第12回―1 野田文七さん&こゆびさん(東方SS作家、東方手書き作者)


野田文七 【のだ・ぶんしち】
東方SS作家。熊本県在住。
2008年、東方二次創作専門SSサイト・東方創想話に『カナリア幽明録』を投稿。
2010年からは、設楽秋氏と共に合同サークル『秋の七草』で同人活動を開始。後に個人サークル『劇団文七』に活動を移し、以降も精力的にSS作品を発表中。一処の世界を舞台とした、淫靡で壮大な伝奇小説を得意とする。
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こゆび
東方手書き作者、同人作家。神奈川県在住。
2009年に合同サークル『ラッコ堂』にて初の同人誌を頒布。
2010年に『打開絶招紅美鈴』の表紙絵を始めとする、『秋の七草』作品でイラストを手がける。
その後、野田氏のSS作品『水蜜桃』『二兎を追え』のコミカライズにおいて作画を担当。現在も次のコミカライズに向けて準備中。
細やかかつダイナミックな作画での、ストーリーの昇華に定評がある。
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今回は初の試み! 二人同時にインタビューを敢行いたしました! 主に作品作りのルーツなどをお聞きした、マンツーマンの前編パートと、実際に作品についての詳細をお聞きした鼎談形式の後編にわかれております。
なお、後編には致命的なネタバレではないにしろ、多少作品の内容に触れております! あらかじめご了承ください。

自分のために作ってくれた!って感覚にさせてくれる


――東方見聞録第12回、今回は『二兎を追え』『水蜜桃』の2作品の作者であります、野田文七さん、そしてこゆびさんをお招きしました。まず、お二方それぞれにお話を聞きつつ、動画にまつわる話ではお二人ともに聞いていくという構成にしております。というわけで、まずは原作の野田文七さん、よろしくお願いします。
野田:よろしくお願いします!


――野田さんは、当サイトでは初めての、小説媒体で活動されている二次創作者なわけですが、初めに、小説を書こうと思ったキッカケはなんだったんでしょうか。
野田:小学5年生のときに読んだ横山光輝*1三国志*2かな。一番最初は漫画を描いてたんよ。笑い話のような落書きみたいな漫画。ドラゴンボール*3とか北斗の拳*4とかSDガンダム*5をくっつけたような。まあそれはクラスメイトもやってた流行りみたいなものだったんだけど。それが終わったあと、小5のときに爺さんの部屋に一度に4,5行くらいしか映らない古いワープロを見つけて、それで三国志のまね事みたいなものを書いてた。で、その後出会ったのが……『爆れつハンター*6って知っとるかな?


――はいはい。
野田:あれは当時衝撃強くてね、女の子可愛いし。アレの二次創作小説を書き始めたんよね。キャロット*7達の親父の世代の話を書いてた。そしたら本編のほうにも親父達が出てきたんよ(笑)。俺のほうが先だったのに!って(笑)。


――パクられた!と(笑)。
野田:そういうの書いてるうちに、小説っておもしれーと思ってて。中学生にあがると、田中芳樹*8にはまって、すると今度は田中芳樹の短編で二次創作小説をするようになって……その後もロマサガ*9とかストリートファイターzero*10とかデアラングリッサー*11とか色々書いたけど、基本二次創作小説しか書いてなかった。


――オリジナルの小説も書かれたことはあるんですか?
野田:オリジナルを書き始めたのは大学に入ってからで、……まあそれもありがちな思春期のネタだったね。女がいてどうのこうのみたいな。投稿もしてて、スニーカー*12、ガガガ*13、小説群像*14、あとファウスト*15に出したけど全て落ちてね(笑)。意気消沈して社畜の民となっていたんだけど……おとなしく就活するかーっていう。でも一年半後に東方と出会って、また書きたくなったね。このままで終われるかー!ってなって。


――ファウストにも出されてたんですか!*16
野田:今でも僕の小説の感想として、描写が濃密だとか色っぽいとか言われることがあるのね。東方を書く前もそういうところはあったんだろうけど、人に対して気持ちよくなってもらうとか、そういう作風じゃなかったと思うんよね。もっと内にこもったものだった。内に閉じこもって濃密な描写を書くんだけど、書いただけでおしまいというか。濃密な場面や悲しい場面を、東方二次創作をやる前は書けてなかったと思うんよ。だからまぁ、落ちても当然かなと今は思ってる。


――東方にハマられたのはどういうキッカケだったんでしょうか。
野田:夢破れた時は、これからはほそぼそとアニメとか小説とかを見て、嫌な仕事をほどほどにしながら生きていくさー!なんて思ってたけど、『蓬莱人形』と『東方求聞史紀』に出会ってぐわーってやられて。あんときは感動したね。ZUNさんの作品って、錯覚じゃあるんだろうけど、自分のために作ってくれた!って感覚にさせてくれるんよね。この音楽を聞いてこんなに気持ちいいんだから、これは自分のために作ってくれたんだー!って。それから夢中になって東方をあさっていった。調べてみると、二次創作をしてる人がたくさんいたからそれもまた感動して。色々見まくって一年くらい立つ内に、なんか自分でも書きたくて仕方なくなってね。それで創想話に書いた感じです。


――元々二次創作を書いていたので親和性は高かったんですね。
野田:そうそうそう。僕はたぶん、ファンタジー小説とかSF小説みたいに、丹念に世界観を創りあげて、そのあとキャラクターや設定を立ち上げていくのが苦手なんだと思う。出来上がったキャラクターたちを動かしてこういうシーンを書きたいとか、こういう感情が行き交う場面を書きたいとかはあるんだけど、最初の土台作りをめんどくさがるんだろうね。そういう意味で、土台を最初からZUNさんが作ってくれてる東方の二次創作はやりやすかった。必要十分な設定だけで、一番作りやすい状態にしてくれてるから、これだけどっぷり東方にハマったんだと思う。キタユキさん*17とか設楽秋さん*18にも、オリジナルで書かないんですかって言われることもあるんだけど、今のところ、目下書く気はないんだよね。東方を通じて書きたいことが山のようにあるし、東方以外のものを書こうってことになっても、今度は別の二次創作を書くと思う。今だったら『ちはやふる*19とか『ロマンシングサガ*20の二次創作書きたいしね。


――野田さんが個人的に好きな東方作品はありますか?
野田:雨山電信さん*21が好きなんだ、と思ったけど身内褒めになっちゃうからねえ(笑)。イベントとかに出るまえだと、好きな人もいっぱいいたんだけど、自分で書くようになって自信もついてくると、自分のしか読まなくなっちゃうんよね……。自分の好きなように書いてるから。


――自分が一番好きな東方を、自分が書いてるわけなんですね。最初に東方を書かれたのはいつ頃のことでしたか?
野田:最初に投稿したのが2008年5月なんよね。そんとき最初にコメントが3つきてて、それが嬉しくてねー。あの3つでだいぶ衝撃を受けて、こういう風に人から反応がもらえるって良いもんだなーって。それがキッカケでした。


――媒体は違えどニコニコ動画にあげる楽しみと同じですね。
野田:ほんと、そういうところは動画製作者さんと同じだねー。それでしばらくはグーグルとかヤフーで自分の名前をひたすら検索してね。したらばの東方スレとかに自分の名前がちょっと出たりするとやったー!ってなったり。でもそういうふうにやってると、もっとたくさんの人間に見て欲しいみたいな欲がだんだん出てくるわけよね。東方創想話だと限りある人にしか見てもらえないし、正直、こんな頑張って書いたんだからもっと読まれてもいいじゃないか!って思うようになってね。


――わかりますわかります。
野田:ブログとかも始めたりしてたんだけど、そのときにコメントを書き込んでくれてた人が、今度同人誌を出そうと思うんですが一緒にどうですか、って誘ってくれて。それが『秋の七草』で一緒にやっていた設楽秋さんだったんよね。それまで自分には同人誌作ってイベントに行くって発想がなかったから、さすがに活字だけじゃ売れないんじゃないかなぁ……とか思ってて。でも、メッセンジャーでやりとりしながら作っていたんだけど、東方の同好の士と話しながらモノを創るっていう時間がすごく新鮮で楽しくってね。


――初めて東方を一緒に語るってことをしたんですね。
野田:で、実際に参加したら、思った以上に沢山の人が手にとってくれることに驚いてね。やっぱり手にとってもらえるのが素直に嬉しかった。ネットでコメントもらえるのとはまた違う楽しさがあってね。二ヶ月後の名古屋のイベントでは『お伽話わんだ〜らんど』っていう本を持っていったんだけど、それが飛躍のきっかけというか。僕、当時からkamSさん*22の作品が好きだったんだけど、この本作った時にtwitterで「あなたみたいな作品を作れるよう頑張ります!」ってリプライ送ったんよね。そしたら「…私のような作品程度が目標っていう、そういう低い志ではいけません」的な返事がきて(笑)。


――さすがkamSさんですね。
野田:「じゃ、じゃあ、あなたから良いってもらえるような作品作りを目指します!」って返事をしたね(笑)。最終的に『お伽話わんだ〜らんど』で書いた作品は自分ではかなり自信のあるモノになったから、kamSさんに「ぜひとも読んで欲しい!」って思ってそれを送ったんよ。そうしたら、ありがたいことに気に入ってくれて、その上、それを元に動画の『こいしよこいし』を作ってくれたんよね。あれから色んな人と知り合いになれた気がする。


――kamSさんが立役者的なところがあるんですね。
野田文七:そうだね、大抵の人脈はあそこから始まっている気がする。『お伽話わんだ〜らんど』はそういう意味ではすごいパワーもった本だった。


――『お伽話わんだ〜らんど』は葛の葉さんが表紙を描かれていたんですよね。
野田:そう、葛の葉くん*23は別経路だったんよね! イベントに参加するまでは、とにかく東方の話をするだけで楽しかったから、地元のカードゲームの大会に顔出したりして。そしたら、職場のバイトにも東方好きな奴がいてね。彼の友達の友達が、葛の葉くんだった。


――遠いような近いような(笑)。
野田:最初は友達同士の非想天則の大会とかカードゲームに顔見せてたんだけど、そのうちの一人が「俺の友達ニコ動で投稿してますよー」って言って、それが葛の葉くんだったんよね。しかも同じ熊本住まいで。その後『結現魔眼』に挿絵が必要ってことになって、頼んでみたら快諾してくれたんよね。それで『お伽話わんだ〜らんど』には表紙も描いてくれて。


――何気に葛の葉さんって、劇団文七の黎明期から今でも参加してるんですよね。
野田:そうなんよね(笑)。今でも参加してくれてるし、長く付き合ってもらってるね。次の『少女クライシス』でも描いてもらったんだけど、そのときには結構な人が来てくれてね。凄い人といっぱい知り合ったから、これっていけるんじゃあとか思って次の冬コミで刷りすぎて大量に余らせてしまったりして。帰りは筋肉痛の嵐やったね(笑)。


――苦い経験ですね。
野田:辛かったけど、あそこであきらめなくて良かったけどね。きちいーとかはあったけどやめようとは思わなくて、次にどうしようって考えるほうに頭は回ってたなぁ。それなりに手にとってもらえるようになっても悔しさが強くて、何より、あの頃はメンタルの調整も下手だったね。どうすればやる気になるかわからなかったから、鬱屈して執筆速度が減って…っていう感じやったから、2011年は失敗が目立って反省点がおおい年やったね。もっと書けた気がする。


――年間に4冊新刊出せてる時点でけっこう凄いとおもいますが(笑)。
野田:まぁ、やめなかったっていう点だけは2011年の自分は評価してるね! プライベートでも仕事がちょっときついところに行ってたりしたから。2012年に入るころには変に欲を出すのはやめて、ぼちぼちやっていこうかなぁとか思うようになってたんやけど、その頃に投稿した『メリーの悪夢』と、その後に生パンさん*24が作ってくれたPVの反響が凄くて、あそこから運が向いてきた気がする。


――『メリーの悪夢』は投稿当時話題になりましたね。
野田:2010年末の売れ残りからの堕ちてた感じが、運全般が向いてきたね。キタユキさんは一年間ノブレスの表紙に付き合ってくれたし。いったん上向いたら自信がつくから、多少つらくても突破はできるなっていう気持ちもでてきて。『メリーの悪夢』も苦労はあったっちゃあったけど、覚悟できる苦労だったね。


――2012年は安定して製作できたと。
野田:2012年は安定した心地でいけたかな。それでも年の初めの頃は、気持ちの持って行き方がうまくいってなかったから、今見ると無駄なところもあるんだけど。ノブレス聖とか今度の『永夜回廊』とかになると、自分で思ったようなペース調整ができてるから、この調子でどんどん行こうかなと。


――野田さんは作品の生産速度も非常に早いですが、時間管理を調整しながら書いてるんですね。
野田文七:管理せざるをえんかったんかな(笑)。前の職場がきつかってて凄い嫌だったけど、嫌だったなりに役に立ったのかなという。凄い時間限られてたからね。その中で家に帰って疲れた状態で、でもどうやって書き進めたらいいかっていう工夫をするキッカケにはなったね。もうあの職場には戻りたくないけど、すごくためにはなった。


――野田さん流の原稿のススメ方のコツはありますか?
野田文七:時間って生き物だから、変に10時間とかやって大して進まないのよりは、お茶飲んだり気分転換して、一気にがって書いたほうが全然スピードは早いなって思うよね。僕は時間じゃなくて分量でノルマを設定してて、今日は2000字、明日はがんばって3000字、明後日は1500字だけしか書けなかったけど、昨日がんばったから大丈夫、みたいにやってるね。毎日のノルマを緩く設定して、ちみちみ書いていくほうが続く。最近は手帳で管理をするようにもなったんよ。まぁ、ギリギリまで自分を追い込んで一気にがーってやるのも、それがスタイルに合ってるならいいんだろうけどね。向き不向きがあるから。ただ、僕はあれはできない(笑)。


――今が理想的な生産ペースになってるんですね。
野田文七:油断したり緊張感なくしたりしたらそこで終わってしまうから、油断はできないけど、つかめた感じはある。人に読んでます!って言われたら嬉しいもんね。もちろんコスプレした可愛い女の子に声かけてもらうのが一番うれしいけども!


――(笑)。
野田文七:げんきゅーさんとかだにーさん*25とかもそうだけど、心からこういうのが良かったです!とか言ってもらえると、そうそう俺はこのために書いてるんだよ!っていう風に思うよね。

キメゴマだけは一層力をいれて描くようにはしてます


――というわけで続いて、作画を担当されていますこゆびさんです。よろしくお願いします。
こゆび:ありがとうございます。東方見聞録は以前から見ていたのでちょっと恐縮しています。


――以前といわれると、動画制作前から?
こゆび:はい、銀河さんのインタビューで知って、それからですね。


――こちらこそありがとうございます(笑)。
こゆび:今までの方に比べると、全然有名じゃないので誰?って方も多いと思いますが……(笑)。


――いやいや、これを機会に知ってもらおう!って意図もありますから。動画制作前自体は割りと最近から始められているこゆびさんですが、普段はどこをメインに活動していらっしゃるのですか?
こゆび:絵か漫画でいったら漫画畑の人間です。


――動画として投稿されているのは、どちらも野田文七さんのSS作品のコミカライズということで。pixivを見ると以前も同人誌を発行されていたそうですが。
こゆび:そうですね。専門学校にかよっていたときの知り合いから誘われたんです。ちょうどニコ動が有名になってきたあたりで、東方もそこらへんで興味持ってたので、東方でやろうということになって。


――専門学校に通われていたんですか。
こゆび:漫画やアニメーションの学科があるところですね。在り定位にいえばオタクの集まりでした(笑)。本気でアニメ業界を目指している人もあれば、遊び目的の人もいて。ぶっちゃけ基礎程度のことしか授業では行わないんですが、設備が充実しているのと、同じ志の人がたくさんいるので上達の相乗効果はすごかったです。学校はいるまで絵の勉強ちゃんとしたことなかったので、学校よりも友達からそういう知識を教えてもらってなるほどと思うことが多かったです。


――専門学校以前から絵や漫画は描かれていたんですか?
こゆび:絵はちっちゃいときからずっと、小学生とかそのへんから描いてました。落書き程度ですけど。ちゃんとつけペンとか使ったのは専門学校入ってからですね。


――その頃から漫画を描くような仕事を目指されていたんですか?
こゆび:今でも漫画家志望ではあって、何度か持ち込みもしてます。良い返事はもらえていませんけど……。


――こゆびさんの漫画は誰が見ても力がありますよね。普段というか、ちょっと遠くから見た時の絵柄は素朴に見えるんだけど、キメるときの大コマでの表情とか凄い描き込まれてて、いきいきしてて、すごく好きです。
こゆび:あ、は、ありがとうございます(笑)。キメゴマだけは一層力をいれて描くようにはしてますね。全ゴマ力いれろって話なんですけど(笑)。


――ところで、お名前の由来はなんなんでしょう?
こゆび:僕、生まれつき小指がかなり短いんですよ。それ見て昔から友達にこゆびこゆびって言われてたんで、じゃあこれでって拝借した形です。


――東方projectに遭遇するキッカケはなんでしたか?
こゆび:名前だけは昔から知ってたんですよ。最初の紅魔郷、2002年辺りですかね。その時は全然興味はなかったんです。ハマるキッカケになったのは、専門の友達でしたね。それはまた同人誘ってくれたのとは別のやつなんですけど。僕、ゲーム音楽とか好きで、その友人からよくおすすめを教えてもらってたんですけど、その中にあったのが『U.N.オーエンは彼女なのか?』だったんです。その後、ニコニコ動画が流行っているときいて見てるうちに、どっかで聴いたことがある音楽があるなあって気づいたんです。それが最終鬼畜妹フランドールで、そこから東方であることを知った形でした。


――お好きな動画とかはありますか?
こゆび:多すぎてちょっとアレですけど、一番最初に登録したのが東方連奏曲*26っていう長いメドレーアレンジなんですけど、これ好きですね。ピアノの音色が好きなんですよ。イラストとの雰囲気もマッチしててすごく好きで。今でも作業する時とか聴きますねー。当時激しいアレンジの人が多い中にピアノアレンジっていうのが衝撃でしたね。手書き動画だと、なまやちはしさん*27とか好きなんです!


――いいですね、私も大好きです。デフォルメされてるけどエロくていい絵を描かれますよね。
こゆび:書き込みも凄いですよね。早くこないかなー!っていつも思ってます。あといいちこの人*28も好きです。セリフ回しがかっこいいです。あとはservossさん*29。『レイムとスイカ』とか、『幸福の名の下に』とか、この人のも面白いです。それと淡々と進む東方動画*30も好きです。あの言葉で殴り合いしているような会話がいいですよね。他にもお気に入りの東方動画はマイリスト公開してるので、そこも見ていただけると。


――東方以外でお好きな動画は?
こゆび:コマンドー系とか(笑)。最近おもしろかったのはアイマスのアニメにコマンドーなんかの洋画の吹き替えをあてたものですね。初音ミクもけっこう聞くしMMDも見るし……あとFPSが好きなので、自分のやってるゲームの実況動画も割りと見ますね。


――他にどういう漫画がお好きですか?
こゆび:バイブルは『ドラゴンボール』ですね! 漫画描こうと思ったキッカケの漫画です。小学生の頃、おばあちゃんがやってる、駄菓子屋とゲーセンと古本屋が合体したような店が近所にあったんですけど、そこで一冊50円でドラゴンボール売ってまして。お年玉はたいて全部買って、何回も読み返しました。あとは『スラムダンク*31とか。最近集めてるのは『アオイホノオ*32ですね。あと新刊楽しみにしてるのは『よつばと!*33ですね。『バクマン*34の最初のほうで「日常を最高に面白く描けたら最高じゃないか」っていうセリフがあるんですけど、まさしくそれを表してる作品だと思います。あとだいぶ昔の作品なんですけど、『柔道部物語』*35っていう漫画が凄い好きで、スポーツ漫画でトップクラスにお気に入りです。この人の描く表情がすごく好きで……感情が出てる漫画が好きなんですよね。変にかっこつけたりクールぶってるだけじゃなくて、その後ろに意思があるというか。


――影響を受けた作品はありますか?
こゆび:周りにもけっこう聞かれるんですけど、「これ好きだな」っていう漫画からなにかしら影響は受けてるとおもいます。目に見えるものだと、藤田和日郎*36の影のつけかたはかなり影響されてると思います。光がばーってあたって、白と黒だけになる、あの表現は好きですね。『二兎を追え』のときは、けっこう『うしおととら*37を頭に浮かべながら描いてました。ヘルシングとかの表情も好きですね。静画にあげた幽香がわかりやすいですけど、モロに平野耕太*38の影響受けてます。それと、伊藤悠さん*39の絵も好きですね。歪んだ笑顔、いやらしい笑顔。


――平野耕太さんは心から楽しい笑顔を描くのが、伊藤悠さんはまったく楽しくないのに出てくる笑顔を描くのが、それぞれ上手い漫画家さんですよね。どっちも歪んだ笑顔ですけど(笑)。こゆびさんはどんな風に描かれているんですか?
こゆび:アナログですね。漫画描く時は線画までアナログです。デジタルで描くと線がひけなくて……(笑)。やっぱつけペンで描いたほうが描いてる感じしますから。


――東方のお好きなキャラは?
こゆび:美鈴!


――やっぱり(笑)! どういうところがお好きですか。
こゆび:可愛いところと、頑張りやなところですね! 普段は紅魔館の人たちにいじられるけれど、しめるときはちゃんとしめる、みたいな。僕の中の美鈴はそういう感じですね。


ダブルパートに続く!

*1:漫画家。代表作に『鉄人28号』『魔法使いサリー』『バビル2世』『伊賀の影丸』など。SFから時代物、少女ファンタジーに至るまで、様々なジャンルで筆を振るい続けた巨匠

*2:後漢末・三国時代の戦乱を描いた時代物語。横山光輝の漫画版は吉川英治の小説『三国志』を元に独自の解釈を加えたモノで、全60巻に及ぶ大作である。孔明の罠など印象的なセリフも多く、ネット文化への影響も強い

*3:漫画作品。作者は鳥山明。7つすべて集めるとどんな願いも叶えてくれる不思議な玉・ドラゴンボールを巡り、孫悟空とその仲間達が繰り広げる冒険を描く。ジャンプの三本柱である努力・友情・勝利を真正面から掲げる、少年漫画の王道的作品であり、連載から長い時間が経過した今も、世界中にファンを持つ、知らぬ人はいない超人気漫画である

*4:漫画作品。作者は原哲夫武論尊。核戦争によって社会が崩壊した世紀末世界で弱きもののために力を振るう、北斗神拳の伝承者・ケンシロウの戦いを描くアクション漫画。

*5:玩具企画から派生したガンダムの番外シリーズ。そもそもはデフォルメ調のガシャポン人形であったが、人気が高まるうち、戦国時代を舞台とした武者ガンダムや、RPG風のファンタジー世界を舞台とした騎士ガンダムなどのストーリーが作られ、単なるフィギュアシリーズに収まらない展開をするようになった

*6:小説作品。作者はあかほりさとる。特権階級の魔法使いが庶民を支配する異世界を舞台に、圧政を強いる魔法使いを懲らしめる仕置人・キャロット・グラッセたちの冒険を描くファンタジー作品。後に漫画化、アニメ化され90年台を代表するサブカル作品の一つとなった

*7:爆れつハンターの主人公。吸魔と獣化の能力を備え、怪物に変身して魔法使いをこらしめる青年。性格はナンパで女性に目がない三枚目

*8:小説家。代表作に『創竜伝』『銀河英雄伝説』など。スペース・オペラ、ファンタジー、現代劇から歴史小説に至るまで作風の幅は広く、長大なシリーズの中で描かれる壮大な人間模様は多くのファンを魅了する

*9:RPGゲーム。ハードはスーパーファミコン。300年に一度生まれる宿命の子供を巡る物語

*10:格闘ゲーム。シリーズの時系列としては1と2の間にあたる。「一定の開発期間でどこまで作り込めるか」という従来とは異なるコンセプトで制作されている

*11:シミュレーションRPG。味方軍のユニットに指示をだし、ターンを進めていく戦術シミュレーション。シリーズ第二作・ラングリッサー2の移植作であり、2のストーリーをベースにマルチエンディングが取り入れられている

*12:角川書店から出されているライトノベルレーベル。代表的な作品に『涼宮ハルヒの憂鬱』など。一昔前は大賞授賞がほとんどない新人賞を持つことで有名だった

*13:小学館から出されているライトノベルレーベル。レーベルとしては後発の部類だが、他にはない型破りな作品が多いことが特徴。代表的な作品に『人類は衰退しました』『とある飛空士への追憶』など

*14:講談社が発刊している文芸誌。新潮社の『新潮』、文藝春秋の『文學界』などと並ぶ、二本を代表する文芸誌のひとつ

*15:講談社が発刊している文芸誌。太田克史編集長のみの、一人編集体制をとっており、西尾維新佐藤友哉舞城王太郎などを始めとする、ゼロ年代サブカル作家の活動拠点として刊行された

*16:この収録中、公式サイトを確認し、当時の原稿に対する寸評も出されていたことが判明。

*17:東方手書き作家、同人作家。まばゆい色使いが持ち味の、みことじをこよなく愛する絵描きさん。劇団文七ではイラスト、デザイン、校閲、サイト制作など様々な業務を請け負っており、劇団の雑用を自称している

*18:東方SS作家。サークル『秋の七草』代表。代表作は「蓬莱山輝夜は永遠に生きていく」など。作中の展開は東方キャラ、モブキャラ含めてシビアになることが多く、また特定のくだりになると急速に増す、文章の密度も持ち味。射命丸文をはじめ作者自身の「持ちキャラ」がいる模様で、軽妙な会話のやりとりにも定評がある

*19:漫画作品。作者は末次由紀。競技かるたのクイーンを目指し奮戦する主人公・綾瀬千早の活躍を描く熱血青春グラフィティ。TVアニメ化も行われ、それまで知名度の低かった競技かるたを若者にアピールするなどの貢献も果たしている

*20:RPG。ハードはスーパーファミコン魔界塔士Sa・Gaから続くサガシリーズの四作目。フリーシナリオを導入しており、8人の主人公それぞれで異なるストーリーが楽しめる、自由度の高いシステムが特徴。

*21:同人作家。代表作は「RAIN MAKER」など。「東方少女は美少女である」という前提をひっくりかえした個性豊かなキャラデザが特徴。「ソラトロボ」など、東方以外の作品も精力的に執筆を続けている

*22:東方手書き作者。代表作に『八意式健康術』『御伽話を聞かせてよ』など。幾多のモチーフが挿入された、シュールかつ哲学的な映像は、東方超級者向けと称されることも

*23:東方手書き作者。代表作に『つちぐもとはしひめ』など。幻想郷で巻き起こる異変に、密かに首を突っ込んでいた地底の妖怪達の珍道中を描く

*24:東方手書き作者、アレンジャー。バリエーションにとんだ中毒性の高い、東方BGMアレンジを、同じく中毒性の高い突き抜けた手書き動画と合わせて製作している投稿者。実際の画風はまた別の意味で中毒性が高く、非常に麗しい

*25:東方SS作家。東方あやこま合同「無縁の塚でふたりきり」などにSSを寄稿している。神霊廟となにより咲夜さんをこよなく愛する髭の人。

*26:しらは氏が制作している東方MIDIアレンジ動画。42曲を4部構成25分に渡ってメドレーとしており、心地良いピアノアレンジが特徴である。

*27:東方手書き作者。代表作に『チルノのぱーふぇくと幻想郷征服計画』『みょんとゆゆこのグルメ旅』など。デフォルメ調でありながら描き込まれた絵柄、絶妙なエロスと先の読めないストーリーに定評がある

*28:東方手書き作者。代表作に『最大戦速』『姫のおつかい』など。独特の絵柄で描かれる、コメディとシリアスを綯い交ぜにしたストーリー展開で読者を引き付ける。名前の由来は、動画に必ずいいちこが登場することから

*29:東方手書き作者。代表作に『レイムとスイカ』など。博麗神社で貧乏な生活をしているレイムとスイカを中心とした、ほのぼのなような切ないようなストーリーを展開している。シュールな展開を最後には綺麗にまとめてしまう手腕にも定評がある

*30:作者はmoganbo氏。タイトル通りの淡々とした、しかし癖になる洒脱な会話劇が特徴的な動画シリーズ。BGMは何故か決まっておさかな天国だったり、とにかく不思議な空気を持つ作品

*31:漫画作品。作者は井上雄彦。主将の妹に一目惚れしたことがキッカケでバスケ部に入部した不良少年桜木花道が、徐々にバスケの世界にのめりこみながら、仲間達と共に全国制覇を目指すスポーツ漫画。いわゆるジャンプ黄金期を支えた人気作品

*32:漫画作品。作者は島本和彦。自意識が高い漫画家志望の青年・焔燃の奮闘を描く青春グラフィティ。作者の青春時代をベースにした、事実を元にしたフィクションであり、作中には実際に氏と交友のある実在のクリエーターが多数登場する

*33:漫画作品。作者はあずまきよひこ。怖いモノ知らずの女の子・よつばの発見に満ちた、何気ない日常が丁寧に描かれたストーリー作品

*34:漫画作品。原作大場つぐみ、漫画小畑健。10代にして驚異的な画力と、ストーリー作りの才能を持つサイコーとシュージンが、少年漫画の王道であるジャンプの連載作家として成長していく姿を描く。実在のジャンプ関係者がキャラクターとして登場したり、漫画執筆の内情にも深く踏み込んだ内容になっている

*35:漫画作品。作者は小林まこと。ひょんなことから柔道部に入部することになった主人公・三五十五の奮戦を描くスポコン漫画。経験者ならではのリアルさが特徴的で、氏の柔道部時代の経験が遺憾なく発揮されている

*36:漫画家。代表作に『うしおととら』『からくりサーカス』など。迫力のある絵柄と熱い展開で読者を魅了する、熱血少年漫画家の代表格。豪快ながら様々な伏線が最後にはつながる、緻密なストーリーテリングにも定評がある

*37:漫画作品。作者は藤田和日郎。妖怪を滅する武器・獣の槍に選ばれた少年・潮と、彼を喰ってやろうと付け狙うとら。不思議な縁で結ばれたふたりが、人に仇をなす妖怪達と戦いを繰り広げる少年バトル漫画。初連載ながら、遠慮のないホラー描写と相反する熱いストーリー展開で読者を魅了した人気作品

*38:漫画家。代表作に『HELLSING』『ドリフターズ』など。陰影を強調した独特の画風で描かれた、アクション伝奇ストーリーを得意とする。本人自身のキャラクタも強烈であり、twitterでの切れ味鋭いネタツイートなどはしばしば話題になる

*39:漫画家。代表作に『皇国の守護者』『シュトヘル』など。伝奇的なストーリーと、細やかなキャラクターの表情に定評がある