ雨雲:でも漫画あんまり描かない人もいましたね。というか大半は、今まで漫画描いたことのないような人が生徒でした。ここに来れば漫画の描き方がわかると思って入学するという人も、多かったみたいですね。


──そういえば、空ノ雨雲というペンネームは専門時代から使われているんですか?

空ノ雨雲:いや、もっと前です。どうだったかな、中学後期からかな。あの自画像もその時からずっと使ってます。自分の性格を表す名前にしようと思って、これに決まりました。マイペースで気分屋、という。このスタンスは、その頃からほとんど変わってないですね。ネットで活動するようになってからは、この名前で呼ばれることが圧倒的に多くなってるので、違和感はまったくないです。僕は元々オフに出慣れているんで、この名前で名乗るのも呼ばれるのも、大分前から慣れてますね。



空ノ雨雲ノ漫画


──漫画を描く上で、一番気にかけていることはなんですか?

空ノ雨雲:わかりやすさ、読みやすさ。話の構成とか、演出とか、コマ割とか、セリフ回しとか。そういうのが読者から見て、わかりやすいかどうか、ですね。もっと専門的なこともあるにはあるんですが、正直漫画を描いてる人じゃないとわからん話だから。というか口頭だと説明しづらいんですよね、この辺の感覚は。


──東方日記でほのぼの系に初めて挑まれたわけですが、今までは主にどんなジャンルの漫画を描かれていたんですか?

空ノ雨雲:アクションやギャグですね。少年漫画的なものが大半です。


──アクション漫画は、東方外伝などで知っている視聴者の方も多いと思うんですが、ギャグ漫画としてのソラノさんの一面は、『HM部』で初めて日が当たった気がします。

空ノ雨雲:公開するのはあれが初めてでしたが、アクションとギャグは五分五分の割合で描いてましたね。と言うか、アクションあり、ギャグあり、シリアスあり、の漫画を描くのが基本的な方針でした。ギャグ一本は無理です。


──ギャグオンリーの『HM部』はかなり珍しい形になるんですね。

空ノ雨雲:思いついたんで描いてみたんですけどね。16ページと短い作品なのでなんとかできましたが、あれを連載しろ、と言われたらたぶん無理です。


――ソラノさんのオリジナル作品としては、『HM部』の他に『ゼロクエスト』などもありますよね。

空ノ雨雲:まぁ、まだ漫画の形にできてないですけど。


――小説がブログにUPされていたり、みぞれさんや狙撃者さん*13の登場の機会が多かったりするので、知っている方も多いと思います。

空ノ雨雲:『ゼロクエスト』は完全に趣味として考えているんで、投稿用に描こうという気がない漫画なんですよね。投稿しようと思えばできるんですけど。投稿漫画の読み切りの条件として、伏線を張りすぎたり、色んな設定を考えすぎた漫画っていうのは、使うべきではない、というのがありますし。広げすぎたものを使うと、絶対にまとめられなくなる。投稿漫画なら、登場人物は二、三人くらいでちょうどいいんです。
今は手元に原稿が残っていないんですけど、そういう漫画とは別に、卒業制作で描いた28ページの作品があって、それが僕にとっての「ギャグありバトルありシリアスあり」、な漫画の代表になりますかね。先生に渡して、そのまま返ってきていないんですけど、キャラ設定で言えばあれ以上のものは、僕の漫画にはありません。


──影響を受けた漫画作品はありますか?

空ノ雨雲:良く聞かれるんですが、特にないんです。読んでた作品にちょっと影響されたことくらいは、あるかもしれないですけど。そもそも、模写というのをほとんどやったことがないので。


──普通はやはり模写から入るものですか。

空ノ雨雲:普通はそうですね。僕の場合はかなり特殊です。だからレベルアップが遅かったっていうのもあります。ただ模写してたら今の画風はありませんね。


──では、好きな漫画作品は?

空ノ雨雲:メジャーな少年漫画なら大体。まぁ昔よく読んでたのはガンガン*14とかギャグ王*15とかですけど。


──ギャグ王ですか!なかなかコアな雑誌ですよね。

空ノ雨雲:月刊・季刊の漫画誌で初めて買ったのはギャグ王でしたね。ガンガンでは、『女王騎士物語』*16が特に好きだったんですけど、打ち切られてしまいました。


──あれ打ち切られちゃったんですか!

空ノ雨雲:面白いのにね…最近のガンガンと来たら…。


──投稿する雑誌というのはある程度決まっているんですか?

空ノ雨雲:まぁ少年漫画ですよね。


──となると、ジャンプ・サンデー・マガジン・チャンピオン…*17

空ノ雨雲:マガジンはちょっと違いますね。マガジンは僕の絵柄では無理です。雑誌が求めているジャンルとか絵柄はそれぞれ違いますから。


──ソラノさんの絵柄といえば、特徴的なのは、斜線ですよね。

空ノ雨雲:まぁ昔から斜線オンリーでやってきてますから。


──もしプロになられてもこのこだわりは継続されるんですか?

空ノ雨雲:まぁそれはそうですわね。トーン*18使わずにすごい描き込む漫画家も普通にいますし。斜線やカケアミ*19なんかはテンションあがります。面白いですから。


──どういうところが面白いんですか?

空ノ雨雲:面白いから面白いんですよ。(きっぱり)


──おおぅ…

空ノ雨雲:斜線やカケアミができないんで、カラーは描くのあんまり好きじゃないですね。色塗るの自体苦手なんです。デジタルを初めて1年経ってませんし。描くときも、あんまデジタルっぽい加工はしていないです。僕の漫画を見てくれればわかると思うけど、デジタルで描く必要のない描き方をしていますからね。


──素人の自分が言っても仕方ないかもしれませんが、充分レベル高いですけどね…。

空ノ雨雲:まぁ最近はデジタルの練習したので、前よりはマシになってる気はします。単体のイラストに関してはある程度のレベルがあればそれでいいという感じです。黒歴史見ればわかるけど、途中で練習ストップしてますからね。



空ノ雨雲ノ仲間


──現在はtwitterを中心に多くの方と交流されてますよね。

空ノ雨雲:最初は手書きコミュニティ*20に入ることを決めて、そこでコミュ絵チャに入ったのがきっかけですね。七対子さん*21とか、セレンさん*22とかと知り合ったのが最初かな。そこからスティッカムとかに顔を出し始めて、交流が広がったってところですか。


──ソラノさんは元々同人に興味がなかったことを言われていますが、自分が知らなかったこういう世界の方と知り合ってどうでしたか?

空ノ雨雲:普通は東方の二次創作動画をあげてる時点で、同人に対する興味があるはずなんですよ。そもそも東方が同人なわけだし。これまで全然そういう文化に触れてなかった、僕のほうが異端なんだなぁ、と思いました。


──色んな方と交流されてるソラノさんですけど、ツナマヨさん*23との仲の良さは良く知られてますよね。

空ノ雨雲:ふふ(笑)。


──交流のきっかけは何でしたか?


空ノ雨雲:いつだったかな。ツナマヨさんはマイピク申請を送ってきてくれたんですよ。まだ面識がない頃に。(pixivの画面を開いて)えっと、これだ1月12日。


「はじめまして、ツナマヨと申します
相互お気に入りからきました
喋らない霊夢の方ですね!動画観させていただきました。霊夢カワユス
漫画家志望だということで・・・マイピク申請せずにいられなかった
どうぞよろしくお願いします」


というのが来てる。ツナマヨさんとしては、僕が漫画家志望で、同じ志を持ってるということでマイピク申請してくれたんです。僕も当然このときツナマヨさんのことは知ってましたよ。タミフルリバーがランキングを席巻していた時ですからね(笑)。
まぁ僕自身は、タミフルリバーの前の『それいけ!早苗さん』を見てて、そのときから「この人面白いなー」とは思ってて。タミフルリバーが投稿されたときに、ユーザーページを見て「あれ、このひと早苗さんの人かよ!」って気づきました。
で、その人がpixivでお気に入りしてくれてたんで、お気に入り返しして。そしたらマイピクが飛んできたっていう感じですね。


──仲良くなってからpixivでもマイピクになったのかと思ったら、逆なんですね。

空ノ雨雲:そっからtwitterですね。


──いまや真面目な話をしつされつ、罵詈雑言を言いつ言われつ(笑)。

空ノ雨雲:嫉妬をしつされつ(笑)。……(マイピク申請の画面を見ていて)あ、コミュニティの絵チャに入るより前だ、ツナマヨさんが申請送ってきたの! じゃぁ一番最初はツナマヨさんか。


──そんなに前から! ツナマヨさん、さすがの行動力ですね。ところで、漫画家志望であるお二人ですが、お互いに漫画の話はされますか?

空ノ雨雲:どうだろう、twitterで僕が一方的に漫画のことを呟いてることは多いけど。ツナマヨさんがそういう話をすることはあんまりないかな。


──前回のインタビューで、ツナマヨさんが「ソラノさんとそういう話、あんまりしたことないんですよねー」と仰ってたんですけども

空ノ雨雲:でも僕がtwitterで呟いてるとき、誰も話に入ってこないじゃん! いつも独り言だもん!(笑)


──(笑) 皆さん「邪魔しちゃいけない」と思ってるんじゃないですかね?

空ノ雨雲:言いたいこと言ってるだけだから別に良いんだけど……ちょっとくらい参加してくれてもいいんじゃないの? とかは思う。みんな「タメになります!」とか言って傍観してるし……。みんな、もっとなんか言ってよ!



空ノ雨雲ノ言葉


──これからの活動についてはどう考えられてますか?

空ノ雨雲:サークル参加できるかはわかりませんが、紅楼夢*24には参加しようと思ってます。


──遂に同人に参加されるんですね。そういえば、以前エイプリルフールのとき、ニコニコを引退してネット封印します、とちょっと意味深な発言をされてますが*25

空ノ雨雲:ま、エイプリルフールですから。とは言え、ありえる話ではありますよね。汚い話をしてしまうと、ニコニコは絵を描くモチベーションを上げるための手段ですから。僕は良くも悪くも、ハマり出したらそれ一つのことしか、できなくなる性質なんですけど、動画投稿を始めてからは、ゲームとか別のモノに浮気をせずに、絵を描くことだけに集中できてますし。ニコニコに投稿してるのは、あくまで趣味です。


──本格的に漫画執筆を始めるなら、その趣味もいったん止める可能性もある、と。

空ノ雨雲:まぁ本来ならすでにやってなきゃいけないんですけど。動画を投稿している暇があるなら。……ま、でも今はそういう楽しみのほうをとりたいですね。


──それでは、最後にこれから作品を作ろうと思っているひとに、メッセージがあればお願いします。

空ノ雨雲:好きに、自由に作ればいいと思いますよ。一々評価とかを気にするべきじゃない。面白くなくなりますから。自分が楽しめなければ創作なんて、なんの面白味もありません。よく評価を気にして「伸びなかった」とか「伸びないから自分は駄目だ」とか「こんなの見せても意味がない」とか言う人がいるけど……もったいないですよね。
絶対に見てくれるひとが、いるのに。
一人でも見てくれるひとがいるのは、凄いことなのに。
見てもらえるんですよ? 自分の作品を、まったく知らない人に。それなのに、「評価が出てこないからもう出さない」とか、「僕なんか所詮この程度です」とか言ったら、見てくれた人に対して、失礼ですよ。……だから、「再生数2000程度の底辺絵師ですが〜」とか、そういうセリフ、あんま好きじゃないです。2000人もの人から見てもらってる、その事実がどれだけ凄いことか、わかっているんですか?
pixivでは、オリジナルとか人気のないジャンルで、どれだけ頑張ったとしても、閲覧数が10、20程度で評価が全然もらえないで、それでも頑張ってる絵描きの方って、いっぱいいるんですよ。東方というジャンルは人気ありますから、比較的見てもらえる、恵まれたジャンルなんです。見てくれる人がいる、コメントしてくれる人がいる、マイリストしてくれる人がいる。それなのに不満や自虐ばかり、グチグチ言いながら作るのは、やめてほしいです。
こんなことを言うと「あなたはいっぱい見てもらえるからいいですよね」「絵が上手いからいいですよね」とか言われてしまうんですが……そう言われているときは、内心穏やかじゃないですね。元々、僕は東方始めるまで、全然見向きもされていませんでしたし。絵や漫画のことを言うなら、十数年間ずっとそればかりやってきてるんです。相応の時間が、かかるものなんです。
突き放すようですが、『たった一、二年絵を頑張った』、その程度で追いつかれては、正直たまったものじゃありません。


そんな風に腹は立ちますけど、妬みの対象とかそういうのにしてくれること自体は、全然良いんです。
それをバネにして、その人が伸びていくなら。
ただ、妬みを諦めの理由にして、やめることだけは許さない。


作るなら、楽しんで。
自分も楽しんで、見てくれる人も楽しませる。
そういう風に、作って欲しいですね。


――ありがとうございます。創作をやっている人間の一人として、自分も胸に刻みこもうと思います。本日は、お疲れ様でした。

空ノ雨雲:はい、お疲れ様でした。



取材ノ後

インタビューの直前、ソラノさんが応援してくれている読者のために描いた、とびっきりの霊夢の笑顔。
現在は東方満面笑という企画にもなり、この笑顔の輪は手書き作者の間で次々に広まっている。
私はこの笑顔と、今回のお話の最後の言葉が、重なるような気がしてならない。
相手が笑顔になってくれるから。
そして自分も笑顔になれるから。
だから、人は創作をするのだ。


(2010年4月29日収録)
(文責:げんきゅー)

次回予告

次回は、「東方三ボス同盟」の、ボディ・マハッタヤ・銀河さんが登場予定! お楽しみに!


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*1:正式名称は、「組曲『ニコニコ動画』」「ニコニコ動画流星群」。しも氏が制作した、アレンジメドレー楽曲で、シリーズとしてはそれぞれ第二作と第四作にあたる。いずれもニコニコ動画でその時期に流行った様々な楽曲をひとつに繋げたもので、ニコニコの集大成的な知名度を持つ人気作品。

*2:YAMAHAが制作したDTMソフトで、楽曲を打ちこむことで、内蔵されている音声で歌を歌わせることが出来るVOCALOID2シリーズの第1弾。リンやレン、ルカと言った継続商品が発売された後も人気は根強く、最近は更に人間らしい歌声を付けることの出来る拡張音源パック『初音ミクappend』が発売され、話題となった

*3:正式名称は『初音ミクの消失-DEAD END-』。vocaloid楽曲の一つで、作者はcosMo(暴走P)氏。崩壊していく機械仕掛けの歌姫の悲しみを綴った、最高速の別れの歌

*4:同人サークルIOSYSのアレンジ楽曲。原曲はおてんば恋娘。いわゆる電波曲のひとつであり、その中毒性からニコニコ動画で一時期大ブームを巻き起こした

*5:ゲーム実況プレイ集団。ふひきー、がみ、くわさん、ぞの、の4人で構成されている。代表作に、『【ゆめにっき】何も知らない友人に無理矢理実況させた』など。動画数が非常に多く、現在までに1000を超える実況が投稿されている

*6:ゲーム実況プレイヤー。代表作に、通常の約4倍のスピードでのプレイに挑戦する『無理ゲーな高速マリオ3を冷静実況プレイ』など。スマブラ(64版)全国大会のトップランカーの一人でもある

*7:正式名称は『大乱闘!!スマッシュブラザーズ』。任天堂の人気キャラクターがゲームの枠を超えて集う格闘ゲーム。やりこみ度の高さから非常に人気のあるソフトで、第一作はニンテンドウ64、第二作の『スマブラDX』はゲームキューブ、第三作の『スマブラX』はWiiのソフトとしてそれぞれ発売された

*8:任天堂SFCソフト『MOTHER2』の主人公。スマブラではシリーズを通して出演。PKサンダーなど独特の技が多く、どちらかというと上級者向けのキャラとして認知されている。

*9:ブロントさんが幻想郷に迷い込む(いわゆる幻想入り)、二次創作動画。作者はhiro氏。RPGツクールで制作されており、会話劇やネタの秀逸さから、非常に人気の高い作品。なお、ブロントさんが幻想入りする作品はこれ以外にも数多く存在しており、それらは「東方有頂天」という括りで称されている。

*10:かつて2chネトゲ実況版(通称FF11板)に書き込んでいた人物。様々な名言やそのキャラクターから熱狂的なファンが存在する。現在は本人の手から離れた、独立したキャラクターとして確立されており、二次創作に登場する機会も多い

*11:ちなみに、この収録の後、ソラノさんは東方ライブアライブ二周年企画の絵師の一人に抜擢されており、PV動画に上海人形(シャン)のイラストを提供している

*12:任天堂のゲームキャラクター。敵キャラを吸い込み、その属性を自分のモノにできる「コピー能力」を持つ。ピンクボールとも称されるほどのシンプルなデザインが特徴。子供の頃によく描いた人も多いのではないだろうか

*13:いずれも「ゼロクエスト」の作中人物。ソラノさんの中では比較的最近のオリジナルキャラということもあり、pixivに投稿されたイラストにも数多く描かれている

*14:月刊少年ガンガンが正式名称。スクウェア・エニックスが発刊している漫画雑誌。派生雑誌もいくつか存在する

*15:月刊少年ギャグ王が正式名称。エニックス(現スクウェア・エニックス)が発刊していた漫画雑誌であり、ギャグや4コマなどの作品を中心に構成されていた。『Gag Oh!』というタイトルでリニューアルしつつも、1999年に休刊

*16:ガンガンにおいて、2003年8月号から2007年12月号まで連載された漫画作品。作者は下村トモヒロ。女王・アルマに恋する主人公・エルトが、彼女を守護する「女王騎士(クイーンナイト)」を目指し、戦う姿を描くファンタジー漫画

*17:それぞれ、週刊少年ジャンプ集英社)、週刊少年サンデー小学館)、週刊少年マガジン講談社)、週刊少年チャンピオン秋田書店)。いずれも、日本における代表的な少年漫画雑誌

*18:スクリーントーンが正式名称。モノクロの模様が印刷されている特殊なシールで、無数の種類が存在する。漫画表現にかかせない素材だが、本文でも語られているように、あえてこれを使用せずに執筆している漫画家も少なくない

*19:格子状の模様を重ねることで、絵に陰影を付ける技術。漫画制作における基本テクニックの一つ

*20:ニコニコ動画に存在するコミュニティの一つ。ニコニコで活躍する東方手書き作者が数多く参加している、制作者専用のコミュニティ。動画制作に関する意見を出し合ったり、合作動画を制作するなど、お互い切磋琢磨するべく様々な活動が展開されている。

*21:東方手書き作者。代表作に、とらドラ!を下敷きにした二次創作動画「れみサク!!」など。HNの由来は麻雀用語からで、ちーといつ、と読む

*22:東方手書き作者。代表作に「東方バスケ」など。自身もバスケプレイヤーであり、その経験は作品内に大きく生かされている

*23:東方手書き作者。代表作に「タミフルリバー三姉妹」など。一度見たら決して忘れない「ぺかー顔」の求道者。本企画の記念すべき第一回のゲスト様でもある

*24:正式名称は東方紅楼夢(とうほうこうろうむ)。大阪で開催される東方project同人即売会。東方オンリーイベントとしては最大規模の一つであり、同じく規模の大きい例大祭と双璧を成すイベントである。

*25:2010年4月1日のtwitterでの発言。これ以外にも様々な嘘発言が呟かれていたが、このツイートのみ「まぁあながち嘘じゃないですからね。」という、意味深な付け足しがされていた。